日証金とは、日本証券金融株式会社の略称で、現在は日本で唯一の証券金融会社です。証券会社に対して、制度信用取引に必要な資金と株式を貸し出しています。
個人投資家が日証金と直接取引することはありません。それでも逆日歩・貸株注意喚起・信用売りの停止は、すべてこの会社の判断で決まります。
この記事では、日証金の数字を個人投資家がどう読めばいいのかまで解説します。
この記事でわかること
・なぜ1社しかないのか
・逆日歩が決まるまでの流れ
・信用売りが止められるまでの3段階
・個人投資家が見るべき数字
目次
日証金とは
日証金(読み方:にっしょうきん)とは、日本証券金融株式会社のことです。証券会社に対して、信用取引の決済に必要な資金や株式を貸し付ける会社です。
投資家は証券会社から借り、証券会社は足りない分を日証金から借りる
個人投資家が信用取引をするとき、相手は証券会社です。その証券会社が手当てしきれない資金や株式を、後ろで用意しているのが日証金という構図になります。
この貸付けは金融商品取引法にもとづき、内閣総理大臣の免許を受けた証券金融会社だけが行えます。誰でもできる業務ではありません。
なぜ日本に1社しかないのか
かつては地域ごとに証券金融会社が存在していました。1955年の証券取引法改正を機に統合が進み、日証金・大阪証券金融・中部証券金融の3社に集約されます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 1927年 | 日本証券金融の前身が設立される |
| 1955年頃 | 証券金融会社が3社に集約される |
| 2013年7月 | 大阪証券金融を吸収合併 |
| 2017年 | 中部証券金融の業務を承継し、1社体制に |
この結果、日本の制度信用取引は、実質的に日証金1社が支えている状態になりました。
「どの証券会社で信用売りをしても、逆日歩の料率が同じ」なのはこのためです。株を調達しているのが同じ会社だからです。
日証金が行う「貸借取引」とは
証券会社への貸付けを貸借取引といいます。貸すものは2種類です。
| 名称 | 貸すもの | 何のために必要か |
|---|---|---|
| 融資 | 資金 | 投資家の信用買いの代金を払うため |
| 貸株 | 株式 | 投資家の信用売りで渡す株を用意するため |
証券会社は日証金に貸借担保金を差し入れたうえで借ります。個人が委託保証金を差し入れるのと同じ構造が、証券会社と日証金の間にもあるということです。
一般信用取引の決済に貸借取引は使えません。証券会社が自前で株を用意する必要があります。つなぎ売りで一般信用の在庫がすぐ無くなるのはこのためです。
証券会社は「足りない分だけ」借りる
ここが誤解されやすい点です。証券会社は投資家の注文をそのまま日証金へ流しているわけではありません。
② それでも足りない分を自社で調達できるか検討する
③ どうしても足りない分だけを日証金へ申し込む
つまり日証金が公表する残高は、市場全体の信用残高ではなく「証券会社が手当てしきれなかった分の合計」です。
取引所が公表する信用倍率と貸借倍率の数字が食い違うのは、そもそも集計している範囲が違うからです。
残高は1日に2回公表される
日証金は同じ営業日の残高を、速報と確報の2回に分けて公表します。この違いを知らないと数字を読み違えます。
18:30過ぎ → 速報を公表
──── 翌営業日 ────
8:30〜10:00 翌朝訂正の受付
11時頃 → 確報を公表
翌朝訂正とは、貸株が超過している銘柄について、証券会社が申込みを追加したり取り消したりできる時間のことです。ここで超過が解消されると、その日の逆日歩は発生しません。この状態を「満額」といいます。
| 速報 | 確報 | |
|---|---|---|
| 公表の時刻 | 当日18:30過ぎ | 翌営業日11時頃 |
| 翌朝訂正 | 反映されていない | 反映されている |
| 逆日歩 | まだわからない | ここで確定する |
速報で大きな貸株超過が出ていても、翌朝の訂正で消えることがあります。逆日歩を警戒して慌てて建玉を閉じる前に、確報を確認してください。
逆日歩が決まるまで
貸株が超過したままだと、日証金は不足分の株を市場から調達しなければなりません。そのときに行われるのが品貸入札です。
逆日歩は売り方にとって、日数分だけ積み上がるコストです。株を借りにくい銘柄ほど料率は高くなります。
また権利確定日をまたぐ場合は最高料率が引き上げられ、権利付最終売買日には通常の4倍まで跳ね上がります。詳しくは逆日歩で解説しています。
信用売りが止まるまでの3段階
株の調達が難しくなると、日証金は段階的に手を打ちます。個人投資家に最も影響が大きいのがこの部分です。
| 段階 | 措置 | 投資家への影響 |
|---|---|---|
| ① | 貸株注意喚起 | まだ売れる。ただし規制の予告 |
| ② | 申込みの制限 | 新規の信用売りがしにくくなる |
| ③ | 申込みの停止 | 新規の制度信用売りができなくなる |
①の注意喚起は、残高基準と特性基準にもとづいて行われます。買い集めやTOBで流動性が下がりそうな銘柄、株式分割の基準日を控えた銘柄なども対象になります。
状況によっては注意喚起を経ずに制限措置が実施される場合があります。「まだ注意喚起が出ていないから大丈夫」とは考えないでください。
なお制限措置は、その銘柄が上場している全ての市場で実施されます。
すでに持っている建玉が強制的に決済されるわけではありませんが、新規で売れなくなると買い戻しだけが残り、踏み上げにつながることがあります。
詳しい基準は貸株注意喚起で解説しています。
貸株超過が起きやすい銘柄
逆日歩や規制は、どの銘柄でも同じ確率で起きるわけではありません。株を借りにくい銘柄に集中します。
| 特徴 | 株が足りなくなる理由 |
|---|---|
| 株価が低い | 少ない資金で大量に売れるため、売りが膨らみやすい |
| 浮動株が少ない | 市場に出回っている株そのものが少ない |
| 株主優待がある | 権利確定日の前につなぎ売りが集中する |
| 急騰した直後 | 高値警戒の売りが一気に増える |
| TOBや買い集めがある | 買い手が株を抱え込み、流動性が下がる |
特に「株価が低い」「優待がある」「浮動株が少ない」が重なった銘柄は、権利確定月に高額な逆日歩が発生しやすくなります。株主優待目的のつなぎ売りをするときは、事前に貸株残高を確認してください。
個人投資家が日証金の数字をどう使うか
| 見る数字 | わかること |
|---|---|
| 融資残高・貸株残高 | 買いと売りのどちらが多いか |
| 貸借倍率 | 1倍未満なら貸株超過。逆日歩の可能性 |
| 前日比 | 需給が動いた方向。急変は要注意 |
| 逆日歩 | 売り方が負担しているコストの大きさ |
| 制限措置のお知らせ | 新規の売りが止まる可能性 |
最大の利点は毎営業日更新されることです。取引所の信用残高は週に1回しか出ませんが、日証金の数字なら昨日の需給を今日知ることができます。
日証金の数字を見るときの4つの注意点
毎日更新される便利なデータですが、そのまま信じると判断を誤ります。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| ① 速報は確定値ではない | 翌朝訂正で覆ることがある。逆日歩の判断は確報を待つ |
| ② 全体ではなく一部 | 証券会社が相殺した後の残り。一般信用は含まれない |
| ③ 売りの動機がわからない | 下落狙いの売りと、つなぎ売りが同じ数字に混ざっている |
| ④ 需給は業績に勝てない | 決算や事業環境のほうが株価への影響は大きい |
③はとくに間違えやすい部分です。貸株残高が急に増えたからといって、市場が下落を予想しているとは限りません。権利確定日が近いだけかもしれません。
※ 本記事は制度の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
日証金は上場企業でもある
意外に知られていませんが、日本証券金融は東証プライムに上場している企業(証券コード8511)です。上場は1950年4月と古く、証券担保ローンや信託業も手がけています。
日証金に関するよくある質問
まとめ
日証金は「制度信用取引の裏側を1社で支えている会社」です。逆日歩も、信用売りの停止も、すべてここから発表されます。
この記事のまとめ
・証券会社に資金(融資)と株式(貸株)を貸し付ける
・対象は制度信用取引だけ。一般信用は対象外
・残高は証券会社が手当てしきれなかった分の合計
・速報と確報の2回公表され、確報で逆日歩が確定する
・翌朝訂正で超過が解消されれば逆日歩は出ない(満額)
・注意喚起 → 制限 → 停止の3段階で規制される
・毎営業日更新されるため、週1回の信用残高より速い
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