
投資金額10万円以下で買える株主優待は、東証に323社あります。優待を出している会社のうち、100株が条件のものを1社ずつ調べた結果です。全体の29.4%にあたり、約3社に1社は10万円以内で優待の対象になります。
ただし、ここには知っておくべき事実があります。
10万円以下の323社のうち、102社(31.6%)が配当を出していません。投資額が10万円を超える774社では無配が30社(3.9%)なので、比率にして約8倍の差があります。
さらに優待利回りの高い順に並べると、上位10社のうち8社が無配でした。
この記事では、10万円以下で買える優待株を実データで整理したうえで、「安く買えること」と「良い会社であること」がどう違うのかを数字で示します。
この記事でわかること
・投資額別の内訳(3万円以下65社/3〜5万円58社/5〜10万円200社)
・10万円以下は31.6%が無配。10万円超は3.9%で約8倍の差
・投資額が下がるほど無配が増える(3万円以下は64.6%)
・市場区分別ではグロースの62.0%が無配
・実質利回りランキング上位20社(額面を検証した104社から)
・上位10社のうち8社、上位30社のうち17社が無配だったこと
・10万円以下に多い業種(小売業80社・サービス業71社)
・何を基準に選ぶかの5つのチェック
・配当と優待を合わせて見る考え方
※ この記事は公表データの集計であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。優待は2026年9月1日時点、株価は2026年9月4日時点、配当は直近12か月に実際に支払われた実績です。優待は変更・廃止されることがあります。購入前に必ず各社のIR情報で最新の条件を確認してください。
10万円以下で買える優待株は323社ある
東証で株主優待を実施しているのは1,653社です。そのうち100株が条件で株価を確認できた1,097社について、投資額を計算しました。
| 100株の投資額 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 3万円以下 | 65社 | 5.9% |
| 3〜5万円 | 58社 | 5.3% |
| 5〜10万円 | 200社 | 18.2% |
| 10万円以下 合計 | 323社 | 29.4% |
| 10万円超 | 774社 | 70.6% |
優待銘柄全体の中央値は17万4,900円、平均は22万6,873円です。10万円以下は「安いほう」に入りますが、決して少数派ではありません。
10万円以下は、3社に1社が無配
ここからが本題です。同じ1,097社について、直近12か月に実際に支払われた配当の有無を調べました。
| 投資額 | 社数 | 無配の社数 | 無配率 |
|---|---|---|---|
| 10万円以下 | 323社 | 102社 | 31.6% |
| 10万円超 | 774社 | 30社 | 3.9% |
31.6%と3.9%。約8倍の差があります。
10万円以下の優待株を選ぶということは、無配の会社を引く確率が8倍になる場所で選ぶ、ということです。
これは偶然ではありません。株価が安いということは、市場がその会社を安く評価しているということでもあります。業績が振るわなければ配当も出せません。投資額の小ささと、会社の状態は無関係ではないのです。
投資額が下がるほど、無配が増える
この傾向は、金額を細かく分けるとさらにはっきりします。
| 100株の投資額 | 社数 | 無配率 |
|---|---|---|
| 3万円以下 | 65社 | 64.6% |
| 3〜5万円 | 58社 | 36.2% |
| 5〜10万円 | 200社 | 19.5% |
| 10〜20万円 | 298社 | 5.4% |
| 20〜50万円 | 399社 | 3.0% |
| 50万円以上 | 77社 | 2.6% |
3万円以下では、64.6%が無配です。3社のうち2社が配当を出していません。
金額が上がるほど無配率は下がり、20万円を超えると3%前後で落ち着きます。きれいに連続した傾向が出ています。
グロース市場では62.0%が無配
10万円以下の323社を、市場区分で分けるとこうなります。
| 市場区分 | 社数 | 無配の社数 | 無配率 |
|---|---|---|---|
| プライム | 53社 | 9社 | 17.0% |
| スタンダード | 199社 | 49社 | 24.6% |
| グロース | 71社 | 44社 | 62.0% |
グロース市場の10万円以下では、62.0%が無配です。成長途中の会社が多く、利益を配当に回さず事業に使う段階にあるためです。
一方でプライムの53社は無配率17.0%と、大きく下がります。10万円以下でもプライム上場の会社を選べば、状況はかなり違ってきます(TOPIXとは?市場区分の見直し)。
実質利回りランキング(10万円以下・上位20社)
優待の額面を1件ずつ確認できた104社について、実質利回り順に並べました。
※ 実質利回り=年間の優待額面 ÷ 100株の投資額。額面が明記されている優待に限って集計しています。割引券など額面を金額に換算できないものは含めていません。
| 銘柄(コード) | 投資額 | 年間の額面 | 優待利回り | 配当 |
|---|---|---|---|---|
| ① abc(8783) | 5,600円 | 10,000円 | 178.57% | 無配 |
| ② フィスコ(3807) | 8,700円 | 13,200円 | 151.72% | 無配 |
| ③ 北の達人コーポレーション(2930) | 12,900円 | 7,370円 | 57.13% | 3.5円 |
| ④ ジーイエット(7603) | 4,100円 | 2,000円 | 48.78% | 無配 |
| ⑤ アトラグループ(6029) | 18,500円 | 4,800円 | 25.95% | 無配 |
| ⑥ KOZOホールディングス(9973) | 2,000円 | 500円 | 25.00% | 無配 |
| ⑦ ファンデリー(3137) | 20,600円 | 5,000円 | 24.27% | 無配 |
| ⑧ VTホールディングス(7593) | 53,700円 | 10,000円 | 18.62% | 24円 |
| ⑨ エム・エイチ・グループ(9439) | 23,000円 | 3,500円 | 15.22% | 無配 |
| ⑩ 田谷(4679) | 26,300円 | 3,300円 | 12.55% | 無配 |
| ⑪ 山喜(3598) | 16,700円 | 2,000円 | 11.98% | 無配 |
| ⑫ AFC-HDアムスライフサイエンス(2927) | 86,900円 | 10,000円 | 11.51% | 40円 |
| ⑬ カナミックネットワーク(3939) | 50,500円 | 5,400円 | 10.69% | 7.5円 |
| ⑭ パピレス(3641) | 99,400円 | 10,000円 | 10.06% | 10円 |
| ⑮ ストリーム(3071) | 10,500円 | 1,000円 | 9.52% | 3円 |
| ⑯ メディア工房(3815) | 42,900円 | 4,000円 | 9.32% | 無配 |
| ⑰ ランシステム(3326) | 66,000円 | 6,000円 | 9.09% | 無配 |
| ⑱ 総医研ホールディングス(2385) | 22,100円 | 2,000円 | 9.05% | 10円 |
| ⑲ ANAPホールディングス(3189) | 12,100円 | 1,000円 | 8.26% | 無配 |
| ⑳ ストライダーズ(9816) | 25,400円 | 2,000円 | 7.87% | 5円 |
※ 配当は直近12か月に実際に支払われた1株あたりの合計額です。今期以降の配当を保証するものではありません。
上位10社のうち8社が無配だった
この表をもう一度見てください。上から10社のうち、配当を出しているのは2社だけです。
| 範囲 | 無配の社数 | 無配率 |
|---|---|---|
| 利回り上位10社 | 8社 | 80.0% |
| 利回り上位30社 | 17社 | 56.7% |
| 104社の全体 | 30社 | 28.8% |
利回りの高い順に並べるほど、無配の会社が増えます。全体では28.8%なのに、上位10社では80.0%です。
利回りが高い=良い会社、ではない
なぜこうなるのか。優待利回りの計算式を見れば分かります。
優待利回り = 年間の優待額面 ÷ 投資額
分母は投資額、つまり株価です。株価が下がれば、優待の内容が何も変わらなくても利回りは上がります。
利回りが高くなる2つの理由
→ 会社が株主に還元する姿勢を持っている
② 株価が下がった(危ない理由)
→ 業績の悪化を市場が織り込んでいる
→ 配当を出す余力がなくなっている
→ 優待そのものが廃止される可能性もある
ランキングの数字だけでは、①と②を区別できません。
無配であるという事実は、②を見分けるための手がかりになります。配当を出せていない会社が、優待だけを続けられる保証はありません(優待利回りとは?計算式と5つの落とし穴)。
10万円以下に多い業種
323社を業種で分けると、偏りがあります。
| 業種 | 社数 |
|---|---|
| 小売業 | 80社 |
| サービス業 | 71社 |
| 情報・通信業 | 56社 |
| 卸売業 | 18社 |
| 不動産業 | 12社 |
| その他製品 | 12社 |
小売業とサービス業だけで151社。全体の約47%を占めます。
この2業種は、自社の店で使える食事券や割引券を優待にしやすい業種です。そのため優待の内容も、金券ではなく「その店で使うもの」に偏ります。生活圏に店がなければ、使い道がありません。
何を基準に選ぶか|5つのチェック
| 確認すること | なぜ見るのか |
|---|---|
| ① 配当を出しているか | 10万円以下は31.6%が無配。還元の余力があるかを映す |
| ② 優待の種類 | 金券なら使い道を選ばない。割引券は買う予定が要る |
| ③ 使う場所があるか | 小売・サービス業が約47%。生活圏に店がないと使えない |
| ④ 継続保有の条件 | 「6か月以上」などの条件があると、買ってすぐは対象外 |
| ⑤ 市場区分 | グロースは62.0%が無配。プライムなら17.0% |
①と⑤は、銘柄の名前を見る前に確認できます。配当を出していて、プライムかスタンダードに上場している会社に絞るだけで、選ぶ範囲はかなり整理されます。
配当と優待を合わせて見る
優待だけで判断すると、上位に無配の会社が集まります。そこで、配当と優待を合わせた総合利回りで見る方法があります。
総合利回り =(年間の配当 + 優待の額面)÷ 投資額
この見方をすると、無配の会社は優待の分しか積み上がりません。配当を出している会社は両方が乗ります。
たとえばVTホールディングス(7593)は投資額53,700円で優待10,000円、配当は1株24円なので100株で2,400円です。合わせて12,400円、総合利回りは約23.1%になります。優待だけで見た18.62%より上がります。
一方、優待利回り178.57%のabc(8783)は無配なので、総合利回りも178.57%のままです。数字は大きいままですが、そこに配当という裏付けはありません。
まとめ
この記事のポイント
・内訳は3万円以下65社/3〜5万円58社/5〜10万円200社
・10万円以下は31.6%が無配。10万円超は3.9%で約8倍の差
・3万円以下では64.6%が無配。金額が下がるほど増える
・市場区分別ではグロース62.0%/スタンダード24.6%/プライム17.0%
・優待利回り上位10社のうち8社が無配(上位30社では17社)
・利回りは株価が下がっても上がる。分母が投資額だから
・業種は小売業80社・サービス業71社で約47%。使う店があるかを見る
・選ぶ基準は配当・優待の種類・使う場所・継続保有条件・市場区分の5つ
・総合利回り=(配当+優待額面)÷ 投資額で見ると裏付けが分かる
10万円以下で買える優待株は323社あり、選択肢としては十分な数があります。優待を始めるときに、まとまった資金が必要というわけではありません。
ただし同じ場所に、無配の会社が10万円超の8倍の密度で集まっています。そして利回りの高い順に並べるほど、その割合は増えます。
「安く買える」と「良い会社である」は別のことです。配当を出しているかどうかを先に見れば、この2つを区別できます。ランキングの上から順に見る前に、その1列を確認することをおすすめします。
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