GAAP と非GAAP(Non-GAAP)とは?米国株の決算で 2 つの EPS が出る理由・調整される項目・どちらを見るべきか・日本の会計基準との違い

GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)は米国の一般に認められた会計基準で、これにもとづく利益が「正式な利益」です。一方、非GAAP(Non-GAAP)は、会社が GAAP の利益から株式報酬・買収に伴う無形資産の償却・リストラ費用などを差し引いて示す「調整後の利益」です。米国株の決算プレスリリースには両方の EPS が並び、アナリストの予想やニュースの「予想を上回った」は、ほとんどの場合、非GAAP の EPS で比べられています。GAAP と非GAAP の差が大きい会社は、どちらの数字で評価するかで印象が大きく変わります。この記事では、両者の違い、調整される項目、SEC のルール、どちらを見るべきか、日本の会計基準との対応をまとめます。

この用語の要点
  • GAAP=会計基準どおりの正式な利益、非GAAP=会社が一時費用などを除いた調整後の利益。市場予想との比較は非GAAP が基本
  • 非GAAP でよく除かれるのは株式報酬(SBC)・買収関連の無形資産償却・リストラ費用・訴訟費用。株式報酬を除くと利益が大きく見える
  • GAAP と非GAAP の差が売上の 10% を超える会社は注意。SEC は非GAAP を GAAP より目立たせることを禁じている

GAAP と非GAAP の違い:何を除くか

GAAP は米国の会計基準(FASB が定める)にもとづく決算で、監査を受けた財務諸表はすべて GAAP です。非GAAP は、会社が「経常的な事業の実力を示すため」として GAAP の数字から特定の項目を除いた指標で、法律上の決まった定義はありません。

よく除かれる項目内容除く理由(会社側の説明)
株式報酬費用(SBC)従業員に付与した株式・オプションの費用現金の支出ではないため
買収に伴う無形資産の償却買収で計上した顧客リスト・技術などの償却過去の買収の会計処理にすぎないため
リストラ費用人員削減・拠点閉鎖の費用一時的なため
訴訟・和解費用大型訴訟の引当金や和解金本業と無関係のため
投資の評価損益保有する他社株の時価変動市況で動くため

最も影響が大きいのは株式報酬です。テック企業では株式報酬が売上の 10〜20% に達する会社もあり、これを除くと GAAP では赤字の会社が非GAAP では大幅黒字になります。株式報酬は現金の支出ではありませんが、株主から見れば持ち分の希薄化というコストです。「現金が出ていかないから除く」という説明を鵜呑みにせず、GAAP の数字もあわせて見る必要があります。

決算プレスリリースでの表示と、SEC のルール

米国企業のプレスリリースには、通常次のように両方が並びます。

項目GAAP非GAAP差の中身
営業利益率28%35%株式報酬 5%、買収償却 2%
純利益20 億ドル27 億ドル上記に税効果を反映
希薄化後 EPS1.85 ドル2.50 ドルアナリスト予想は 2.40 ドル(非GAAP)

この例では GAAP の EPS 1.85 ドルは予想 2.40 ドルを大きく下回っているように見えますが、比較対象が非GAAP なので「予想超え」と報じられます。ニュースで「予想を上回った」と見たら、GAAP か非GAAP かを必ず確認してください

SEC は非GAAP 指標について、(1) 同等の GAAP 指標を同じかそれ以上に目立たせること、(2) GAAP との調整表(リコンシリエーション)を示すこと、(3) 経常的に発生する費用を「一時的」として除かないこと、を求めています(Regulation G)。それでも何を除くかの裁量は会社にあり、会社ごとに定義が違うため、同じ「調整後 EPS」でも会社間の比較には向きません

どちらを見るべきか:使い分けの基準

目的見る数字理由
決算が予想を上回ったか非GAAPアナリスト予想が非GAAP で作られているため
会社の本当の稼ぐ力GAAP+キャッシュフロー株式報酬を含めた実際のコストを反映
他社との比較GAAP非GAAP は会社ごとに定義が違う
PER(株価収益率)の計算使う数字を統一する情報サイトによって GAAP と非GAAP が混在している

実務では「短期の株価反応は非GAAP、長期の投資判断は GAAP とフリーキャッシュフロー」と使い分けるのが分かりやすい基準です。とくに GAAP と非GAAP の差が年々広がっている会社は、株式報酬が増え続けている(=株主の持ち分が薄まり続けている)合図なので注意します。

差がほとんど無い会社(アップル・バークシャーなど)は、非GAAP を出さないか、出しても GAAP と大差ありません。差の大きさ自体が会社の性格を表しています。ソフトウェア・半導体の成長企業は差が大きく、消費財・金融・エネルギーは小さい傾向です。

日本の会計基準との対応と、覚えておく英単語

日本企業の決算は日本基準(J-GAAP)か国際会計基準(IFRS)で、米国基準(US-GAAP)を使う会社は少数です。日本では非GAAP 指標を「調整後営業利益」「事業利益」「コア営業利益」などと呼び、IFRS 採用企業を中心に開示が増えています。米国ほど EPS の 2 本立てが定着していないため、日本株の感覚で米国株の「EPS」を見ると、どちらの数字か分からなくなりがちです。

決算プレスリリースでよく見る英語を整理します。

英語意味
GAAP net income / GAAP EPS会計基準どおりの純利益・EPS
Non-GAAP(Adjusted)net income / EPS調整後の純利益・EPS
ReconciliationGAAP と非GAAP の調整表。プレスリリースの末尾にある
Stock-based compensation(SBC)株式報酬費用
Amortization of acquired intangibles買収した無形資産の償却
Diluted EPS希薄化後 EPS。オプション等を含めた株数で計算

当サイトの決算カレンダーと銘柄別ページでは、プレスリリースから抽出した EPS を GAAP・非GAAP を区別して表示し、市場予想との比較は非GAAP で行っています。数字の出所は各社の 8-K(SEC 提出書類の解説)で確認できます。

GAAP と非GAAPに関するよくある質問

非GAAP は粉飾ではないのですか?
粉飾ではありません。SEC のルールに従って GAAP との調整表を示したうえで開示する、合法的な補足指標です。ただし会社に有利な数字になりやすいので、GAAP とあわせて見ることが前提です。
証券会社のアプリに出ている PER はどちらの EPS で計算されていますか?
情報提供元によって違います。米国の主要な情報サービスは非GAAP(アナリスト予想)ベースの予想 PER を出すことが多く、実績 PER は GAAP のことが多いです。アプリの注記を確認してください。
株式報酬を除くのは本当におかしいのですか?
意見が分かれます。現金は出ていかないので「事業の現金創出力」を見るには除く意味があります。一方、株式報酬は株主の持ち分を薄める実質的なコストなので、長期の株主価値を見るなら含めるべきです。両方を見て判断するのが無難です。
EBITDA は非GAAP ですか?
はい。EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)は GAAP で定義された指標ではなく、非GAAP 指標の一種です。「調整後 EBITDA」はさらに会社の裁量で項目を除いています。

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執筆:(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
非GAAP 指標の開示ルールは SEC の Regulation G および Item 10(e) of Regulation S-K と SEC スタッフの解釈指針(C&DI)、GAAP は FASB の会計基準にもとづきます。表の数値は説明用の例です。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-17。

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