
ADR(American Depositary Receipt、米国預託証券)とは、米国以外の国の企業の株式を、米国の取引所でドル建てで売買できるようにした証券です。台湾の TSMC(TSM)、オランダの ASML(ASML)、日本のトヨタ(TM)やソニー(SONY)は、米国株のようにティッカーで買えますが、正確には「株そのもの」ではなく「株を預かっている銀行が発行した預かり証」を買っています。この違いが、配当の税金と手数料に効いてきます。
- ADR は米国の銀行が現地の株を預かり、その預かり証を米国で上場させたもの。買い方・売り方は普通の米国株と同じ
- 1 ADR=現地株 0.1〜10 株のように比率が決まっている。株価を比べるときは比率を確認
- 配当は現地の税率で源泉徴収されたうえ日本で課税。さらにADR 管理手数料(年 1〜3 セント/株)が配当から引かれる
ADR の仕組み:誰が何を発行しているか
ADR は 3 者で成り立ちます。現地の企業(例:TSMC)、預託銀行(JP モルガン、シティ、BNY メロンなど)、米国の投資家です。預託銀行が現地市場で株を買って保管し、それを裏付けに米国で「預託証券」を発行します。投資家はこの預託証券をニューヨーク証券取引所やナスダックで売買します。
| 種類 | 意味 | 個人投資家への影響 |
|---|---|---|
| スポンサード ADR | 企業が自ら預託銀行と契約して発行 | 大半の有名 ADR がこれ。開示が整っている |
| 非スポンサード ADR | 企業の関与なしに銀行が発行 | 店頭(OTC)取引が中心で、日本の証券会社では扱いが少ない |
| レベル 1〜3 | 米国での開示水準。レベル 2・3 は取引所上場 | 日本の証券会社で買えるのはほぼレベル 2・3 |
「1 ADR=何株か」の比率を必ず確認する
ADR は現地株 1 株=1 ADR とは限りません。トヨタ(TM)は現地株 10 株=1 ADR、ソニー(SONY)は 1 株=1 ADR、TSMC(TSM)は台湾の現地株 5 株=1 ADR です。
比率は預託銀行のサイトか、日本の証券会社の銘柄ページに載っています。
配当の税金:普通の米国株より 1 段階多い
普通の米国株の配当は「米国で 10% 源泉 → 日本で 20.315%」ですが、ADR は現地の国の税率で源泉徴収されます。米国では課税されません。
| ADR の国 | 現地の源泉税率(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 英国(BP、ユニリーバなど) | 0% | 英国は配当に源泉税をかけないため、ADR の中では有利 |
| 台湾(TSMC) | 21% | 日本との租税条約で軽減される場合がある |
| オランダ(ASML) | 15% | — |
| 日本(トヨタ・ソニー) | 15.315% | 日本企業の ADR を買っても、日本株を買った場合と税金は変わらない |
現地で引かれた税金は、確定申告で外国税額控除の対象になります(NISA では取り戻せません)。税率は租税条約で変わるため、正確な数字は証券会社の案内か国税庁で確認してください。
ADR 管理手数料:配当から年 1〜3 セント引かれる
預託銀行は保管と配当の取り次ぎの対価として、1 ADR あたり年 0.01〜0.03 ドル程度の管理手数料(デポジタリーフィー)を取ります。配当がある銘柄では配当から差し引かれ、配当がない銘柄では証券会社の口座から引き落とされます。100 ADR を持っていれば年 1〜3 ドル。大きな額ではありませんが、「配当の入金額が計算より少ない」原因の 1 つです。
決算の開示は 10-K ではなく 20-F・6-K
米国企業は年次報告書を 10-K、四半期報告書を 10-Q、臨時報告を 8-K として SEC に提出しますが、ADR を発行する外国企業は年次が 20-F、四半期や臨時の開示は 6-K です。決算発表のタイミングも本国の慣行に従うため、米国企業のように「四半期ごとに決まった時間帯」とは限りません。Pacific Stockの決算カレンダーは 8-K を機械的に集めている都合上、ADR 銘柄は対象外です。
日本の証券会社での買い方と注意点
- SBI・楽天・マネックス・松井などの米国株の画面で、普通の米国株と同じくティッカー(TSM、ASML、TM)で注文できます。手数料も為替コストも米国株と同じです。
- NISA の成長投資枠で買えます(ただし現地の源泉税は残ります)。
- 日本企業の ADR(トヨタ・ソニーなど)をわざわざ米国で買うメリットはほぼありません。東証で買えば為替コストも管理手数料もかかりません。
- 台湾・欧州などの企業を日本から買う手段としては、ADR が最も手軽です。
ADRに関するよくある質問
ADR と普通の米国株の違いは何ですか?
ADR の配当はいつ、いくら入りますか?
ADR は NISA で買えますか?
TSMC は ADR しか買えませんか?
関連する用語
- ティッカーシンボル
ティッカーシンボルとは、米国株の銘柄を表す 1〜5 文字のアルファベット(AAPL、NVDA な - 配当金
配当金とは、企業が稼いだ利益の一部を株主に分配するお金です。 - 外国税額控除
外国税額控除とは、米国株の配当に米国で課された 10% の税金を、日本の所得税・住民税から差し引 - ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場している投資信託です。
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
ADR の仕組みは米国 SEC の投資家向け解説、比率は各預託銀行の公表値、税率は国税庁・各国税務当局の公表値(2026 年 9 月時点)にもとづきます。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-11。

