
米国債 ETF は、米国の国債や投資適格の社債をまとめて保有できる ETF で、株の ETF と同じように証券口座で売買でき、毎月分配金が出ます。日本で買われている代表が AGG・BND(米国の投資適格債券全体)と TLT(残存 20 年超の米国債)です。債券 ETF の値動きを決めるのは「デュレーション」で、TLT は金利が 1% 上がると価格が約 16% 下がります。この記事では 3 本の違い、金利と価格の関係、2022 年に何が起きたか、分配金の税金、株との組み合わせ方を説明します。
- AGG・BND=米国の投資適格債券市場全体(国債約 4〜5 割・政府機関の住宅ローン担保証券・社債)、デュレーション約 6 年、経費率 0.03%。TLT=残存 20 年超の米国債だけ、デュレーション約 16 年、経費率 0.15%
- 金利が 1% 動くと価格はデュレーション分(%)逆方向に動く。TLT は 2022 年に約 31% 下落(金利急上昇)。「安全資産」でも値動きは株並みになりうる
- 分配金は毎月。米国の源泉徴収は国債の利子分について免除されることが多く、日本で 20.315%。NISA 成長投資枠の対象(AGG・BND・TLT とも主要ネット証券で可)
AGG・BND・TLT の比較表
| AGG | BND | TLT | |
|---|---|---|---|
| 運用会社 | ブラックロック | バンガード | ブラックロック |
| 対象 | 米国の投資適格債券全体 | 米国の投資適格債券全体 | 残存 20 年超の米国債 |
| 中身 | 国債・政府機関 MBS・社債など約 1 万銘柄 | 同左、約 1 万銘柄超 | 米国債約 40 銘柄 |
| デュレーション | 約 6 年 | 約 6 年 | 約 16 年 |
| 経費率 | 0.03% | 0.03% | 0.15% |
| 分配 | 毎月 | 毎月 | 毎月 |
| 金利 1% 上昇時の価格 | 約 −6% | 約 −6% | 約 −16% |
AGG と BND は指数がほぼ同じ(ブルームバーグ米国総合債券指数とその派生)で、中身も値動きもほとんど変わりません。どちらか 1 本で米国の債券市場全体を持てるので、両方買う意味はあまりありません。
TLT はまったく別物です。残存期間が 20 年を超える米国債だけを持つため、信用リスクはほぼゼロでも金利リスクは債券 ETF の中で最大級です。金利が下がる局面では大きく値上がりし、上がる局面では大きく下がります。「米国債=安全」というイメージで TLT を買うと、値動きの大きさに驚くことになります。
デュレーション:金利が動いたときの値動きの目安
債券の価格は金利と逆に動きます。金利が上がると、すでに発行された低い利率の債券は魅力が落ちて価格が下がります。どれだけ下がるかの目安がデュレーション(年)で、「金利 1% の変動 × デュレーション ≒ 価格の変動率(%)」です。デュレーション 6 年の AGG は金利 1% 上昇で約 6% の下落、16 年の TLT は約 16% の下落になります。
実際に起きたのが 2022 年です。FRB がゼロ金利から 1 年で 4% 以上利上げし、10 年債利回りは 1.5% 台から 4% 台へ上がりました。この年、AGG・BND は約 13%、TLT は約 31% 下落しました(分配金込み)。同じ年の S&P500 は約 18% の下落なので、TLT は株より大きく下げたことになります。
逆に金利が下がる局面では、TLT は株の下落を打ち消す働きをします。2008 年や 2020 年 3 月のように景気後退で金利が急低下した局面では、TLT は 2 桁の上昇でした。TLT は「金利が下がる」と考える人が買う商品で、利回り目当てで持ち続けるものではありません。金利の見通しは10 年債利回りとFF レートの記事を参照してください。
分配金の税金と為替
債券 ETF の分配金は毎月出ます。利回りは AGG・BND で 4% 前後、TLT で 4% 台(2026 年時点の目安)で、株の高配当 ETF と同じ水準です。税金は株の ETF と少し違います。米国債や社債の利子に相当する分配金は「利子関連配当」として米国の源泉徴収(10%)が免除されることが多く、その場合は日本の 20.315% だけがかかります。免除の割合は ETF ごとに毎年決まるので、証券会社の分配金明細で米国源泉税の欄を確認してください。
もう 1 つ忘れやすいのが為替です。米国債 ETF はドル建てなので、円高になると円ベースの価値が下がります。デュレーション 6 年の AGG でも、1 年で 10% の円高が来れば値動きは株並みになります。為替の影響を避けたい人は、東証上場の為替ヘッジありの米国債 ETF(為替ヘッジあり・なし)という選択肢がありますが、ヘッジコストとして日米金利差(年 3% 前後)が引かれます。
NISA の成長投資枠では AGG・BND・TLT とも買えます(主要ネット証券の取扱いを確認)。NISA では日本の税金がかからないので、分配金の手取りは 90〜100% になります。
株との組み合わせ方:何のために持つかを決める
| 目的 | 向く ETF | 理由 |
|---|---|---|
| 株の値動きを和らげたい | AGG・BND | デュレーション 6 年、株との相関が低い |
| 景気後退・利下げに備える | TLT | 金利低下で大きく値上がり。平時は値動きが重い |
| 毎月の分配金が欲しい | AGG・BND | 毎月分配、値動きは債券の中では穏やか |
| 為替の影響を避けたい | 東証上場の為替ヘッジあり ETF | ヘッジコスト(日米金利差)は引かれる |
伝統的な「株 60%・債券 40%」の債券部分に使うなら AGG か BND です。TLT は債券の中では例外的に値動きが大きいため、資産全体の安定化には向かず、金利低下に賭ける道具として少額で使うのが現実的です。買う前にコスト&配当手取りシミュレーターで為替コストと分配金の手取りを確認しておくと、利回りの数字と実際の手取りの差がわかります。
米国債 ETFに関するよくある質問
AGG と BND はどちらを選べばよいですか?
TLT は安全資産ですか?
分配金に米国の税金はかかりますか?
円高になったらどうなりますか?
関連する用語
- ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場している投資信託です。 - NISA
NISAとは、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。 - 10 年債利回り(米国の長期金利)
- FF レート(米国の政策金利)
- 為替ヘッジあり・なし
- 経費率(ETF のコスト)
- 米国 ETF の基本(VOO・VTI・QQQ)
- ソフトランディング(景気後退を避けた利下げ)
あわせて使うツール・記事
執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
各 ETF の対象・デュレーション・経費率・分配頻度はブラックロックとバンガードの公式ファクトシート(2026 年 9 月時点)、2022 年の騰落率は各社の年次リターン(分配金込み)、税制は日米租税条約と所得税法・租税特別措置法にもとづきます。デュレーションによる価格変動は近似値です。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-25。

