REIT(リート)とは、投資家から集めたお金で不動産を買い、その賃料収入を分配する投資商品です。日本の証券取引所に上場しているものをJ-REITと呼びます。
特徴は1つに集約されます。利益のほとんどを分配することを条件に、法人税が実質的にかからない仕組みになっているため、分配金の利回りが株式の配当利回りより高くなりやすいのです。
ただしこの仕組みには裏側があります。利益を内部に留保できないので借入に頼らざるを得ず、金利が上がると弱いという構造です。この記事はそこまで踏み込みます。
この記事でわかること
・分配金利回りが高くなる理由(導管性要件)
・分配金の税金が株の配当と違う点
・NISAで買えるか
・用途別の6タイプと値動きの性格
・NAV倍率・LTV・スポンサーの見方
・金利が上がるとREITが弱い理由
・5つのリスク
目次
REITとは?まず結論から
REIT(読み方:リート/Real Estate Investment Trust)
投資家から資金を集めて不動産に投資し、そこから得られる賃料や売却益を投資家に分配する仕組みです。日本では投資法人という形態をとり、証券取引所に上場しています。
① 投資家が投資口を買う(=投資法人にお金が入る)
② 投資法人は投資家のお金+銀行からの借入でオフィスビルなどを購入
③ テナントから賃料を受け取る
④ 経費と借入金利を差し引いた利益を、ほぼ全額投資家に分配
投資家は不動産を直接持たずに、賃料収入の分け前を受け取ります
1口あたり数万円〜数十万円で買えるものが多く、株式と同じように取引時間中にいつでも売買できます。
「株」ではなく「投資口」
REITでは呼び方が株式と違います。混乱しやすいので先に対応表を出します。
| 株式では | REITでは | 補足 |
|---|---|---|
| 株式 | 投資口 | 売買単位は1口(株のような100株単位ではない) |
| 株主 | 投資主 | 投資主総会で議決権を行使できる |
| 配当金 | 分配金 | 税務上の扱いが配当と一部異なる(後述) |
| 株価 | 投資口価格 | 価格の見方は株式と同じ |
| 増資 | 公募増資(PO) | 物件を買うための資金調達として頻繁に行われる |
1口から買えるため、株式の単元株より少額から始められる銘柄もあります。ただし投資口価格が数十万円のものもあるので、銘柄ごとに確認が必要です。
なぜ分配金利回りが高いのか(導管性要件)
REITの利回りが高い理由は、運用がうまいからではありません。税制上の仕組みによるものです。
・配当可能利益の90%超を分配すること
・投資口が50人以上に所有されている、または機関投資家のみが所有していること
・他の法人の株式を50%以上保有しないこと
・同族会社に該当しないこと など
これらを満たすと、支払った分配金を損金に算入できるため、投資法人の段階では法人税がほぼかかりません。
↓ 法人税など
税引後 約70
↓ この中から配当
配当は利益の一部
↓ 法人税が実質なし
利益 ほぼ100
↓ 90%超を分配
分配金が大きくなる
この構造から、もう1つの重要な帰結が出ます。利益を内部に留保できないので、新しい物件を買うには「借入」か「公募増資」しか手段がありません。ここが後で効いてきます。
分配金の税金は株の配当と違う
ここは間違いが非常に多い部分です。正確に押さえてください。
| 項目 | 上場株式の配当金 | J-REITの分配金 |
|---|---|---|
| 税率 | 20.315% | 20.315%(同じ) |
| 配当控除 | 総合課税を選べば使える | 使えない |
| 申告分離課税 | 選べる | 選べる |
| 損益通算 | 上場株式等の譲渡損と通算できる | 同じく通算できる |
| NISA | 非課税 | 非課税(成長投資枠) |
配当控除は、法人税を払った後の利益から配られる配当について、二重課税を調整するための制度です。
J-REITは導管性要件を満たすことで投資法人の段階で法人税がほぼかかっていません。二重課税が起きていないため、配当控除の対象外とされています。
「総合課税を選べば配当控除が受けられる」という説明はJ-REITには当てはまりません。分配金は申告分離課税または申告不要で扱うのが基本です。
※ 税制は改正されることがあります。また個別の事情によって有利不利は変わります。実際の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
なお、分配金の一部が「利益超過分配金」として支払われることがあります。これは減価償却費などを原資とする実質的な資本の払い戻しにあたる部分で、課税関係が通常の分配金と異なります。取得価額の調整が必要になるため、証券会社から届く支払通知書で内訳を確認してください。
NISAで買えるか
買えます。J-REITは上場している投資証券なので、NISAの成長投資枠の対象です。
分配金を非課税で受け取るには、受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく必要があります。
郵便局で受け取る方式や銀行振込の方式のままだと、NISA口座で保有していても20.315%が源泉徴収されます。
証券会社の設定画面で確認してください。
つみたて投資枠では個別のJ-REITは対象外ですが、REITを組み入れた投資信託であれば対象になる商品があります。
J-REITの用途別6タイプ
どんな不動産を持っているかで、値動きの性格がまったく変わります。
| タイプ | 収益の性格 | 強い場面 / 弱い場面 |
|---|---|---|
| オフィス | 賃貸借期間が長く安定。空室率と賃料改定が業績を左右する | 景気拡大に強い/在宅勤務の普及・供給過剰に弱い |
| 住宅 | 最も安定。景気に左右されにくい | 不況に強い/賃料の伸びが小さく上値も限定的 |
| 商業施設 | 固定賃料型と売上歩合型がある | 消費が強い局面に強い/EC化・テナント退去に弱い |
| 物流施設 | 長期契約が多く安定。EC拡大が追い風 | 構造的な需要増/新規供給の集中に弱い |
| ホテル | 変動賃料型が多く、最も業績が振れる | インバウンド好調時に強い/需要ショックに極端に弱い |
| 総合型・複合型 | 複数の用途に分散 | 値動きが平準化される/特定用途の上昇には乗り遅れる |
「REIT」とひとくくりに考えないでください。ホテル特化型と住宅特化型では、同じ局面でまったく違う動きをします。
実際、2020年のコロナショックでは東証REIT指数が1か月あまりで半値近くまで下落しました。とくにホテル特化型は稼働率の急落で分配金が大きく減りました。一方、住宅系や物流系の下げは相対的に小さく済んでいます。
銘柄の見方(3つの指標)
分配金利回りだけで選ぶと、減配リスクの高い銘柄をつかみます。あわせて見るべき指標が3つあります。
投資口価格 ÷ 1口あたり純資産価値。1倍を下回っていれば、保有不動産の評価額より安く買えることになります。ただし割安には理由があることも多く、物件の質や借入条件を確認する必要があります。
多くのJ-REITが40〜50%前後を目安に運営しています。高いほど利回りは上げやすい一方、金利上昇と資産価格下落の両方に弱くなります。
多くのJ-REITには大手不動産会社・商社・鉄道会社などのスポンサーが付いています。優良物件の供給ルートと、資金繰りが厳しいときの支援がここで決まります。
あわせて平均残存賃貸借期間と借入の平均残存年数・固定比率も確認できると、収益の安定度が見えてきます。
※ 指標の水準は銘柄・時期によって異なります。最新の数値は各投資法人の決算説明資料および東京証券取引所の公表データでご確認ください。
金利が上がるとREITが弱い理由
REITの弱点を1つ挙げるならこれです。理由は3つ重なります。
| 経路 | 何が起きるか |
|---|---|
| ① 支払利息が増える | 借入の借り換え時に金利が上がる。利益が減り、分配金が減る |
| ② 相対的な魅力が下がる | 債券の利回りが上がると、REITの利回りの魅力が薄れて資金が流出する |
| ③ 不動産価格が下がりやすい | 物件の評価に使う利回り(キャップレート)が上昇し、NAVが下がる |
日銀の政策金利は2026年6月に1.0%程度へ引き上げられました。金利のある世界に戻った以上、この3経路は現実的なリスクとして見る必要があります。
・借入の固定金利比率が高いか(高いほど当面の影響は小さい)
・借入の平均残存年数が長いか(借り換えが先送りされる)
・LTVが低めに抑えられているか
・賃料を引き上げられる物件か(インフレ局面では賃料上昇がプラスに働く)
金利上昇は必ずしも一方的なマイナスではありません。インフレで賃料が上がる局面では、収益の増加が利息の増加を上回ることもあります。
金利と資産価格の関係そのものについては金利が上がるとなぜ株価は下がるのかで扱っています。
REITの5つのリスク
テナントが退去したり賃料が下がれば分配金は減ります。利回りは過去の実績や予想であって、約束ではありません。
前章のとおり、支払利息の増加・資金流出・資産価格の下落が同時に起こりえます。
利益を内部留保できないため、物件取得のたびに公募増資が行われます。1口あたりの分配金が薄まる可能性があります。取得物件の利回りが既存より低ければ、分配金は下がる方向に働きます。
保有物件が被災すれば、資産価値も賃料収入も毀損します。物件の地域分散と、地震保険や耐震性能の開示を確認してください。
投資法人が破綻した例、他の投資法人と合併した例はいずれも実際にあります。元本が保証された商品ではありません。
※ 本記事は制度の説明であり、特定の銘柄への投資を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
現物の不動産投資との違い
| 項目 | J-REIT | 現物不動産(区分マンションなど) |
|---|---|---|
| 必要資金 | 数万円〜(1口から) | 数百万円〜数千万円 |
| 売買のしやすさ | 取引時間中にいつでも売れる | 買い手を探す必要がある |
| 分散 | 1銘柄で数十〜数百物件に分散 | 1物件に集中 |
| 管理の手間 | 不要(運用会社が行う) | 入居者対応・修繕・原状回復が必要 |
| 価格の変動 | 毎日値動きし、市場全体の影響を受ける | 日々の値動きは見えない |
| レバレッジ | 投資法人の中で借入が行われている | 自分でローンを組む |
REITは「不動産の値動きを、株式のような売買のしやすさで持てる商品」です。その代わり、株式市場が急落する局面では不動産の実態と関係なく一緒に下げます。ここが現物との最大の違いです。
1銘柄に絞りたくない場合は、REIT指数に連動するETFや投資信託を使う方法もあります。
REITに関するよくある質問
まとめ
REITは、不動産の賃料収入を分配する上場商品です。利回りが高いのは運用の巧拙ではなく、利益をほぼ全額分配する税制上の仕組みによるものだと理解しておくことが出発点になります。
この記事のまとめ
・配当可能利益の90%超を分配する導管性要件が高利回りの理由
・J-REITの分配金に配当控除は使えない(株式の配当とは扱いが違う)
・NISA成長投資枠で買える。株式数比例配分方式の設定が必要
・用途別6タイプで値動きの性格がまったく違う
・見る指標はNAV倍率・LTV・スポンサーの信用力
・金利上昇は利息増・資金流出・資産価格下落の3経路で効く
・利益を留保できないため公募増資が繰り返される
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