
米国株の株式分割(ストック・スプリット)は、1株を2株・10株などに分けて株価を下げることで、会社の価値も株主の持ち分も変わりません。日本株と違うのは日付の決まり方です。2対1以上の分割では、権利落ち日が基準日ではなく配布日の翌営業日になります。決算日を追っている100銘柄を調べると、2020年以降だけで19社が23回分割していました。仕組み、分割後の株をだれがもらえるか、日本の証券口座での反映と売買停止、過去の分割の一覧を順に書いていきます。
- 分割で価値は変わりません。株数がN倍になり、株価・EPS・1株配当・取得単価がN分の1になるだけです。分割そのものに税金もかかりません。
- 2対1以上の分割は、権利落ち日が配布日の翌営業日です(FINRA規則11140)。基準日を過ぎていても、その前日までに買えば分割後の株数になります。
- 日本の口座では、権利落ち日から新株の入庫まで売買停止になるのが普通です(SBI証券の2026年7〜10月の16件は0〜2営業日)。整数倍の分割ならNISA口座のままです。
株式分割の仕組み(株数は増えても価値は変わらない)
株式分割は、1株を2株・4株・10株などに分けて発行済み株式数を増やすことです。会社の価値(時価総額)は変わらず、1株あたりの株価・EPS・配当が同じ比率で小さくなるだけです。10対1の分割なら、1,000ドルの株1株が100ドルの株10株になります。
| 項目 | 分割前(例) | 10対1分割後 |
|---|---|---|
| 保有株数 | 10株 | 100株 |
| 株価 | 1,000ドル | 100ドル |
| 評価額 | 1万ドル | 1万ドル(変わらない) |
| EPS(1株利益) | 30ドル | 3ドル |
| 四半期配当 | 1株1.00ドル | 1株0.10ドル(受取総額は同じ) |
| 取得単価 | 800ドル | 80ドル(株数×10、単価÷10) |
米国企業が分割するいちばんの理由は、株価が数百〜数千ドルになって個人や従業員が手を出しにくくなった株を、買いやすくすることです。米国の個別株オプションは1枚=100株なので、株価が下がればオプションも使いやすくなります。ダウ平均は株価を平均する指数なので、分割で指数への影響度が下がり、採用されやすくなる面もあります。
反対に、株数を減らして株価を上げるのが株式併合(リバース・スプリット)です。米国では株価が1ドル未満の状態が続くと上場維持の基準に引っかかります。業績の苦しい小型株が上場を守るために併合する例が多く、意味は分割と正反対です(米国株の上場廃止基準)。
分割後の株はだれがもらえるか(基準日より「権利落ち日」を見る)
日本株では「権利付最終日までに買う」が基本ですが、米国株の分割は少し違います。米国の規則(FINRA規則11140)では、配る株の価値が元の株の25%以上になる分配は、権利落ち日が基準日の翌日ではなく「配布日の翌営業日」になります。2対1以上の分割はすべてこれに当たります。
| 日付 | 英語 | 意味(エヌビディア2024年10対1の例) |
|---|---|---|
| 発表日 | Announcement | 2024年5月22日、決算発表と同時に公表 |
| 基準日 | Record date | 6月6日。この日の株主名簿に載った人が対象 |
| 配布日 | Distribution / Payable date | 6月7日の引け後に追加の9株を配布 |
| 権利落ち日(分割後の値段で取引開始) | Ex-date / Split-adjusted trading | 6月10日(月)。日本時間では同日22:30(夏時間)の取引開始から |
基準日と配布日のあいだに株を売ると、「分割でもらえる株を受け取る権利」も一緒に買い手へ渡ります。due billと呼ばれる仕組みです。基準日を過ぎてから買っても、権利落ち日の前日までに買えば分割後の株数になるわけです。2026年の例では、ブッキング・ホールディングス(25対1)が基準日3月6日・配布4月2日・分割後の取引開始4月6日でした。KLA(10対1)は基準日6月4日・効力発生6月11日・分割後の取引開始6月12日です。どちらも基準日から実際の分割まで1〜4週間空いています。
ただ、日本の証券会社はこの期間に独自の締め切りや売買停止を置くことがあります。実際にいつまでに買えばいいかは、次に書くとおり各社の「注意銘柄」のお知らせで確かめてください。
日本の証券口座への反映(数日の売買停止に注意)
日本の証券会社は、米国株を現地の保管機関にまとめて預けています。そのため現地で分割が処理され、証券会社が株数と取得単価を書き換えるまで、その銘柄は売買停止になるのが普通です。各社の公式の案内は次のとおりです。
| 証券会社 | 公式の案内(要旨) |
|---|---|
| SBI証券 | 権利落ち日から新株入庫までの期間は売買停止。処理が終わるまで資産画面の評価損益は正しく表示されない。信用取引は新株入庫まで新規建て停止 |
| 楽天証券 | 2021年のエヌビディア4対1では、権利落ち日(米国7月20日)の日本時間8:00〜18:00に注文受付を停止。整数倍の分割でNISA・特定口座から一般口座への払い出しは行わない |
| 松井証券 | 非整数倍の分割で出る端株は同社で売却し、代金から諸費用を引いて入金 |
停止は短いとはいえ、値動きが荒れやすい分割直後に、日本の口座からは売れない日があることは頭に入れておきたいところです。3対2のような整数倍でない分割では1株未満の端数が出ます。日本の証券会社では、端数は原則として売却され現金で戻ります。NISAの非課税枠は、分割で増えも減りもしません。
分割そのものに税金はかかりません。株数が増え、1株あたりの取得単価が比率に応じて下がるだけです。売ったときの損益は分割後の単価で計算します(米国株の税金)。
主要100銘柄の過去の株式分割(SECの決算データから拾った一覧)
決算カレンダーの100銘柄について、SECに出された決算データ(XBRL)を調べました。EPSがあとの書類で整数分の1に書き換えられていれば、そこで分割があったと分かります。98社のうち26社が合わせて34回分割しており、2020年以降だけで19社・23回でした。倍率は10対1がいちばん多く(8回)、2対1(7回)、4対1(6回)と続きます。
| 銘柄 | 比率 | SECの書類でEPSが書き換わった時期 |
|---|---|---|
| KLA(KLAC) | 10対1 | 2026年8月 |
| ブッキング・ホールディングス(BKNG) | 25対1 | 2026年4月 |
| サービスナウ(NOW) | 5対1 | 2026年1月 |
| ネットフリックス(NFLX) | 10対1 | 2026年1月 |
| スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI) | 10対1 | 2025年2月 |
| アリスタネットワークス(ANET) | 4対1 | 2025年2月 |
| パロアルトネットワークス(PANW) | 2対1 | 2025年2月 |
| ストラテジー(旧マイクロストラテジー)(MSTR) | 10対1 | 2024年10月 |
| ラムリサーチ(LRCX) | 10対1 | 2024年10月 |
| ブロードコム(AVGO) | 10対1 | 2024年9月 |
| エヌビディア(NVDA) | 10対1 | 2024年8月 |
| チポトレ・メキシカン・グリル(CMG) | 50対1 | 2024年7月 |
| ウォルマート(WMT) | 3対1 | 2024年3月 |
| パロアルトネットワークス(PANW) | 3対1 | 2023年5月 |
| テスラ(TSLA) | 3対1 | 2022年10月 |
| アマゾン・ドット・コム(AMZN) | 20対1 | 2022年7月 |
| アルファベット(グーグル)(GOOGL) | 20対1 | 2022年7月 |
| アリスタネットワークス(ANET) | 4対1 | 2022年2月 |
| インテュイティブ・サージカル(ISRG) | 3対1 | 2021年10月 |
| エヌビディア(NVDA) | 4対1 | 2021年8月 |
| ネクステラ・エナジー(NEE) | 4対1 | 2021年2月 |
| アップル(AAPL) | 4対1 | 2020年10月 |
| テスラ(TSLA) | 5対1 | 2020年10月 |
この一覧から言えるのは、過去の決算資料や古い記事のEPS・配当は、分割前の数字のままだということです。たとえばエヌビディアの2022年1月期の10-Kにある希薄化後EPS 3.85ドルは、2024年の10対1の分割より前の数字です。いまの株数に直すと約0.39ドルになります。株価チャートは過去にさかのぼって調整されますが、書類の数字は書き換わりません。
もう1つ、SBI証券の「米国の注意銘柄(株式分割・併合等)」に2026年9月29日時点で載っていた146件(権利落ち日07/01〜10/09)も数えてみました。分割は16件、併合は129件です。米国市場全体で見ると、株価を下げる分割より株価を上げる併合のほうがずっと多いのが実情です。分割16件について、権利落ち日から新株を売れる予定日までの間隔は、0営業日が2件・1営業日が11件・2営業日が3件でした。
補足しておくと、ビザとエアビーアンドビーはSECにEPSのデータが無いので外し、98社で数えています。期間はXBRLが始まった2009〜2011年から2026年9月までです。同じ会計期間のEPSが2期間以上で同じ整数倍(2〜100)に書き換えられた書類を分割とみなしました。表の時期は分割の効力発生日ではなく、書き換えが最初に出た書類の提出月です。併合とXBRL以前の分割は拾えていません。SBI証券の件数は同社の取扱銘柄に限った数で、営業日は土日だけを除いて数えています。
米国株の株式分割に関するよくある質問
株式分割の前に買うと得ですか?
いつまでに買えば分割後の株数になりますか?
NISAで持っている株が分割されたらどうなりますか?
分割の直後に売れないのはなぜですか?
関連する用語
- 株式分割
株式分割とは、1株を2株・3株といった複数の株式に分割し、発行済株式数を増やすことです。 - 株式併合
株式併合とは、複数の株式を1株にまとめて、発行済株式数を減らすことです。 - EPS
EPSとは、1株あたりいくら利益を稼いだかを示す数字です。 - 権利落ち日と四半期配当
- 1株未満取引(端株)
- 米国株の上場廃止基準(1ドルルール)
- ダウ平均
- 10-K・10-Q・8-K(決算資料の探し方)
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock編集長・専業投資家歴20年)
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