オプション取引とは、あらかじめ決めた価格で「買う権利」または「売る権利」そのものを売買する取引です。

株そのものではなく、権利を商品として扱うのが最大の特徴です。

この記事では4つの基本パターンを整理したうえで、なぜ売り手だけ損失が無限になりうるのかまで解説します。

この記事でわかること

・コールとプットの違い
・買い手と売り手の決定的な非対称性
・プレミアムの中身(本質的価値と時間的価値)
・4つのパターンの損益
・証拠金と税金の扱い

オプション取引とは

オプション取引(Option)は、将来のある時点に、決められた価格で売買できる権利を取引するものです。

身近な例でいうと
「3か月後まで、この土地を1億円で買える」という予約券を1,000万円で買う。

土地が1億5,000万円になった → 予約券を使って1億円で買う(
土地が8,000万円になった  → 予約券を捨てる(1,000万円の損で済む

この予約券にあたるものがオプション、1,000万円にあたるものがプレミアム、1億円にあたるものが権利行使価格です。

日本の個人投資家が主に取引するのは、大阪取引所に上場している日経225オプションです。

コールとプット

種類 権利の内容 価値が上がる場面
コール(Call) 権利行使価格で買う権利 相場が上がる
プット(Put) 権利行使価格で売る権利 相場が下がる

この2種類それぞれに「買い」と「売り」があるため、組み合わせは4通りになります。

買い手と売り手は対等ではない

オプションで最も重要なのがここです。買い手と売り手のリスクは、まったく対称ではありません。

項目 買い手 売り手
立場 権利を持つ 義務を負う
プレミアム 支払う 受け取る
最大の利益 理論上は無限 受け取ったプレミアムまで
最大の損失 支払ったプレミアムまで 理論上は無限
証拠金 不要 必要
勝ちやすさ 当たる確率は低い 当たる確率は高い

売り手は「少しずつ勝って、たまに大きく負ける」構造です。勝率は高いのに、1回の負けですべてを失うことがあります。

初心者が絶対に避けるべきなのは「売り」から入ることです。勝率の高さに惹かれて売りを重ねると、急変時に取り返しがつきません。

プレミアム

プレミアムとは、オプションそのものの値段です。買い手が売り手に支払います。

プレミアム = 本質的価値 + 時間的価値

この2つに分解できることを理解すると、なぜオプションの価格が「相場が動かないだけで減っていく」のかがわかります。

本質的価値

本質的価値とは、いますぐ権利を行使したら得られる利益のことです。

状態 呼び方 本質的価値
行使すると利益が出る ITM(イン・ザ・マネー) あり
ちょうど同じ水準 ATM(アット・ザ・マネー) ゼロ
行使しても損 OTM(アウト・オブ・ザ・マネー) ゼロ

たとえば日経平均が40,000円のとき、権利行使価格39,000円のコールには1,000円分の本質的価値があります。

本質的価値はマイナスになりません。不利なら権利を使わなければよいだけだからです。

時間的価値

時間的価値とは、満期までに有利な方向へ動くかもしれないという期待の値段です。

時間的価値の性質
・満期が近づくほど減っていく
・満期日には必ずゼロになる
・満期直前ほど減り方が加速する
・値動きが激しいと予想されるほど大きくなる

相場が動かなくても、時間が経つだけでオプションの価値は減ります。これがオプションの買い手にとって最大の敵です。

逆に売り手から見れば、何も起きなければ利益が積み上がるということになります。売り手の勝率が高いのはこのためです。

なお、時間的価値の大きさは市場が予想する将来の値動きの激しさに左右されます。この予想は恐怖指数(VIX)のような指標にも反映されます。

コールオプションの買い

項目 内容
狙い 相場が大きく上がる
最大利益 理論上は無限
最大損失 支払ったプレミアム
証拠金 不要

損失があらかじめ確定しているため、初心者が最初に触れるならこれです。ただし「上がる」だけでは足りず、満期までに、プレミアムを上回るだけ上がる必要があります。

コールオプションの売り

項目 内容
狙い 相場が上がらない(横ばい・下落)
最大利益 受け取ったプレミアム
最大損失 理論上は無限
証拠金 必要

4つの中で最も危険なのがこれです。株価に上限はないため、上昇が続けば損失も無制限に膨らみます。

プットオプションの買い

項目 内容
狙い 相場が大きく下がる
最大利益 大きい(ただし価格はゼロ未満にならない)
最大損失 支払ったプレミアム
証拠金 不要

保有株の値下がりに備えるヘッジとして使われるのが典型です。保険料を払って、下落時の損失を抑えるという発想です。

プットオプションの売り

項目 内容
狙い 相場が下がらない(横ばい・上昇)
最大利益 受け取ったプレミアム
最大損失 非常に大きい
証拠金 必要

暴落が起きると損失が一気に拡大します。2024年8月5日のように日経平均が1日で4,451円下げるような場面では、想定をはるかに超える損失になります。

4つのパターンを一覧で確認する

パターン 相場観 最大利益 最大損失
コール買い 大きく上がる 無限 プレミアム
コール売り 上がらない プレミアム 無限
プット買い 大きく下がる 大きい プレミアム
プット売り 下がらない プレミアム 非常に大きい

「買い」は損失限定、「売り」は損失無限定という点だけは、必ず覚えてください。

日経225オプションの基本ルール

項目 内容
上場市場 大阪取引所
対象 日経平均株価
取引単位 日経平均株価 × 1,000円
権利行使のタイプ ヨーロピアンタイプ(満期日のみ行使可能)
決済 SQ値との差金決済(現物の受け渡しはない)
満期前の売買 いつでも反対売買で決済できる

ヨーロピアンタイプなので満期日まで権利行使はできません。ただし満期前でもオプションそのものを売却して利益を確定できます。

実際には、多くの取引が権利行使ではなく満期前の反対売買で決済されています。

先物取引との違い

項目 オプション取引 先物取引
性質 権利(放棄できる) 義務(必ず決済する)
買い手の損失 プレミアムに限定 限定されない
時間の影響 大きい(時間的価値が減る) 小さい
値動きの激しさの影響 価格に直接反映される 直接は反映されない

先物は方向が当たれば勝ちですが、オプションの買いは方向・値幅・時期の3つがすべて当たらないと勝てません。

「上がると思って買ったのに、実際に上がったのに損をした」ということが起こるのはこのためです。

証拠金とリスク管理

オプションの売りには証拠金が必要です。買いはプレミアムを支払うだけなので証拠金は不要です。

売り手が注意すべきこと
・相場が急変すると証拠金が急激に増額される
・不足すると追加の差入れを求められ、応じられなければ強制決済
・強制決済は最も不利な価格で行われることが多い

証拠金は取引所が定める方式で計算され、値動きの激しさに応じて日々変わります。平常時の証拠金額を前提にポジションを組むと、急変時に耐えられません。

実際に使われる場面

目的 使い方
保有株のヘッジ プットを買っておき、暴落時の損失を抑える
少額で相場に賭ける コールを買う。損失はプレミアムまで
横ばい相場で収益を狙う 売りを組み合わせる(上級者向け)

個人投資家にとって最も現実的なのは、1つ目のヘッジとしての使い方です。保有株を売らずに下落リスクだけを抑えられます。

ただしプレミアムというコストがかかるため、何も起きなければその分だけ損をします。保険と同じ考え方です。

税金

項目 内容
課税の区分 先物取引に係る雑所得等(申告分離課税
税率 20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)
確定申告 原則として必要(源泉徴収されない)
損失の繰越 翌年以降3年間繰り越せる(毎年申告が必要)
株式との損益通算 できない(別の所得区分)
NISA 対象外

株式の売却損とオプションの利益は通算できません。ここを勘違いすると納税額の見込みが大きく狂います。

一方、先物取引やCFDなど同じ区分の商品どうしであれば通算できます。詳しくはキャピタルゲインもあわせてご確認ください。

※ 本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務判断については税務署または税理士にご確認ください。投資判断はご自身の責任でお願いします。

オプション取引に関するよくある質問

オプション取引は初心者でもできますか?
口座の審査を通れば取引自体は可能ですが、まずは「買い」に限定することをおすすめします。買いであれば損失は支払ったプレミアムまでに限定されます。売りは勝率が高い一方で、1回の急変で証拠金を大きく超える損失が出る可能性があります。
なぜ売り手の損失は無限になるのですか?
コールを売った場合、相場の上限がないためです。株価や指数がどこまで上がっても、売り手は権利行使価格で売る義務を負い続けます。受け取れるのはプレミアムだけなので、上昇分がそのまま損失になります。
上がったのに損をしたのはなぜですか?
時間的価値が減ったためです。オプションの価格は本質的価値と時間的価値の合計で、時間的価値は満期に向かって必ずゼロに近づきます。上昇幅がその減少分を上回らないと、方向が当たっていても損失になります。
満期まで持たないといけませんか?
いいえ。満期前でも反対売買でいつでも決済できます。日経225オプションはヨーロピアンタイプなので権利行使は満期日のみですが、オプションそのものの売買は取引時間中いつでも可能です。実際、多くの取引が満期前に決済されています。
権利行使価格はどれを選べばいいですか?
現在の水準から遠い価格ほどプレミアムは安くなりますが、その分だけ当たる確率も下がります。安いから有利ということはありません。想定する値幅の範囲内にある権利行使価格を選ぶのが基本です。
先物取引とどちらが安全ですか?
オプションの「買い」は損失がプレミアムに限定されるため、その点では先物より安全です。ただし方向・値幅・時期の3つが揃わないと利益が出ないため、勝ちにくい面もあります。オプションの「売り」は先物より危険です。
確定申告は必要ですか?
原則として必要です。先物取引に係る雑所得等として申告分離課税の対象になり、税率は20.315%です。特定口座の源泉徴収のような仕組みがないため、利益が出た場合は自分で申告します。損失が出た年も、申告しておけば翌年以降3年間繰り越せます。
株の損失と相殺できますか?
できません。上場株式等の譲渡損益とオプション取引の損益は別の所得区分のため、損益通算の対象外です。ただし先物取引やCFDなど同じ区分に属する商品どうしであれば通算できます。

まとめ

オプション取引は「買い手は保険をかける側、売り手は保険を引き受ける側」という構図で理解すると整理できます。

この記事のまとめ

・買う権利がコール、売る権利がプット
・買いは損失限定、売りは損失無限定
・プレミアム=本質的価値+時間的価値
・時間的価値は満期にゼロになる
・方向・値幅・時期の3つが揃って初めて勝てる
・日経225オプションはヨーロピアンタイプでSQ決済
・売りには証拠金が必要で急変時に増額される
・申告分離課税20.315%。株式とは損益通算できない

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