
経費率(expense ratio、エクスペンスレシオ)とは、ETF や投資信託の運用・管理にかかる費用を、運用資産に対する年率で表したものです。VOO や VTI のような米国の大型インデックス ETF は年 0.03%、テーマ型やアクティブ運用の ETF は 0.5〜1% 程度が相場です。投資家が別途支払うのではなく、ETF の価格(基準価額)から毎日少しずつ差し引かれるため、目に見えない代わりに確実にリターンを削ります。この記事では、経費率の仕組み、0.03% と 0.5% で長期にどれだけ差がつくか、日本の投資信託の「信託報酬」との違い、経費率に含まれない隠れコスト、代表的な ETF の経費率一覧をまとめます。
- 経費率は年率で表示され、日割りで毎日 ETF の価格から差し引かれる。請求書は来ないが必ず払っている
- 100 万円を 30 年、年 7% で運用すると、経費率 0.03% と 0.5% の差は約 100 万円。長期ほど差が広がる
- 経費率に含まれないコスト=売買手数料・為替手数料・スプレッド・分配金への税金。米国 ETF を日本から買うときはこちらも大きい
経費率の仕組み:毎日、価格から引かれている
ETF の運用会社は、指数のライセンス料・保管費用・管理費用・運用会社の報酬をまかなうために、運用資産の一定割合を費用として受け取ります。これが経費率です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表示 | 年率(例:0.03%)。運用会社のサイトと目論見書に記載 |
| 引かれ方 | 365 日で割った額を毎日、ETF の純資産から差し引く。基準価額に反映される |
| 投資家の手続き | 不要。口座から引き落とされることはない |
| 100 万円・経費率 0.03% の年間費用 | 300 円 |
| 100 万円・経費率 0.5% の年間費用 | 5,000 円 |
経費率が引かれた後の値動きが、投資家の見ている ETF の価格です。たとえば S&P500 が 1 年で 10.00% 上がったとき、経費率 0.03% の ETF はおよそ 9.97%、0.5% の ETF は 9.5% の上昇になります。同じ指数に連動する ETF なら、経費率が低いほど指数との差(トラッキング差)が小さくなります。
長期で差がどれだけ広がるか:0.03% と 0.5% の比較
経費率は毎年かかるため、複利で差が広がります。100 万円を年 7%(経費率控除前)で運用した場合の試算です。
| 年数 | 経費率 0.03% | 経費率 0.2% | 経費率 0.5% | 経費率 1.0% |
|---|---|---|---|---|
| 10 年 | 約 196 万円 | 約 193 万円 | 約 188 万円 | 約 179 万円 |
| 20 年 | 約 384 万円 | 約 372 万円 | 約 352 万円 | 約 321 万円 |
| 30 年 | 約 753 万円 | 約 718 万円 | 約 661 万円 | 約 575 万円 |
30 年では、経費率 0.03% と 0.5% の差が約 90 万円、1% との差は約 180 万円になります。元本 100 万円に対してこの差なので、積み立てで元本が増えればその分だけ差も大きくなります。
ただし、経費率だけで選ぶのは早計です。同じ経費率でも指数が違えばリターンは大きく違いますし、テーマ型 ETF は経費率が高くても「その分野にまとめて投資できる」価値があります。「同じ指数に連動する ETF の中では経費率が低いものを選ぶ」のが正しい使い方です。
日本の投資信託の「信託報酬」との違いと、代表的な ETF の経費率
日本の投資信託の「信託報酬」は、米国 ETF の経費率とほぼ同じ概念です。ただし日本の投資信託には信託報酬のほかに「その他費用」(監査費用・売買委託手数料など)があり、実質の総経費率は目論見書の「総経費率」で確認します。米国 ETF の経費率は原則としてそれらを含んだ数字です。
| ETF | 連動する指数 | 経費率 |
|---|---|---|
| VOO | S&P500 | 0.03% |
| VTI | 米国株全体 | 0.03% |
| SPY | S&P500 | 0.09% |
| QQQ / QQQM | ナスダック 100 | 0.20% / 0.15% |
| VYM / HDV / SPYD | 高配当株 | 0.06% / 0.08% / 0.07% |
| VIG / SCHD | 増配株 | 0.05% / 0.06% |
| NOBL | 配当貴族 | 0.35% |
| SMH / SOXX | 半導体 | 0.35% / 0.35% |
| ARKK | アクティブ(破壊的イノベーション) | 0.75% |
| SOXL / TQQQ | 3 倍レバレッジ | 0.75% / 0.84% |
同じ S&P500 でも SPY(0.09%)と VOO(0.03%)で 3 倍の差があります。SPY は世界一の出来高で短期売買向き、VOO は長期保有向きと使い分けられています。国内の S&P500 投資信託(eMAXIS Slim など)は信託報酬 0.1% 弱で、VOO との差は小さくなっています。
経費率に含まれない「隠れコスト」:日本から米国 ETF を買うときの本当のコスト
経費率は運用会社に払う費用だけです。日本の証券会社で米国 ETF を買うときは、次のコストが別にかかります。
| コスト | 目安 | 減らす方法 |
|---|---|---|
| 売買手数料 | 約定代金の 0.495%(上限 22 ドル)。主要 ETF は買付無料の会社が多い | 買付手数料無料の ETF・証券会社を選ぶ |
| 為替手数料 | 1 ドルあたり 0〜25 銭(片道)。100 万円で 0〜1,600 円 | 為替手数料の安い会社、外貨決済でまとめて両替 |
| スプレッド | 売り値と買い値の差。出来高の多い ETF ほど小さい | VOO・SPY・QQQ など大型 ETF を選ぶ |
| 分配金への税金 | 米国 10% + 日本 20.315% | NISA、外国税額控除、分配金の少ない ETF |
| トラッキング差 | 指数とのずれ。経費率+運用の巧拙 | 運用会社のサイトで指数との差を確認 |
少額を頻繁に売買すると、経費率 0.03% の ETF でも為替とスプレッドで年 0.5% 以上のコストになることがあります。長期保有なら経費率が効き、短期売買ならスプレッドと為替が効く、と覚えてください。証券会社ごとの為替・手数料の違いは 証券会社 9 社の比較、実額の試算はコスト&配当手取りシミュレーターでできます。VOO・VTI・QQQ の使い分けは 米国 ETF の解説 をご覧ください。
経費率に関するよくある質問
経費率は途中で変わりますか?
経費率が 0.03% なら実質無料と考えていいですか?
経費率はどこで確認できますか?
レバレッジ ETF の経費率が高いのはなぜですか?
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
各 ETF の経費率は各運用会社(バンガード・ブラックロック・ステートストリート・インベスコ・プロシェアーズ・ディレクシオン・アーク)の公表値(2026 年 9 月時点)、長期の試算は年率 7% の複利計算による当サイトの概算です。証券会社の手数料は各社公式サイトにもとづきます。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-18。

