
主要なネット証券では、証券口座の開設料も維持費(口座管理料)も無料です。作っただけ、あるいは使わずに放置していても、費用が請求されることはありません。
ただし「無料だから放置していい」わけではありません。本当のリスクは費用ではなく、住所変更を忘れたまま連絡が取れなくなることです。配当が受け取れない、相続のときに見つからない、といった実害につながります。
この記事では、口座管理料と紛らわしい費用と、放置したときに実際に何が起こるかを整理します。
この記事でわかること
・「口座管理料」と紛らわしい費用の一覧
・外国株・信用取引で発生する費用
・使わない口座を放置するとどうなるか
・休眠預金の制度は証券口座に適用されるか
・放置の本当のリスク(住所変更・相続)
・口座を解約する手順
・他社に移管するときの手数料
※ 本記事の手数料・サービス内容は2026年8月時点で確認した一般的な情報です。条件は各社で異なり変更されることもあるため、詳細は各証券会社の公式サイトでご確認ください。
結論:ネット証券なら維持費は0円
0円
口座管理料
0円
かかる場合がある
年数千円程度
(条件により無料になることも)
・店舗と営業担当者を持たないため固定費が小さい
・手続きがオンラインで完結し、事務コストがかからない
・口座数を集めること自体が収益源(信用取引の金利、投資信託の信託報酬、外国株の為替など)
口座を持っているだけの人からは費用を取らず、実際に取引する人から収益を得る構造です。
したがって「とりあえず口座だけ作っておく」ことに金銭的なデメリットはありません。複数の証券会社に口座を持っていても、維持費が積み上がることはありません。
「口座管理料」と紛らわしい費用
「維持費は無料」と言っても、証券口座を使えばコストは発生します。混同されやすい費用を分けて整理します。
| 費用 | 発生する場面 | 持っているだけで かかるか |
|---|---|---|
| 口座管理料 | 口座を保有していること自体 | ネット証券は0円 |
| 売買手数料 | 株を売買したとき | かからない |
| 信託報酬 | 投資信託を保有している間ずっと | かかる |
| 信用取引の金利・貸株料 | 建玉を保有している間 | かかる |
| 信用取引の事務管理費 | 建玉を1か月超で持ち越した場合 | かかる |
| 為替手数料(スプレッド) | 円と外貨を交換したとき | かからない |
| 出庫手数料(移管手数料) | 他社へ株式を移すとき | かからない |
「持っているだけでかかる」のは、投資信託の信託報酬と信用取引の金利だけです。現金や現物株を置いているだけなら費用は発生しません。
投資信託の信託報酬は、基準価額から日々差し引かれています。請求書が届くわけではないため、支払っている実感がありません。
年0.1%と年1.5%では、20年保有すると差は非常に大きくなります。
「口座は無料でも、中身にはコストがかかっている」という点は押さえておいてください。
外国株の口座管理料
国内株では無料でも、外国株では別の費用が設定されている場合があります。
・口座管理料(主要ネット証券の米国株では無料が一般的)
・為替スプレッド(円⇄ドルの交換で毎回発生する実質的なコスト)
・配当金の受取手数料
・現地の税金(米国株の配当には現地で10%が源泉徴収される)
米国株の配当は、現地10%を引かれたあと日本でも課税されます。二重課税の調整には確定申告(外国税額控除)が必要です。
DMM株のように米国株の取引手数料を0円にしている会社もありますが、為替スプレッドは各社で異なります。比べるときは総額で見てください(→ DMM株の特徴)。
年間でいくらかかるのかを試算する
「無料」という言葉だけでは実感が湧きにくいので、使い方ごとに年間コストを並べます。
| 使い方 | 発生する費用 | 年間の目安 |
|---|---|---|
| 口座を開いただけ | なし | 0円 |
| 国内株を保有しているだけ | なし | 0円 |
| 国内株を年10回売買 | 売買手数料 | SBI証券・楽天証券なら0円 |
| 投資信託を100万円保有 | 信託報酬(年0.1%の場合) | 約1,000円 |
| 同上(年1.5%の商品の場合) | 信託報酬 | 約15,000円 |
| 信用取引で100万円の買建を1年保有 | 金利(年2.8%の場合)+事務管理費 | 約28,000円+α |
※ 数値は仕組みを示すための例です。実際の料率は商品・証券会社によって異なります。
口座そのものより、中身のコストのほうが桁違いに大きくなります。とくに投資信託の信託報酬は、保有し続ける限り毎年かかります。年0.1%と年1.5%の差は、20年で無視できない金額になります。
① 投資信託の信託報酬を確認する(最も金額が大きい)
② 信用取引の建玉を長期で持ち越さない
③ 外国株の為替コストを確認する
④ 売買手数料が0円になる設定を済ませる
口座管理料を気にする段階は、すでに終わっています。
使わない口座を放置するとどうなるか
結論から言うと、すぐに何かが起こるわけではありません。ただし段階的にリスクが積み上がります。
残高が0円でも口座は維持されます。ログインしなくても閉鎖されることはありません。
届出をしないと、証券会社からの郵便が返送されるようになります。この状態が「連絡不能」です。
郵便の返送が続くと、新規の買付や出金が止められることがあります。再開には本人確認の手続きが必要になります。
相続が発生したとき、口座の存在に誰も気づかないという事態が起こります。
2016年以前から口座を持っていて、マイナンバーを未提出のまま放置していると、提出を求める通知が届き、応じないと取引が制限されることがあります。
心当たりがある場合は、まずログインして提出状況を確認してください。
休眠預金の制度は証券口座に適用されるか
「10年使わないと国に持っていかれる」と聞いたことがあるかもしれません。これは銀行預金の話で、証券口座には適用されません。
| 項目 | 銀行の預貯金 | 証券口座 |
|---|---|---|
| 休眠預金等活用法 | 対象(10年以上取引がない場合) | 対象外 |
| 資産が移されるか | 預金保険機構へ移管される | 移されない |
| 引き出せるか | 手続きすれば引き出せる | いつでも売却・出金できる |
| 実際のリスク | 手続きの手間 | 存在を忘れること |
証券口座に預けた株式や現金が、放置を理由に没収されることはありません。資産は証券会社が分別管理しており、証券会社が破綻した場合も投資者保護基金により一定額まで補償されます。
2009年の株券電子化のとき、証券会社に預けていなかった株券は信託銀行などの「特別口座」に移されました。
これは放置によるものではなく、電子化に伴う措置です。
特別口座にある株式は売買できないため、取引するには証券口座への振替が必要です。
放置の本当のリスク
費用ではなく、「見えなくなること」が最大の問題です。
| リスク | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 相続で見つからない | 家族が口座の存在を知らず、資産が放置され続ける | どこに口座があるかを家族が分かる形で残す |
| 配当金の受取漏れ | 配当金領収証方式だと郵便が届かず受け取れない | 受取方法を「株式数比例配分方式」にする |
| 確定申告の漏れ | 年間取引報告書が届かず、申告内容に反映できない | 電子交付にしてオンラインで確認できる状態にする |
| ログインできない | IDやパスワードを忘れ、登録メールも使えなくなっている | 登録メールアドレスを現用のものに更新する |
| 株主優待が届かない | 株主名簿の住所が古いままで発送先が届かない | 証券会社に住所変更を届け出る |
① 住所・氏名・メールアドレスを最新にしておく
② 配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく(証券口座に自動入金される)
この2つができていれば、放置していても実害はほとんど起きません。逆にこれを怠ると、無料であることの意味がなくなります。
口座を解約する手順
使わない口座を整理したい場合の流れです。
株式・投資信託が残っていると解約できません。売却するか、他社へ移管します。
預り金の残高も0円にします。
オンラインで完結する会社と、書類の返送が必要な会社があります。
解約した年に取引があれば、その年の報告書は必要です。確定申告に使うため、解約前に電子交付分をダウンロードしておいてください。
維持費がかからない以上、急いで解約する必要はありません。
・IPOの抽選機会が減ります
・システム障害時の代替手段がなくなります
・NISA口座を解約すると、その年は他社でNISAを開設できないことがあります
「口座が多くて管理しきれない」という理由なら、解約ではなく資産を1社に寄せるだけでも十分です。
他社に移管するときの手数料
株式を売らずに別の証券会社へ移すことができます。これを移管(出庫・入庫)といいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出庫手数料 | 移す側(元の証券会社)で発生することがある。銘柄数に応じた金額 |
| 入庫手数料 | 受け入れる側は無料が一般的 |
| 手数料の負担 | 移管元の出庫手数料を負担するキャンペーンを行う会社があります |
| 取得価額 | 引き継がれます。移管そのもので課税は発生しません |
| かかる日数 | 1〜2週間程度。その間は売買できません |
| NISAの資産 | 他社へ移管できません |
売却して買い直すと譲渡益に課税されますが、移管なら課税は発生しません。含み益がある銘柄は、売却ではなく移管を検討してください。
証券会社ごとの条件は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券
、DMM株など各社の公式サイトでご確認ください。各社の比較は証券会社5社の比較にまとめています。
※ 本記事は制度と費用の説明であり、特定の金融機関や取引を勧めるものではありません。
証券口座の維持費に関するよくある質問
まとめ
証券口座の維持費は、ネット証券なら0円です。気をつけるべきは費用ではなく、住所変更を忘れて連絡が取れなくなることです。
この記事のまとめ
・「持っているだけでかかる」のは投信の信託報酬と信用取引の金利だけ
・休眠預金の制度は銀行預金が対象。証券口座には適用されない
・放置しても資産は没収されないが、連絡不能になると取引が制限される
・住所・メールの更新と「株式数比例配分方式」の設定だけはしておく
・解約を急ぐ必要はない。IPOの抽選機会が減る損失のほうが大きい
・他社への移管では取得価額が引き継がれ、課税は発生しない
・移管元の出庫手数料を負担するキャンペーンがある
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