OpenAI「GPT-6 Astra」発表でソフトバンクG株が急騰|AGI時代突入の期待が日本株を動かす

米OpenAIが2026年9月3日(米国時間)、次世代AIモデル「GPT-6 Astra」を発表しました。これを受けて翌9月4日の東京市場では、ソフトバンクグループ(9984)が前日比+589円の5,590円まで買われ、上昇率は11.78%に達しました。

この記事では、OpenAIが何を発表したのかという事実関係から、なぜAIモデルの発表でソフトバンクグループの株価が動くのかという仕組み、そして同じ日に上がった銘柄とほとんど動かなかった銘柄の違いまでを、実際の株価データで確かめていきます。

さらに、ソフトバンクグループが1日で10%以上上げた日を過去10年分(2,464営業日)さかのぼって27回すべて洗い出し、その後の値動きを集計しました。「急騰の翌日に買った人はどうなったのか」という、いちばん知りたい部分まで数字で見ていきます。

この記事でわかること

OpenAIがGPT-6 Astraで何を発表したのか(性能・料金・提供時期)
ARC-AGI-3の7.8%→99.9%が、どういう種類の変化なのかをかみ砕いて解説
その99.9%には条件がついていること(別条件では62.7%)
いま主要なAIモデルがどんな位置関係にあるかの一覧
サイバー能力が初めて「重大」と判定されたという異例の内容
OpenAIとはどんな会社か(企業価値・売上・株主・法人形態)
ライバルのAnthropicが、評価額でも売上でもOpenAIを上回っていること
なぜAIの発表でソフトバンクグループが動くのか(保有資産の中身)
・9月4日の値動きの中身(出来高は直近20営業日平均の2.25倍
日経平均806円高のうち669円が、たった2銘柄で作られていたこと
・同じ日に上がった銘柄と、ほとんど動かなかった銘柄の一覧(19銘柄)
10年分の株価から数えた「10%以上上げた日」27回のその後
5営業日後は勝率65.4%、20営業日後には優位性が消えること
直近5回の10%高は、20営業日後がすべてマイナスだったこと
・株価5,590円と1株当たりNAV7,029円の差をどう見るか

※ この記事は公表された事実とデータの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。株価は2026年9月4日の終値、集計はYahoo Financeの日足データ(2016年9月5日〜2026年9月4日・2,464営業日)にもとづいています。

何があったのか|OpenAIが「GPT-6 Astra」を発表した

OpenAIは2026年9月3日(米国時間)、新しい最上位モデル「GPT-6 Astra」を発表しました。同社はこれを「世界で最も賢く、最も整合したモデル」と位置づけ、コンピューター操作・ソフトウェア開発・サイバーセキュリティ・科学研究・専門的な知識労働で最高水準の性能を持つと説明しています。

同社のグレッグ・ブロックマン社長は、これを「世代的な飛躍(generational leap)」と表現し、汎用人工知能(AGI)の到来と見なされる可能性があるとまで述べました。

提供は段階的に始まっています。まず申請制のサイバーセキュリティプログラムに参加する一部の組織へ提供され、その後数日のうちにChatGPTの有料プラン、OpenAI API、AWS(Amazon Bedrock)、Microsoft Azureへ順次広がる形です。

OpenAIが発表した内容を数字で整理する

報道されている内容をまとめると次のようになります。

項目 内容
発表日 2026年9月3日(米国時間)
モデル名 GPT-6 Astra(前の世代はGPT-5.6 Sol)
ARC-AGI-3のスコア 99.9%(Claude Opus 5は30.2%、GPT-5.6 Solは7.8%)
数学(FrontierMath Tier 4) 97.6%(Claude Fable 5.1は87.8%)
PC操作(ScreenSpot-Pro) 92.7%(GPT-5.6 Solは76.9%)
API料金 入力100万トークンあたり10ドル/出力50ドル
Fast mode 最大2倍の速度を2倍の料金で提供
提供の順番 一部組織 → ChatGPT Plus/Pro/Business/Enterprise、API、AWS、Azure
安全性の判定 サイバーセキュリティ能力が初めて「重大(Critical)」に到達

市場がいちばん反応したのは、表のいちばん上にあるARC-AGI-3の99.9%という数字です。ただ、この数字だけを見ても、それがどれくらい大きな変化なのかは伝わりません。次でかみ砕きます。

7.8%から99.9%は、何がどう凄いのか

ARC-AGIというのは、AIが「初めて見る課題」を解けるかどうかを測るテストです。フランスの研究者フランソワ・ショレ氏が考案したもので、ARC-AGI-3はその最新版にあたります。

ここが普通のテストと決定的に違います。大学入試のような試験は、出題範囲があらかじめ決まっています。AIは膨大な文章を学習しているので、こういう「勉強した範囲から出る問題」はもともと得意です。

一方でARC-AGI-3は、ルールを教えられていないゲームを渡されて、実際に触りながら自分でルールを見つけ、攻略するようなテストです。答えはどこにも載っていません。学習した知識をそのまま当てはめることができないため、AIにとっては極端に難しい種類の課題になります。

スコアが意味していること

7.8%(GPT-5.6 Sol)… 100問のうち約8問。ほぼ解けていない
30.2%(Claude Opus 5)… 100問のうち約30問。3問に1問
99.9%(GPT-6 Astra)… ほぼ全問

これは「点数が上がった」という話ではありません。
これまで手も足も出なかった種類の問題が、解けるようになったという変化です。

言い換えると、7.8%というのは「たまたま当たった」に近い水準です。暗い部屋で手探りをしていて、偶然出口に触れることがある、という状態にあたります。それが99.9%になったということは、部屋の構造そのものを理解して歩いて出られるようになった、という意味になります。

市場が「基盤技術の大型更新」と受け取り、翌日の東京市場でソフトバンクグループが11.78%買われたのは、この落差が理由です。1つの世代交代で7.8%から99.9%というのは、これまでのAIの進み方から見ても異例の幅でした。

ただし、その99.9%には条件がついている

ここは投資の判断に関わるので、正確に押さえておきたい部分です。99.9%という数字は、ある特定の条件で測ったときの値です。

テストを実施したARC Prize側の説明によると、計測は2つの方式で行われました。

計測方式 内容 スコア
標準ハーネス 従来から使われている共通の測り方 62.7%
プロバイダーアダプター 問題をまたいで思考の過程を持ち越せる新しい測り方 99.9%

ARC Prizeのグレッグ・カムラット氏は、新しい方式について「会話を続けたまま独自の圧縮を使うことで、ほぼ100%に達しうる」と説明しています。またフランソワ・ショレ氏は「AIは段階的に変化しており、ベンチマークは共に進化していくもの」と述べました。

報道でも数字が割れています。99.9%と伝えたメディアもあれば、98.6%としたメディアもあります。株価が11.78%動いた根拠になった数字が、条件によって62.7%から99.9%まで振れる、という点は知っておいて損はありません。

これは「発表が誇張だった」という話ではありません。ただ、ニュースの見出しに出た1つの数字だけで判断すると、あとから条件を知って印象が変わることがあるという例になります。

いま主要なAIモデルはどんな位置関係にあるか

「GPT-6 Astraがすべてで1位になった」という受け取り方をされがちですが、公表されているベンチマークを並べると、そうはなっていません。

モデル 開発元 総合指数 難問テスト 初見の課題
Claude Fable 5.1 Anthropic 65.7 65.0% 未公表
Claude Opus 5 Anthropic 63.1 63.6% 30.2%
Claude Fable 5 Anthropic 62.1 63.8% 未公表
GPT-6 Astra OpenAI 61.2 57.2% 99.9%
GPT-5.6 Sol OpenAI 未公表 未公表 7.8%

※ 総合指数=Artificial Analysis Index v4.1.1。難問テスト=Humanity's Last Exam(ツール使用時)。初見の課題=ARC-AGI-3。いずれも各社および第三者が公表した値で、測定条件が完全にそろっているわけではありません。

総合指数でも難問テストでも、首位はAnthropicのClaude Fable 5.1です。GPT-6 Astraは総合指数61.2で、この表のなかでは下に位置しています。

分野ごとに見ると、得意と不得意がはっきり分かれます。

分野 GPT-6 Astra 比較対象
初見の課題(ARC-AGI-3) 99.9% Claude Opus 5 は30.2%
脆弱性の発見(ExploitBench) 100.0% GPT-5.6 Sol 78.5%/Claude Fable 5.1 70.0%
数学(FrontierMath Tier 4) 97.6% Claude Fable 5.1 87.8%/Claude Opus 5 73.2%
PC操作(ScreenSpot-Pro) 92.7% GPT-5.6 Sol 76.9%
コーディング(Terminal-Bench 4.0) 57.7% Claude Fable 5.1 55.8%/Claude Opus 5 52.3%
難問テスト(Humanity's Last Exam) 57.2% Claude Fable 5.1 65.0%(上回られている)
総合指数(Artificial Analysis) 61.2 Claude Fable 5.1 65.7(上回られている)

GPT-6 Astraが圧倒しているのは、初見の課題・脆弱性の発見・数学・PC操作です。一方で、幅広い知識を問う難問テストや総合指数では、AnthropicのClaudeが上に立っています。

「どちらが強いか」は、何を測るかで答えが変わる段階にある、というのが実際のところです。

サイバー能力が初めて「重大」と判定された意味

今回の発表でもうひとつ注目されたのが、安全性の判定です。OpenAIが自社で定めているPreparedness Frameworkという枠組みで、サイバーセキュリティ能力が初めて「重大(Critical)」のしきい値に達したモデルになりました。

報道によれば、これは適切なツールとアクセス権があれば、人間が手順を1つずつ指示しなくても、厳重に保護されたシステムの未知の脆弱性を見つけ、攻撃に使う手法まで組み立てられる水準を指しています。だからこそ、まず申請制のセキュリティプログラム参加企業に限って提供する形が取られました。

実際、脆弱性の発見を測るExploitBenchでは100.0%という結果が出ています。障害対応を測るSRE-Benchでも88.0%で、GPT-5.6 Solの55.9%、Claude Fable 5.1の12.5%を大きく引き離しました。

投資の文脈で言えば、これは「能力が高い」という強気材料と、「規制が入りうる」という警戒材料が同時に出たということになります。株価が反応したのは前者ですが、後者は消えたわけではありません。

OpenAIとはどんな会社か

ソフトバンクグループの株価を考えるうえで、出資先であるOpenAIがどんな会社なのかは押さえておく必要があります。

項目 内容
設立 2015年(非営利の研究組織として出発)
CEO サム・アルトマン(2019年から)
法人形態 2025年10月にOpenAI Group PBC(公益重視の営利法人)へ再編
企業価値 8,520億ドル(2026年3月・1,220億ドルの調達完了後)
年換算の売上 約400億ドル
ChatGPTの利用者 週間で約9億人
従業員 約3,800人
主な株主 マイクロソフトがOpenAI Group PBCの約27%、ソフトバンクグループが約13%(見込み)
上場 していない(非上場)

ここ1年で、この会社の立ち位置は大きく変わりました。2026年4月27日、OpenAIとマイクロソフトはモデル提供に関する独占ライセンス契約を終了しています。これによりOpenAIは特定のクラウドに縛られなくなり、Azure・Oracle・AWSなどへ計算資源を分散させる形になりました。

一方で、順調な話ばかりではありません。2026年4月には複数の月で社内の売上目標に届かず、ChatGPTの週間利用者が10億人に達しなかったことも伝えられています。

非上場であることの意味も押さえておきたいところです。上場していれば毎日株価が付き、業績も定期的に開示されます。非上場のままだと、企業価値は直近の資金調達で付いた値段が基準になり、その値段は次の調達まで更新されません。

ライバルのAnthropicは、評価額でも売上でもOpenAIを上回っている

OpenAIの最大の競合が、Claude(クロード)を開発するAnthropic(アンソロピック)です。今回のARC-AGI-3の比較対象に「Claude Opus 5」が出てきたのは、この会社のモデルです。

項目 内容
設立 2021年
創業者 ダリオ・アモデイCEO(元OpenAI)と妹のダニエラ・アモデイ
主力製品 Claude(Fable・Opus・Sonnetなどの系列)
企業価値 9,650億ドル(2026年5月28日・650億ドルの調達後)
年換算の売上 650億ドル(2026年7月末時点)
従業員 約3,000人
主な投資家 Amazon(約80億ドル)、Google(約20億ドル)ほか
上場 2026年6月1日にSECへS-1を機密提出(IPO申請)

創業の経緯そのものが、この2社の関係を表しています。ダリオ・アモデイ氏はOpenAIで研究部門を率いていた人物で、方向性の違いから2020年末に同社を離れ、2021年にAnthropicを立ち上げました。つまりAnthropicは、OpenAIから分かれた会社です。

そして2026年に入ってから、立場が入れ替わりつつあります。

項目 OpenAI Anthropic
企業価値 8,520億ドル(26年3月) 9,650億ドル(26年5月)
年換算の売上 約400億ドル 650億ドル(26年7月末)
従業員 約3,800人 約3,000人
上場の動き 未定 S-1を機密提出(26年6月)
ソフトバンクGの持ち分 約13%(見込み) 議決権は保有していない

※ 年換算の売上は、両社が異なる方法で算出している可能性があり、そのまま並べて比較できるとは限りません。企業価値は直近の資金調達時点の評価額です。

2026年5月の資金調達で、Anthropicの評価額は9,650億ドルとなり、非上場のAI企業としてOpenAIの8,520億ドルを上回りました。年換算の売上でも、7月末時点で650億ドルとOpenAIをおよそ250億ドル上回っています。

さらに2026年6月1日、AnthropicはSECにS-1(上場登録届出書)を機密ドラフトとして提出しました。報道では、10月のIPOで評価額2兆ドル超を見込む投資家の見方も伝えられています。

ここがソフトバンクグループの投資家にとって重要になります。同社のAI投資はOpenAIに集中しており、後藤芳光CFOも「今はOpenAI中心で考えている」「生成AI分野に関してはOpenAIと強いタッグを組んで進めていくべき」と述べています。Anthropicの議決権は保有していません。

つまり、Anthropicが伸びても、ソフトバンクグループの資産価値は直接には増えません。むしろOpenAIの相対的な地位が下がれば、持ち分13%の評価にも影響します。GPT-6 Astraの発表が好感された一方で、この構図は残ったままです。

なぜOpenAIの発表でソフトバンクグループの株価が動くのか

ここから株価の話に移ります。ソフトバンクグループが大きく動いた理由は、この会社が事業会社ではなく「株を持っている会社」だからです。

2026年3月末時点の同社の保有株式価値は48.3兆円で、このうちArm(アーム)とOpenAIの2社だけで約65%を占めています。

項目 数値(2026年3月末時点)
保有株式価値 48.3兆円
うちArmとOpenAI 約65%
ネット有利子負債 8.21兆円
1株当たりNAV 7,029円
OpenAIへの累計コミット 約646億ドル(約10.1兆円)/持分見込み約13%
OpenAIの企業価値 2,600億ドル(2025年3月)→ 7,300億ドル(2026年3月)

NAVというのは、持っている資産の時価から借金を引いた金額を、株数で割ったものです。ソフトバンクグループの株価は、この会社が何を作って何個売ったかではなく、持っている株の値段で動きます。

そしてOpenAIは上場していません。株価という毎日の値段が付かないため、「OpenAIがすごいモデルを出した」というニュースそのものが、持ち分の値段を測り直す材料として使われます。これが、事業会社にはない値動きの原因です。

値動きの経路

OpenAIが高性能モデルを発表
 ↓
OpenAIの企業価値への期待が上がる
 ↓
保有株式価値の約65%を占めるArm・OpenAIの評価が上がる
 ↓
1株当たりNAVが上がる
 ↓
ソフトバンクグループの株価が動く

9月4日の値動き|出来高は直近20営業日平均の2.25倍

実際の値動きを見ていきます。

項目 2026年9月4日
前日終値 5,001円
始値 5,197円
高値 5,611円
安値 5,181円
終値 5,590円(+589円・+11.78%)
出来高 7,780万株(平均の2.25倍)

読み取れることが3つあります。

1つめは、始値の時点ですでに196円上がっていたことです。発表は米国時間の9月3日なので、日本市場が開いた時点で織り込みが始まっていました。前日の終値で買えた人はいません(ギャップアップとは?窓埋めの確率)。

2つめは、高値5,611円に対して終値が5,590円だったことです。高値からわずか21円しか下げずに引けています。急騰した日にありがちな「上げ幅を半分返す」動きにはなりませんでした。

3つめは出来高です。7,780万株は直近20営業日の平均(約3,455万株)の2.25倍にあたります。値段だけでなく、参加している人数そのものが増えた日でした出来高とは?株価との4パターン)。

発表の前、ソフトバンクグループはむしろ下げていた

ここは見落とされやすい部分です。9月4日の急騰は、下げたところからの反発でした。

直近の終値をたどると、9月1日が5,262円、9月2日が4,924円、9月3日が5,001円です。9月2日には一時4,911円まで下げており、2026年6月2日に付けた年初来高値9,074円からは45.9%安の水準でした。

つまり9月4日の11.78%高は、高値を更新した動きではありません。9月4日の終値5,590円でも、年初来高値からはまだ38.4%低い位置にあります。「急騰」という言葉から受ける印象と、実際の株価の位置は別物です。

日経平均806円高のうち、669円は2銘柄だけで作られた

同じ日、日経平均株価は65,020.94円で引け、前日比+806.46円(+1.26%)と5営業日ぶりに反発しました。ただし、この806円の中身が問題です。

項目 数値 上げ幅に占める割合
日経平均の上げ幅 +806.46円 100%
ソフトバンクGの寄与 約+473円 約58.8%
アドバンテストの寄与 約+195円 約24.2%
上記2銘柄の合計 約+669円 約83.0%
値上がり銘柄数 788
値下がり銘柄数 712

値上がり788銘柄に対して値下がり712銘柄です。ほぼ半々でした。「日経平均が806円上がった日」なのに、市場全体で見れば上がった株と下がった株の数はほとんど変わりません。

日経平均は225銘柄の株価を単純に足して割る指数なので、株価の絶対値が大きい銘柄の影響が大きくなります。ソフトバンクグループやアドバンテストのような株価の高い銘柄が動くと、指数だけが大きく動きます。指数の数字を相場の全体像だと受け取ると、実態を読み違えます。

同じ日に上がった銘柄と、ほとんど動かなかった銘柄

9月4日に「AI関連」と呼ばれる銘柄がどう動いたかを、19銘柄について実際に集計しました。並べてみると、反応の差がはっきり出ています。

銘柄(コード) 9月3日 9月4日 前日比
ヘッドウォータース(4011) 2,310円 2,603円 +12.68%
ソフトバンクグループ(9984) 5,001円 5,590円 +11.78%
太陽誘電(6976) 8,857円 9,426円 +6.42%
キオクシアHD(285A) 51,670円 54,460円 +5.40%
freee(4478) 3,965円 4,145円 +4.54%
さくらインターネット(3778) 3,510円 3,650円 +3.99%
PKSHA Technology(3993) 3,090円 3,205円 +3.72%
富士通(6702) 3,795円 3,900円 +2.77%
アドバンテスト(6857) 32,280円 33,090円 +2.51%
NEC(6701) 4,729円 4,828円 +2.09%
ディー・エヌ・エー(2432) 2,584.5円 2,620円 +1.37%
日経平均株価 64,214.48円 65,020.94円 +1.26%
ディスコ(6146) 54,040円 54,460円 +0.78%
日立製作所(6501) 5,352円 5,377円 +0.47%
東京エレクトロン(8035) 53,300円 53,320円 +0.04%
NTT(9432) 173.2円 172.6円 −0.35%
トヨタ自動車(7203) 3,117円 3,081円 −1.15%
レーザーテック(6920) 33,690円 33,180円 −1.51%

「AI関連株」でひとくくりにすると外れる

この表でいちばん注目したいのは、下半分です。

AI関連株の代表格として名前が挙がる東京エレクトロンは+0.04%、レーザーテックは−1.51%で、どちらも動いていません。ディスコも+0.78%で日経平均を下回りました。半導体製造装置は「AI関連」の中心にあるはずの業種です。

一方で上位に来たのは、ヘッドウォータース、ソフトバンクグループ、太陽誘電、キオクシアHDでした。業種はばらばらです。

この日に動いたかどうかを分けたのは「AI関連かどうか」ではありませんでした。整理すると、次の3つに分かれます。

9月4日に動いた銘柄の3つの型

OpenAIの評価がそのまま資産価値になる会社
 → ソフトバンクグループ(+11.78%)。持ち分の値段が直接動く

時価総額が小さく、思惑だけで動く会社
 → ヘッドウォータース(+12.68%)。出来高は前日の約9.3倍

すでに業績が動いていて、AIニュースが後押しになる会社
 → キオクシアHD(+5.40%)、太陽誘電(+6.42%)

動かなかったのは、AIと関係がないからではありません。
 → 東京エレクトロン(+0.04%)は、モデルが1つ出たくらいでは受注が変わらない

ニュースで株価が動くのは、そのニュースがその会社の数字を書き換えるときだけです。GPT-6 Astraの発表は、ソフトバンクグループの持ち分の評価を書き換えますが、東京エレクトロンの来期の受注を書き換えるわけではありません。だから片方は11.78%動き、もう片方は0.04%で終わりました(株価急騰の理由は?飛び乗った翌日の結果)。

ソフトバンクグループが1日で10%以上上げた日は、10年で27回あった

ここからは、この11.78%という数字がどれくらい珍しいのかを確かめます。

Yahoo Financeの日足データで、2016年9月5日から2026年9月4日までの2,464営業日をすべて調べました。前日比が+10%以上だった日は、9月4日を含めて27回ありました。

ここで意外なのは、その分布です。

+10%以上 −10%以下 ±5%以上 日次の標準偏差
2019年 1回 0回 7回 2.31%
2020年 4回 3回 24回 3.74%
2021年 1回 0回 13回 2.50%
2022年 1回 1回 22回 2.85%
2023年 0回 0回 7回 1.97%
2024年 2回 1回 19回 3.00%
2025年 5回 3回 46回 3.91%
2026年(9月4日まで) 13回 4回 54回 5.70%

10年間で27回あった10%高のうち、13回が2026年に集中しています。年の数え方で言えば約半分です。しかも2026年はまだ165営業日しか経っていません。

下げの側も同じです。2026年は−10%以下の日が4回ありました(6月4日−11.28%、6月23日−10.09%、6月26日−12.53%、8月19日−10.34%)。6月1日に+14.02%を付けた3営業日後に、−11.28%で戻しています。

そして±5%以上動いた日が54回。165営業日のうち54回ですから、およそ3営業日に1回は5%以上動いている計算になります。日次の標準偏差は2023年の1.97%から5.70%へと、約2.9倍になりました。

つまり11.78%という数字は、いまのソフトバンクグループでは「今年13回目」の出来事です。珍しくないわけではありませんが、この銘柄では日常の範囲に入っています。

急騰の翌日に買った人はどうなったか

いちばん知りたいのはここだと思います。10%以上上がった日の終値で買った場合、その後どうなったのかを27回すべてについて計算しました。

比較のために、同じ期間の「どの日に買っても同じ」という全日平均も並べています。これがないと、勝率65%が高いのか低いのか判断できません。

経過 10%高の日に買った場合 全日平均
5営業日後 勝率65.4%/平均+2.85% 勝率53.0%/平均+0.59%
20営業日後 勝率53.8%/平均+1.85% 勝率53.0%/平均+2.43%
60営業日後 勝率59.1%/平均+11.16% 勝率53.7%/平均+7.83%
120営業日後 勝率75.0%/平均+41.14% 勝率62.2%/平均+14.28%

読み取れることが2つあります。

1つめは、5営業日後までは明らかに追い風だということです。勝率65.4%・平均+2.85%は、全日平均の53.0%・+0.59%を大きく上回ります。急騰の勢いは1週間くらいは残ります。

2つめは、20営業日後にその優位性が消えることです。勝率53.8%は全日平均の53.0%とほとんど変わらず、平均リターンにいたっては+1.85%で全日平均の+2.43%を下回りました。

1か月ほど経つと、「急騰した日に買った」ことの意味がなくなります。60営業日後・120営業日後の数字は良く見えますが、この期間の同社の株価はもともと大きく上昇しているため、上昇相場そのものの効果が混ざっています。

※ 60営業日後は22回、120営業日後は16回しかサンプルがありません。直近の急騰はまだ日数が経っていないため計算対象に入っていません。数が少ないほど数字は振れやすくなります。

直近5回の10%高は、20営業日後がすべてマイナスだった

ここは慎重に見ておきたい部分です。2026年6月以降に10%以上上げた日を抜き出すと、その後の成績が明確に悪化しています。

日付 その日の上昇率 5営業日後 20営業日後
2026年6月1日 +14.02% −18.3% −31.0%
2026年6月15日 +10.31% +1.5% −10.9%
2026年7月10日 +10.65% −14.9% −13.9%
2026年7月31日 +13.80% +5.6% −1.1%
2026年8月5日 +13.96% −6.4% −16.1%

5回とも、20営業日後はマイナスで終わっています。そのうち3回は10%を超える下落でした。

これは10年分の平均(20営業日後の勝率53.8%)とは違う姿です。2026年6月2日に年初来高値9,074円を付けたあと、同社の株価は下落基調にあります。下げの途中では、大きく上げた日も戻り売りに押し返されてきた、ということになります(いってこいとは?15営業日に1回起きる値動き)。

過去の平均だけを見ると強気に見えますが、直近の局面だけを見ると逆の結果が出ています。どちらか一方だけを根拠にすると、判断を誤ります。

株価5,590円と1株当たりNAV7,029円の差をどう見るか

ソフトバンクグループの株価を語るときによく出てくるのが、NAVディスカウントという考え方です。

項目 数値
1株当たりNAV(2026年3月末) 7,029円
9月3日終値(発表前) 5,001円(NAVより28.9%低い)
9月4日終値(発表後) 5,590円(NAVより20.5%低い)
年初来高値(2026年6月2日) 9,074円(NAVを上回る)
年初来安値(2026年3月23日) 3,365円

11.78%上がったあとでも、株価はNAVより20.5%低い水準です。「持っている資産の価値より2割安い」という見方をすれば、まだ割安に見えます。

ただし、この見方には注意点が3つあります。

1つめは、NAVが2026年3月末時点の数字だということです。その後にArmの株価もOpenAIの評価も動いています。いまのNAVが7,029円のままである保証はありません。

2つめは、OpenAIが上場していないことです。非上場の持ち分は、直近の資金調達で付いた企業価値をもとに評価されます。市場で毎日売買されている株価とは、確からしさの性質が違います。

3つめは、ディスカウントが縮まるとは限らないことです。投資会社の株価がNAVより安く付くのは珍しいことではありません。ネット有利子負債が8.21兆円あることも、割り引かれる理由の一つです。2026年6月にはNAVを上回る場面もありましたが、そこから38.4%下げています。

これから何に注目するべきか

GPT-6 Astraの発表そのものは終わったイベントです。ここから先、ソフトバンクグループの株価を動かす材料として見ておきたいものを整理します。

注目点 何を見るか
AnthropicのIPO 上場すればOpenAIの評価に比較対象ができる。値段が付くことでOpenAIの企業価値も測り直される
OpenAIのIPO 上場すれば持ち分に毎日の値段が付く。NAVの不確かさが減る一方、評価が下がる可能性もある
Armの株価 上場しているので毎日確認できる。9月3日の米国市場では+3.29%
GPT-6 Astraの実際の採用 発表と、企業が実際に金を払って使うことは別。ここが割れると期待が剥がれる
サイバー能力への規制 「重大」判定を受けた能力に各国がどう対応するか。制約が入れば収益化の速度が変わる
金利と為替 8.21兆円の有利子負債を抱えるため、金利上昇は逆風になる
四半期決算 投資損益で利益が大きく振れる。11月ごろの中間決算でNAVが更新される

とくに2つのIPOが、この会社の株価にとって大きな分岐点になります。非上場のまま期待だけで評価されている状態と、市場が毎日値段を付ける状態とでは、株価の動き方が変わります。

まとめ

この記事のポイント

・OpenAIが2026年9月3日(米国時間)にGPT-6 Astraを発表
・初見の課題を測るARC-AGI-3が7.8%→99.9%。解けなかったものが解けるようになった変化
ただし99.9%は特定条件での値。標準の測り方では62.7%
・総合指数と難問テストではAnthropicのClaude Fable 5.1が上位
サイバー能力が初めて「重大」判定。強気材料と警戒材料が同時に出た
Anthropicは評価額9,650億ドル・売上650億ドルでOpenAIを上回る
ソフトバンクGはAnthropicの議決権を持たない。AI投資はOpenAIに集中
・9月4日、ソフトバンクグループは+11.78%。出来高は平均の2.25倍
・ただし年初来高値からはまだ38.4%安
日経平均806円高のうち669円(83.0%)が2銘柄だけ。値上がり788/値下がり712
東京エレクトロンは+0.04%、レーザーテックは−1.51%。AI関連で括ると外れる
・10年2,464営業日で10%高は27回。うち13回が2026年に集中
・その後は5営業日後が勝率65.4%20営業日後には優位性が消える
直近5回の10%高は、20営業日後がすべてマイナス
・株価5,590円は1株当たりNAV7,029円より20.5%低い(NAVは3月末時点)

GPT-6 Astraの発表は、ソフトバンクグループにとって「持っているものの値段が上がるかもしれない」というニュースでした。売上や利益が増えたわけではありません。だから同じAI関連でも、製造装置メーカーはほとんど動きませんでした。

そして数字が示しているのは、急騰から1か月ほど経つと、その日に買ったことの優位性が消えるという点です。直近5回にかぎれば、20営業日後はすべてマイナスでした。

次の判断材料は、AnthropicとOpenAIのIPOに関する続報と、11月ごろの中間決算で更新されるNAVです。それまでは、Armの株価という毎日確認できる数字を手がかりにするのが現実的です。

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