気配(けはい)とは、まだ売買が成立していない注文の値段のことです。「いくらで買いたい人がいるか」「いくらで売りたい人がいるか」を示します。

株価は「実際に成立した値段」ですが、気配はこれから成立するかもしれない値段です。この違いを押さえると、寄り付き前や急騰時の板の動きが読めるようになります。

この記事では、特別気配が3分ごとに動く仕組みや、2024年に新設された大引け前の時間帯まで、実務で必要な部分を解説します。

この記事でわかること

・気配と株価の違い
・特別気配が3分ごとに切り上がる仕組み
・連続約定気配という1分間の足止め
・寄り付き前と大引け前の気配の見方
・気配を読み違える3つのパターン

気配とは

気配は、注文の「希望価格」です。まだ相手が見つかっていない状態を指します。

板のイメージ
売数量気配値買数量
3,0001,203
1,5001,202
8001,201
1,2001,200
1,1992,400
1,1985,000

※ 灰色の2行が最良気配。1,201円が最も安い売り、1,200円が最も高い買い

この一覧がで、そこに並ぶ一つひとつの値段が気配値です。板と気配は「同じものを別の角度から呼んでいる」と考えて差し支えありません。

厳密に言い分けるなら、板は「注文が並んだ一覧表そのもの」、気配は「そこに表示されている個々の値段」です。実務では「板を見る」も「気配を見る」もほぼ同じ意味で使われるため、区別に神経質になる必要はありません。

大切なのは、気配に並んでいる注文は、まだ誰のものにもなっていないという点です。1,198円に5,000株の買い注文があっても、その人が次の瞬間に取り消せば消えます。気配は「約束」ではなく「意思表示」です。

買い気配と売り気配

用語 意味 その場の状況
買い気配 買いたい人の希望価格 買い注文だけが並び、売りが出てこない状態を「買い気配」と呼ぶこともある
売り気配 売りたい人の希望価格 売り注文だけが並び、買いが出てこない状態を「売り気配」と呼ぶこともある

ニュースで「◯◯社の株は買い気配のまま」と言われるのは、買いたい人ばかりで売る人がおらず、取引が成立していない状態を指します。好材料が出た朝に起こる典型的な光景です。

最良気配とは

最良気配とは、その時点で最も条件のよい売り注文と買い注文のことです。

最良買い気配
最も高い買い
いま成行で売ったら
この値段で約定する
最良売り気配
最も安い売り
いま成行で買ったら
この値段で約定する

この2つの差が「スプレッド」。狭いほど売買しやすい

最良気配の差が広い銘柄は、買った瞬間に含み損になります。流動性が低い銘柄ほどこの差が開くため、成行注文を出す前に必ず確認してください。

特別気配の仕組み

ここからがこの記事の本題です。

注文が一方に大きく偏ると、直前の約定値から大きく離れた価格でしか売買が成立しない状況が生まれます。そのまま約定させると株価が一瞬で飛んでしまうため、取引所はいったん約定を止めて「特別気配」を表示します。

1

買い注文が殺到する
好材料が出た直後など

売り注文が足りず、直前の価格の近くでは約定できなくなります。

2

特別気配が表示される
約定はいったん止まる

「この値段まで買いが来ています」と市場全体に知らせ、売り注文を呼び込みます。

3

3分ごとに切り上がる
更新間隔は3分

売り注文が出てこなければ、特別気配は3分間隔で更新値幅の分だけ切り上がっていきます。

4

売りが出れば約定
釣り合った時点で成立

その価格で売る人が現れれば、板寄せで約定して通常の売買に戻ります。

※ 出典:日本取引所グループ「特別気配の更新値幅」および各証券会社の取引ルール

株価が階段状にカクカクと上がっていくのは、この3分ごとの更新が理由です。「なぜ値段が飛び飛びなのか」という疑問の答えがここにあります。

気配の更新値幅とは

特別気配が1回で動く幅を更新値幅といいます。

更新値幅の考え方
直前の価格を基準に、この幅の中なら即座に約定させる
→ 幅を超える価格でしか約定しないなら、特別気配を表示する

更新値幅は株価の水準ごとに定められています。株価が高いほど1回の更新幅も大きくなる仕組みです。具体的な数値は日本取引所グループが「特別気配の更新値幅」として公表しているので、正確な値はそちらで確認してください。

株価の水準 更新値幅 意味すること
低い(数百円) 小さい 1回の更新で動く額が小さく、細かく刻まれる
高い(数千円以上) 大きい 1回の更新で大きく飛ぶ。一気に数十円動くこともある

※ 実際の更新値幅は価格帯ごとに細かく定められています。日本取引所グループの公表資料でご確認ください。

連続約定気配という1分間の足止め

特別気配とは別に、短時間で価格が急に走ったときに働く仕組みがあります。

連続約定気配
起点となる約定値段から、更新値幅の2倍を超える買い上がり(売り下がり)が発生
→ 約1分間、約定を止めて反対注文を呼び込む

1分待っても反対注文が十分に集まらなければ、通常の特別気配へ移行します。

この制度は2010年の売買システム「arrowhead」導入とともに設けられました。一瞬で株価が飛ぶことを抑え、投資家が判断する時間を確保する狙いがあります。

項目 特別気配 連続約定気配
表示される条件 更新値幅を超える価格でしか約定しない 更新値幅の2倍を超える連続的な値動き
待つ時間 3分ごとに更新 約1分
その後 売りが出れば約定、出なければ更に切り上げ 集まらなければ特別気配へ移行
導入 従来から 2010年(arrowhead導入時)

証券会社のツールでは、特別気配に「特」、連続約定気配に「連」などの記号が表示されます。見慣れない記号が出たら「いま約定が止まっている」というサインだと理解してください。

寄り付き前の気配の見方

取引所は8:00から注文を受け付けますが、約定するのは9:00からです。この1時間は気配だけが動きます。

時間帯 状態 見るべきポイント
8:00〜8:20頃 注文が集まり始める まだ数が少なく、気配は当てにならない
8:20〜8:59 気配が更新されていく 売り買いの偏りが見えてくる。材料の強さを測る
9:00 板寄せで始値が決まる 気配どおりに寄るとは限らない
寄り付き直前に気配が動く

8:59台には注文の取消・訂正が集中し、それまでの気配が一気に変わることがあります。「気配が高いから買い」と早い時間に判断するのは危険です。

大引け前のプレ・クロージング

2024年11月5日から、東京証券取引所の取引終了時刻が15:00から15:30へ延長され、あわせてクロージング・オークションが導入されました。

15:25〜15:30 は「約定しない5分間」
注文は受け付ける
しかし約定はしない
→ 気配だけが配信され、大引けの値段が形づくられていく

※ 出典:日本取引所グループ(2024年11月5日実施)

寄り付き前と同じ構造が、大引け前にも作られたと考えるとわかりやすくなります。この5分間に入ってから売ろうとしても、自分のタイミングでは約定できません。デイトレードで手仕舞いを15:25より前に済ませる必要があるのは、このためです。

ストップ高・ストップ安のときの気配

特別気配が切り上がり続けて値幅制限の上限に達すると、ストップ高になります。

状態 板の見え方 投資家にとって
ストップ高買い気配 上限価格に買い注文が積み上がり、売りがない 買いたくても買えない
ストップ安売り気配 下限価格に売り注文が積み上がり、買いがない 売りたくても売れない

大引けまで気配のまま推移した場合は、比例配分という方法で証券会社ごとに割り当てられます。仕組みはストップ安の記事で解説しています。

気配を実際の売買にどう使うか

気配は眺めるものではなく、注文の出し方を決めるための材料です。使いどころは3つに絞れます。

確認すること 判断 具体的な行動
最良気配の差 差が広ければ流動性が低い 成行を使わず指値にする。数量も減らす
板の厚みの偏り 片側だけ極端に厚い 歩み値で本当に約定しているか確認してから動く
特別気配の有無 いま約定が止まっている 慌てて成行を入れない。約定価格が読めない状態だと理解する
特別気配のときに成行を出すとどうなるか

特別気配が切り上がり続けている最中に成行の買い注文を出すと、最終的に約定した価格がいくらになるか、注文時点では分かりません。気配が3分ごとに上がっていく間に、想定よりはるかに高い価格で成立する可能性があります。この局面では指値を使ってください。

気配を読み違える3つのパターン

① 板の厚みを鵜呑みにする

気配はあくまで未約定の注文です。いつでも取り消せます。約定させる気のない注文(見せ板)が並んでいる可能性を排除できません。実際に成立したかどうかは歩み値で確認してください。

② 見えている板がすべてだと思う

PTSの注文は取引所の板には現れません。ダークプールのように注文情報が公開されない場もあります。市場の全体像を板から把握することはできません。

③ 特別気配が出た=買いだと考える

特別気配は「注文が偏っている」という事実を示すだけです。切り上がった後に売りが殺到して急落することも珍しくありません。気配は方向を保証しません。

※ 本記事は用語と仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

気配に関するよくある質問

気配と株価は何が違うのですか?
株価は実際に売買が成立した値段、気配はまだ成立していない注文の値段です。気配は取り消される可能性がありますが、株価は確定した事実です。板に表示されているのは気配、歩み値に表示されているのが約定した株価です。
特別気配はどのくらいの間隔で動きますか?
3分間隔で更新されます。売り注文(買い注文)が出てこなければ、更新値幅の分だけ気配値が切り上がる(切り下がる)動きを繰り返します。株価が階段状に飛んで見えるのはこのためです。
気配値のまま1日が終わることはありますか?
あります。ストップ高買い気配やストップ安売り気配のまま大引けを迎えるケースです。この場合は比例配分という方法で、証券会社ごとに注文数量に応じて割り当てが行われます。
連続約定気配とは何ですか?
起点となる約定値段から更新値幅の2倍を超える買い上がりや売り下がりが起きたときに表示される気配です。約1分間、約定を止めて反対注文を呼び込みます。2010年のarrowhead導入時に、株価の急変を抑えるために設けられました。
寄り付き前の気配で始値は予想できますか?
目安にはなりますが、確実ではありません。特に8:59台は注文の取消や訂正が集中し、直前で気配が大きく動くことがあります。早い時間の気配だけで判断しないでください。
15:25以降に売れないのはなぜですか?
2024年11月5日から、15:25〜15:30は注文を受け付けるだけで約定しないプレ・クロージングの時間になったためです。この間の注文は15:30のクロージング・オークションでまとめて処理されます。
気配値で指値注文を出せば必ず約定しますか?
しません。指値は「その価格以下で買う(以上で売る)」という条件付きの注文なので、相手が現れなければ約定しません。特に流動性が低い銘柄では、1日中約定しないこともあります。
板が薄い銘柄で気配を見るときの注意点は?
最良買い気配と最良売り気配の差が大きく開いていることが多く、成行注文を出すと想定よりかなり不利な価格で約定します。必ず指値を使い、売買代金が十分にある銘柄を選んでください。

まとめ

気配は「これから成立するかもしれない値段」であり、確定した情報ではありません。特別気配が3分ごとに動くという仕組みを知っているだけで、急騰時の板の見え方が変わります。

この記事のまとめ

・気配=まだ約定していない注文の値段
・最良気配の差(スプレッド)が広い銘柄は要注意
・特別気配は3分間隔で更新値幅の分だけ動く
・連続約定気配は更新値幅の2倍超で発動し約1分止まる
・寄り付き前は8:00から気配だけが動く
・2024年11月5日から15:25〜15:30も約定しない時間
・気配は取り消せる。事実は歩み値で確認する

あわせて読みたい:板とは歩み値とはストップ高とは成行注文とは

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