レバナスとは?2000年起点だと26年後も指数に負ける実測

レバナスとは、米国のナスダック100指数に対して約2倍のレバレッジをかけた投資信託の通称です。

「レバレッジ」と「ナスダック」を合わせた呼び名で、指数が1%上がればおよそ2%上がり、1%下がればおよそ2%下がるように設計されています。

ここで重要なのは、この「2倍」が1日単位の話であり、長期では2倍にならないという点です。ナスダック100の日次2倍をシミュレーションすると、2000年3月を起点にした場合、26年後の時点でも指数そのもの(+531.8%)に対してレバレッジ側は+354.1%と負けていました。

この記事でわかること

・レバナスの仕組みと「日次2倍」の意味
実測:起点を変えると成績がどう変わるか(5つの起点)
実測:最大下落98.6%と、そこから戻るのに必要な上昇率
・レンジ相場で価値が減るボラティリティ・ドラッグの仕組み
・コストの構造と、NISAで買えるかどうか
・向いている使い方・向いていない使い方

レバナスとは

項目 内容
対象の指数 ナスダック100(金融を除く時価総額上位100社)
倍率 1日の値動きに対して約2倍
仕組み 先物などを使って実質的な投資額を2倍にする
形態 投資信託(証券会社や銀行で購入)
為替 為替ヘッジの有無は商品によって異なる
NISA つみたて投資枠の対象外(成長投資枠でも対象外の場合が多い)

最終行は誤解されやすい点です。レバレッジ型の投資信託は、長期の資産形成に適さないとされ、制度上も対象から外されているものがほとんどです。この扱い自体が、商品の性格を物語っています。

「日次2倍」が意味すること

レバナスを理解するうえで最も重要なのが、2倍になるのは1日の値動きに対してだけという点です。

具体例|指数が上がって下がって元に戻った場合

指数:100 → 110(+10%)→ 100.0(−9.09%)… 元に戻る
2倍:100 → 120(+20%)→ 98.18(−18.18%)… −1.82%のマイナス

指数が元の水準に戻っても、2倍の商品は元に戻りません。2日間の値動きを合成すると、2倍にならないどころか損失が残ります。

この現象はボラティリティ・ドラッグ(減価)と呼ばれ、値動きが大きいほど、そして往復する回数が多いほど大きくなります。

±10%を10往復した場合
指数:100 → 90.4
2倍:100 → 66.5
※ +10%と−10%を交互に10回繰り返した計算

指数が9.6%減るあいだに、2倍の商品は33.5%減っています。方向感のないレンジ相場が、レバレッジ商品にとって最も不利な環境ということになります。

【実測】起点を変えると成績はどう変わるか

ナスダック100の日次データを使い、2倍のレバレッジをかけた場合の成績をシミュレーションしました。

検証の条件

・対象:ナスダック100指数の日足終値(1985年10月〜2026年8月・10,306営業日)
・毎日の騰落率を2倍にして複利で積み上げる
信託報酬として年0.99%を日割りで控除(実在の商品の水準に合わせた)
・為替の影響は含めていない(円換算していない)
・実際の商品には先物の調達コストなども生じるため、実測はこれより不利になりやすい
起点 指数そのもの 2倍レバレッジ 倍率
1986年1月 +22,305.7% +216,139.8% 9.69倍
2000年3月(ITバブル天井) +531.8% +354.1% 0.67倍
2010年1月 +1,493.4% +10,287.8% 6.89倍
2015年1月 +599.7% +2,355.4% 3.93倍
2021年11月(直近高値) +78.9% +135.0% 1.71倍

※ すべて2026年8月27日時点までの累計。Pacific Stockがナスダック100の日足終値から独自に集計

この表からわかること

倍率は起点によって0.67倍から9.69倍まで大きく変わる。どの起点でも2倍にはならない
2000年3月を起点にすると、26年経ってもレバレッジ側が指数に負けている
・上昇が続いた2010年以降の起点では、レバレッジが大きく上回る
・つまり成績を決めるのは商品の設計ではなく、いつ始めたか

2000年3月の行が、この商品の性格を最もよく表しています。ITバブルの天井で買った場合、26年が経過してもレバレッジをかけた側が指数そのものに負けたままです。

一方で2010年以降のように上昇が続いた期間では、レバレッジは6.89倍という大きな成果を上げています。同じ商品が、起点次第で正反対の結果を生みます。

【実測】最大下落98.6%と、そこから戻るのに必要な上昇率

レバレッジ商品で最も注意すべきなのが、下落の深さです。

項目 ナスダック100 2倍レバレッジ
最大の下落率 −82.9% −98.6%
その期間 2000年3月27日 → 2002年10月7日(約2年半
100万円が 17万1,000円に 1万4,000円に
元に戻るのに必要な上昇率 +485% +7,043%

※ Pacific Stockが独自に集計。信託報酬年0.99%を控除した試算

100万円が1万4,000円になり、元に戻すには約71倍の上昇が必要という計算になります。これは事実上、回復不能な水準です。

下落率と、そこから戻るのに必要な上昇率の関係を並べると、非対称性がはっきりします。

下落率 元に戻るのに必要な上昇率
−10% +11%
−30% +43%
−50% +100%
−63%(2倍商品の近年の最大下落) +170%
−80% +400%
−98.6% +7,043%

下落が深くなるほど、必要な上昇率は加速度的に増えます。レバレッジが危険なのは「損失が2倍になる」ことより、「回復の難易度が2倍を超えて跳ね上がる」ことにあります。

なお2010年以降に限れば、2倍商品の最大下落は63.3%にとどまっています。それでも元に戻すには170%の上昇が必要で、指数側の35.6%(必要な回復は55%)とは大きな差があります。

コストの構造

コスト 内容
信託報酬 年0.9%前後の商品が多い。指数連動型(年0.1%前後)の10倍近い
先物の調達コスト レバレッジをかけるための資金コスト。金利が高いほど重くなる
ボラティリティ・ドラッグ 目に見えないが、値動きが荒いほど確実に効く
為替 ヘッジなしなら円高で目減り、ヘッジありならヘッジコストがかかる

見落とされやすいのが2行目です。レバレッジは借金と同じ構造のため、金利が上がるとコストが増えます。利上げ局面では、指数が同じように動いてもレバレッジ商品の成績は相対的に悪化します。

レバレッジ型ETFとの違い

似た性格の商品に、レバレッジ型のETFがあります。中身の考え方は同じですが、扱いには違いがあります。

項目 レバレッジ型の投資信託 レバレッジ型ETF
売買の方法 1日1回の基準価額で取引 取引時間中にいつでも売買できる
積立 設定しやすい 対応していない場合がある
価格の決まり方 純資産から算出される 市場の需給で決まる(がある)
共通する性質 どちらも日次で倍率をかけ直すため、ボラティリティ・ドラッグが生じる

最終行が重要です。形態が違っても、日次で倍率を維持する仕組みである限り、長期の減価は同じように起こります。ETFだから安全ということはありません。

なお日経平均に連動するレバレッジ型ETFも国内に上場しており、同じ性質を持っています。「どの指数か」より「日次で倍率をかけ直しているか」が、この種の商品を見分ける基準になります。

向いている使い方・向いていない使い方

比較的向いている
短期の方向性に賭ける場合
・資産全体のごく一部に限定する場合
・下落しても生活に影響しない金額の場合
向いていない
老後資金など、失えない資金
・値動きを見ずに放置する運用
・レンジ相場が続くと予想している局面

実測が示したのは、この商品の成績を決めるのが「いつ始めたか」だという事実でした。上昇が続く期間に当たれば大きな成果になり、天井で始めれば26年経っても指数に勝てません。

運・鈍・根で扱っているように、起点による差はレバレッジのない指数投資でも生じます。レバレッジはその差をさらに拡大させる装置だと理解しておく必要があります。

レバナスに関するよくある質問

長期で持てば2倍になりますか
なりません。2倍になるのは1日の値動きに対してであり、長期では倍率が変わります。実測では起点によって0.67倍から9.69倍までばらつきました。2000年3月を起点にした場合、26年後の時点でも指数そのものに負けています。
積立なら安全ではないですか
積立は購入時期を分散させるため、起点による差は小さくなります。ただしボラティリティ・ドラッグは保有している限り効き続けます。また積立中に大きな下落が来れば、その時点の評価額は指数の2倍以上に落ち込みます。ドルコスト平均法はリスクをなくす手段ではありません。
なぜNISAの対象外なのですか
レバレッジ型の投資信託は、長期・積立・分散による資産形成という制度の趣旨に合わないとされているためです。値動きの大きさとボラティリティ・ドラッグにより、長期保有に適さないと判断されています。この扱い自体が、商品の性格を示す材料になります。
最大でどれくらい下がる可能性がありますか
シミュレーションでは、2000年3月から2002年10月にかけて98.6%の下落が生じました。100万円が1万4,000円になる計算です。元の水準に戻るには約7,043%(約71倍)の上昇が必要で、事実上回復できません。2010年以降に限っても最大63.3%の下落がありました。
レンジ相場だとなぜ不利なのですか
上げ下げを繰り返すと、2倍の商品は元の水準に戻れないためです。指数が+10%→−9.09%で元に戻る場合、2倍の商品は98.18となり1.82%のマイナスが残ります。±10%を10往復すると、指数が90.4になるのに対し2倍は66.5まで減ります。方向感のない相場が最も不利な環境になります。
金利が上がるとレバナスに影響しますか
します。レバレッジをかけるための資金調達コストが増えるためです。さらにナスダックは成長企業の比率が高く、金利上昇そのものにも弱い傾向があります。金利上昇はコストと株価の両面から不利に働きます。
3倍の商品もありますか
海外にはより高い倍率の商品も存在します。ただし倍率が上がるほどボラティリティ・ドラッグは大きくなり、下落時の回復はさらに困難になります。2倍で98.6%の下落が生じた局面では、より高い倍率であれば実質的にゼロに近づきます。
結局、買ってよい商品なのですか
投資判断は個々の状況によりますが、実測から言えることは限られます。成績を決めるのは商品の設計ではなく、いつ始めたかという運の要素が大きいという点です。そのうえで、下落局面での回復の難しさは指数投資とは比較になりません。少なくとも失えない資金を充てる商品ではないといえます。

まとめ

この記事のポイント

・レバナスはナスダック100に1日単位で約2倍のレバレッジをかけた投資信託
実測:起点によって倍率は0.67倍〜9.69倍。2倍にはならない
2000年3月起点では26年後も指数に負けている(+354.1%対+531.8%)
最大下落は98.6%。元に戻るには+7,043%が必要
・レンジ相場ではボラティリティ・ドラッグで確実に目減りする
・信託報酬は指数連動型の10倍近く。金利上昇でコストも増える
・NISAの対象外とされているのは、長期保有に適さないため

レバナスをめぐる議論が噛み合わないのは、「上がり続ける相場では極めて強く、それ以外では極めて弱い」という両極端な性格を持っているためです。どちらの主張も、特定の期間を切り取れば正しくなります。

実測が示したのは、その両極端のどちらに当たるかを事前には選べないという事実でした。判断するなら、上昇したときの倍率より、下落したときに戻ってこられるかどうかを基準にするほうが安全側に立てます。

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