
米国株の上場廃止基準とは、NYSEやナスダックが「上場を続けるために満たすべき条件」として定める株価・時価総額・株主数・純資産などの基準のことです。最もよく知られているのが「1ドルルール」で、終値が30営業日連続で1ドルを下回ると取引所から警告(通知)が届き、原則180日以内に10営業日連続で1ドル以上に戻さなければ上場廃止になります。日本株の上場廃止基準(時価総額・流通株式・債務超過など)と考え方は似ています。違うのは、株価の水準そのもので判定する点です。
- 1ドルルールでは、終値1ドル未満が30営業日続くと警告が出ます。180日の猶予(ナスダックは条件付きで再延長)のうちに回復しなければ廃止です
- 株価以外にも時価総額・株主数・純資産・浮動株の基準があります。年次報告書(10-K)の提出遅れも廃止の理由になります
- 上場廃止後はOTC市場(店頭)で取引が続くことが多いものの、日本の証券会社では売却のみ・買付不可になるのが一般的です
NYSEとナスダックの主な継続上場基準
上場するときの基準(新規上場基準)と、上場を続けるための基準(継続上場基準)は別です。個人投資家に関係が深いのは後者です。主な項目を表にしました。
| 項目 | ナスダック(主な基準) | NYSE(主な基準) |
|---|---|---|
| 株価 | 終値1ドル以上(30営業日連続で割ると警告) | 30営業日の平均終値1ドル以上 |
| 時価総額・純資産 | 株主資本250万ドル以上、または時価総額3,500万ドル以上など(市場区分で異なる) | 30営業日の平均時価総額1,500万ドル以上、など |
| 株主数・浮動株 | 株主300人以上、浮動株50万株以上など | 株主400人未満かつ月間出来高が少ない場合に該当 |
| 開示 | 10-K・10-Qの期限内提出 | 同左 |
| その他 | 監査意見の不表明、破産申請、重大な違法行為 | 同左 |
基準は市場区分(ナスダックのグローバル・セレクト/グローバル/キャピタル、NYSEとNYSEアメリカン)で細かく違います。上の表は目安で、正確な数値は各取引所の上場規則で確認してください。米国株には日本のような「監理銘柄・整理銘柄」の区分はありません。警告を受けた会社は8-Kで開示し、ティッカーの末尾に注意を示す記号が付くことがあります。
警告から上場廃止までの流れ(1ドルルールの場合)
| 段階 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 1.基準割れ | 終値が1ドル未満の日が続く | 30営業日連続 |
| 2.警告(Deficiency Notice) | 取引所が会社に通知。会社は8-Kとプレスリリースで公表 | 基準割れ確定後すぐ |
| 3.回復期間 | 10営業日連続で終値1ドル以上に戻せば解消 | 180日 |
| 4.延長(ナスダック) | 他の基準を満たし、株式併合などの計画を示せばもう180日 | 最長360日 |
| 5.上場廃止の決定 | 回復できなければ取引所が廃止を通知。会社は聴聞会で争える | 通知後7日以内に申立て |
| 6.廃止・OTCへ移行 | 取引所での売買が停止し、店頭市場(OTC)での取引に移る | — |
2024〜25年のルール改正で、ナスダックは厳しくなりました。株式併合で1ドルを回復しても1年以内に再び割れた場合は、猶予期間なしで廃止手続きに入ります。また、警告を受けてから360日を過ぎても回復しない会社は、聴聞会の申立て中でも取引が停止されます。1ドル割れの常連だった小型株にとっては厳しい改正です。
株価0.1ドル未満が10営業日続いた場合は、猶予期間なしで即座に廃止手続きに入る規定もあります。
株式併合(リバーススプリット)で回避する仕組みとその後の株価
1ドルルールの警告を受けた会社の多くは、株式併合(リバーススプリット)で株価を引き上げます。10株を1株にまとめれば、株価0.5ドルは5ドルになります。保有株数は10分の1になりますが、持ち分の価値は変わりません。
| 併合前 | 1:10の併合後 | |
|---|---|---|
| 株価 | 0.50ドル | 5.00ドル |
| 保有株数 | 1,000株 | 100株 |
| 評価額 | 500ドル | 500ドル |
併合は形式的な操作です。併合で会社の業績が良くなるわけではなく、統計的には併合後も株価が下がり続ける会社が多いことが知られています。市場は「併合を発表した=経営が苦しい」と受け取るからです。併合で端数が出た分は現金で精算されます。
日本の証券会社で持っている株が併合された場合、保有株数と取得単価が自動で調整されます。反映に数日かかることがあり、その間は売れない場合もあります。証券会社の案内を確かめておくと安心です。
上場廃止後の株と日本の証券会社での扱い
上場廃止になっても、会社が存続していれば株そのものは無くなりません。多くはOTC市場(店頭市場)に移り、OTCマーケッツ社が運営するOTCQB・OTCピンクなどで取引が続きます。ただし出来高が激減し、売りたい価格で売れないことが普通です。
| 上場廃止の理由 | その後 |
|---|---|
| 基準割れ(株価・時価総額) | OTC市場へ移行。取引は可能だが流動性は低い |
| 破産(チャプター11・7) | 既存株は無価値になることが多い。再建後に新株が発行されても旧株主には配分されないのが通例 |
| 買収・非公開化 | 買収価格で現金化される。損失ではない |
| 他の取引所への移行 | 上場は続く。ティッカーや市場が変わるだけ |
日本の証券会社では、上場廃止でOTC市場に移った株は「売却のみ可能・新規の買付は不可」となるのが一般的です。OTC銘柄を扱わない会社では売却もできず、持ち続けるしかない場合があります。会社が消滅して株が無価値になっても、特定口座の損失として自動では計上されません。「株式としての価値喪失」として扱える条件も限られるので、税務上の扱いは証券会社と税務署に確かめてください。
警告(Deficiency Notice)が出た時点で8-Kが提出されます。保有銘柄が1ドル近辺にあるときはニュースを確かめ、OTCに移る前に売るかどうかを決めておくのが一番の対策です。上場廃止のリスクが高い小型株は、当サイトのテーマ株一覧でも「期待先行の新興株」として区別して扱っています。日本株の上場廃止の仕組みは上場廃止の解説にまとめています。
米国株の上場廃止基準に関するよくある質問
株価が1ドルを割ったらすぐ上場廃止になりますか?
上場廃止になった株は日本の証券会社で売れますか?
警告が出たことはどこで分かりますか?
ADRにも上場廃止基準はありますか?
関連する用語
- 上場廃止
上場廃止とは、株式が証券取引所での売買をやめることです。 - 株式併合
株式併合とは、複数の株式を1株にまとめて、発行済株式数を減らすことです。 - 相対取引(OTC)
相対取引(OTC)とは、証券取引所を通さず、売り手と買い手が直接、価格や数量を決めて成立させる取 - ADR(米国預託証券)
ティッカーシンボルとは、米国株の銘柄を表す 1〜5 文字のアルファベット(AAPL、NVDA な - 時価総額
時価総額とは、その会社を株式市場がいくらと評価しているかを示す金額です。 - 疑義注記
疑義注記とは、企業が事業を続けられるかどうかに重要な疑いがあることを財務諸表に明記したものです。 - 10-K・10-Q・8-K(SEC提出書類)
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock編集長・専業投資家歴20年)
継続上場基準はNasdaq Listing RulesとNYSE Listed Company Manualによります。市場区分ごとの数値は取引所の最新の規則で確かめてください(2026年9月時点)。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や証券会社の売買・口座開設を勧めるものではありません。当サイトは証券会社の口座開設などでアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新2026-10-02。

