PTSとは、証券取引所を通さずに株式を売買できる私設取引システムのことです。Proprietary Trading System の略で、日本語では「私設取引システム」と呼びます。
最大の魅力は取引所が閉まっている時間帯にも売買できること。決算発表を受けて、夜のうちに動けます。
ただし、取引所とは板も参加者も別です。流動性が低く、思った価格で約定しないこともあります。この記事では、各社の最新の取引時間から、実際に使うときの注意点までを整理します。
この記事でわかること
・夜間取引が本当に役立つ場面
・PTSの株価が取引所と食い違う理由
・信用取引はPTSでは制限があること
・2026年に始まったPTSの制度見直し議論
目次
PTSとは
株式は通常、東京証券取引所などの金融商品取引所で売買されます。これに対してPTSは、証券会社が運営する取引所以外の売買の場です。金融商品取引法にもとづく認可を受けて運営されています。
板が厚い
板が薄い
取引時間の広さと引き換えに、流動性を犠牲にしている
取引所とPTSの違い
| 項目 | 証券取引所 | PTS |
|---|---|---|
| 運営 | 取引所(東証など) | 証券会社 |
| 取引時間 | 9:00〜11:30/12:30〜15:30 | 早朝から深夜まで |
| 流動性 | 高い | 低い |
| 呼値の単位 | 取引所の規定どおり | より細かく設定されている場合がある |
| 信用取引 | 可能 | 制限がある |
| 出来高の集計 | 東証の統計に反映 | 別集計(出来高に含まれない) |
2026年時点で日本のPTSは2つ
ここは古い情報が残っているサイトが非常に多い部分です。
→ Cboeジャパンは2025年8月29日に日本株市場業務を終了しました。
「チャイエックス」と書かれている解説は、それだけで情報が古いと判断できます。
| 運営会社 | 特徴 | 状況 |
|---|---|---|
| ジャパンネクスト証券 | 日本最大のPTS。ネット証券の夜間取引はここが中心 | 稼働中 |
| 大阪デジタルエクスチェンジ(ODX) | 2022年に株式PTSを開始。デジタル証券の流通市場も運営 | 稼働中 |
| Cboeジャパン(旧チャイエックス) | 米Cboe傘下。ネット証券のSOR注文でも使われていた | 2025年8月終了 |
※ 出典:Cboe Global Markets および各証券会社の公表(2025年)
PTSの取引時間【3社比較】
取引時間は証券会社ごとに異なります。「PTSは深夜0時まで」と一律に覚えるのは誤りです。
| 証券会社 | デイタイム・セッション | ナイトタイム・セッション |
|---|---|---|
| SBI証券 | 8:20〜16:30 | 17:00〜23:59 |
| 楽天証券 | 8:20〜16:00 | 17:00〜23:59 |
| 松井証券 | 8:20〜15:30 | 17:00〜翌2:00 |
※ 出典:各社公式サイト(2026年8月時点)。取引時間は変更されることがあるため、利用前に必ず各社の最新情報をご確認ください。
夜の時間を重視するなら松井証券が頭ひとつ抜けています。米国市場が動き出す時間帯(日本時間の22:30以降、冬時間は23:30以降)まで取引できるのは、松井証券だけです。
なお、市場を運営するジャパンネクスト証券のナイトタイム自体は翌朝6:00まで開いていますが、各証券会社が顧客からの注文を受け付ける時間は上記のとおり別に定められています。
信用取引はPTSでは制限がある
意外と知られていないのがこれです。
| 証券会社 | PTSでの信用取引 |
|---|---|
| SBI証券 | デイタイム・セッション内の取引所に準じた時間帯(9:00〜11:30/12:30〜15:30)のみ。ナイトタイムは不可 |
| 松井証券 | PTSは現物取引のみ。信用取引は東証の取引時間中のみ |
※ 出典:各社公式サイト(2026年8月時点)。取扱いは変更される場合があります。
「夜のうちに空売りしておこう」ということは、基本的にできません。夜間に動けるのは現物取引だと理解しておいてください。
PTSのメリット
決算の多くは取引所が閉まった15:30以降に発表されます。翌朝の寄り付きを待たずに、夜のうちに売買できるのが最大の利点です。
仕事で日中に画面を見られない人にとって、夜間に成行や指値を出せる意味は大きくなります。
取引所より細かい刻みで注文できる銘柄があり、わずかに有利な価格で約定できる可能性があります。
証券会社によっては、PTSの手数料を取引所より低く設定しています。ただし現在は国内株式の手数料自体が無料のコースも多いため、以前ほどの差はありません。
PTSのデメリット
ここが本題です。PTSの弱点は流動性の低さに集約されます。
売り気配 4,570円(+70円)
買い気配 4,430円(-70円)
→ 今すぐ買うと70円高く、今すぐ売ると70円安い
往復で140円のコストです。手数料が無料でも、この差(スプレッド)が実質的な手数料になります。取引所ではここまで開くことはめったにありません。
買い注文がほとんど並んでいない銘柄では、成行で売ると想定よりずっと安い価格で約定します。夜間はこの傾向が特に強くなります。
参加者が少ないため、少額の注文で株価が大きく動きます。夜に10%上がっていても、翌朝の取引所では違う値段から始まることは普通にあります。
すべての証券会社がPTSに対応しているわけではありません。口座を持っていない場合は新たに開設する必要があります。
PTSの株価が取引所と違う理由
同じ銘柄なのに、PTSと取引所で値段が違うことがあります。理由は単純で、まったく別の板だからです。
| 場面 | なぜ食い違うのか |
|---|---|
| 取引所が開いている時間 | 板が別々なので、注文の集まり方によって数円の差が出る |
| 取引所が閉じている時間 | 取引所の値段が止まっている一方、PTSだけがニュースに反応して動く |
| 材料が出た直後 | 薄い板に注文が集中し、翌日の始値とかけ離れた値がつくことがある |
夜間のPTS株価は「翌日の予想」ではなく「その時点の少数の参加者がつけた値段」です。気配や板の厚みも一緒に見て判断してください。
SOR注文とPTSの関係
ネット証券で株を買うとき、SOR(スマート・オーダー・ルーティング)という仕組みが働いていることがあります。
これは、取引所とPTSの気配を比較して、その時点で最も有利な市場へ自動的に注文を回す仕組みです。投資家が意識しなくても、注文の一部がPTSで約定していることがあります。
たとえば楽天証券の手数料無料コース(ゼロコース)では、SORの利用に同意することが条件になっています。手数料が無料になる代わりに、注文の回り方が変わるという設計です。詳しくは楽天証券の記事で解説しています。
Cboeジャパンの撤退にあわせて、各社はSORの接続先を見直しました。現在は主にジャパンネクスト証券が対象になっています。
PTS取引ができる証券会社
主要ネット証券のうち、PTSに対応している3社を紹介します。
SBI証券のPTS
デイタイム・セッションが16:30までと長く、取引所の大引け(15:30)後も1時間取引できます。信用取引もデイタイムの一部時間帯で利用できるのは、3社の中でSBI証券だけです。
楽天証券のPTS
デイタイムは16:00まで、ナイトタイムは23:59までです。手数料は通常の国内株式の手数料コースが適用され、いちにち定額コースの場合は前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算されます。
松井証券のPTS
ナイトタイム・セッションが翌2:00までと業界最長です。米国市場の値動きを見てから日本株を売買したい人には、この時間帯が効いてきます。ただしPTSでの取引は現物のみです。
2026年、PTSの制度が見直されようとしている
いま、PTSは制度の転換点にあります。
金融商品取引法の規定により、PTSでの売買が一定のシェアを超えると、取引所と同等の規制が求められる仕組みになっています。
| シェアの水準(過去6か月) | 求められること |
|---|---|
| 個別銘柄10%超 かつ 全体5%超 | 売買管理・審査態勢の拡充、決済履行の確実性を確保する措置 |
| 個別銘柄20%超 かつ 全体10%超 | 金融商品市場開設の免許(取引所化) |
※ 出典:金融商品取引法施行令および金融庁の指針
PTSの売買が活発になったことを受けて、2026年に金融庁がこの上限ルールの見直しに向けた議論を開始したと報じられています。Cboeジャパンの撤退も含め、日本の株式市場の売買の場そのものが変わりつつある局面です。
※ 本記事は制度と仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
PTSに関するよくある質問
まとめ
PTSは「取引所が閉まっている時間に動ける」という一点で価値があります。その代わり板が薄いので、成行注文だけは避けてください。
この記事のまとめ
・2025年8月にCboeジャパンが撤退し、現在はJNXとODXの2つ
・夜間の時間が長いのは松井証券(翌2:00まで)
・デイタイムが長いのはSBI証券(16:30まで)
・PTSでの信用取引は大きく制限されている
・板が薄くスプレッドが広い。必ず指値で注文する
・2026年に金融庁がPTSのシェア上限ルールの見直し議論を開始











