
ドットチャート(dot plot)とは、FOMC の参加者 19 人(理事 7 人+地区連銀総裁 12 人)が「年末の政策金利はどの水準が適切か」をそれぞれ 1 つの点(ドット)で示し、年ごとに並べた図です。FRB が年 4 回(3・6・9・12 月)の FOMC 後に公表する「経済見通し(SEP)」の一部で、市場は 19 個の点の中央値を「FRB の金利見通し」として読み、前回からの変化と市場の織り込みとの差で株と為替が動きます。ただし参加者の個人的な予想の集まりであり、FOMC の決定でも約束でもありません。この記事では、図の読み方、中央値と「あと何回」の数え方、市場予想との差が相場を動かす仕組み、長期見通しの意味、当たらない理由をまとめます。
- 公表は3・6・9・12 月の FOMC 後。19 人の中央値が「FRB の見通し」として報道される。10 番目の点が中央値
- 見方は「今年末・来年末・再来年末・長期」の 4 列。今年末の中央値と現在の金利の差 ÷ 0.25 が「年内あと何回」
- 株を動かすのは前回からの変化と市場予想(FedWatch)との差。市場が 3 回の利下げを織り込んでいるのに中央値が 1 回なら株は下がる
ドットチャートの読み方:4 列と中央値
図の横軸は「今年末・来年末・再来年末・長期(Longer run)」の 4 つ、縦軸は政策金利(FF レートの誘導目標の中央値)です。各参加者が各年に 1 つずつ点を置くので、1 列に 19 個の点が並びます。
| 見るもの | 意味 |
|---|---|
| 中央値(10 番目の点) | 報道で「FRB の見通し」と呼ばれる値。参加者の半数がこれ以上、半数がこれ以下 |
| 点の散らばり | 広いほど参加者の意見が割れている。不確実性が高い局面で広がる |
| 前回との比較 | 中央値が上がれば「タカ派的」、下がれば「ハト派的」 |
| 長期(Longer run) | 景気が中立の状態で適切な金利=中立金利の推定。2.5〜3% 台 |
たとえば現在の誘導目標が 4.25〜4.50%(中央値 4.375%)で、今年末の中央値が 3.875% なら、差は 0.50%=0.25% 刻みで 2 回分です。「年内あと 2 回の利下げを見込む」という報道はこの計算から来ています。
点は誰のものか公表されません(匿名)。議長の点も分かりませんが、議長は記者会見で中央値に近い見方を示すことが多いため、中央値が事実上の「FRB の意見」として扱われます。
市場予想との差で株と為替が動く仕組み
ドットチャートの公表日(FOMC 当日)には、市場はすでに FF 金利先物で「年内あと何回」を織り込んでいます。CME FedWatch で見られる確率です。株と為替を動かすのは、ドットチャートの中央値とこの織り込みの差です。
| 市場の織り込み | ドットチャートの中央値 | 典型的な反応 |
|---|---|---|
| 年内 3 回の利下げ | 年内 1 回 | タカ派サプライズ。株安・長期金利上昇・ドル高(円安) |
| 年内 1 回 | 年内 3 回 | ハト派サプライズ。株高・長期金利低下・ドル安(円高) |
| 年内 2 回 | 年内 2 回 | 反応は小さい。記者会見の発言で決まる |
2024 年 12 月の FOMC では、利下げは実施されたのに、翌年の利下げ見通しが 4 回から 2 回に減ったドットチャートで S&P500 が約 3% 下落しました。決定(利下げ)と見通し(利下げ回数の減少)のどちらで動いたかと言えば、後者です。
日本の投資家にとっては、ドットチャートが円相場に効く点も重要です。利下げ回数が減れば日米金利差が縮まりにくく円安、増えれば円高方向です。FOMC の翌朝は、株の動きとドル円の動きをセットで確認してください。政策金利の仕組みは FF レートの解説、市場の織り込みの見方は同じ記事の後半にまとめています。
経済見通し(SEP)の他の項目と、長期金利への影響
ドットチャートは「経済見通し(Summary of Economic Projections、SEP)」の一部です。同時に公表される項目も相場に影響します。
| 項目 | 内容 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 実質 GDP 成長率 | 年末の前年比 | 下方修正なら景気懸念 |
| 失業率 | 年末の水準 | 上方修正なら労働市場の軟化=利下げ余地 |
| PCE インフレ率・コア PCE | 年末の前年比 | 上方修正ならインフレ懸念=利下げが遠のく |
| 政策金利(ドットチャート) | 年末の適切な水準 | 中央値の変化と散らばり |
「インフレ見通しが上がり、金利見通しも上がる」なら整合的ですが、「失業率の見通しが上がったのに金利見通しは下がらない」のような組み合わせは、FRB がインフレを優先していると読まれ、株には逆風です。
長期(Longer run)の点は中立金利の推定で、2010 年代は 2.5% でしたが、2024 年以降は 3% 前後まで上がっています。中立金利が上がると「利下げしても以前のような低金利には戻らない」ことになり、10 年債利回りの下限を押し上げます(10 年債利回りの解説)。
ドットチャートが当たらない理由と、使い方
ドットチャートの予想は、過去にしばしば大きく外れています。
- 2021 年 12 月:2022 年末の中央値は 0.9% だったが、実際は 4.4%(インフレを見誤った)
- 2023 年 12 月:2024 年に 3 回の利下げを示したが、実際の利下げ開始は 9 月で計 1.00%(想定より遅かった)
- 2019 年:年初は利上げ継続を示していたが、年内に 3 回利下げ
外れる理由は、参加者が「現時点のデータが続けば」という前提で点を置くためで、経済が変われば点も動きます。FRB 自身も「ドットチャートは予測ではなく、各参加者の適切と考える経路」と説明しています。
使い方は「FRB の予想を当てにする」のではなく、「FRB が今、景気とインフレをどう見ているかを知る」ことです。中央値の変化の方向(前回より上か下か)と、市場との差の方向(タカ派かハト派か)の 2 点を見れば、FOMC 当日の株と為替の反応は説明がつきます。FOMC の日程・声明文・議事要旨の全体像は FOMC の解説、参加者の発言の読み方は タカ派・ハト派の解説 をご覧ください。
ドットチャートに関するよくある質問
ドットチャートはどこで見られますか?
19 人全員に投票権はありますか?
ドットチャートが公表されない FOMC もあるのですか?
日銀にもドットチャートはありますか?
関連する用語
- FOMC
FOMCとは、アメリカの金融政策を決める会合のことで、正式名称は連邦公開市場委員会(Federa - FRB
FRB(連邦準備制度理事会)とは、米国の中央銀行にあたる組織の中枢を担う機関です。 - FOMC議事要旨
FOMC議事要旨とは、米国の金融政策を決める会合で交わされた議論の記録です。 - タカ派
タカ派とは金融引き締めに積極的な立場、ハト派とは金融緩和に積極的な立場のことです。 - 利下げ
利下げとは、中央銀行が政策金利を引き下げることです。 - 利上げ
利上げとは、中央銀行が政策金利を引き上げることです。 - FF レート(フェデラルファンド金利・米国の政策金利)
- 米国 10 年債利回り(長期金利)
あわせて使うツール・記事
執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
ドットチャートと経済見通しの仕組みは FRB の Summary of Economic Projections の説明、過去の見通しと実績は各回の SEP(2019 年・2021 年 12 月・2023 年 12 月・2024 年 12 月)と FOMC の決定にもとづきます。2024 年 12 月の株価反応は S&P500 の当日騰落率です。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-18。

