デイトレの銘柄選び|5つの条件と見るべき順番

デイトレードの銘柄選びで最初に見るべきは、値動きの大きさではなく出来高です。どれだけ動く銘柄でも、売りたいときに売れなければ利益になりません。

ただし、その前に確認しておきたい数字があります。日経平均で「始値で買って終値で売る」を毎日続けた場合の成績を、2015年以降の2,847営業日で集計しました。

項目 結果
勝率 49.8%
1日あたりの平均損益 +0.006%
勝った日の平均 +0.66%
負けた日の平均 −0.64%

売買コストを引く前の段階で、すでにコイン投げとほぼ同じです。

これは指数の話で、個別銘柄なら値幅は大きくなります。ただ「何も選ばずに売買したら期待値はゼロ」という出発点を押さえておくと、銘柄選びが何のための作業なのかがはっきりします。銘柄選びとは、このゼロを自分の側に傾ける作業です。

この記事でわかること

1日に取れる値幅の現実(独自集計)
・デイトレ銘柄を選ぶ5つの条件と、見る順番
・出来高・売買代金の具体的な基準
板が薄い銘柄で起きる「約定できない」の中身
・避けるべき銘柄の特徴
曜日や時間帯に有利不利はあるのか(独自集計)
・スクリーニングの手順
手数料と税金で消える分の計算

※ この記事は手法とデータの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。デイトレードは短期間で損失が拡大しうる取引です。

【独自集計】1日に取れる値幅はどのくらいか

銘柄選びの前に、そもそも1日でどれだけ動くのかを確認します。日経平均の高値と安値の差を、終値で割った値幅率を集計しました。

項目 値幅率
平均 1.20%
中央値 0.98%
下位25%(動かない日) 0.69%
上位25%(よく動く日) 1.40%
上位5%(荒れた日) 2.63%

頻度で見ると、こうなります。

その日の値幅 日数 割合
0.5%未満(ほぼ動かない) 242日 8.5%
1.0%未満 1,462日 51.4%
1.5%未満 2,226日 78.2%
2.0%未満 2,546日 89.4%

出典:日経平均の日足四本値(2015年1月〜2026年8月・2,847営業日)をもとに独自集計。

2日に1日は、1日の値幅が1%に届きません。しかもこれは高値から安値までの全部の幅で、実際にその両端を取れるわけではありません。

だから銘柄選びが必要になる

指数の値幅が1%未満の日でも、個別銘柄には5%も10%も動くものがあります。

デイトレードの銘柄選びとは、その日「動く側」にいる銘柄を、動く前に見つける作業です。

逆に言えば、動かない銘柄を選んだ時点で、どんなに腕があっても取れる値幅がありません。

銘柄選びの5つの条件と、見る順番

条件は5つあります。順番が重要です。上から順に足切りしていきます。

順番 条件 満たさないと何が起きるか
1 出来高・売買代金 売りたいときに売れない。損切りが成立しない
2 値動きの大きさ 取れる値幅がなく、手数料負けする
3 板の厚さとスプレッド 往復するだけで見えないコストを払う
4 1単元の価格 資金に対して分散できない。1銘柄に賭ける形になる
5 材料の有無 なぜ動いているか説明できず、撤退の基準が作れない

1番を満たさない銘柄は、他がどれだけ良くても対象外です。理由を次の章で説明します。

条件①|出来高と売買代金。これが最優先

デイトレードで最も危険なのは、買えたのに売れない状態です。

目安 水準 考え方
1日の売買代金 10億円以上 初心者が扱う金額なら、まずここを基準にする
より安全な水準 50億円以上 大きめの資金でも板を崩さずに出入りできる
避けたい水準 1億円未満 自分の注文が値段を作ってしまう

自分の注文の大きさと、その銘柄の売買代金を比べるのが正しい考え方です。100万円で売買するなら、売買代金10億円の銘柄では0.1%にすぎず影響はありません。ところが売買代金5,000万円の銘柄では2%を占めることになり、自分が売った瞬間に値段が下がります。

出来高が少ない銘柄で実際に起きること

・成行で売ったら想定より3%も下で約定した(滑り)
・損切りの逆指値が発動したのに、買い手がおらずさらに下で約定
・ストップ安に張り付き、その日は一度も売れなかった
・翌日も寄らず、損失が2日分に広がった

🔴 損切りルールを決めていても、板がなければ実行できません。

出来高そのものの見方は出来高の記事で、価格帯ごとの出来高については価格帯別出来高の記事で解説しています。

条件②|値動きの大きさ。ATRで測る

出来高の条件を満たした銘柄の中から、次は「動くもの」を選びます。

測り方 内容
値幅率 (当日高値−当日安値)÷ 終値。直近5日の平均で3%以上あると値幅を取りやすい
ATR 前日終値をまたぐ動きも含めた平均的な値幅。損切り幅を決めるときに使う
前日比の変化率 寄り付き前に前日比で大きく動いている銘柄は、その日も動きやすい

値動きの大きさは、利益の可能性と損失の可能性の両方を同じだけ大きくします。値幅が3%ある銘柄は、3%取れる可能性と3%やられる可能性が同時にあるということです。

そのため値動きが大きい銘柄ほど、1回に入れる金額を小さくするのが基本になります。値幅が2倍なら金額を半分にすれば、負けたときの損失額はそろいます。この考え方はボラティリティの記事で詳しく扱っています。

条件③|板の厚さとスプレッド

売買代金が同じでも、板の状態は銘柄によって違います。

見るところ 良い状態 避けたい状態
気配値の間隔 1円刻みで気配が連続している 10円飛びで気配が空いている
板の厚み 各気配に数千株ずつ並んでいる 100株ずつしか並んでいない
スプレッド 買い気配と売り気配の差が1ティック 差が0.5%以上ある

スプレッドは往復で2回払う見えないコストです。0.3%のスプレッドがある銘柄で1日3往復すると、それだけで1.8%が消えます。1日の値幅が1%台の相場では、これだけで勝てなくなります。

板の読み方は気配値の記事で解説しています。

条件④|1単元の価格と、資金との関係

日本株は原則100株単位です。株価が3,000円なら1単元30万円になります。

資金 現実的な株価帯 理由
30万円 500〜1,500円 1単元5万〜15万円。複数回に分けて入れる余地が残る
100万円 1,000〜4,000円 選べる銘柄がかなり広がる
300万円以上 制限は実質なし 値がさ株も対象にできる

資金が小さいうちに値がさ株を選ぶと、1銘柄に全額を賭ける形になります。分割して入れることも、途中で減らすこともできなくなるため、判断の自由度が失われます。

条件⑤|なぜ動いているかを説明できるか

最後の条件は数値ではありません。その銘柄が動いている理由を一言で言えるかです。

動いている理由 性質
決算発表 寄り付きで大きく動き、その日のうちに方向が決まりやすい
業績予想の修正 数字の大きさで反応が変わる
テーマ・関連銘柄 関連度が高い小型株ほど大きく動く
指数への採用・除外 需給要因。日付が決まっているぶん読みやすい
理由がわからない 撤退の基準が作れないので手を出さない

理由がわかっていれば、「その理由が消えたら降りる」という撤退の基準が作れます。理由を知らずに値動きだけで入ると、下がったときに耐えるか投げるかの二択しかなくなります。

材料の読み方はカタリスト業績予想の修正の記事で解説しています。

避けるべき銘柄の特徴

特徴 理由
売買代金が1億円未満 売れない。損切りが成立しない
当日が決算発表日 引け後の発表で、翌朝に持ち越すと制御できない値動きになる
増担保規制がかかっている 信用取引の条件が厳しくなり、参加者が減って値動きが変わる
ストップ高・ストップ安に張り付いている 約定できない。比例配分になると数量も読めない
整理銘柄・監理銘柄 上場廃止の可能性がある。値動きの理由が特殊
気配が10円飛びで空いている 1ティックの損失が大きすぎる

増担保規制については増担保規制、値幅制限についてはストップ高の記事が参考になります。

【独自集計】曜日に有利不利はあるか

「月曜は下がりやすい」といった話をよく聞くので、実際に集計しました。

曜日 日数 始値→終値の平均 勝率
月曜 527 −0.016% 49.5%
火曜 580 +0.015% 50.7%
水曜 580 +0.041% 49.5%
木曜 579 +0.012% 49.2%
金曜 581 −0.022% 50.3%

勝率は49.2%〜50.7%の範囲に収まり、曜日による差はほぼありません。

曜日で銘柄を選ぶ意味はない、というのが実測の結論です。その日に動いている銘柄を探すほうが、はるかに効果があります。

スクリーニングの手順

ここまでの条件を、実際の作業手順に落とします。

タイミング やること
前日の夜 売買代金の上位100銘柄を出し、直近5日の値幅率3%以上で絞る。10〜20銘柄に減らす
前日の夜 決算発表の予定日を確認し、当日が発表日の銘柄を外す
寄り付き前(8:00〜8:59) 気配値を見て、前日比で大きく動いている銘柄を確認。理由をニュースで確かめる
寄り付き前 板を見て、気配が飛んでいる銘柄を外す
寄り付き後 残った3〜5銘柄だけを見る。数を増やさない

最後の「数を増やさない」が実は最も重要です。10銘柄を同時に見ると、どれも中途半端になり、損切りの判断が遅れます。

手数料と税金で消える分を先に計算する

銘柄選びの前提として、コストを確認しておきます。

項目 現在の水準
売買手数料 主要ネット証券は国内株式の売買手数料が0円(条件あり)
スプレッド 往復で2回。銘柄によっては手数料より重い
滑り(スリッページ) 成行注文で想定と違う値段で約定する分
税金 利益に対して20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)

手数料が0円になったことで、コストの中心はスプレッドと滑りに移りました。これは銘柄によって大きく違うため、銘柄選びの巧拙がそのままコストの差になります。

手数料が無料でも回数を増やせば有利になるわけではない点は、スキャルピングの記事で詳しく扱っています。

よくある質問

デイトレの銘柄は何個まで見るべきですか?
3〜5銘柄が現実的な上限です。デイトレードは板と値動きを見続ける必要があるため、数を増やすと1銘柄あたりの注意が薄くなります。損切りの判断が遅れる原因の多くは、同時に見ている銘柄が多すぎることにあります。前日のうちに10〜20銘柄まで絞り、寄り付き前に3〜5銘柄まで減らす流れが扱いやすい形です。
売買代金はどのくらいあれば安心ですか?
扱う金額によりますが、1日の売買代金10億円以上を最低ラインにすると、個人の資金規模では板を崩さずに出入りできます。判断の基準は絶対額ではなく「自分の注文が売買代金の何%を占めるか」です。0.1%程度に収まっていれば影響はほぼありません。
値動きが大きい銘柄のほうが有利ですか?
取れる値幅は大きくなりますが、やられる幅も同じだけ大きくなります。有利になるのは、値動きの大きさに合わせて1回に入れる金額を減らした場合だけです。値幅が2倍の銘柄で同じ金額を入れると、損失額も2倍になります。値幅を基準に金額を調整して初めて、選択肢が増えるという意味を持ちます。
曜日によって勝ちやすさは変わりますか?
日経平均の2015年以降で集計したところ、始値で買って終値で売った場合の勝率は月曜49.5%・火曜50.7%・水曜49.5%・木曜49.2%・金曜50.3%でした。差はほとんどありません。曜日を選ぶより、その日に動いている銘柄を選ぶほうが結果に影響します。
手数料が0円なら回数を増やしたほうが得ですか?
そうとは限りません。手数料が0円でも、スプレッドと滑りは往復のたびに発生します。買い気配と売り気配の差が0.3%ある銘柄で1日3往復すると、それだけで1.8%のコストになります。日経平均の1日の値幅は中央値0.98%なので、回数を増やすほどコストが利益を上回りやすくなります。
決算発表がある銘柄は避けるべきですか?
当日の引け後に発表がある銘柄は、持ち越すと自分で制御できない値動きになります。翌朝に窓を開けて始まるため、損切りの逆指値も機能しません。デイトレードとして当日中に決済しきるなら扱えますが、少しでも持ち越す可能性があるなら外しておくほうが安全です。逆に、発表の翌日は値動きの理由がはっきりしているため対象にしやすくなります。
現物でデイトレードするときの注意点はありますか?
現物取引では同じ資金・同じ銘柄で1日に1往復までしかできません。差金決済にあたるためです。同じ日に同じ銘柄を売買し直したい場合は、別の資金があるか、信用取引を使う必要があります。この仕組みはデイトレードの記事で詳しく解説しています。
銘柄選びを頑張れば勝てるようになりますか?
銘柄選びは必要条件であって十分条件ではありません。日経平均で「始値で買って終値で売る」を続けた場合の勝率は49.8%・1日あたり+0.006%で、コストを引く前からほぼゼロです。銘柄選びはこの出発点を改善する作業ですが、それだけで勝てるわけではなく、損切りの実行と1回あたりの金額の管理が同時に必要になります。デイトレードの成績に関するデータはデイトレは勝てないのかの記事にまとめています。

まとめ|順番を守ることが銘柄選び

この記事の要点
何も選ばずに売買した場合の勝率は49.8%・平均+0.006%。出発点はゼロ
日経平均の1日の値幅は中央値0.98%。2日に1日は1%も動かない
条件は①出来高 ②値動き ③板とスプレッド ④1単元の価格 ⑤材料の順
①を満たさない銘柄は、他がどれだけ良くても対象外。損切りが成立しない
曜日による勝率の差は49.2〜50.7%でほぼなし。曜日で選ぶ意味はない
手数料0円時代のコストの中心はスプレッドと滑り。銘柄選びがそのままコストを決める

銘柄選びで差がつくのは、条件の数ではなく順番です。動く銘柄を先に探して、後から出来高を確認するという順番で見ると、売れない銘柄を選んでしまいます。

出せる状態にあるかを先に確認し、そのうえで動くかどうかを見る。この順番を守るだけで、避けられる損失がかなりあります。

※ 本記事の集計は日経平均株価の日足四本値(2015年1月〜2026年8月27日・2,847営業日)に基づく独自集計です。指数の値動きであり、個別銘柄の成績を示すものではありません。手数料や税制は変わることがあるため、最新の情報は各証券会社の公式サイトでご確認ください。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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