EPSとは、1株あたりいくら利益を稼いだかを示す数字です。1株当たり当期純利益ともいい、株価の根拠になります。
EPSが重要なのは、株価がおおむね「EPS × PER」で決まるからです。EPSが2倍になれば、PERが変わらなければ理論上は株価も2倍になります。株価が上がる根本的な理由はここにあります。
ただしEPSは、利益が増えなくても動きます。自社株買いで増え、増資で減ります。数字の変化がどちらの理由によるものかを見分けられるかで、決算の読み方が変わります。
この記事でわかること
・EPSが増える理由と減る理由を6つに整理
・株式分割でEPSの数字が変わる仕組み
・潜在株式調整後EPSで将来の希薄化を見る方法
・会社予想EPSと実績EPSのどちらを見るか
・EPSの推移で成長を判断するときの注意点
目次
EPSとは?まず結論から
EPS(読み方:いーぴーえす)
EPSは Earnings Per Share の略で、日本語では1株当たり当期純利益といいます。会社が最終的に稼いだ利益を、発行している株数で割った数字です。
EPS(円)= 当期純利益 ÷ 発行済株式数
例:当期純利益10億円 ÷ 1,000万株 = EPS 100円
1株持っている株主の取り分が100円ぶんあるという意味です。会社の規模が違っても、1株あたりに直せば比べられます。利益の絶対額ではなく、1株あたりに換算するのがポイントです。
厳密には、分母は期中の平均株式数を使います。期の途中で株数が変わることがあるためです。実際の数値は決算短信に記載されており、自分で計算する必要はありません。
| 会社 | 当期純利益 | 発行済株式数 | EPS |
|---|---|---|---|
| A社 | 100億円 | 2億株 | 50円 |
| B社 | 10億円 | 500万株 | 200円 |
※ 利益の総額はA社が10倍ですが、1株あたりで見るとB社のほうが4倍稼いでいます。
株価はEPS×PERで決まる
EPSを理解する最大の意味がここにあります。
株価 = EPS × PER
(PERは「株価がEPSの何倍か」を示す倍率)
この式を逆から読むと、株価が上がる経路は2つしかないことが分かります。
長期で残るのは①。②だけで上がった株価は期待が消えると元に戻る
具体例で確認します。EPS100円・PER15倍で株価1,500円の銘柄があるとします。
| シナリオ | EPS | PER | 株価 |
|---|---|---|---|
| 現在 | 100円 | 15倍 | 1,500円 |
| EPSが2割増えた | 120円 | 15倍 | 1,800円 |
| EPSが2割減った | 80円 | 15倍 | 1,200円 |
決算で業績予想が上方修正されると株価が上がるのは、この式のEPSが動くからです。逆に下方修正で下がるのも同じ理屈です。ニュースを見たら、EPSがいくらからいくらに変わったのかを確認する習慣をつけてください。
EPSが増える理由・減る理由【6つ】
EPSは分子(利益)と分母(株数)の両方で動きます。ここを整理しておくと、決算の読み違いがなくなります。
| できごと | 動く場所 | EPS | 実体の裏づけ |
|---|---|---|---|
| ① 本業が伸びた | 分子 | 増える | あり(最も価値が高い) |
| ② 資産売却などの特別利益 | 分子 | 増える | 一時的(翌期は戻る) |
| ③ 自社株買いと消却 | 分母 | 増える | 利益は増えていない |
| ④ 増資 | 分母 | 減る | 資金が入るが希薄化する |
| ⑤ ストックオプションの行使 | 分母 | 減る | 株価上昇の結果として起きる |
| ⑥ 株式分割 | 分母 | 見かけ上減る | 価値は変わらない(後述) |
見るべきは①です。①によるEPSの増加だけが、繰り返し積み上がっていく成長です。②は翌期に消え、③は分母を減らしただけです。
とくに②は決算で判断を誤らせます。「最終利益が過去最高」という見出しでも、中身が固定資産の売却益であれば翌期のEPSは下がります。営業利益の伸びとセットで確認してください。
株式分割でEPSが下がるのは希薄化ではない
株式分割をすると株数が増えるため、EPSの数字は小さくなります。しかしこれは価値が減ったわけではありません。
| 項目 | 1対2の分割前 | 分割後 |
|---|---|---|
| 発行済株式数 | 1,000万株 | 2,000万株 |
| EPS | 100円 | 50円 |
| 株価 | 1,500円 | 750円 |
| 1株あたりの持分の合計 | 変わらない(1株が2株になっただけ) | |
EPSも株価も半分になりますが、持っている株数が2倍になるので資産価値は同じです。増資による希薄化とはまったく別の現象です。詳しくは希薄化の記事で解説しています。
実務上の注意点があります。過去のEPSは分割にあわせて遡って調整されるのが一般的です。調整されていない古いデータと混ぜて比べると、成長率を大きく読み違えます。長期の推移を見るときは、分割調整済みの数値かどうかを確認してください。
EPSと配当の関係(配当性向)
EPSは配当の原資でもあります。1株あたりの配当(DPS)をEPSで割った比率を配当性向といいます。
配当性向(%)= 1株あたり配当 ÷ EPS × 100
例:配当30円 ÷ EPS100円 × 100 = 配当性向 30%
| 配当性向 | 意味 | 増配の余地 |
|---|---|---|
| 20〜30% | 利益の多くを内部に留保している | 大きい |
| 30〜50% | 標準的な水準 | ある |
| 80%超 | 利益のほとんどを配当に回している | 乏しい |
| 100%超 | 利益を超えて配当している | 減配リスクがある |
ここが高配当株を選ぶときの要点です。配当利回りが高くても、配当性向が100%を超えていれば持続性がありません。EPSが減れば配当も減ります。
逆に配当性向が低く、EPSが伸びている企業は増配の余地が大きいということになります。配当性向と配当利回りはセットで確認してください。
日経平均EPSで相場全体を見る
EPSは個別銘柄だけでなく、指数に対しても計算されます。日経平均株価を構成銘柄のEPS合計で割ったものが日経平均PERです。
日経平均株価 = 日経平均EPS × 日経平均PER
株価が上がったとき、EPSが伸びたのかPERが上がったのかで意味が変わります。
個別銘柄と同じ構造です。日経平均EPSが伸びて株価が上がっている局面は、企業業績の裏づけがある上昇です。一方、EPSが横ばいでPERだけ上がっている局面は、期待や資金流入による上昇なので、剥がれると戻ります。
日経平均EPSと日経平均PERは、新聞の市況欄や証券会社の情報サイトで日々公表されています。相場が高いか安いかを自分で判断する材料になるので、個別銘柄を見る前に一度確認する習慣は有効です。
潜在株式調整後EPSで将来の希薄化を見る
決算短信には、EPSの下にもう1つ似た数字が並んでいます。
| 項目名 | 中身 |
|---|---|
| 1株当たり当期純利益 | 今の株数で計算した通常のEPS |
| 潜在株式調整後1株当たり当期純利益 | 新株予約権や転換社債がすべて行使・転換されたと仮定したEPS |
この2つの差が、その会社が今すでに抱えている将来の希薄化の大きさです。差がほとんどなければ潜在株式は少なく、大きければ将来EPSが薄まる余地があるということです。
EPS 100円 / 潜在株式調整後EPS 98円 → 差は2%。ほぼ影響なし
EPS 100円 / 潜在株式調整後EPS 85円 → 差は15%。将来の希薄化が大きい
上場して間もない成長企業では、ストックオプションが多く発行されているため差が大きく出ることがあります。IPO直後の銘柄を見るときは、この項目を確認する価値があります。
なお、潜在株式が存在しない会社では「潜在株式が存在しないため記載していない」と書かれます。これはむしろ良い情報です。
会社予想EPSと実績EPSのどちらを見るか
EPSには過去の実績と、会社が発表する今期の予想があります。株価は予想EPSを織り込んで動きます。
| 種類 | 出どころ | 使い方 |
|---|---|---|
| 実績EPS | 確定した決算 | 過去の推移で成長性を見る |
| 会社予想EPS | 会社自身の業績予想 | 今のPERの計算に使われる |
| アナリスト予想EPS | 証券会社の分析 | 会社予想との乖離を見る |
証券会社の画面に表示されているPERは、通常会社予想EPSをもとに計算されています。したがって業績予想が修正されると、株価が動かなくてもPERの数字が変わります。
ここが実務で効いてきます。上方修正が出るとPERは自動的に下がるため、修正前と同じ株価でも割安に見えるようになります。これが上方修正で買われる仕組みの一部です。
EPSの推移で成長を判断するときの注意点
特別利益や特別損失で単年のEPSは大きく振れます。5年程度の推移で、右肩上がりかどうかを見てください。
株数を減らせばEPSは増えます。当期純利益そのものが増えているかを必ず確認してください。連続で自社株買いをしている企業では、EPSの伸びのうち一部が分母の縮小によるものです。
赤字の期はEPSがマイナスになり、PERも計算できません。この場合はPERではなくPBRや売上高の伸びで見る必要があります。
日本基準・IFRS・米国基準では利益の計算方法が異なります。基準を変更した年はEPSが不連続になるため、推移の比較に注意が必要です。
EPSは収益力の指標で、株価の水準とは無関係です。EPS200円でも株価が1万円ならPERは50倍で、決して安くありません。必ず株価と組み合わせてください。
EPSはどこで確認するか
| 確認する場所 | 分かること |
|---|---|
| 決算短信の1ページ目 | 実績EPSと潜在株式調整後EPS、今期の予想EPS |
| 有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」 | 直近5期分のEPSの推移 |
| 証券会社の銘柄情報画面 | 予想EPSと、それを使ったPER |
| 業績修正の適時開示 | 予想EPSがいくらからいくらに変わったか |
最も効率がよいのは有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」です。5期分のEPSが1つの表に並んでいるため、成長の形が一目で分かります。
あわせてROEの推移も見ておくと、そのEPSの伸びが資本効率の改善を伴っているかが分かります。EPSが伸びていてROEも伸びている企業が、最も評価されやすい形です。
EPSに関するよくある質問
まとめ
EPSは、1株あたりいくら稼いだかを示す数字です。株価=EPS×PERという関係を覚えれば、決算のニュースが株価にどう効くかが読めるようになります。
この記事のまとめ
・株価=EPS×PER。EPSの増加が株価上昇の土台になる
・自社株買いで増え、増資やストックオプションで減る
・株式分割による低下は希薄化ではない
・潜在株式調整後EPSとの差が将来の希薄化の大きさ
・単年ではなく5年の推移で判断する
あわせて読みたい:PERとは / ROEとは / PBRとは / BPSとは / PEGレシオとは / 希薄化とは / 自社株買いとは










