一目均衡表とは、5本の線と「雲」を使って相場の方向を判断する、日本で生まれたテクニカル指標です。

他の指標と決定的に違うのは、線をわざと26日先や26日前にずらして描くことです。価格ではなく時間を扱っている点が最大の特徴です。

この記事では、なぜずらすのかという核心から、三役好転の条件まで解説します。

この記事でわかること

・5本の線がそれぞれ何を示すか
・雲の正体
・なぜ26日ずらして描くのか
・三役好転の3つの条件
・この指標の弱点

一目均衡表とは

一目均衡表(読み方:いちもくきんこうひょう)とは、相場の均衡状態が崩れる方向を「一目」で判断することを目指した指標です。

転換線・基準線・先行スパン・遅行スパンと雲を表示した一目均衡表
5本の線と、その間にできる帯が「雲」

昭和初期に細田悟一氏が「一目山人」の筆名で発表しました。海外でも Ichimoku としてそのまま呼ばれています。

5本の線

線の名前 計算方法 描く位置
転換線 過去9日間の(高値+安値)÷2 当日
基準線 過去26日間の(高値+安値)÷2 当日
先行スパン1 (転換線+基準線)÷2 26日先
先行スパン2 過去52日間の(高値+安値)÷2 26日先
遅行スパン 当日の終値 26日前

注目すべきは計算式の中身です。終値の平均ではなく、期間中の高値と安値の真ん中を使っています。

移動平均線との違い
移動平均線は終値の平均=参加者の平均買値を示します。
一目均衡表の線は高値と安値の中心=その期間の値動きの中心を示します。

転換線と基準線

この2本は当日の位置に描かれ、短期と中期の勢いを表します。

状態 読み方
転換線が基準線より 短期の勢いが強い(好転)
転換線が基準線より 短期の勢いが弱い(逆転)
基準線が横ばい 方向感がない
基準線が上向き 中期の方向が上

転換線が基準線を上抜くことを好転、下抜くことを逆転といいます。ゴールデンクロス・デッドクロスと似た考え方です。

雲(先行スパン1と2)

先行スパン1と2に挟まれた帯がです。一目均衡表で最も目を引く部分です。

先行スパン1と2に挟まれた雲の部分を示した一目均衡表
2本の先行スパンに挟まれた帯が雲
株価と雲の関係 意味
株価が雲の 上昇基調。雲は下値の支持帯になる
株価が雲の 下降基調。雲は上値の抵抗帯になる
株価が雲の 方向感がない。判断を保留する場面
雲が厚い 抜けにくい。強い支持・抵抗
雲が薄い 抜けやすい。転換が起きやすい

雲の厚さはその水準で過去にどれだけ意見が割れていたかを表しています。厚い雲は、そこで多くの売買が行われた重い価格帯です。

なぜ26日ずらして描くのか

ここがこの指標の核心です。雲は「未来に描かれた過去のデータ」です。

今日の雲 = 26日前に計算された値
26日先の雲 = 今日計算された値
→ つまり、これから先の抵抗帯があらかじめ見えている

他のテクニカル指標は「今」までしか描けません。一目均衡表だけは、26日先までの支持帯・抵抗帯が先に表示されます。

これが「一目で均衡が崩れる方向がわかる」という名前の由来です。相場は価格ではなく時間によって決まるという考え方に基づいています。

遅行スパン

最も見落とされやすいのに、実は重要度が高いのが遅行スパンです。

26日前の位置に描かれた遅行スパンを示した一目均衡表
当日の終値を26日前の位置に描いたのが遅行スパン

当日の終値を26日前にずらして描いた線です。これが意味するのは「26日前に買った人が、いま含み益なのか含み損なのか」です。

遅行スパンがローソク足より → 26日前に買った人は含み益
遅行スパンがローソク足より → 26日前に買った人は含み損

ローソク足を上抜けることを遅行スパンの好転といい、三役好転の条件のひとつになります。

三役好転の3つの条件

一目均衡表で最も強い買いシグナルとされるのが三役好転です。次の3つが同時に成立した状態を指します。

条件 内容
転換線が基準線を上抜く
遅行スパンがローソク足を上抜く
株価が雲を上抜ける

逆に、次の3つが揃うと三役逆転です。

① 転換線が基準線を下抜く
② 遅行スパンがローソク足を下抜く
③ 株価が雲を下抜ける

ただし3つ揃った時点では、株価はすでに大きく動いた後です。強いシグナルであると同時に、遅いシグナルでもあります。

シグナルが出る順番

三役好転は3つが同時に発生するわけではありません。通常は順番に成立していきます。

順番 起きること 性質
早い 転換線が基準線を上抜く 9日と26日の比較なので反応が速い
遅行スパンがローソク足を上抜く 26日前の価格を上回った時点で成立
遅い 株価が雲を上抜ける 厚い雲なら時間がかかる

つまり転換線の好転が最初のヒントになり、雲抜けが最後の確認になります。

早さと確実性はトレードオフ
転換線の好転だけで動けば早く入れますが、だましも増えます。
三役揃うまで待てば確度は上がりますが、値幅の多くを取り逃します。
どこで動くかを自分で決めておくことが前提になります。

この考え方はゴールデンクロスなど他のシグナルにも共通します。早いシグナルほど外れやすいという関係は変わりません。

雲のねじれ(変化日)

先行スパン1と2が交差し、雲の上下が入れ替わる箇所をねじれといいます。

状態 意味
ねじれの位置 雲が極端に薄くなる=抜けやすい
先に見える 26日先まで表示されているので事前にわかる
相場の転換 変化日として意識されることがある

ねじれの日付を事前に把握できるのは、この指標だけの利点です。ただし必ず転換するわけではなく、あくまで「抵抗が薄くなる日」という程度に捉えてください。

弱点と注意点

弱点 内容
① 線が多くて見づらい 5本+雲。慣れるまで判断に時間がかかる
② シグナルが遅い 三役好転が揃う頃には株価が動き終わっている
③ 横ばいに弱い 株価が雲の中に入ると判断できない
④ 日足前提の設計 9・26・52という数値は日足を想定している
⑤ 材料には無力 決算や不祥事は雲を無視して株価を動かす

④について補足すると、26という数値はかつて土曜日も取引されていた時代の1か月の営業日数に由来するとされます。現在の取引日数とは前提が異なります。

使うときの手順

① 株価と雲の位置を見る 上か、下か、中か。それだけで大枠がわかる
② 雲の中なら手を出さない 判断できない場面だと認める
③ 基準線の向きを見る 中期の方向を確認する
④ 遅行スパンを確認する 見落としやすいが判断材料として有効
⑤ 先の雲の形を見る 厚い雲やねじれが待ち構えていないか

初心者ほど①と②だけで十分です。「雲の中では判断しない」というルールを持つだけでも、無駄な売買が減ります。

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

一目均衡表に関するよくある質問

雲はなぜ未来に伸びているのですか?
先行スパン1と2を、計算した日から26日先の位置に描いているためです。今日見えている雲は26日前に計算された値であり、これから先の支持帯・抵抗帯があらかじめ表示されている状態になります。
初心者は何から見ればいいですか?
株価が雲の上にあるか下にあるかだけで構いません。上なら上昇基調、下なら下降基調、雲の中なら方向感がないと判断します。線を全部覚えようとするより、この1点から始めるほうが実用的です。
三役好転が出たら買いですか?
強いシグナルとされますが、3条件が揃う頃には株価がすでに大きく上昇していることが多くなります。遅いシグナルである点を理解したうえで、他の指標や出来高と併せて判断してください。
設定値の9・26・52は変えてもいいですか?
変更は可能ですが、この数値を前提に多くの投資家が同じ形を見ているという点に意味があります。まずは初期設定のまま使い、必要を感じてから調整するのが無難です。
遅行スパンは何の役に立ちますか?
26日前に買った人が含み益か含み損かを示します。ローソク足を上抜けていれば、その期間に買った人の多くが利益を得ている状態であり、売り圧力が弱いと解釈できます。
雲が厚いとどうなりますか?
その価格帯が強い支持帯または抵抗帯になります。過去にその水準で多くの売買が行われたことを意味するため、株価が突き抜けるには相応のエネルギーが必要になります。
日足以外でも使えますか?
週足や分足でも表示できます。ただし9・26・52という数値は日足を前提に設計されているため、他の時間軸では本来意図された意味と異なる可能性がある点に注意してください。
移動平均線とどちらを使うべきですか?
目的が違います。移動平均線は参加者の平均買値を示し、一目均衡表は値動きの中心と時間の経過を示します。併用しても矛盾しないため、どちらか一方を選ぶ必要はありません。

まとめ

一目均衡表は「これから先の抵抗帯を、あらかじめ描いておく指標」です。時間を扱う点で他の指標と一線を画しています。

この記事のまとめ

・5本の線と雲で構成される日本発の指標
・線は終値ではなく高値と安値の中心で計算する
・先行スパンは26日先、遅行スパンは26日前に描く
・雲は未来に描かれた過去の合意水準
・株価が雲の上か下かがまず見るべき点
・雲の中にいる間は判断を保留する
・三役好転は強いが遅いシグナル
・ねじれの日付は事前に把握できる

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