ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場している投資信託です。株式と同じように、取引時間中ならいつでも売買できます。

普通の投資信託が1日1回の基準価額でしか売買できないのに対し、ETFは値動きを見ながら成行や指値で注文できるのが最大の違いです。

東証に上場するETFは2026年8月時点で444本あり、この5年で倍近くに増えました。さらに2026年1月からは、長く最大の買い手だった日銀が売り手に回っています。

この記事でわかること

・ETFと投資信託、ETFと株式の具体的な違い
・ETF最大の弱点である「分配金の再投資」
・市場価格と基準価額がずれる理由
・日銀のETF売却が2026年に始まった意味
・アクティブ運用型ETFという新しい選択肢
・買う前に必ず見るべき3つの数字

ETF(上場投資信託)とは

ETFは「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では上場投資信託といいます。TOPIX日経平均株価などの株価指数に連動することを目指す商品が中心です。

ETFの正体
中身  … 投資信託(何百もの銘柄の詰め合わせ)
買い方 … 株式(証券取引所で売買)
  ↓
「中身は投信、売り買いは株」の二重構造

この二重構造が、ETFのメリットもデメリットもすべて説明します。分散が効いているのは投信だから。売買の自由度が高いのは株だから。そして、あとで触れる弱点も、株の性質から来ています。

ETFと投資信託の違い

同じ「投資信託」でも、上場しているかどうかで実務は大きく変わります。

項目 ETF 投資信託(非上場)
売買のタイミング 取引時間中いつでも 1日1回(基準価額)
価格 市場価格(板で決まる) 基準価額(1日1本)
注文方法 成行・指値・逆指値 金額または口数の指定のみ
最低購入額 1口〜(銘柄により数千円〜) 100円から買える商品が多い
信託報酬 総じて低め 低コスト投信なら同水準
分配金の自動再投資 できない できる
自動積立 対応が限られる ほぼ全社が対応

かつては「ETFのほうが信託報酬が安い」が定番の説明でした。しかし低コストのインデックス投信が普及したいま、コスト差はほとんどありません。選ぶ基準は下の2行、つまり再投資と積立ができるかどうかに移っています。

ETF最大の弱点は「分配金が自動で再投資されない」こと

長期の資産形成でETFを選ぶとき、ここが最も効いてきます。

ETFは法律上、受け取った配当などを内部に貯めておくことができません。決算のたびに現金として分配する必要があります。そのため分配金は必ず現金で口座に振り込まれ、複利で回すには自分で買い直すしかありません。

分配金が出たあとの流れ
【投資信託】 分配金 → 自動で買い増し(または分配せず内部で再投資)
 … 手間ゼロ。1円単位で全額が働き続ける

【ETF】 分配金 → 現金で入金 → 自分で買い注文
 … 1口の値段に届かないと買えず、現金のまま眠る

1口が数千円のETFでは、分配金が数百円だと次の分配まで再投資できません。この「待ち時間」が積み重なると、長期のリターンで無視できない差になります。

毎月コツコツ積み立てて放置したい人は投資信託、値動きを見ながら自分で判断したい人はETF。これが実務上いちばん納得しやすい分け方です。

分配金そのものの仕組みは分配金とはで詳しく解説しています。

ETFと株式の違い

売買方法は同じでも、中身がまったく違います。

項目 ETF 個別株
1銘柄あたりの分散 数十〜数千社 1社のみ
倒産リスク 1社が倒産しても指数への影響のみ 価値がゼロになりうる
株主優待 ない 銘柄によりある
議決権 ない(運用会社が行使) ある
保有コスト 信託報酬がかかる かからない
売買単位 1口・10口など銘柄ごと 原則100株(単元株

ETFには優待も議決権もなく、保有しているだけで信託報酬が引かれます。そのコストを払ってでも分散を買う商品だと考えると位置づけがはっきりします。

市場価格と基準価額がずれる理由

ETFには価格が2つあります。この違いを知らずに買うと、割高な値段をつかむことがあります。

価格 意味
市場価格 取引所ので実際についている値段。需給で動く
基準価額 中身の資産を時価評価した「本来の価値」
かい離 この2つの差。プラスなら割高、マイナスなら割安

かい離が広がりやすいのは、次のような場面です。

かい離が広がりやすい場面

出来高が極端に少ない銘柄
・寄り付き直後と大引け直前
・海外資産に連動するETF(現地市場が閉まっている時間帯)
・相場が急変した直後
・話題になって買いが殺到したとき

対策は単純で、成行を避けて指値で注文することです。取引所は各ETFの推定価値(インディカティブNAV)をリアルタイムで公表しているので、それを見て指値の水準を決めます。

東証のETFは444本まで増えた

日本のETF市場は、この数年で急速に厚みを増しました。

新規上場 上場廃止 上場本数
2019年 14 21 216
2022年 33 3 280
2024年 39 6 342
2025年 52 3 391
2026年 54 1 444

出典:日本取引所グループ「銘柄数(ETF)」(2026年8月3日更新)。内訳は内国ETF 421本、外国ETF(直接上場)23本。

注目すべきは2019年です。新規14本に対して廃止21本と、この年は初めて本数が減りました。売買が集まらないETFは繰上償還されて消えるということです。

だからこそ、買う前に純資産総額と出来高を確認する必要があります。本数が増えたことは、選択肢が増えたと同時に「選び間違える余地も増えた」ことを意味します。

アクティブ運用型ETFという新しい選択肢

ETFは長らく「指数に連動する商品」だけでした。しかし2023年6月30日に東証がアクティブ運用型ETFの上場制度を導入し、同年9月7日に最初の6本が上場しています。

時点 本数 純資産総額
2023年9月(上場開始) 6本
2026年4月末 13本 800億円超
2026年7月末 34本 1,500億円超

3か月で本数が2.6倍になっています。指数に負けない運用を目指す商品を、株と同じ手軽さで買えるのが特徴ですが、歴史が浅く運用実績の判断材料が少ない点には注意が必要です。信託報酬もインデックス型より高めに設定されます。

日銀のETF売却が2026年に始まった

日本のETF市場を語るうえで避けて通れないのが日本銀行です。金融緩和の一環として買い続けた結果、日銀は世界でも例のない規模のETF保有者になりました。

その日銀が、2026年1月19日から保有ETFの売却を開始しました。

項目 内容
売却開始 2026年1月19日
保有額(簿価) 約37兆1,862億円
年間の売却ペース 簿価ベースで年3,300億円
売却完了までの想定 約112年
2026年1月の売却額 53億円
保有残高(時価・2026年6月時点) 110兆円超(簿価の約3倍)

出典:日本銀行の公表および各種報道(2026年)

ここで大事なのは「112年」という数字の意味です。売却を発表すると相場が崩れるのではないかと心配されましたが、実際のペースは月あたり数十億円規模で、1日の東証の売買代金と比べれば誤差の範囲にとどまります。市場への影響を最小限にする設計になっているということです。

一方で、株高によって時価の残高はむしろ膨らんでおり、東証プライム市場の時価総額に対する比率は8%を超えたとみられています。需給面での存在感は当面残り続けます。

ETFにかかるコストと税金

ETFのコストは3層あります。信託報酬だけを見て判断すると足元をすくわれます。

コスト いつかかるか 見落としやすさ
売買手数料 買うとき・売るとき 低(国内株の手数料が無料の証券会社も多い)
信託報酬 保有している間ずっと 中(基準価額から自動で引かれる)
スプレッドとかい離 売買のたび 高(明細に出てこない)

3つ目が曲者です。売買が薄いETFでは、買値と売値の差だけで信託報酬の何年分にもなることがあります。頻繁に売買するなら、なおさら効いてきます。

税金については、売却益と分配金のどちらも約20%の課税対象です。ただし外国資産に投資するETFには二重課税調整制度があり、2020年1月以降に支払われる分配金から自動的に調整されています。

二重課税調整を受けるための条件

・上場ETF・REIT・JDRの場合、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」にしていること
・調整の対象は所得税のみ(住民税5%は対象外)
・手続きは不要で、条件を満たしていれば自動的に適用される

受取方法が「株式数比例配分方式」でないと調整を受けられません。証券会社の口座設定で確認しておいてください。

ETFを買う前に見るべき3つの数字

444本のなかから選ぶための、実務的なチェックポイントです。

見るもの なぜ見るのか
① 純資産総額 小さすぎると繰上償還で強制終了になりうる
② 1日の出来高 薄いと売りたいときに売れず、かい離も広がる
③ 信託報酬 同じ指数に連動する商品でも差がある。長期ほど効く

順番が重要です。信託報酬が最安でも、純資産が小さくて出来高がなければ意味がありません。①②を満たした候補のなかから③で選ぶ、という順で見てください。

レバレッジ型・インバース型ETFの注意点

指数の2倍に動くレバレッジ型、逆方向に動くインバース型も上場しています。これらは長期保有に向きません。

指数が元に戻ってもマイナスになる例(2倍レバレッジ)
1日目 指数 −10% → レバ2倍は −20%(100 → 80)
2日目 指数 +11.1%(元の水準に戻る) → レバ2倍は +22.2%(80 → 97.8)
  ↓
指数は元通りなのに、レバレッジ型は −2.2%

これは毎日2倍に調整し直すという設計から必然的に生じるもので、運用が下手だから起きるのではありません。上下動が大きいほど目減りします。

ボラティリティが高い局面ほど不利になるため、こうした商品は短期の値幅取りに用途を限定するのが基本です。

NISAでETFは買えるのか

買えます。ただし枠によって扱いが違います。

ETFの扱い
つみたて投資枠 金融庁の基準を満たすごく一部のETFのみ
成長投資枠 幅広く対象。ただしレバレッジ型は除外

NISA口座で分配金を非課税で受け取るには、ここでも受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく必要があります。設定していないと、NISA口座なのに課税されます。制度の全体像はNISAとはを参照してください。

ETFに関するよくある質問

ETFと投資信託はどちらを選ぶべきですか?
毎月自動で積み立てて放置したいなら投資信託が向きます。分配金が自動で再投資され、100円から積立できるためです。値動きを見ながら自分のタイミングで売買したい、指値を使いたいという場合はETFが向きます。信託報酬の差はかつてほど大きくありません。
ETFの分配金は再投資できないのですか?
自動では再投資できません。ETFは制度上、受け取った配当を内部に貯めておけないため、分配金は必ず現金で支払われます。複利で回すには自分で買い注文を出す必要があり、1口の値段に届かない場合は現金のまま残ります。
ETFはいくらから買えますか?
銘柄によって異なります。1口が数千円のものもあれば、売買単位が10口や100口に設定されているものもあります。投資信託のように100円から始めることはできないため、少額で積み立てたい場合は投資信託のほうが適しています。
かい離とは何ですか?
取引所でついている市場価格と、中身の資産価値である基準価額との差のことです。出来高が少ない銘柄や、寄り付き直後、相場の急変時に広がりやすくなります。成行注文を避けて指値で発注し、取引所が公表する推定価値を参考にすることで、割高な価格をつかむリスクを減らせます。
日銀のETF売却で株価は下がりますか?
売却ペースは簿価ベースで年3,300億円、完了まで約112年という設計で、1日あたりの市場全体の売買代金と比べればごくわずかです。2026年1月の売却額も53億円にとどまりました。一方で日銀の保有残高は時価で110兆円を超えており、需給面での存在感は長期にわたり残ります。
ETFが上場廃止になることはありますか?
あります。純資産総額が一定水準を下回ると繰上償還され、上場廃止となります。実際に2019年は新規上場14本に対して上場廃止が21本あり、本数が純減しました。購入前に純資産総額と出来高を確認することが重要です。
レバレッジ型ETFを長期保有してはいけないのはなぜですか?
毎日レバレッジ比率を調整し直す仕組みのため、上下動を繰り返すと元の指数が同じ水準に戻っても価格が目減りするからです。たとえば指数が10%下落して翌日11.1%上昇し元の水準に戻った場合でも、2倍レバレッジ型は約2.2%のマイナスになります。値動きが荒い局面ほど不利になります。
アクティブ運用型ETFとは何ですか?
指数への連動を目指さず、運用者の判断で銘柄を選ぶETFです。東証は2023年6月に上場制度を導入し、同年9月に6本が上場しました。2026年7月末時点で34本、純資産総額は1,500億円を超えています。ただし運用実績の蓄積が短く、信託報酬もインデックス型より高めである点に注意が必要です。

まとめ

ETFは「中身は投資信託、売買は株式」という二重構造の商品です。この構造がメリットと弱点の両方を生んでいます。

この記事のまとめ

・ETFは取引所に上場した投資信託。指値も成行も使える
・最大の弱点は分配金を自動で再投資できないこと
・市場価格と基準価額のかい離に注意し、指値で発注する
・東証のETFは2026年8月時点で444本(内国421・外国23)
・2019年は新規14本に対し廃止21本。売れないETFは消える
・アクティブ運用型は2026年7月末で34本・1,500億円超
・日銀は2026年1月19日から売却を開始(年3,300億円・約112年計画)
・選ぶ順番は「純資産総額 → 出来高 → 信託報酬」
・レバレッジ型は毎日調整のため長期保有に向かない

※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の商品や投資判断を推奨するものではありません。最新の商品内容は各運用会社の目論見書をご確認ください。

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