外国税額控除とは?米国株の配当で二重に払った 10% を取り戻す仕組みと、確定申告の手順

外国税額控除とは、外国で払った税金を日本の所得税・住民税から差し引く制度です。米国株の配当は米国で 10% 源泉徴収されたうえ、日本でも 20.315% 課税されるため、同じ配当に二重に税金がかかります。この二重分を調整するのが外国税額控除で、確定申告をしないと 1 円も戻りません。特定口座(源泉徴収あり)で申告不要にしている人も、この控除を使うなら申告が必要です。

この用語の要点
  • 米国株の配当は米国 10% → 日本 20.315% の順にかかり、手取りは約 71.7%。外国税額控除で米国分の全部または一部が戻る
  • 戻る額には上限(控除限度額=所得税額 × 国外所得 ÷ 総所得)がある。所得が少ない年は全額戻らないこともある
  • NISA 口座の配当には使えない(日本で非課税なので調整する税金がない)。特定口座でも確定申告が必要

なぜ二重課税になるのか:100 ドルの配当の行方

段階金額説明
配当(税引前)100.00 ドル米国企業が支払う額
米国で源泉徴収(10%)−10.00 ドル日米租税条約の軽減税率。手続きは証券会社が代行
日本で課税(20.315%)−18.28 ドル90 ドルに対して所得税 15.315%+住民税 5%
手取り71.72 ドル約 71.7%

日本の税金は「米国で引かれたあとの 90 ドル」にかかります。二重に課税されている 10 ドル分を、確定申告で日本の税金から差し引くのが外国税額控除です。全額戻れば手取りは約 81.7%まで回復します。

控除できる額には上限がある(控除限度額)

戻るのは「米国で払った 10%」そのものではなく、日本の所得税のうち国外所得に対応する部分までです。計算式は次のとおりです。

所得税の控除限度額その年の所得税額 × (国外所得の総額 ÷ 所得総額)

限度額を超えた分は、住民税の控除枠(所得税の限度額の 30% が目安)と、翌年以降 3 年間の繰越で使えます。逆に、所得が少なく所得税額が小さい年(学生・年金生活者・所得控除が大きい年など)は、10% の全部は戻らないことがあります。

例:給与 500 万円、米国株の配当 30 万円(税引前)所得税額が約 14 万円、国外所得の割合が約 6% なら限度額は約 8,400 円。米国で引かれた約 3 万円のうち、所得税から戻るのは限度額まで。残りは住民税の枠と繰越へ。
例:所得が年金のみで所得税がほぼゼロ所得税額が小さいので限度額も小さく、ほとんど戻りません。この場合は NISA で配当を非課税にするほうが有利です。

特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告が必要

特定口座(源泉徴収あり)は、証券会社が日本の税金を天引きして納めるため「申告不要」にできます。しかし外国税額控除は申告不要のままでは受けられません。控除を使うには、配当所得を申告に含めたうえで「外国税額控除に関する明細書」を付けます。申告すると配当所得が合計所得に入るため、扶養や国民健康保険料に影響する人は、戻る額と比べて判断してください。

NISA の配当には使えない

NISA 口座で受け取った米国株の配当は、日本では非課税です。差し引く日本の税金がないので、米国で源泉徴収された 10% は NISA では取り戻せません。それでも手取りは 90% で、特定口座で外国税額控除を全額使えた場合(約 81.7%)より多くなります。「NISA で米国株の配当を受け取る」のは、この制度を使うまでもなく有利です。

確定申告の手順と必要な書類

  1. 年間取引報告書(特定口座)または支払通知書を証券会社からダウンロードする。「外国所得税額」の欄に米国で引かれた額(円換算)が載っています。
  2. 確定申告書の「配当所得」に米国株の配当を記入する(申告分離課税か総合課税かを選ぶ)。
  3. 「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」に、国名・所得の種類・外国所得税額を記入する。証券会社の報告書の数字をそのまま転記できます。
  4. e-Tax なら「外国税額控除」の入力画面に沿って入力すると、限度額は自動計算されます。
  5. 住民税側の控除は、所得税の申告をすれば市区町村に連携されます。

複数の証券会社で配当を受けている場合は、それぞれの報告書の外国所得税額を合計します。ADR の配当で現地税率が 10% 以外の場合も同じ明細書に記入します。

米国 ETF・投資信託との違い

2020 年から、国内の投資信託や東証上場 ETF を通じて受け取る海外配当は、二重課税が自動で調整されるようになりました(確定申告不要)。一方、VOO や VTI のような米国上場 ETF の分配金は自動調整の対象外で、米国個別株と同じく確定申告で外国税額控除を使います。「申告したくない」人は、東証上場の米国株 ETF(S&P500 連動など)を選ぶ手もあります。

外国税額控除に関するよくある質問

外国税額控除でいくら戻りますか?
上限は「所得税額 × 国外所得の割合」です。給与所得がある人なら米国で引かれた 10% の多くが戻ることが多い一方、所得税が少ない年は一部しか戻りません。
特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要ですか?
税金の納付だけなら不要ですが、外国税額控除を受けるには配当を申告し、明細書を付ける必要があります。
NISA で米国株を買った場合はどうなりますか?
日本の税金は非課税、米国の 10% は残り、外国税額控除は使えません。手取りは 90% で、特定口座で控除を全額使うより多くなります。
売却益にも外国税額控除は関係しますか?
米国株の売却益は米国で課税されないので、二重課税は起きず、外国税額控除の対象になりません。関係するのは配当だけです。

関連する用語

  • 配当金
    配当金とは、企業が稼いだ利益の一部を株主に分配するお金です。
  • NISA
    NISAとは、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。
  • 特定口座
    特定口座とは、証券会社が1年間の売買損益を計算し、年間取引報告書を作成してくれる口座のことです。
  • ETF(上場投資信託)
    ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場している投資信託です。

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執筆:(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
税率と控除の計算は国税庁「外国税額控除」の案内および日米租税条約、二重課税調整の制度は 2020 年 1 月施行の税制改正にもとづきます(2026 年 9 月時点)。個別の申告は税務署・税理士にご相談ください。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。最終更新 2026-09-09。

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