
バークシャー・ハサウェイのグレッグ・アベルCEOが、日本の5大商社の株式を「今後何十年にもわたって保有する」と述べました。2026年9月2日のことです。翌3日には都内で日本経済新聞のインタビューに応じ、買い増しにも意欲を示しました。
この発言を受けて、9月3日の東京市場では5社がそろって上昇しました。上げ幅が最も大きかったのは三菱商事の4.09%です。ただし同じ日、日経平均株価は111円安で終えています。5社は指数に対して逆行高しました。
ここで押さえておきたいのは、バークシャーが持ち続けることと、いまから買うことは、まったく別の話だという点です。2020年8月31日の株価で買えていた場合の受取利回りは最大で16.8%になりますが、いまの株価で買う人の配当利回りは1.90〜2.19%です。この差がどこから来るのかを、株価と配当の実データで確かめます。
この記事でわかること
・株価が41年で547倍になったこと。ただし直近16年はインデックスに負けていること
・グレッグ・アベルCEOがどんな人物か(経歴・バフェット氏との違い・就任後の動き)
・アベルCEOがいつ、どこで、何を言ったのかの事実関係
・9月3日に5社がどれだけ上がったか(2.18〜4.09%)と、日経平均との違い
・2020年の参入公表時の反応(平均7.6%)に比べて、今回は平均2.9%と小さいこと
・この6年で株価が4.06倍〜8.13倍になったこと
・5社とも配当が2倍以上に増えたこと(最大389%増)
・バークシャーの受取利回りと、いま買う人の利回りが5〜8倍違うこと
・保有比率10%という数字が何を意味するのか
・これから何に注目すればよいか
※ この記事は公表された事実とデータの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。株価は2026年9月3日の終値、配当は実際に支払われた実績にもとづいています。
バークシャー・ハサウェイとはどんな会社か
先に、発言した側がどういう会社なのかを押さえておきます。バークシャー・ハサウェイは、米ネブラスカ州オマハに本社を置く投資・事業持株会社です。ウォーレン・バフェット氏が1965年に経営権を握り、当時は繊維会社だった同社を、保険と鉄道と電力を中核に持つ巨大企業へ作り替えました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本社 | 米ネブラスカ州オマハ |
| 時価総額 | 約1兆900億ドル(2026年9月時点)。1兆ドルを超える企業は世界でも数えるほどしかない |
| 手元資金 | 2026年3月末に過去最高の3,970億ドル(約62兆円)。6月末は約3,655億ドル |
| 業績 | 2026年4〜6月期の純利益は256億ドル(前年同期の2.1倍) |
| 子会社 | 自動車保険のGEICO、貨物鉄道のBNSF、電力のバークシャー・ハサウェイ・エナジーなど |
| 保有株 | アップル、アメリカン・エキスプレス、コカ・コーラなど。2026年6月にはアルファベット株を100億ドル買い増し |
| 日本株 | 三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・丸紅・住友商事の5社すべてで10%超 |
手元資金だけで約62兆円を持っている会社です。この現金をどこに向けるかが、世界中の投資家に注目されています。その向け先のひとつが、日本の5大商社です。
株価は41年で547倍。ただし直近16年はインデックスに負けている
バークシャーがなぜここまで注目されるのかは、株価の実績を見るのが早いです。Yahoo Financeで取得できる最も古い1985年1月から、2026年9月3日までを計算しました。比較対象は米国株の代表的な指数であるS&P500です。
| 起点 | 期間 | バークシャー | S&P500 | 勝敗 |
|---|---|---|---|---|
| 1985年1月 | 41.7年 | 547倍(年率16.3%) | 43.1倍(年率9.5%) | バークシャー |
| 1990年1月 | 36.7年 | 102倍(年率13.5%) | 23.5倍(年率9.0%) | バークシャー |
| 2000年1月 | 26.7年 | 14.9倍(年率10.7%) | 5.6倍(年率6.6%) | バークシャー |
| 2010年1月 | 16.7年 | 6.7倍(年率12.0%) | 7.2倍(年率12.6%) | S&P500 |
1985年1月の1株1,395ドルが、2026年9月3日には763,022ドルになりました。41年で547倍です。同じ期間のS&P500は43.1倍でしたから、指数の12倍以上のペースで増えたことになります。
ただし表の下2行に注目してください。直近16年をとると、バークシャーの年率12.0%に対してS&P500は12.6%です。指数のほうが上回っています。
会社が巨大になりすぎると、指数を上回り続けることが難しくなります。1兆ドルの会社が2倍になるには2兆ドルぶんの価値を作らなければなりません。手元資金が3,970億ドルまで積み上がっていたのも、その規模に見合う投資先が見つからなかったという裏返しです。日本の5大商社への投資は、この「置き場所」の問題への答えのひとつでもあります。
※ S&P500は配当を含まない指数の値です。バークシャーは配当を出していないため条件は近いものの、S&P500の配当を足すと差はもう少し縮まります。
グレッグ・アベルとは何者か
今回発言したアベル氏について整理します。2026年1月1日にバークシャーのCEOに就任した、バフェット氏の後継者です。バフェット氏は会長として会社に残っています。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1962年6月1日 | カナダ・アルバータ州エドモントンで生まれる |
| 1984年 | アルバータ大学商学部を卒業(会計を専攻)。のちに公認会計士の資格を取得 |
| 1984年〜 | 会計事務所プライスウォーターハウスクーパースに勤務 |
| 1992年 | 地熱発電のCalEnergyに入社。ここからエネルギー事業の道へ |
| 1999年 | CalEnergyがミッドアメリカン・エナジーを買収。同年、バークシャーが経営権を取得 |
| 2008年 | ミッドアメリカン・エナジーのCEOに就任 |
| 2014年 | 社名をバークシャー・ハサウェイ・エナジーに変更 |
| 2018年1月 | バークシャーの副会長(保険以外の事業を担当)に就任。取締役にも就く |
| 2021年5月 | バフェット氏が後継者として指名 |
| 2025年5月 | バフェット氏が年末での退任を表明 |
| 2026年1月1日 | バークシャー・ハサウェイのCEOに就任 |
| 2026年6月25日 | アイオワ州デモインで米国の市民権を取得 |
経歴で目を引くのは、アベル氏が投資の世界ではなく、エネルギー事業の現場から上がってきた人物だという点です。会計士として出発し、電力会社を20年以上にわたって経営してきました。カナダ出身で、米国籍を取得したのはCEO就任後の2026年6月です。
バフェット氏が株式や企業そのものを評価する投資家型だったのに対し、アベル氏は設備投資や規制環境といった事業の細部まで見る実務家型と評されます。今回、商社を「株の保有先ではなく事業上のパートナー」と位置づけたのも、この経歴と重ねると理解しやすくなります。
就任後のアベル氏は、積み上がった現金を動かし始めている
アベル氏がCEOになってから、バークシャーの動きは目に見えて変わりました。バフェット氏の時代に積み上がった手元資金を、実際に使い始めています。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2026年3月末 | 手元資金が過去最高の3,970億ドルに積み上がる |
| 2026年5月31日 | 住宅建設のテイラー・モリソン・ホームを68億ドルで買収 |
| 2026年6月1日 | アルファベット(グーグルの親会社)株を100億ドル買い増し |
| 2026年6月末 | 手元資金は約3,655億ドルに減少 |
5月31日と6月1日のわずか2日間で、合計168億ドルを投じています。バフェット氏はハイテク企業への投資に慎重でしたが、アベル氏はアルファベットに100億ドルを入れました。現金を積み上げる経営から、使う経営へ舵を切ったと受け止められています。
この流れのなかで出てきたのが、今回の商社に関する発言です。「商社のネットワークを生かして共同で事業投資や買収を進める」という言い方は、就任後のこうした動きと地続きになっています。
何があったのか
事実関係を先に整理します。発言したのはウォーレン・バフェット氏ではなく、2026年からCEOを務めるグレッグ・アベル氏です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつ | 2026年9月2日(発言)/9月3日(日本経済新聞のインタビュー) |
| 誰が | バークシャー・ハサウェイのグレッグ・アベルCEO |
| 対象 | 三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・丸紅・住友商事の5社 |
| 発言の要点 | 長期投資であり、今後何十年にもわたって保有するつもりだ |
| 理由として挙げたこと | 5社の基礎的な利益が伸び続けること、増配や自社株買いの拡大が期待できること |
| あわせて示したこと | 商社のネットワークを生かした共同投資や買収。株の保有先ではなく事業上のパートナーという位置づけ |
| 買い増しについて | 9月3日のインタビューで意欲を示した |
この種の発言は今回が初めてではありません。バフェット氏は2025年9月に、総合商社株について「今後50年売らない」と述べています。方針そのものは前から示されていて、今回はCEOが交代したあとに改めて確認された形です。
保有比率がたどってきた道
バークシャーが5社の株を持ち始めたのは2020年です。そこから6年かけて、5%から10%超まで引き上げてきました。
| 時期 | 出来事 | 保有比率 |
|---|---|---|
| 2020年8月31日 | 関東財務局に大量保有報告書を提出。5社をそれぞれ5%超取得したと公表(8月24日時点)。最大9.9%まで高める可能性にも言及 | 5.02〜5.06% |
| 2023年 | バフェット氏が、各社7.4%まで引き上げたと公表 | 約7.4% |
| 2025年2月 | 保有比率の上限(9.9%)を緩めることで各社と合意したと表明 | — |
| 2025年3月17日 | 変更報告書。三菱商事9.67%、三井物産9.82%など5社そろって9%台に | 9%台 |
| 2025年8月28日 | 三菱商事が10.23%。初めて10%を超える | 10.23% |
| 2025年9月 | バフェット氏が総合商社株について「今後50年売らない」と発言 | — |
| 2026年3月2日 | 伊藤忠商事が10.1% | 10.1% |
| 2026年5月7日 | 住友商事10.05%・丸紅10.10%(議決権ベース)。5社すべてが10%超に | 全社10%超 |
| 2026年7月1日 | 変更報告書。三井物産10.83%、丸紅10.32% | 10.8/10.3% |
| 2026年9月2日 | アベルCEOが「今後何十年にもわたって保有する」と発言 | — |
| 2026年9月3日 | 都内で日本経済新聞のインタビューに応じ、買い増しに意欲を示す | — |
この表で見落としたくないのが2025年2月です。当初は「9.9%を上限とする」という合意が各社との間にありました。それを緩めることで合意した、とバフェット氏が表明しています。
この合意がなければ、いまの10%超はありません。2020年の公表時点でも「最大9.9%まで高める可能性がある」と述べられていて、そこが天井として意識されていました。上限が動いたことが、その後の買い増しを可能にしています。
なお比率には2つの数え方があり、報道によって数字が食い違うことがあります。大量保有報告書の「保有割合」と、企業が公表する「議決権割合」は分母が違います。大量保有報告の仕組みは大株主とは?信託口の正体と2026年の制度改正で解説しています。
市場はどう反応したか
発言が伝わった翌営業日、2026年9月3日の東京市場の値動きです。前日の9月2日の終値と比べています。
| 銘柄(コード) | 9月2日 終値 | 9月3日 終値 | 前日比 |
|---|---|---|---|
| 三菱商事(8058) | 4,860円 | 5,059円 | +4.09% |
| 住友商事(8053) | 1,788円 | 1,842円 | +3.02% |
| 三井物産(8031) | 5,119円 | 5,253円 | +2.62% |
| 伊藤忠商事(8001) | 2,157円 | 2,212円 | +2.55% |
| 丸紅(8002) | 5,090円 | 5,201円 | +2.18% |
5社そろって上昇し、平均では+2.89%でした。ただしこの日、日経平均株価は64,214.48円と、前日比111.16円安で終えています。相場全体が上がったから商社株も上がった、という動きではありません。
日本経済新聞は同日、商社株と銀行株への買いが相場を支えたと伝えています。指数が下げるなかでの逆行高で、商社株が下げ幅を抑える側に回った1日でした。
指数が下げた日に上げた銘柄は、その材料がどれだけ重く受け止められたかが見えやすくなります。相場全体の上昇に乗っただけではないと分かるためです。日経平均そのものの仕組みは日経平均株価とは?で解説しています。
2020年の反応と比べると2.6分の1になっている
ここからが実データによる比較です。2020年8月31日、バークシャーが5社の株を5%超取得したと公表した日の値動きと、今回を並べました。
| 銘柄 | 2020年8月31日 (参入の公表) |
2026年9月3日 (何十年も保有) |
差 |
|---|---|---|---|
| 丸紅 | +9.48% | +2.18% | −7.30ポイント |
| 住友商事 | +9.09% | +3.02% | −6.07ポイント |
| 三菱商事 | +7.72% | +4.09% | −3.62ポイント |
| 三井物産 | +7.35% | +2.62% | −4.73ポイント |
| 伊藤忠商事 | +4.19% | +2.55% | −1.64ポイント |
2020年の平均は+7.56%、今回は+2.89%です。反応の大きさはおよそ2.6分の1になりました。
理由は単純です。2020年の「バークシャーが日本の商社を買った」は、まったく新しい情報でした。今回の「これからも持ち続ける」は、すでに知られている方針の確認です。同じ発信元の同じテーマでも、新しさが減れば値動きも小さくなります。
ニュースが出たときに「どれだけ新しいか」を測る癖をつけておくと、飛びつく前に一呼吸おけます。反応が小さかったこと自体は、悪い材料という意味ではありません。すでに織り込まれているという意味です。
この6年で株価はどうなったか
2020年8月31日の終値と、2026年9月3日の終値を比べます。伊藤忠商事は2026年1月1日付で1株を5株にする株式分割を実施しているため、分割を調整した株価で計算しています。
| 銘柄 | 2020年 8月31日 |
2026年 9月3日 |
上昇率 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 丸紅 | 639.6円 | 5,201円 | +713.2% | 8.13倍 |
| 三菱商事 | 837.5円 | 5,059円 | +504.1% | 6.04倍 |
| 三井物産 | 957円 | 5,253円 | +448.9% | 5.49倍 |
| 住友商事 | 343.6円 | 1,842円 | +436.0% | 5.36倍 |
| 伊藤忠商事 | 544.7円 | 2,212円 | +306.1% | 4.06倍 |
比較のために日経平均も並べておきます。同じ2020年8月31日から2026年9月3日までで、23,139.76円から64,214.48円へ+177.5%(2.78倍)でした。
最も上がったのは丸紅の8.13倍です。日経平均の2.78倍と比べると、5社はいずれも指数を大きく上回っています。
「何十年も持つ」という発言は、この6年の結果を背景にして出ています。すでに何倍にもなった株を持っている側の判断であって、これから買う人の判断とは前提が違います。その差を数字にしたのが次の章です。
配当は5社とも2倍以上に増えた
アベルCEOは保有を続ける理由として「増配や自社株買いの拡大が期待できる」ことを挙げています。実際にどれだけ増えたのかを、支払われた配当の実績で確かめます。
2020年度(2020年9月と2021年3月の支払い)と、2025年度(2025年9月と2026年3月の支払い)の比較です。
| 銘柄 | 2020年度 1株あたり |
2025年度 1株あたり |
増加率 |
|---|---|---|---|
| 丸紅 | 22円 | 107.5円 | +389% |
| 三井物産 | 40円 | 115円 | +188% |
| 三菱商事 | 44.7円 | 110円 | +146% |
| 伊藤忠商事 | 17.6円 | 42円 | +139% |
| 住友商事 | 17.5円 | 37.5円 | +114% |
5社すべてが2倍以上になりました。最も増えたのは丸紅の+389%です。
ただしこの伸び率は割り引いて見る必要があります。2020年度は新型コロナの影響で各社が配当を減らした年でもあるからです。丸紅は2020年9月と2021年3月の支払いをそれぞれ11円まで下げていました。比較の起点が低いぶん、増加率は大きく出ています。
そこで年度ごとの1株あたり配当を並べました。左から2020年度、右へ2025年度まで並んでいます。
| 銘柄 | 2020年度 → 2025年度の1株あたり配当 |
|---|---|
| 丸紅 | 22円 → 62円 → 78円 → 85円 → 95円 → 107.5円 |
| 三井物産 | 40円 → 52.5円 → 70円 → 85円 → 100円 → 115円 |
| 三菱商事 | 44.7円 → 50円 → 60円 → 70円 → 100円 → 110円 |
| 伊藤忠商事 | 17.6円 → 22円 → 28円 → 32円 → 40円 → 42円 |
| 住友商事 | 17.5円 → 27.5円 → 28.8円 → 31.3円 → 32.5円 → 37.5円 |
5社とも、前の年度を下回った年が一度もありません。2020年度に落ち込んだあとは、2021年度から2025年度まで5年続けて増やしています。配当の考え方は配当性向とは?、自社株買いの効果は自社株買いとは?で解説しています。
バークシャーが持ち続けるのは、数字のうえで合理的
ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。「何十年も持つ」という判断は、バークシャーにとってきわめて合理的です。理由は取得コストにあります。
仮に2020年8月31日の終値で買えていたとして、その値段に対していま受け取っている配当の割合を計算しました。投資額は買ったときのまま動かないので、増配が続くとこの割合はどんどん上がります。
| 銘柄 | 当時の 利回り |
いまの 受取利回り |
いま買う 場合 |
|---|---|---|---|
| 丸紅 | 3.44% | 16.8% | 2.07% |
| 三菱商事 | 5.33% | 13.1% | 2.17% |
| 三井物産 | 4.18% | 12.0% | 2.19% |
| 住友商事 | 5.09% | 10.9% | 2.04% |
| 伊藤忠商事 | 3.23% | 7.7% | 1.90% |
丸紅なら16.8%です。株価が動こうと、この割合は下がりません。売らないかぎり毎年これだけ受け取れて、増配があればさらに上がります。売る理由がないという状態です。
しかも2020年当時の配当利回りは3.23〜5.33%ありました。買った時点ですでに高い利回りで、そこから配当が2倍以上に増えた。これが「何十年も持つ」という言葉の中身です。
※ バークシャーは6年かけて段階的に買い増しているため、実際の取得単価はこの計算より高いはずです。ここでの数字は「2020年8月31日の株価で買えていた場合」という仮定にもとづく上限の目安です。
いまから買う人の利回りは2%前後
同じ表の右端の列が、いまの株価で買う人が受け取る配当利回りです。1.90〜2.19%になります。
バークシャーの受取利回りとは、5倍から8倍の開きがあります。同じ株を、同じ企業から、同じ配当を受け取っていても、買った値段が違えば利回りはまったく別の数字になります。
| 立場 | 受け取る配当の利回り | 意味 |
|---|---|---|
| バークシャー(2020年の株価で買えていた場合) | 7.7〜16.8% | 株価がいくらになっても変わらない |
| いまから買う人 | 1.90〜2.19% | 同じ配当でも、投資額が5〜8倍あるため低くなる |
「バークシャーが何十年も持つと言っているから買う」という判断が危ういのはここです。持ち続ける合理性は取得コストから生まれているので、その合理性はいまから買う人には引き継がれません。
いまから買うなら、2%前後の配当利回りと、これからの増配、そして株価の値上がりを見込めるかどうかで判断することになります。それは2020年にバークシャーが直面した判断とは別の問題です。
「何十年も」をそのまま受け取る前に見ておくこと
発言の重みは本物ですが、投資判断としてそのまま使うには、確認しておきたいことが3つあります。
① 方針であって、契約ではない
「今後何十年も保有する」は意思表明であり、法的な拘束力を持つ約束ではありません。バークシャー自身、過去に保有方針を変えたことがあります。
実際に上限の合意も動きました。2020年には「最大9.9%」と述べられていたものが、2025年2月には各社との合意で緩められています。方針は状況に応じて変わりうる、ということはこの経緯そのものが示しています。
② 商社の利益は資源価格と為替に左右される
5社の利益は、原油・石炭・銅などの資源価格と、為替の水準に大きく影響されます。この6年の増益と増配は、資源高と円安が重なった期間の結果でもあります。
円安は、海外で稼いだ利益を円に換算するときに金額を押し上げます。円高に振れれば逆の効果が出ます。為替と株価の関係は円安とは?2026年の160円台と株価が上がる業種・下がる業種で整理しています。
③ すでに大きく上がったあとの水準である
この6年で株価は4.06倍から8.13倍になりました。2020年に買う判断と、いま買う判断では、前提となる株価がまったく違います。
割高か割安かを見る指標としてはPERとPBR、稼ぐ力を見るならROEがあります。「著名投資家が買っている」は、これらの指標の代わりにはなりません。
これから何に注目するべきか
この話は9月3日で終わりではありません。アベルCEOは買い増しにも意欲を示しているため、確認できる材料がこれから出てきます。
| 見るもの | 何を確かめるか | 時期・補足 |
|---|---|---|
| 次の変更報告書 | 買い増しが実際に続いているか | 5営業日以内に提出される。保有比率が1%以上動くと出る |
| 2026年度の中間決算 | 基礎的な利益が伸びているか | 11月ごろ。アベルCEOが理由に挙げた部分 |
| 中間配当と自社株買いの発表 | 増配や自社株買いが実際に出るか | 同じく11月ごろ。発言の裏づけになるかどうかが分かる |
| 共同投資・買収の具体化 | 事業パートナーという位置づけが形になるか | 案件が公表されるまで時期は読めない |
| 為替の水準 | 円安が続くか、円高に振れるか | 利益の円換算額に直接効く |
とくに11月の中間決算は、今回の発言が数字で裏づけられるかどうかが分かる場面です。アベルCEOは「基礎的な利益が伸び続ける」「増配や自社株買いの拡大が期待できる」と述べました。そのとおりになるかは、決算を見れば確かめられます。
配当をいつまでに買えば受け取れるかは権利確定日とは?、権利落ち日の株価の動きは配当落ち日とは?で解説しています。
まとめ
バークシャーのアベルCEOが5大商社について「今後何十年にもわたって保有する」と述べ、9月3日に5社そろって上昇しました。ただし反応の大きさは2020年の参入公表時の2.6分の1で、材料としての新しさは薄れています。
この記事のポイント
・9月3日は5社そろって上昇。最大は三菱商事の+4.09%。同じ日日経平均は下落
・2020年の参入公表時は平均+7.56%。今回は+2.89%で約2.6分の1
・この6年で株価は4.06〜8.13倍(日経平均は2.78倍)
・配当は5社とも2倍以上。最大は丸紅の+389%
・2020年の株価で買えていた場合の受取利回りは7.7〜16.8%
・いまから買う人の配当利回りは1.90〜2.19%。5〜8倍の開きがある
・「何十年も」は方針であって契約ではない。2020年の上限9.9%も2025年に緩められた
バークシャーが持ち続けるのは合理的です。ただしその合理性は、2020年の株価で買ったという事実から生まれています。同じ株を持っていても、買った値段が違えば見ている数字が違います。
いまから検討するなら、2%前後の配当利回りとこれからの増配、資源価格と為替、そして株価の水準を自分で確かめることになります。次の判断材料は11月ごろの中間決算です。
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