証券会社のセキュリティ設定を10社比較|マネックス口座開設停止・岩井コスモ不正売買を受けて今できる対策

証券口座を守る設定は、パスキーを登録したところで終わりではありません。パスワードだけで入れる入口を閉じる設定や、使わない取引を止める設定があります。出金先を変えられないようにする設定を本人が選べる証券会社も増えています。

10月にはマネックス証券が新規口座の受付を止め、岩井コスモ証券では本人の知らない売買注文が出されました。どちらも証券会社の委託先が狙われた事件で、利用者の設定だけでは防げません。一方で、盗まれたパスワードでログインされる被害は、自分の設定で入口を閉じておけば大きく減らせます。10社の公式ページを読み比べ、本人がいまできる設定を並べました。

先に結論

①パスキーを登録したら、パスワードだけで入れるログインを止める。SBI証券・松井証券・三菱UFJ eスマート証券は自分で設定、マネックス証券・DMM.com証券は登録すると自動で切り替わる
②使わない取引は止めておける。楽天証券は「投資信託の買付以外を停止」「外国株式のみ停止」を自分で選べ、SBI証券は受付フォームから外国株式などを止められる
③めったにログインしないならログインごと止める手もある。SBI証券のログイン一時利用停止中も、設定済みの投資信託の積立は原則続く
④今回調べた中で出金先の変更をロックできるのは楽天証券と松井証券(電話で依頼)。解除は書面になる
⑤金融庁の暫定値では、不正アクセスの件数は2026年7月から数十件まで減った。ただ委託先への攻撃のように、個人の設定では防げない被害は残る

10月に起きたこと|マネックス証券と岩井コスモ証券

証券会社 公式発表の内容
マネックス証券 口座開設のシステムのうち外部委託先が管理する部分に、第三者がアクセスを試みた形跡を確認。予防のため10月19日から、ウェブサイトとアプリからの新規口座の受付を止めている(10月20日発表)
岩井コスモ証券 委託先のトレードワークスへの不正アクセスを10月14日に検知。4,975人の氏名やメールアドレスなどが見られる状態になった。同じ日に売買管理システムへの攻撃もあり、7口座で本人の意図しない売買注文が出され、うち5口座で約定した
三菱UFJ eスマート証券 偽のサイトで入力された情報が悪用される不正アクセスが起きているとして、10月15日に注意を呼びかけた。メールのワンタイムパスワードによる認証が悪用されるケースがあるとしている

マネックス証券は、口座開設のシステムは口座の残高や取引を管理するシステムとは別だと説明しています。情報が漏れたかどうかは、発表の時点では書かれていません。再開の時期も未定です。

岩井コスモ証券は対象の人に10月14日に連絡し、不正な注文は取引前の状態に戻され、利用者の負担は出ていないとしています。会社はパスキーが破られたのではなく、システムの弱いところに総当たりの攻撃を受けたと説明しました。見られた情報に取引暗証番号は含まれていませんが、該当する人には不審なメールが届くおそれがあるとしています。

不正アクセスの件数|2026年7月から大きく減った

証券会社への不正アクセスと不正取引の件数の推移(2025年1月〜2026年9月)
金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引」(2026年10月9日更新)の月別の値から作成。発生日ベースの暫定値

金融庁が集めている証券会社の被害は、2025年4月の不正アクセス5,490件が最も多い月でした。2026年に入っても月に百数十〜三百件台が続きましたが、7月からは数十件まで減っています。金融庁はこの数字を暫定値とし、まだ分かっていない被害がある可能性に触れています。

期間 不正アクセス うち不正取引
2025年(12か月) 17,717件 9,861件
2026年1〜6月 1,437件 749件
2026年7〜9月 98件 32件

金融庁は2025年10月に監督指針を改め、フィッシングに強い多要素認証(パスキーなど)を原則として2026年6月末までに必須にするよう証券会社に求めました。各社がログインのパスキー必須化を進めた時期と件数が減った時期は近いものの、どれだけ効いたかは公表されていません。ただし10月の2件のように、委託先のシステムが狙われる形の攻撃は利用者のパスキーでは防げません。

個人の設定で防げること・防げないこと

被害の形 本人の設定で
パスワードを盗まれてログインされる 大きく減らせる。パスキーだけでログインする設定にすれば、パスワードを知られても入れない。パスキーを保存しているApple・Googleのアカウントの守りも合わせて固める
保有株を売られ、別の株を買わされる 小さくできる。使わない取引を止めておけば、ログインされても注文が通らない
出金先を書き換えられる 小さくできる。出金先の変更ロックや出金の停止が使える会社がある
証券会社や委託先のシステムが攻撃される 防げない。通知で早く気づき、すぐ止める窓口を知っておくことが中心になる

乗っ取りの手口とパスキーの仕組みは証券口座の乗っ取り|出金を止めても防げない理由と対策にまとめています。ここからは、その先の「入口を閉じる設定」を会社ごとに見ていきます。

証券会社10社の比較|本人が閉じられる入口

各社の公式サイトとよくある質問を2026年10月22日に確かめた内容です。「公式に記載なし」は、その機能が無いと確かめたのではなく、公式ページで見つけられなかったという意味です。

パスワードだけのログインを止める

証券会社 やり方
SBI証券 「ログインパスワード無効設定」を自分で有効にする。使わないアプリのログインもまとめて止まる
楽天証券 パスキーのログインを6月から順次必須化。パスキーを使えない場合はIDとパスワードに絵文字認証を加えてログインできる
マネックス証券 パスキーを登録すると自動で「パスキーのみでログイン」になる
松井証券 セキュリティ設定で「パスキーでのみログイン」を選ぶ
三菱UFJ eスマート証券 パスキー以外のログインを無効にする設定がある。会社も設定を呼びかけている
SMBC日興証券 パスキーが必須になったあとに従来の方法でログインすると、取引や出金などの一部の機能が使えない
野村證券 6月27日からオンラインの取引と出金にはパスキーのログインが必要(パスキーを使えない人向けの特例口座あり)
GMOクリック証券 11月28日からパスキー設定済みの人はIDとパスワードでログインできなくなる
DMM.com証券 パスキーを設定すると、IDとパスワードのログインには戻せない
岩井コスモ証券 ログインと出金のパスキーを9月27日から順次必須化

取引やログインを自分で止める

証券会社 できること
SBI証券 ログイン一時利用停止を画面で設定。外国株式・出金などの取引制限は受付フォームから申し込む
楽天証券 画面で5種類から選んで止める。電話(原則24時間)でも止められる
マネックス証券 「取引・サービスの一時的な利用停止」を画面で設定(商品ごとには選べない)
松井証券 電話で依頼。ログイン停止のほか、売却だけ・買付だけ・商品を指定した制限もできる
SMBC日興証券 電話で依頼すればログインを止められる
GMOクリック証券 取引規制を希望するなら会社に連絡する
三菱UFJ eスマート証券 会社の判断で停止する仕組み(本人の申し出も判断の材料)
野村證券・DMM.com証券・岩井コスモ証券 本人が止める方法は公式に記載なし

出金先の口座を変えにくくする

証券会社 できること
楽天証券 電話でウェブ上の変更を制限できる。制限中の変更と解除は書面
松井証券 電話でロックできる。解除は書類が必要
マネックス証券・SMBC日興証券・野村證券 いまは書面での手続きだけ(日興はウェブでの振込先口座の追加を停止中)
SBI証券 ウェブで変えるときはメールの認証コードが必要。出金そのものは受付フォームで止められる
GMOクリック証券・DMM.com証券 変更のときに認証コードやパスキーが必要
三菱UFJ eスマート証券・岩井コスモ証券 変更を制限する方法は公式に記載なし

SBI証券でできる設定

①ログインパスワード無効設定

パスキーを登録している人だけが使える機能で、ユーザーネームとパスワードのログインを止めてパスキーだけにします。2026年7月10日からは、有効にすると株アプリやFXアプリなど「アプリ・ツールのログイン制限」も自動でかかるようになりました。解除しても、アプリ側の制限は自動では外れないので別に解除します。

公式サイトの「サービス案内」 → 「セキュリティ」 → 「各種制限設定」 → 「ログインパスワード無効設定」(要ログイン) → パスキーで認証

②ログイン一時利用停止設定

ウェブサイト・アプリ・PCツールのすべてでログインできなくする機能です。停止中も、設定済みの投資信託の積立は原則として注文が続きます。ただし「重要なお知らせ」を確認していないために注文が止まっている場合は例外で、停止中はそのお知らせを読めません。信用取引の建玉がある人は、追証や強制返済が起きる可能性も残ります。

公式サイトの「サービス案内」 → 「セキュリティ」 → 「各種制限設定」 → 「ログイン一時利用停止設定」(要ログイン) → 登録メールアドレスで認証

③取引制限受付フォーム

SBI証券はウェブで口座を開くと、外国株式の取引口座も自動で開かれます。まず「My設定」→「お取引関連・口座情報」→「取引口座」で、外国株式が開設済みになっていないかを確かめてください。

よくある質問の「不正なアクセスを防止するための対策」から、取引制限の受付フォームに進めます。外国株式は「全停止」か「買付・新規のみ停止」を選べ、出金やFXなども止められます。申し込みは口座の状況を確かめてから順次対応となり、受付後の取り消しはできません。国内株式・投資信託を止めると投資信託の積立買付も止まり、解除は電話だけになります。

④ログイン通知と出金の確認

ログイン通知メールは「My設定」→「Eメール通知サービス」で受け取れます。登録情報の変更や出金の指示は、通知を止めている人にも必ずメールが届きます。出金は金額にかかわらず二要素認証が必要です。

楽天証券でできる設定

①取引やサービスの一時的な利用停止

止める範囲を5種類から選べるのが楽天証券の特徴です。設定には登録電話番号へのワンタイムキーで本人確認をします。

ログイン → 「マイメニュー」 → 「セキュリティ設定」 → 「取引の一時的な利用停止」 → 止める範囲を選ぶ → 電話のワンタイムキーで認証

選ぶ項目 残るもの 止まるもの
投資信託の買付以外を停止 ログイン・投資信託の買付(積立含む)・入金 投資信託の売却・国内株式・外国株式・出金
投資信託と出金以外を停止 ログイン・投資信託の売買・入金・出金 国内株式・外国株式
外国株式のみ停止 ログイン・国内株式・投資信託の売買・入金・出金 外国株式(米国・中国・アセアン)
すべての取引を停止 ログイン・入金 投資信託の売買・外国株式・出金
ログイン・すべての取引を停止 入金 ログインを含むすべて

積立だけの人には「投資信託の買付以外を停止」が合っています。積立は続けながら、保有している投資信託を勝手に売られたり出金されたりするのを防げます。iDeCoの拠出は、利用停止の設定後も止まりません。ウェブの説明の表には国内株式の欄がないため、国内株式の扱いは電話の案内の表に合わせて書いています。

投資信託の取引まで止める設定にすると、積立の注文はエラーになります。引落しの方法によっては代金だけ引き落とされ、あとで返金の処理になるとのことです。外貨の両替(外国為替取引)はどの設定でも止まりません。国内株式の逆指値注文はロック中は執行されず、解除したときに思わぬ価格ですぐ約定することがあります。

②電話で緊急に止める

スマホをなくしたときや、身に覚えのない取引を見つけたときは電話でも止められます。番号は0120-852-638(使えないときは03-6706-2753)で、受付は原則24時間です。日曜2時30分〜3時30分は保守のため使えません。

音声案内の番号 止まる範囲
1 ログインを含むすべての取引
2 投資信託の買付(積立含む)以外
3 投資信託の売買(積立含む)と出金以外

電話で止めた制限を解除するときは、登録している電話番号からかけ直す必要があります。ほかの番号や非通知からは解除できません。

③出金先指定口座の変更を制限する

楽天証券に電話すると、出金先の銀行口座をウェブで変えられないようにできます。制限中の変更と解除は書面での手続きになります。配当金を銀行口座で受け取っている人は、その受取口座も変えられなくなる点に注意が必要です。

④ログイン通知と注文通知

ログイン通知は2025年6月からすべての口座に適用されています。注文通知は「セキュリティ設定」→「注文通知」で商品ごとに設定できます。

マネックス証券・松井証券でできる設定

マネックス証券

パスキーを登録すると、自動的に「パスキーのみでログイン」になり、IDとパスワードだけではログインできなくなります。取引を止めたいときは、マイページの「登録情報」→「取引・サービスの一時的な利用停止」から設定します。

区分 主なもの
閲覧も取引もできなくなる 出金・登録情報の照会・外国株の管理サイト・スマホアプリ(マネックストレーダーなど)
取引だけ止まる 国内株式・外国株式・投資信託・債券・先物オプション
止まらない ログイン・残高照会・入金・設定済みの投資信託の積立

再開するには取引パスワードの再設定が必要です。手続きはパスキーとマイナンバーカードでのオンライン、書類の郵送、電話の3つから選べます。急ぐときは電話(平日8時〜17時)でも取引制限を受け付けています。

松井証券

セキュリティ設定で「パスキーでのみログイン」を選べます。利用の制限は電話で受け付けています。ログインを含めた全面停止のほか、ログインはできる状態での取引の停止や出金の停止も頼めるとしています。売却だけ・買付だけを止める指定や、商品を選んで止める指定もできます。

出金先の銀行口座の変更機能にロックをかけることもでき、解除には書類が要ります。出金を依頼するときに、取引暗証番号に加えてショートメッセージか自動音声の認証番号を求める設定もあります。

自分はどれを止めればいいか|使い方別の目安

全部を止める必要はありません。自分が使う機能は残し、使わない入口だけを閉じるのが基本です。証券会社と使い方を選ぶと、優先して見直したい設定が出ます。

使い方を選ぶと、閉じておきたい設定が出ます

証券会社

ふだんの使い方

各社の公式ページ(2026年10月22日時点)をもとにした目安です。設定の名前や手順は変わることがあるので、実際に設定する前に各社の画面で確かめてください。

使い方 考え方
積立だけ ログインする機会が少ないので、ログインや売却・出金を止めても困りにくい。積立が続く設定を選ぶ
日本株も売買する 使ったことのない外国株式を止める。乗っ取りでは保有株を売られ、その代金で国内外の小型株を買われる手口が多い。日本株の売買は通ってしまうので、ログインの守りが中心になる
外国株や信用取引も使う 止められる取引が少ない。パスキーだけのログインと、ログイン・注文の通知で早く気づくことが中心

設定する前に知っておきたい注意点

注意点 内容
積立が止まる設定がある SBI証券の取引制限で投資信託を止める、楽天証券で投資信託の取引まで止めると、積立も止まる
解除に時間がかかる SBI証券の取引制限の解除は電話だけ。楽天証券と松井証券の出金先ロックの解除は書面
信用取引の建玉 ログインを止めても追証や強制返済は起きる。自分で返済できなくなる点に注意
逆指値注文 楽天証券では、ロック中は逆指値が執行されない
お知らせを読めない SBI証券のログイン停止中は「重要なお知らせ」を確認できず、未確認だと積立が止まる場合がある

アプリを削除しても、口座の取引そのものは止まりません。止めたい取引は証券会社の設定で止める必要があります。

身に覚えのない取引を見つけたら

まず証券会社に連絡して口座を止めてもらいます。電話で24時間止められると案内しているのは、今回調べた中では楽天証券だけでした。SBI証券とマネックス証券は、画面から自分でいつでもログインや取引を止められます。ほかの会社の電話は平日の日中が中心なので、番号を前もって控えておくと安心です。

証券会社 連絡先(受付時間)
SBI証券 0800-170-5333(平日8時〜17時)
楽天証券 0120-852-638(原則24時間・自動音声)
マネックス証券 0120-234-285、携帯電話からは0570-053-491(平日8時〜17時)
松井証券 0120-953-006(平日8時30分〜17時)
SMBC日興証券 0120-285-250(平日8時〜18時・土曜9時〜17時)

補償の考え方は会社ごとに違います。SBI証券は2025年10月26日以降の被害について、IDやパスワードの管理と、会社が用意したセキュリティ機能を使っていたかなどを見て個別に決めるとしています。設定しておくことが、補償を受けるときの判断にも関わってくるということです。Apple・Googleのアカウントを経由した乗っ取りへの備えはApple・Googleアカウント乗っ取りで証券口座不正取引相次ぐ|パスキー悪用の新手口と今すぐできる対策で詳しく扱っています。

まとめ

ポイント 内容
10月の事件 マネックス証券は10月19日から新規口座の受付を停止。岩井コスモ証券は委託先への不正アクセスと同じ日に7口座で不正な注文(原状回復ずみ)
まずやること パスキーを登録し、パスワードだけのログインを止める
次にやること 使わない取引を止める(楽天証券の5種類、SBI証券の受付フォーム、松井証券は電話)
積立だけの人 SBI証券のログイン一時利用停止、楽天証券の「投資信託の買付以外を停止」
防げないもの 証券会社や委託先への攻撃。通知と緊急の連絡先で早く止める

何年もかけて積み立ててきた資産も、入口が1つ開いていれば短い時間で売られてしまいます。まずは自分の証券口座に、使っていないのに開いたままの入口がないかを確かめてみてください。

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