ESPPの確定申告のやり方と計算方法|割引分の課税と売却益をe-Taxで申告する手順

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ESPP(従業員株式購入プラン)で親会社の株を割引価格で買ったときは、購入日の株価と実際に払った金額の差が課税の対象になり、その株を売ったときの値上がり益は株式の譲渡所得になります。国税庁の所得税基本通達は、有利な価格で株を取得する権利を役員や使用人が地位や職務に関連して与えられた場合を給与所得としています。外国の親会社から受けた源泉徴収されない給与があれば、申告の要件を満たす限り、金額が20万円以下でも確定申告が必要です。計算のしかたと申告の手順を、計算例でまとめました。

この用語の要点
  • 課税の対象は購入日の株価−払った金額。差が株価のおおむね10%以上なら「有利な金額」にあたる
  • 所得の区分は原則一時所得だが、使用人が職務に関連して与えられた権利なら給与所得(所得税基本通達)
  • 譲渡制限などの条件が付いた権利(令84条3項)で買った株なら、売るときの取得価額は政令で払込みの期日の株価と定められている。売却益は20.315%
ESPPの確定申告の要点:課税の対象は購入日の株価−払った金額。差が株価のおおむね10%以上なら「有利な金額」にあたる / 所得の区分は原則一時所得だが、使用人が職務に関連して与えられた権利なら給与所得(所得税基本通達) / 譲渡制限などの条件が付いた権利(令84条3項)で買った株なら、売るときの取得価額は政令で払込みの期日の株価と定められている。売却益は20.315%

ESPPとは(割引価格で親会社の株を買う制度)

ESPP(Employee Stock Purchase Plan)は、給与から一定期間お金を積み立て、決められた日に親会社の株を割引価格で買う制度です。米国の内国歳入法423条の条件を満たすプランでは、買う価格は「付与時の株価の85%」と「購入時の株価の85%」のうち低いほう以上と定められています。423条の条件を満たすプランなら、期間の初めと終わりの株価のうち低いほうに対して最大15%の割引で買える計算です。購入日の株価に対する割引は、株価が上がった期間では15%より大きくなります。423条の条件を満たすプランでは、1暦年に買える株の上限は付与時の株価で25,000ドルです。

期間の初めの株価購入日の株価買う価格(低いほう×85%)購入日の株価との差
100ドル120ドル85ドル35ドル(29.2%)
100ドル90ドル76.5ドル13.5ドル(15%)

株価が上がった期間ほど、購入日の株価との差は大きくなります。日本の税金はこの差に注目して計算します。米国株の税金の全体は米国株の税金が入口です。

割引分は何所得になるか(国税庁の通達と政令)

ESPPを名指しした国税庁の定めは、公開資料では見つけられませんでした。手がかりになるのは、所得税法施行令84条3項3号の「株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合における当該株式を取得する権利」です。発行法人から譲渡の制限などの条件付きでこの権利を与えられた場合、課税されるのは払込みの期日の株価から、払い込んだ金額を差し引いた額と定められています。

項目国税庁の通達・政令の定め
所得の区分原則は一時所得。発行法人の役員・使用人に地位や職務に関連して与えられた権利なら給与所得、退職に基因するなら退職所得(所得税基本通達23~35共-6)
有利な金額か株価と払い込む額の差が、株価のおおむね10%以上かで判定(同23~35共-7)
いつの所得か株の取得を申し込んだ日(同23~35共-6の2)
株価上場株は金融商品取引法の規定で公表された最終の価格(同23~35共-9)

自分のESPPが84条3項3号の権利にあたるか、給与所得と一時所得のどちらになるかは、プランの条件しだいなので、申告前に税務署で確かめておくと安心です。この記事の計算例は、給与所得として申告する場合で書いています。

給与所得になる場合と一時所得になる場合の違い

通達では、有利な価格で株を取得する権利による所得は原則一時所得で、役員・使用人が地位や職務に関連して与えられた場合は給与所得です。どちらになるかで、課税される金額が変わります。国税庁のタックスアンサー(No.1490)では、一時所得は「総収入金額−収入を得るために支出した金額−特別控除額(最高50万円)」で計算し、その2分の1をほかの所得と合計します。

課税の対象が150万円で、ほかに一時所得がなく、支出した金額もない場合の比較が次の表です。

区分計算課税の対象に加わる額(給与は給与所得控除の前の収入金額)
給与所得150万円をそのまま給与の収入に加える150万円(給与の収入として)
一時所得(150万円−50万円)×2分の150万円

先の計算例の262,500円なら、一時所得として計算すると特別控除の50万円を下回るので、一時所得の金額は0円です。給与所得なら262,500円がそのまま給与の収入に加わる点が大きな違いです。区分しだいで税額の差が大きいので、根拠になるプランの書類(付与の対象者、勤務の条件)をそろえて、税務署で確かめてから申告します。私はプランの説明書のうち、対象者と退職時の扱いが書かれたページを控えておくようにしています。

確定申告が必要になる人と期限

国税庁の質疑応答事例に、国内の勤務先の給与は年末調整され、外国の親会社から源泉徴収の対象とされない給与を20万円以下受けた人の照会があります。回答は「確定申告を要します」です。源泉徴収の対象とされない給与があれば、金額の多寡にかかわらず、申告の要件を満たす限り申告が必要としています。

状況申告
ESPPの割引分が日本の給与で源泉徴収されていない給与として受けたものなら、申告の要件を満たす限り金額にかかわらず必要
買った株を特定口座(源泉徴収あり)で売った譲渡益は申告しなくてよい
買った株を特定口座(源泉徴収あり)以外で売った譲渡益を申告する

申告の期間は、国税庁のタックスアンサー(No.2020)によると原則として翌年2月16日から3月15日までです。給与所得として申告する割引分は株の取得の申込みをした日の年分、売った分は売った日の年分として、翌年の2月16日から3月15日に申告します。勤務先が外国の親会社からの経済的利益について調書を出す場合も、その提出期限は翌年3月31日です。

割引分の計算例(ドルから円への換算)

期間の初めの株価が100ドル、購入日の株価が120ドルで、85ドルで50株を買った場合を計算します。円への換算は、所得税基本通達57の3-2の原則どおり、取引日の電信売相場と電信買相場の仲値(TTM)を使い、1ドル150円とします。

項目計算金額
購入日の株価で見た価値50株×120ドル6,000ドル
払った金額50株×85ドル4,250ドル
課税の対象(ドル)6,000ドル−4,250ドル1,750ドル
課税の対象(円)1,750ドル×150円262,500円

差は株価の29.2%で、通達の「おおむね10%以上」を超えています。期間中に株価が90ドルに下がった例では、76.5ドルで買い、差は1株13.5ドルです。50株なら675ドル、円にして101,250円になります。

給与所得として申告すると、この額がほかの給与と合わせて課税され、税率は国税庁の速算表のとおり5%から45%の7段階です。購入が年に2回ある人は、購入日ごとにその日の株価とTTMで計算して合計します。給与と所得税の速算表の使い方は、米国株の確定申告で手順を追って説明しています。

e-Tax(確定申告書等作成コーナー)での入力の流れ

国税庁の確定申告書等作成コーナーにESPPを名指しした入力例はなく、あるのは「外貨建てのストックオプションなどの収入の入力例」です。給与所得として申告するなら、この例に倣って入力します。給与所得として申告する場合は、次の流れで入力します。

順番画面と操作
1「申告する所得の選択等」で「給与」にチェックを入れる
2ほかに給与がある人は源泉徴収票の枚数で「2枚」を選ぶ
3「収入・所得の入力」で「給与所得」を押す
4「+入力する(年末調整未済)」を押す
5支払金額にTTMで円に換算した額を入れ、源泉徴収税額がなければ「0」と入れる

勤務先の年末調整済みの源泉徴収票は、別の1枚として入力します。株を売った分は、株式等の譲渡所得の画面で入力します。売却の計算は次の節にまとめました。

ESPPの株を売ったときの取得価額と譲渡益

売るときに大事なのが取得価額です。所得税法施行令109条1項3号は、発行法人から与えられた84条3項の権利の行使で取得した株の取得価額を、払込みの期日の株価と定めています。払った金額ではなく、購入日の株価が取得価額です。

先の例の50株(取得価額は購入日の株価120ドル×TTM150円)を、株価130ドル・TTB145円のときに売った場合です。売ったときの円換算は、国税庁の措置法通達37の10・37の11共-6で、約定日の電信買相場(TTB)と定められています。手数料は省いています。

項目計算金額
譲渡価額50株×130ドル×145円942,500円
取得価額50株×120ドル×150円900,000円
譲渡益942,500円−900,000円42,500円
税金42,500円×20.315%8,633円

払った85ドルではなく120ドルを基準にする点を間違えないようにします。国税庁のタックスアンサー(No.1463)のとおり、外国の市場で売買されている株も上場株式等に含まれ、税率は20%(所得税15%・住民税5%)に復興特別所得税が加わります。特定口座(源泉徴収あり)以外で売った分は申告の対象です。口座の違いは特定口座と米国株、米国株の配当にかかる税の取り戻し方は外国税額控除にまとめています。

確定申告の手間を減らすなら特定口座(源泉徴収あり)で

米国株も特定口座(源泉徴収あり)で持てば、売却益と配当の税金は証券会社が差し引いて納めるので、原則として確定申告はいりません。申告が要るのは、外国税額控除で米国の10%を取り戻すときや、ほかの口座との損益通算・損失の繰越をするときです。どの会社も特定口座に対応しているので、選ぶ決め手は為替コストとNISAの有無になります。

SBI証券米国株も特定口座・NISAの両方に対応。外貨決済の為替は0銭SBI証券の公式サイト
松井証券特定口座・NISAに対応。為替は円貨決済でも外貨決済でも0銭松井証券の公式サイト
楽天証券特定口座・NISAに対応。為替は円貨・外貨とも0銭楽天証券の公式サイト
Woodstock(ウッドストック)口座は特定口座(源泉徴収あり)だけ。取引・為替・出金の手数料は0円で、NISAは使えないWoodstockの公式サイト

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ESPPの確定申告に関するよくある質問

ESPPの割引分は何所得ですか?
国税庁の所得税基本通達では、有利な価格で株を取得する権利は原則一時所得で、発行法人の役員・使用人が地位や職務に関連して与えられた場合は給与所得です。ESPPを名指しした定めは見つからないので、申告前に税務署で確かめてください。
ESPPの割引分はどう計算しますか?
所得税法施行令84条3項では、払込みの期日の株価から払い込んだ金額を差し引いた額です。ドル建ては取引日のTTMで円に換算します。
ESPPは確定申告が必要ですか?
外国の親会社から受けた源泉徴収されない給与があれば、国税庁の質疑応答事例は申告の要件を満たす限り、金額が20万円以下でも確定申告が必要としています。
ESPPの株を売ったときの取得価額はいくらですか?
譲渡制限などの条件が付いた権利(令84条3項)で買った株なら、所得税法施行令109条1項3号で払込みの期日の株価です。払った金額ではありません。売却益には20.315%の税金がかかります。
ESPPはe-Taxでどう入力しますか?
ストックオプションの入力例に倣い、確定申告書等作成コーナーで「給与」を選び、「+入力する(年末調整未済)」から円に換算した額を入れます。源泉徴収税額がなければ0を入れます。

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執筆:(Pacific Stock編集長・専業投資家歴20年)
税金の扱いは国税庁の所得税基本通達・質疑応答事例・タックスアンサーと所得税法施行令、ESPPの価格の条件は米国内国歳入法423条によります(2026年10月12日に確認)。プランの条件で扱いが変わることがあるので、迷ったら税務署に確かめてください。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や証券会社の売買・口座開設を勧めるものではありません。当サイトは証券会社の口座開設などでアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新2026-10-12。

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