移動平均乖離率とは、株価が移動平均線からどれだけ離れているかを%で表した指標です。

「25日線から+5%で売り」といった目安を見かけますが、その数字をそのまま使うと、多くの銘柄で機能しません。

この記事では、なぜ一律の基準が使えないのかと、銘柄ごとに自分で基準を決める方法を解説します。

この記事でわかること

・乖離率が示していること
・固定の%が使えない理由
・銘柄ごとに基準を決める手順
・指数と個別株の違い
・使うときの注意点

移動平均乖離率とは

移動平均乖離率(読み方:いどうへいきんかいりりつ)は、株価と移動平均線の距離を%にしたものです。

(株価 − 移動平均) ÷ 移動平均 × 100 = 乖離率(%)
株価 25日移動平均 乖離率
1,200円 1,000円 +20%
1,000円 1,000円 0%
900円 1,000円 −10%

プラスなら平均より高い位置、マイナスなら平均より安い位置にいるということです。

なぜこの数値が意味を持つのか

移動平均線はその期間に買った人の平均買値を表します。乖離率はそこからの距離なので、「いま買っている人が、平均より何%高く買っているか」を示します。

プラス乖離が大きいとき
① 直近に買った人の含み益が大きい
② 利益確定したい人が増える
売り圧力が高まり、平均へ引き戻されやすい

逆にマイナス乖離が大きいときは、売られすぎた反動で買い戻しが入りやすくなります。この「平均へ戻ろうとする力」を利用する指標です。

詳しい仕組みは単純移動平均線で解説しています。

固定の目安が使えない理由

ここがこの指標の最重要ポイントです。「±5%で反転」といった一律の基準は成立しません。

銘柄の性質 ±5%という数値の意味
値動きが小さい大型株 かなり大きい乖離。滅多に到達しない
値動きが激しい小型株 ごく普通の範囲。毎週のように起きる
日経平均などの指数 やや大きめ。警戒される水準

同じ「+5%」でも、銘柄によって「異常事態」にも「日常」にもなります。

乖離率はボラティリティに比例して大きくなります。
値動きが2倍荒い銘柄では、乖離率も2倍動くのが当たり前です。
他人が使っている数値をそのまま持ち込んではいけません。

銘柄ごとに基準を決める手順

ではどうするか。答えはその銘柄の過去の乖離率と比べることです。

① 過去1年分の乖離率を表示する チャートに指標を追加する
② 上限と下限を目で確認する この銘柄はどこまで振れるのか
③ 頻繁に反転している水準を探す 何度も跳ね返っている%
④ それを自分の基準にする ±5%かもしれないし、±20%かもしれない
⑤ 定期的に見直す 値動きの荒さが変われば基準も変わる

この作業をすると、同じ銘柄でも時期によって適正な基準が違うことに気づきます。決算や材料で値動きの性質が変わるためです。

プラス乖離とマイナス乖離

上下は対称ではありません。下落のほうが速く大きいという相場の性質が乖離率にも表れます。

株価の急落によって移動平均乖離率が大きくマイナスになった場面
急落局面では乖離率が一気にマイナスへ振れる
  プラス乖離 マイナス乖離
起きやすい局面 上昇が続いたとき 急落したとき
拡大の速さ じわじわ広がる 一気に広がる
解消のしかた 横ばいでも解消される 反発するか、平均が下がるまで続く

覚えておきたいのは乖離は「株価が動く」以外に「移動平均が動く」ことでも解消される点です。株価が横ばいでも、移動平均が追いついてくれば乖離率は縮みます。

期間の選び方

期間 性質 向いている使い方
5日 乖離幅が小さく、頻繁に0を通る 短期売買のタイミング
25日 最も標準的 押し目・戻りの判断
75日 乖離幅が大きくなりやすい 中期の行き過ぎを見る

期間が長いほど移動平均の動きが鈍いため、同じ株価でも乖離率は大きく出ます。期間を変えたら基準も作り直してください。

ダイバージェンス

株価が上昇する一方で移動平均乖離率が切り下がるダイバージェンス
株価は上昇(赤矢印)だが乖離率は切り下がっている(青矢印)

株価が高値を更新しているのに乖離率が前の高値に届かない状態です。上昇はしているものの、移動平均線からの距離が縮まってきていることを意味します。

これは上昇のペースが落ちているサインです。移動平均線が株価に追いついてきている、つまり勢いが平準化しつつあるということです。

指数と個別株の違い

対象 乖離率の性質
日経平均株価などの指数 多数の銘柄の平均なので振れ幅が小さい。過熱感の判断に使いやすい
大型株 比較的おだやか。基準が安定しやすい
小型株・材料株 乖離率が極端に振れる。目安が定まりにくい

市場全体の過熱を見たいときは指数の乖離率、個別銘柄の売買タイミングにはその銘柄自身の乖離率を使い分けてください。

ボリンジャーバンドとの関係

実は「銘柄ごとに基準が違う」という問題を自動で解決している指標があります。ボリンジャーバンドです。

  移動平均乖離率 ボリンジャーバンド
測っているもの 平均からの距離(%) 平均からの距離(標準偏差)
基準の決め方 自分で決める必要がある 銘柄ごとに自動調整される
わかること 何%離れたかという絶対量 その銘柄として異常かどうか
弱点 銘柄間で比較しにくい 実際の値幅がわからない

ボリンジャーバンドはその銘柄の値動きの荒さ(標準偏差)を使って幅を決めるため、荒い銘柄では自動的にバンドが広がります。

一方で乖離率には「何%」という具体的な数字が残ります。「−15%まで下がった」は資金計画に直結する情報ですが、「−2σ」だけでは何円の話かわかりません。

使い分け
・その銘柄として異常かを知りたい → ボリンジャーバンド
・実際に何%動いたかを知りたい → 移動平均乖離率

弱点と注意点

弱点 内容
① 基準が絶対でない 銘柄・時期・期間設定でまったく変わる
② 逆張り前提の指標 強いトレンドでは乖離したまま伸び続ける
③ 材料には無力 決算や不祥事による急変は「行き過ぎ」ではなく再評価
④ 時間の情報がない いつ戻るかは示さない。翌日かもしれないし3か月後かもしれない

③は特に重要です。業績が大きく変わったことによる下落は、平均へ戻る保証がありません。乖離率だけを根拠にした逆張りは、下落理由を確認してから行ってください。

使うときの手順

① その銘柄の過去の振れ幅を見る 基準を自分で作る
② 下落理由を確認する 業績要因なら戻らない可能性
③ トレンドの有無を確認 トレンド中は乖離したまま進む
④ 反転を待ってから動く 到達しただけでは判断しない
⑤ 損切りを決めておく 乖離はさらに拡大しうる

この指標は「行き過ぎているかどうか」は教えてくれますが、「いつ戻るか」は教えてくれません。時間の情報を持たないことが最大の制約です。

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

移動平均乖離率に関するよくある質問

何%になったら買い時ですか?
一律の基準はありません。値動きの小さい大型株では−5%でも大きな乖離ですが、値動きの激しい小型株では−20%が通常の範囲ということもあります。その銘柄の過去1年の乖離率を確認し、何度も反転している水準を自分の基準にしてください。
期間は何日がいいですか?
25日が最も標準的です。短期売買なら5日、中期の行き過ぎを見たいなら75日を使います。期間が長いほど乖離率は大きく出るため、期間を変えたら基準も作り直す必要があります。
乖離率は必ず0に戻りますか?
いずれ縮小しますが、それは株価が戻るからとは限りません。株価が横ばいのままでも移動平均線が追いついてくれば乖離率は縮みます。「乖離が解消した=株価が戻った」ではない点に注意してください。
RSIとどう違いますか?
乖離率は移動平均線からの距離を実際の%で示すのに対し、RSIは値動きに占める上昇分の割合を0〜100に変換して示します。乖離率は上限がないため、どこまでも拡大しうるという違いもあります。
急落したときに買ってもいいですか?
下落の理由を確認してからにしてください。需給要因の急落なら平均へ戻りやすい一方、業績悪化や不祥事による下落は企業価値の再評価であり、乖離が解消しないまま安値圏で推移することがあります。
プラス乖離とマイナス乖離では性質が違いますか?
違います。上昇はじわじわ進むのに対し下落は速いため、マイナス乖離のほうが短期間で大きく拡大しやすい傾向があります。同じ%でも意味合いが異なる点を意識してください。
日経平均の乖離率は何に使えますか?
市場全体の過熱感や悲観の度合いを測るのに使えます。多数の銘柄の平均であるため振れ幅が小さく、個別株より基準が安定しやすいという利点があります。
乖離率だけで売買できますか?
おすすめしません。行き過ぎているかは示しても、いつ戻るかという時間の情報を持たないためです。トレンドの有無や下落理由を確認し、他の判断材料と組み合わせてください。

まとめ

移動平均乖離率は「平均からどれだけ離れたかを測る、ものさしのない定規」です。目盛りは自分で決める必要があります。

この記事のまとめ

・株価と移動平均線の距離を%で示す指標
・平均へ戻ろうとする力を利用する
・一律の目安は使えない。銘柄ごとに基準が違う
・値動きが荒い銘柄ほど乖離率も大きく振れる
・過去1年の振れ幅から自分の基準を作る
・マイナス乖離のほうが急速に拡大する
・株価が動かなくても移動平均が追いつけば解消する
・いつ戻るかという時間の情報は持たない

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