グリーンシューオプションとは、IPOなどで主幹事証券会社が、追加で株式を取得できる権利のことです。

オーバーアロットメントで投資家に多めに売った分を埋め合わせるために使われます。行使されるのは、上場後の株価が公開価格を上回ったときだけです。

この記事では、行使価格はいくらなのか、行使されると株数は増えるのか、そして個人投資家がどこで結果を確認できるのかまで、実務的な部分に踏み込んで解説します。

この記事でわかること

・グリーンシューオプションが行使される条件
・行使価格は公開価格ではなく「引受価額」であること
・行使されると株数が増えるのか(希薄化の有無)
・シンジケートカバー取引とどちらが選ばれるのか
・行使されたかどうかを個人投資家が確認する方法

※ オーバーアロットメントそのものの仕組みはオーバーアロットメントとはで解説しています。この記事はグリーンシューオプションに絞ります。

グリーンシューオプションとは

グリーンシューオプションは、主幹事証券会社が持つ「あとから決められた価格で株式を買える権利」です。英語では Greenshoe option、日本の開示書類では単に「オーバーアロットメントに関する第三者割当増資」などと表現されることもあります。

なぜこんな権利が必要なのか。順を追って見ていきましょう。

1

申込が予定株数を大きく上回る
ブックビルディング期間

人気のIPOでは、用意した株数の何倍もの申込が集まります。このままでは多くの投資家が買えません。

2

主幹事が大株主から株を借りて追加販売
オーバーアロットメント

主幹事は大株主などから株式を借り、予定より多く売り出します。これで需要に応えられますが、主幹事には「借りた株を返す義務」が残ります。

3

返すための株をどこから調達するか
上場後

ここで2つの選択肢が生まれます。①発行会社などから追加で取得する(グリーンシューオプション)か、②市場で買い戻す(シンジケートカバー取引)かです。

つまりグリーンシューオプションは、主幹事が「返す株」を確実に手当てするための保険です。

行使されるのは株価が上がったときだけ

主幹事は、どちらの方法でも構いません。判断基準はきわめて単純で、どちらが安く調達できるかです。

株価が公開価格より高い
権利を行使する
市場で買うより安く
調達できるから
グリーンシューオプション
株価が公開価格より安い
市場で買い戻す
権利を使うより安く
買えるから
シンジケートカバー取引

主幹事は必ず安いほうを選ぶ。だから行使の有無が株価のシグナルになる

この構造を理解すると、「グリーンシューオプションが行使された」というニュースは、上場後の株価が公開価格を上回っていたことの証明になるとわかります。

行使価格は公開価格ではない

ここは細かいですが、正確に知っておくと開示書類が読めるようになります。

グリーンシューオプションの行使価格は、投資家が買った公開価格ではなく「引受価額」です。引受価額とは、証券会社が発行会社から株式を引き受けるときの価額で、公開価格から引受手数料相当分を差し引いた金額になります。

価格 誰にとっての価格か 高さ
公開価格 投資家が申込で買う価格 高い
引受価額 証券会社が発行会社から引き受ける価格
=グリーンシューオプションの行使価格
やや安い
発行価額 会計上、資本金等に組み入れる基準となる価額 案件による

目論見書に3つの価格が並んでいて混乱した経験がある人は多いはずです。投資家に関係するのは公開価格、主幹事の権利行使に関係するのは引受価額と整理しておけば迷いません。

上限は15%と決まっている

オーバーアロットメントで追加販売できる株数、つまりグリーンシューオプションの対象となる株数には上限があります。

15%ルール
募集・売出しの予定数量の15%まで

※ 出典:日本証券業協会「有価証券の引受け等に関する規則」第29条

たとえば公募・売出しの合計が100万株なら、オーバーアロットメントは最大15万株までです。法律ではなく業界の自主規制ルールで定められている点も押さえておきましょう。

行使されると株数は増えるのか

これはよく誤解される部分です。答えは「株の出どころによる」です。

調達方法 発行済株式数 希薄化 お金の行き先
発行会社の新株を
第三者割当で取得
増える 起きる 発行会社(資金調達になる)
大株主から
追加で取得
変わらない 起きない 大株主(売却代金)
市場で買い戻す
(シンジケートカバー取引)
変わらない 起きない 市場で売った投資家

日本のIPOでは、第三者割当増資の形をとる案件が多く見られます。この場合は発行済株式数が増えるため、理論上は希薄化が起こります。

ただし希薄化の影響は限定的

上限が15%である上に、その株はすでにオーバーアロットメントとして市場へ売られています。「新たに株が市場へ出てくる」のではなく「すでに出ている分の帳尻を合わせる」ため、公募増資のような需給悪化とは性質が異なります。

行使されたかどうかを確認する方法

主幹事は、グリーンシューオプションを行使した場合もシンジケートカバー取引を行った場合も、上場先の金融商品取引所へ報告することが求められています。個人投資家は次の場所で結果を確認できます。

確認場所 わかること タイミング
目論見書・訂正目論見書 オーバーアロットメントの株数、権利の内容、行使期間 上場前
発行会社の適時開示(TDnet) 第三者割当増資の払込完了、発行済株式数の変化 行使後
EDINET(有価証券届出書等) 正式な条件と最終的な株数 随時

行使期間は、申込期間が終了する日の翌日から最長30日間とされています。上場から1か月ほど経った頃に開示が出ないか見ておくと、結果がわかります。

グリーンシューという名前の由来

金融用語なのに「緑の靴」というのは不思議に感じますが、これは会社名です。

1919年、米国のグリーンシュー製造会社(Green Shoe Manufacturing Company)が株式公開する際に、この仕組みを初めて用いたことに由来するとされています。同社は後にストライド・ライト社となり、社名としては残っていませんが、用語だけが世界中に残りました。

米国と日本で仕組みが少し違う

米国では発行会社が追加で新株を発行する形が中心ですが、日本では大株主から借りた株を返すという枠組みの中で、第三者割当または市場買付が使い分けられます。「同じ名前でも中身が完全には一致しない」ことは、海外の解説を読むときに知っておくと混乱しません。

投資家にとっての注意点

グリーンシューオプションそのものは投資家に不利な仕組みではありませんが、次の3点は誤解しやすいところです。

① 「行使された=今後も上がる」ではない

行使はあくまで過去の結果です。上場直後に公開価格を上回っていたことは示しますが、その後の株価を保証するものではありません。

② オーバーアロットメントの分だけ供給が増えている

需要が強い案件ほどOAの株数も大きくなります。市場に出回る株数が当初予定より最大15%多い状態でスタートしていることは、認識しておいてください。

③ 下支えが終わるタイミングがある

株価が公開価格を下回った場合はシンジケートカバー取引による買い需要が入りますが、これは最長30日間で終わります。買い支えが消えた後の値動きには注意が必要です。

ロックアップの解除時期とあわせて確認しておくと、上場後の需給の変化を見通しやすくなります。

OAに関する用語の整理

用語 意味 株価が高いとき
オーバーアロットメント 主幹事が株を借りて予定より多く売り出すこと 実施される
グリーンシューオプション 追加で株式を取得できる権利 行使される
シンジケートカバー取引 市場で買い戻して返却株を用意すること 行われない
安定操作取引 募集を円滑にするために例外的に認められる価格維持のための買付 通常は行われない

上場から30日間に何が起きるか

オーバーアロットメントが設定された銘柄では、上場後およそ1か月の間に決着がつきます。時系列で整理すると次のようになります。

時期 株価が公開価格を上回る場合 下回る場合
上場日 初値が公開価格を上回る 初値が公開価格を下回る(公募割れ)
上場直後〜数日 特段の買い支えは入らない 主幹事による買戻しの需要が入りうる
最長30日以内 グリーンシューオプションを行使 シンジケートカバー取引で買い戻し
30日経過後 需給は通常の状態に戻る 買い支えが終わる

注目すべきは最終行です。公募割れした銘柄では、期間が終わると買い支えの需要が消えます。上場後1か月前後で値動きの質が変わることがあるのは、この仕組みが背景にあります。

設定されない案件もある

すべてのIPOにグリーンシューオプションが設定されるわけではありません。

設定されにくいケース

募集・売出しの規模が小さい案件、既存株主から株を借りる調整がつかない案件などでは、オーバーアロットメント自体が行われないことがあります。目論見書に「オーバーアロットメントによる売出し」の記載がなければ、グリーンシューオプションも存在しません。

逆に、大型案件ではほぼ設定されると考えて差し支えありません。ブックビルディングに参加する前に、目論見書の表紙付近で確認する習慣をつけておくとよいでしょう。

※ 本記事は制度と仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

グリーンシューオプションに関するよくある質問

グリーンシューオプションが行使されると株価は下がりますか?
直接的に下がる仕組みではありません。行使される株はすでにオーバーアロットメントとして市場に売られており、新たな売り圧力が加わるわけではないためです。ただし発行済株式数が増える形の場合は、1株当たり利益が薄まる点は考慮してください。
行使されなかった場合はどうなりますか?
主幹事は市場で株式を買い戻すシンジケートカバー取引を行い、借りた株を返却します。これは株価が公開価格を下回っていたことを意味するため、投資家から見ると好ましくないサインです。
個人投資家がこの権利を使えることはありますか?
ありません。グリーンシューオプションは主幹事証券会社に与えられる権利で、個人投資家が行使したり取得したりすることはできません。知識として仕組みを理解しておく対象です。
IPO以外でも使われますか?
使われます。上場企業の公募増資や売出しでも、オーバーアロットメントとあわせて設定されることがあります。仕組みはIPOの場合と同じです。
15%という上限は法律で決まっているのですか?
法律ではなく、日本証券業協会の「有価証券の引受け等に関する規則」第29条による自主規制です。募集・売出しの国内予定数量の15%を超える数量をオーバーアロットメントとして売り出すことは認められていません。
オーバーアロットメントがあるIPOは人気ということですか?
需要が強いと見込まれた案件に設定されることが多いのは事実です。ただしOAの有無だけで判断するのは危険で、公募株数、時価総額、ロックアップの条件、事業内容などを合わせて見る必要があります。
行使期間はどのくらいですか?
申込期間が終了する日の翌日から最長30日間とされています。個別案件の正確な期間は目論見書に記載されているので、そちらを確認してください。
グリーンシューオプションと安定操作取引は同じものですか?
別のものです。安定操作取引は募集・売出しを円滑に行うため、金融商品取引法で例外的に認められた価格維持のための買付です。グリーンシューオプションは主幹事が株式を取得する権利であり、目的も根拠となるルールも異なります。

まとめ

グリーンシューオプションは、主幹事が借りた株を返すための調達手段のひとつです。行使されたかどうかは、上場直後の株価が公開価格を上回ったかどうかの答え合わせになります。

この記事のまとめ

・主幹事が追加で株式を取得できる権利
・株価が公開価格を上回ったときだけ行使される
・行使価格は公開価格ではなく引受価額
・上限は募集・売出しの15%(日本証券業協会の規則)
・第三者割当の形なら発行済株式数は増える
・行使期間は申込期間終了日の翌日から最長30日間
・下回った場合はシンジケートカバー取引になる

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