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米国株には日本株のような値幅制限がなく、ストップ高・ストップ安もありません。決算や買収の知らせが出れば、その日のうちに株価が大きく跳ね上がったり崩れたりします。その代わりに米国には二つの仕組みがあります。個別銘柄が短い時間に急に動いたときに売買を5分間止める「LULD(リミットアップ・リミットダウン)」と、S&P500が前日終値から7%・13%・20%下げたときに市場全体を止めるサーキットブレーカーです。どちらも通常取引の時間だけに働くので、日本時間で何時ごろなのかも表にしました。
- 米国株にストップ高・ストップ安はない。その日の値動きの幅に上限・下限がなく、売買が止まるのはLULDかサーキットブレーカーが発動したときだけ
- 個別銘柄はLULD。直前5分間の平均価格から決まった幅を外れ、15秒以内に戻らなければ売買を5分間止める
- 市場全体はS&P500の7%・13%・20%下落で止まる。下落のときだけ働き、7%と13%は15分間、20%はその日の取引が終わる

米国株にストップ高・ストップ安がない理由(日本株との比較)
日本株では、東京証券取引所が前日の終値などを基準に「その日に動ける幅」を値段ごとに決めています。これが制限値幅で、上限に張り付けばストップ高、下限ならストップ安です。日本取引所グループの公式ページによると、基準値段が1,000円未満なら上下150円、5,000円未満なら上下700円という決まり方をします。
米国の取引所(NYSE・ナスダック)にはこの制限値幅がありません。前日の終値からどれだけ離れても、買う人と売る人がいれば売買が成り立ちます。そのため「ストップ高で買えない」「ストップ安で売れない」ということは起きません。値動きの上限・下限はなく、売買が止まるのはLULDかサーキットブレーカーが発動したときだけです。
大阪取引所の有識者コラムは、LULDについて「日本の値幅制限に似ていますが、根本的な相違点があります」と説明しています。日本の値幅制限はその日の値動きの幅を固定し、それを超える値段では売買できません。コラムによると、LULDは一時中断の仕組みで、その日の値幅を超える売買を禁じるものではありません。
| 日本株(東証) | 米国株(NYSE・ナスダック) | |
|---|---|---|
| その日の値動きの上限 | あり(制限値幅) | なし |
| ストップ高・ストップ安 | ある | ない |
| 基準になる価格 | 前日の終値など(基準値段) | LULDは直前5分間の平均価格 |
| 急な値動きのとき | 上限・下限より先では売買できない | LULDで5分間止めたあと再開する |
| 相場全体の急落 | 個別株の制限値幅で対応 | S&P500の下落率で市場全体を止める |
| 値動きの幅が広がる日 | 2営業日続けて、ストップ高(安)のまま売買高が0株などの条件に当たると、翌営業日から制限値幅を拡大 | 上限がないので広がるという考え方がない |
日本株のストップ高に慣れていると、米国株の決算翌日の値動きの大きさに驚きます。損切りの注文を置くときの注意はストップ注文・ストップリミット注文にまとめました。
個別銘柄の売買一時停止(LULD)の仕組み
LULDは、SEC(米国証券取引委員会)が2012年5月31日に試験的に承認し、2019年4月11日に恒久的な決まりになりました。米国の取引所とFINRA(米国の証券業の自主規制機関)が共同で運営しています。
仕組みは次のとおりです。銘柄ごとに直前5分間の平均価格を基準にして、上下に決まった割合の「値幅(プライスバンド)」を引きます。値段がこの幅の端に達し、15秒以内に幅の中に戻らなければ、その銘柄の売買を5分間止めます。止まる時間がさらに5分延びる場合もある、という決まりです。その日の最初の基準は、上場している取引所の寄り付きの値段か、前日の終値です。
| 区分 | 前日の終値 | 値幅(基準価格から上下) |
|---|---|---|
| Tier 1(S&P500・ラッセル1000の銘柄と一部のETF) | 3ドル超 | 5% |
| 0.75ドル以上3ドル以下 | 20% | |
| 0.75ドル未満 | 15セントか75%の小さいほう | |
| Tier 2(それ以外の銘柄) | 3ドル超 | 10% |
3ドル以下のTier 2の銘柄は、Tier 1と同じ区分(0.75ドル以上3ドル以下は20%、0.75ドル未満は15セントか75%の小さいほう)を使います。
LULDの公式ページの例では、Tier 1の銘柄で前日の終値が25ドルなら、値幅は上が26.25ドル、下が23.75ドルです。同じ考え方で、基準価格が100ドルの大型株なら上は105ドル・下は95ドルです。通常取引の最後の25分間は、Tier 1の銘柄と3ドル以下のTier 2の銘柄で値幅が2倍になり、同じ100ドルの株なら110ドルと90ドルまで広がります。
大事なのは、この幅が「直前5分間の平均」から引かれ、時間とともに動いていくことです。日本のストップ高のように朝決まった上限で一日中止まるわけではありません。5分間止まったあとに再開し、また動けば、その日のうちに何度でも止まりながら値段が進んでいきます。通常取引の終わりの10分間に止まっていた場合は、取引を再開せずに引けの手続きに入ります。
市場全体のサーキットブレーカー(S&P500の7%・13%・20%)
市場全体のサーキットブレーカーは、S&P500がその日のうちにどれだけ下げたかで決まります。SECの投資家向けページによると、前日の終値を基準に7%(レベル1)・13%(レベル2)・20%(レベル3)の3段階で、取引所は毎日その水準を指数の値(ポイント)で計算しておきます。大阪取引所の有識者コラムによると、現物の取引と合わせてCMEのS&P500先物も止まる仕組みです。
| 段階 | 前日終値からの下落 | 東部時間15:25より前 | 東部時間15:25以降 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 7% | 15分間止まる | 止まらない |
| レベル2 | 13% | 15分間止まる | 止まらない |
| レベル3 | 20% | 時刻にかかわらず、その日の取引は終わり | |
たとえばS&P500の前日の終値が6,000だったとします。レベル1は5,580、レベル2は5,220、レベル3は4,800を割り込んだところです。サーキットブレーカーは下落のときだけ働き、上昇では発動しません。大阪取引所のコラムもこの点を日本との違いに挙げています。
個別株のLULDと違って、相場全体の大きな下げは毎年起きるものではありません。それでもレベル3は時刻を問わずその日の取引を終わらせるので、通常取引の途中で決済できなくなる場面がありうると知っておくと慌てずに済みます。指数の基本はS&P500とはで書いています。
日本時間では何時ごろ発動しうるか(夏時間・冬時間)
LULDも市場全体のサーキットブレーカーも、働くのは通常取引の時間だけです。SECのページはLULDの適用時間を東部時間9:30〜16:00としています。松井証券のよくある質問も、プレマーケットではサーキットブレーカーは発動しないと案内しています。日本時間に直すと次のとおりです(夏時間は東部時間に13時間、冬時間は14時間を足します)。
| できごと | 東部時間 | 日本時間(夏時間) | 日本時間(冬時間) |
|---|---|---|---|
| 通常取引が始まり、LULDとサーキットブレーカーが働き始める | 9:30 | 22:30 | 23:30 |
| レベル1・2が発動しても止まらなくなる | 15:25 | 翌4:25 | 翌5:25 |
| LULDの値幅が2倍になる(Tier 1など) | 15:35 | 翌4:35 | 翌5:35 |
| 通常取引が終わり、どちらも働かなくなる | 16:00 | 翌5:00 | 翌6:00 |
日本で暮らしていると、市場全体が止まりうる時間はちょうど夜中から明け方に当たります。朝起きて「昨夜サーキットブレーカーが発動した」と知ることになりがちです。取引時間と夏時間の切り替えの日は米国株の取引時間と夏時間で確かめられます。
2026年10月時点では、プレマーケット(夏時間17:00〜22:30)やアフターマーケット(夏時間5:00〜9:00)にLULDもサーキットブレーカーも働きません。12月7日(日本時間)から23時間取引が始まると取引時間が変わるので、時間外の扱いも合わせて確かめます。決算が引け後に出ると、翌朝の時間外取引で大きく値が飛ぶのはこのためです。時間外取引の仕組みはプレマーケット・アフターマーケットで扱っています。
日本の証券会社が独自に設けている注文の制限
取引所に値幅制限がない代わりに、日本の証券会社は指値の値段が今の株価から離れすぎた注文を受け付けない決まりを置いています。公式ページで数字まで確かめられた会社だけを載せました。
| 証券会社 | 決まり | 中身 |
|---|---|---|
| 楽天証券 | 指値の発注制限 | 買いは基準から25米ドル以下で+10%、25米ドル超50米ドル以下で+5%、50米ドル超で+3%まで(売りは同じ割合で下)。基準は取引時間中が最良気配、時間外は前日終値 |
| SBI証券 | 失効の目安 | 基準値(原則は直近の株価)より高い買い・安い売りは、25ドル以下で10%以上、25ドル超50ドル以下で5%以上、50ドル超で3%以上離れると原則失効 |
| 三菱UFJ eスマート証券 | 値幅制限は無しと明記 | 今の株価と指値が大きく離れていると、現地の証券会社か取引所が受け付けないことがある |
たとえば楽天証券で前日の終値が60ドルの株を、取引時間外に指値で買う場合です。50米ドル超なので上限は+3%の61.8ドル、売りなら58.2ドルが下限です。楽天証券は、時間外に前日の終値を基準に出した指値が、取引が始まったあとの値段で計算した幅を超えると失効する場合があるとしています。決算で大きく動いた翌日は、前夜に入れた指値が消えていることがあるわけです。
成行の買いにも備えがあります。SBI証券は買付注文で、寄付前は前営業日の終値、取引時間中は直近の価格に、100ドル未満なら110%、100ドル以上なら103%を上乗せして買付余力を押さえます。三菱UFJ eスマート証券も「米国株式は制限値幅がないため」として、成行の買いに103%のバッファを置く決まりです。成行発注時の価格変動に備えるためと説明されています。
サーキットブレーカーが発動したときの注文について、松井証券は「取引所側で失効や取消となる場合があります」と案内しています。止まっている間に入れた注文の扱いは会社ごとに違うので、再開後に注文の状態を見直すのが確実です。
値幅制限がない米国株で気をつけること
値幅制限がないので、日本株のストップ安のように売り注文が並んだまま何日も売れないということは起きにくい仕組みです。その一方で、守ってくれる上限もありません。私が米国株で先に決めておくのは次の三つです。
一つめは決算をまたぐかどうかです。引け後の決算は日本時間の朝に出て、時間外取引で値段が先に動きます。2026年10月時点では時間外にLULDが働かないので、通常取引が始まる前に値段が大きく飛ぶことがあります。米国株の決算カレンダー(日本時間)で発表日を見て、持ち続けるか量を減らすかを先に決めておくのが私のやり方です。
二つめは逆指値の置き方です。値段が飛んだときの逆指値は、置いた値段より不利なところで約定します。逆指値の値段は「そこで売れる」約束ではありません。
三つめは指値を基本にすることです。上の表のとおり、日本の証券会社は指値の幅に決まりを置いています。売買が少ない銘柄や時間帯ほど、成行は思わぬ値段で約定しやすくなります。値段を決めて出し、約定しなければ出し直すほうが、結果として損は小さく済むはずです。相場全体の不安を数字で見るならVIX(恐怖指数)も参考になります。
決算や指標の発表直後に売買できる口座
米国企業の決算は、引け後なら日本時間の朝5〜6時台、寄り前なら夜19〜21時台に出ます。発表の直後に売買できるかは、口座が時間外取引(プレマーケット・アフターマーケット)に対応しているかで決まります。対応していない口座では、通常の取引が始まる日本時間22時30分(冬時間23時30分)まで待つしかありません。
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米国株の値幅制限とサーキットブレーカーに関するよくある質問
米国株にストップ高はありますか?
米国株のサーキットブレーカーは何%で発動しますか?
サーキットブレーカーは日本時間の何時に発動しますか?
時間外取引でも売買が止まることはありますか?
日本の証券会社で米国株の指値に制限はありますか?
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock編集長・専業投資家歴20年)
数字はSEC・NYSE・LULDプラン・日本取引所グループと各証券会社の公式ページ(2026年10月時点)によります。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や証券会社の売買・口座開設を勧めるものではありません。当サイトは証券会社の口座開設などでアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新2026-10-12。

