上場廃止とは、株式が証券取引所での売買をやめることです。基準を満たせなくなった場合だけでなく、買収によって非公開化される場合もあります。

ここで先に押さえておくべきことがあります。東証の上場維持基準は、2025年3月から経過措置が終わり、本来の基準がそのまま適用されています。

この記事では、現行の基準と、保有株がどうなるかまでを整理します。

この記事でわかること

・現行3市場の上場維持基準(数値の一覧)
・2025年に終了した経過措置とは何だったのか
・基準に触れてから廃止までの期間
・株価が上がる「上場廃止」もある理由
・上場廃止後に保有株がどうなるか

上場廃止とは

上場廃止になると、その株式は証券取引所で売買できなくなります。会社が消滅するわけではなく、株主としての権利もなくなりません。変わるのは「市場で自由に売買できるかどうか」です。

  上場中 上場廃止後
売買 取引所でいつでも可能 相対取引のみ。事実上きわめて困難
株価 市場で毎日決まる 公表されない
株主の権利 あり あり(消滅しない)
情報開示 義務あり(決算短信など) 大幅に減る

「上場廃止=株が紙くずになる」というのは誤解です。ただし売れなくなるという意味では、実質的に価値を測れない状態になります。

上場廃止には2つの種類がある

ここを混同すると判断を誤ります。上場廃止には、まったく性質の違う2つがあります。

ネガティブな上場廃止
基準未達・経営破綻・虚偽記載
株価は暴落する
ポジティブな上場廃止
MBO・TOBによる完全子会社化
株価はむしろ上がる
理由 性質 株主の受け取り
MBOTOB 前向き 買付価格(通常は市場価格にプレミアムが乗る)
株式交換による完全子会社化 前向き 親会社の株式など
上場維持基準に不適合 後ろ向き なし(株式は保有し続ける)
破産・再生・更生手続 後ろ向き ほぼ無価値になることが多い
有価証券報告書の虚偽記載 後ろ向き 同上

現行の市場区分と上場維持基準

東証は2022年4月4日に市場区分を見直し、それまでの東証一部・二部・マザーズ・JASDAQを廃止しました。現在は次の3市場です。

項目 プライム スタンダード グロース
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式数 2万単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上
流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上
売買代金/売買高 1日平均売買代金0.2億円以上 月平均売買高10単位以上 月平均売買高10単位以上
時価総額 上場10年経過後 40億円以上
純資産の額 3市場とも正であること(債務超過でないこと)

※ 出典:日本取引所グループ「上場維持基準」(2026年8月時点)

流通株式とは、市場で実際に流通しうる株式のことです。経営陣や親会社が持つ株、政策保有株などは除かれます。そのため時価総額が大きくても、流通株式比率が低ければ基準に触れることがあります。

経過措置は2025年3月に終了した

2022年の市場再編のとき、基準を満たさない企業には「当面の間」という経過措置が設けられていました。改善計画を出せば、基準未達でも上場を維持できる仕組みです。

この経過措置は、2025年3月1日以後に到来する上場維持基準の判定基準日から終了しました。現在は本来の基準がそのまま適用されています。

時期 状態
2022年4月〜 新市場区分へ移行。経過措置つきで上場維持が可能だった
2025年3月1日以後 到来する基準日から本来の基準を適用
以降 決算期を迎えた会社から順に、経過措置の適用がなくなっていく

※ 出典:日本取引所グループ「上場維持基準に関する経過措置の終了」

投資家にとっての意味

「基準未達だが、まだ猶予がある」という状態の企業が減っていきます。流通株式時価総額や流通株式比率がぎりぎりの銘柄は、これまでより現実的なリスクとして意識する必要があります。

基準に触れてから廃止までの流れ

基準を満たさなくなっても、すぐに上場廃止になるわけではありません。改善のための期間が与えられます。

段階 内容 期間
① 基準に不適合 判定基準日に基準を満たさないと判定される
② 改善期間 この間に基準を満たせば解消される 原則1年(売買高基準は6か月)
③ 監理・整理銘柄 改善できなかった場合に指定される この間も売買はできる
④ 上場廃止 取引所での売買が終了する 改善期間の末日から6か月を経過した日

たとえば改善期間の末日が2026年3月31日の会社であれば、上場廃止日は2026年10月1日となります。つまり不適合が判明してから廃止まで、1年半ほどの時間があります。

監理銘柄と整理銘柄の違い

ニュースでよく見る2つの言葉ですが、意味する段階がまったく違います。

  監理銘柄 整理銘柄
状態 上場廃止基準に該当するおそれがある 上場廃止が決定した
この後は 解除される可能性がある 確実に廃止される
目的 投資家に注意を促す 最後の売却機会を与える
売買 できる できる

整理銘柄に指定されると、株価は大きく下落するのが一般的です。それでも売買自体は可能なため、この期間が実質的に最後の換金機会になります。

維持基準以外の上場廃止理由

数値基準とは別に、次のような場合も上場廃止となります。

理由 内容
銀行取引の停止 手形の不渡りなどで取引が停止された場合
破産・再生・更生手続 法的整理の手続に入った場合
事業活動の停止 実質的に事業を行っていない状態
有価証券報告書の提出遅延 法定期限を過ぎても提出できない場合
虚偽記載・不適正意見等 影響が重大と取引所が判断した場合
内部管理体制の不備 改善の見込みがないと判断された場合
反社会的勢力の関与 公益・投資者保護の観点から不適当な場合

このうち有価証券報告書の提出遅延は、会計処理に問題が生じているサインでもあります。継続企業の前提に関する疑義注記と並んで、注意すべき開示のひとつです。

グロース市場は2030年から基準が変わる

東証は、グロース市場の上場維持基準を見直す方針を公表しています。

  現行 見直し後
時価総額 40億円以上 100億円以上
判定のタイミング 上場から10年経過後 上場から5年経過後
適用開始 2030年3月1日以後に最初に到来する事業年度末から

※ 出典:日本取引所グループの公表資料および報道(2025年)

期間が半分に、金額が2.5倍になる大幅な引き上げです。グロース市場の小型株に投資する場合は、この将来の基準を意識しておく必要があります。

上場廃止になった株はどうなるか

読者が最も知りたい部分でしょう。株主であり続けますが、実務上できることは大きく制限されます。

項目 上場廃止後の扱い
株主の地位 維持される(議決権・配当を受け取る権利も残る)
売却 買い手を自分で見つける必要がある
証券口座での表示 評価額が表示されなくなることが多い
買収による廃止の場合 株式併合などを経て、金銭または親会社株式が交付される
倒産による廃止の場合 株主は債権者より後順位のため、価値が残らないことが多い
税務上も不利になる

上場廃止後の株式は「一般株式等」として扱われます。上場株式等の譲渡損益と損益通算できなくなり、配当も総合課税の対象になります。NISA口座で保有していた場合も、上場廃止に伴って口座から払い出される取扱いとなることがあります。詳細は証券会社と税務署にご確認ください。

上場廃止リスクの見つけ方

確認するもの どこで見るか
上場維持基準への適合状況 企業のIRページ。適合していない場合は開示義務がある
流通株式比率・流通株式時価総額 同上(毎年公表される)
継続企業の前提に関する注記 有価証券報告書・決算短信
純資産(債務超過でないか) 貸借対照表
監理・整理銘柄の指定状況 日本取引所グループのサイトで一覧が公表されている

基準に適合していない企業は、改善計画を開示する義務があります。つまり「危ない会社」は自分で公表しているということです。買う前にIRページを確認するだけで、多くのリスクは避けられます。

※ 本記事は制度の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。制度の詳細は日本取引所グループの公式情報をご確認ください。投資判断はご自身の責任でお願いします。

上場廃止に関するよくある質問

上場廃止になったら株は紙くずになりますか?
必ずしもそうではありません。株主としての権利は残り、会社が存続していれば配当を受け取れる場合もあります。ただし取引所で売買できなくなるため、換金は非常に困難になります。倒産による廃止の場合は、株主は債権者より後順位のため価値が残らないことが多くなります。
上場廃止が決まったらすぐ売るべきですか?
理由によります。MBOやTOBによる廃止であれば、買付価格で買い取られるため慌てて売る必要はありません。一方、基準未達や経営難による廃止の場合は、整理銘柄期間が実質的に最後の換金機会になります。まず廃止の理由を確認してください。
東証一部やマザーズの上場廃止基準はどうなりましたか?
2022年4月4日の市場区分見直しにより、東証一部・二部・マザーズ・JASDAQは廃止されました。現在はプライム・スタンダード・グロースの3市場となり、それぞれに上場維持基準が定められています。古い基準の解説は現在の制度には当てはまりません。
経過措置が終わったとはどういう意味ですか?
2022年の市場再編時、基準未達の企業には改善計画を出せば上場を維持できる猶予が与えられていました。この措置が2025年3月1日以後に到来する判定基準日から終了し、現在は本来の基準がそのまま適用されています。基準ぎりぎりの銘柄はリスクが高まっています。
基準を満たさなくなったらすぐ上場廃止ですか?
いいえ。原則1年間(売買高基準は6か月間)の改善期間が設けられます。この間に基準を満たせば解消されます。改善できなかった場合でも、改善期間の末日から6か月を経過した日が上場廃止日となるため、一定の時間があります。
監理銘柄と整理銘柄はどちらが深刻ですか?
整理銘柄です。監理銘柄は上場廃止基準に該当するおそれがある段階で、解除される可能性が残っています。整理銘柄は上場廃止が決定した銘柄に対する指定で、投資家に最後の売却機会を与えるためのものです。
上場廃止リスクは事前にわかりますか?
ある程度わかります。上場維持基準に適合していない企業は改善計画を開示する義務があるため、企業のIRページで確認できます。また日本取引所グループのサイトでは、監理銘柄・整理銘柄の一覧が公表されています。
上場廃止後の株式は税金の扱いが変わりますか?
変わります。上場株式等ではなく一般株式等として扱われるため、上場株式等の譲渡損益との損益通算ができなくなります。配当も総合課税の対象となります。取扱いの詳細は証券会社や税務署にご確認ください。

まとめ

上場廃止は「終わり」を意味するとは限りません。重要なのは、その廃止が買収によるものか、基準未達によるものかを見分けることです。そして基準未達のリスクは、企業自身が開示しています。

この記事のまとめ

・上場廃止=取引所での売買が終わること。株主の権利は残る
・MBOやTOBによる廃止は株価が上がることもある
・現行はプライム・スタンダード・グロースの3市場(2022年4月〜)
・🔴 経過措置は2025年3月1日以後の基準日から終了している
・改善期間は原則1年。末日から6か月経過した日が廃止日
・監理銘柄=おそれあり/整理銘柄=廃止決定
・グロースは2030年3月から上場5年で時価総額100億円へ

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