
「長期保有優遇」という同じ言葉が、まったく違う2つの意味で使われています。持ち続けると優待が増えていくものと、一定期間持たないと1円も届かないものです。どちらも「長期保有優遇あり」と表示されます。
株主優待を出している1,653社を1社ずつ確認し、100株の欄に継続保有の記載がある522社を抜き出して分類しました。結果は増える型が182社、もらえない型が340社。全体の約65%は、買った年に何も届きません。
この記事では、買った年から受け取れる182社だけを対象に、100株の実質利回りでランキングにしました。あわせて、持ち続けたときに何倍まで増えるのか、もらえない型をどう見分けるのかも整理します。
| 外したもの | 理由 |
|---|---|
| 大成建設(1801) | 「工事請負代金・仲介手数料等割引クーポン券」。家を建てないと使えないため額面ではない |
| ヴィレッジヴァンガードコーポレーション(2769) | 備考に「買い上げ税込2,000円毎に1枚(1,000円)利用可能」。10,000円分を使うには20,000円の買い物が必要で、購入額に連動する |
| 北の達人コーポレーション(2930) | 内容欄が「1、商品7,370円相当」「2、ECサイト商品券3,000円相当」の2本立てで、併給なのか選択なのかを内容欄から判別できない。商品券にも「1商品の購入につき1枚のみ利用」という制限がある |
| ジェリービーンズグループ(3070) | 備考に「クーポンの利用は、商品ご購入価格の50%が上限」。額面ではなく割引券 |
| ランシステム(3326) | A・B・Cコースからの選択制で、金額の大きいAコースは「6時間無料券」=金券ではない |
| リネットジャパングループ(3556) | 「査定金額10,000円UP」は買取査定額3万円以上が条件の上乗せで、額面ではない(3万円未満なら1,000円UP) |
| オンザページ(9160) | 特選ギフトが申込制で、優待券のほうは「お食事代金20%割引」=使う金額で価値が変わる。額面としては扱えない |
| 金額が書かれていないもの | 「◯枚」「対象商品より1点」など、「◯◯円」と金額が明記されていないため利回りが出せない |
| 株数の欄を取り違えたもの | 「1,100株以上」を100株の行として数えていた誤りを修正した(6社) |
継続保有の条件がある企業は522社ありましたが、上記の条件で調べると、買った年から受け取れて「◯◯円」と金額が明記されているのは10社に絞られた形です。
この記事でわかること
・長期保有優遇には2つの型があり、522社のうち340社は買った年にもらえないこと
・優待の内容欄を見て、どちらの型か1秒で見分ける方法
・持ち続けると何倍になるのか。倍率で並べた上位10社
・NTT・ソフトバンクが「もらえない型」に入っていること
・株主番号が変わると振り出しに戻るという落とし穴
・条件があとから追加された10社の実例
・保有年数を入れて受取総額を比べられる計算ツール
※ この記事は制度とデータの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。優待の内容は変更されることがあるため、購入前に各社のIR情報で確認してください。
今回のランキングの決め方
今回の順位に関しては以下の条件のもとで計算してランキング化した形です。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 銘柄数 | 株主優待を出している1,653社を1社ずつ確認 |
| 株数 | 100株(最低単元)でもらえるものだけ |
| 抽出条件 | 100株の欄または備考に継続保有の記載があるもの |
| 保有期間 | 買ったその年からもらえるものだけ(「◯年未満」「初年度」の区分があるもの) |
| 優待の性質 | 「◯◯円」と金額が明記されていて、購入額に連動しないもの |
| 実質利回り | 初年度の年間の額面 ÷(株価×100株)×100 |
| 株価 | 2026年9月1日の終値 |
522社を機械的に判定したあと、利回りが高い順に1社ずつ内容を読み直しています。判定の内訳は次のとおりです。
| 判定 | 社数 | 扱い |
|---|---|---|
| 増える型(買った年からもらえる) | 182社 | 上から順に目視で検算 |
| もらえない型(継続保有が条件) | 340社 | 買った年はもらえないため対象外 |
| うち「◯◯円」と金額が明記されているもの | 10+社 | この記事のランキングに掲載 |
| うち金額が書かれていないもの | —社 | 「◯枚」「1点」など。利回りが出せないため対象外 |
他の株主優待サイトの一覧と最も違うのは、「長期保有優遇あり」をひとまとめにせず、買った年からもらえるかどうかで522社を割り直している点です。
長期保有優遇の株主優待10選
初年度の実質利回りの上位10社です。すべて100株・買った年から受け取れる・「◯◯円」と金額が明記されているという条件を満たしています。右端に、最も高い区分まで到達したときの利回りも並べました。
| 銘柄(コード) | 投資額 | 年間の額面 | 実質利回り | 最長時 | 権利確定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① ジーイエット(7603) | 4,100円 | 2,000円 | 48.78% | 97.56% | 2月、8月 |
| ② エム・エイチ・グループ(9439) | 23,000円 | 3,500円 | 15.22% | 19.57% | 6月 |
| ③ メディア工房(3815) | 42,900円 | 4,000円 | 9.32% | 11.66% | 2月、8月 |
| ④ 総医研ホールディングス(2385) | 22,100円 | 2,000円 | 9.05% | 11.31% | 6月 |
| ⑤ エディア(3935) | 70,800円 | 5,000円 | 7.06% | 14.12% | 2月 |
| ⑥ ヤーマン(6630) | 79,600円 | 5,000円 | 6.28% | 16.33% | 12月 |
| ⑦ TOKYO BASE(3415) | 35,200円 | 2,000円 | 5.68% | 11.36% | 1月 |
| ⑧ ソースネクスト(4344) | 11,100円 | 500円 | 4.50% | 5.41% | 12月 |
| ⑨ デュアルタップ(3469) | 89,500円 | 4,000円 | 4.47% | 5.59% | 6月 |
| ⑩ ジャパンインベストメントアドバイザー(7172) | 209,500円 | 9,000円 | 4.30% | 17.18% | 12月 |
1位の利回りが48%を超えているのは、優待が手厚いからではなく株価が41円まで下がっているためです。実質利回りは「額面 ÷ 投資額」なので、株価が下がると自動的に上がります。この点は記事の後半で詳しく扱います。
ここは先に強調しておきたいところです。利回りが高い銘柄が、良い銘柄とは限りません。利回りの高さは「優待が手厚い」ではなく「株価が安い」ことの裏返しである場合が多く、なかには優待そのものを取りやめる企業もあります。その見分け方は記事の後半で整理しています。
また、年2回の権利確定がある銘柄は1回あたりの金額ではなく年間の合計に直して並べています。ジーイエットなどが該当します。企業によっては内容欄に「年間◯円相当」と併記されているので、比べるときは必ず年間に揃えてください。
【1位】ジーイエット(7603)48.78%
スタンダード/小売業 権利確定:2月、8月 買物優待券
今回の10社で実質利回りが突出して高いのがジーイエットです。3年未満でも1回1,000円相当、年2回で2,000円相当。3年以上になると年間4,000円相当に上がります。
利回りがここまで高いのは、株価が41円まで下がっているためです。投資額が4,100円しかないので、年2,000円の優待でも比率としては非常に大きくなります。これは「優待が手厚い」のではなく「株価が安い」という意味であり、利回りの高さをそのまま魅力と読むべきではない典型例です。
優待券が使えるのはマックハウス、マックハウス プラザ、アウトレット-J、NAVY、コーエンの店舗です。近くに店舗がなければ額面どおりの価値にはなりません。3年以上の判定は、2月末と8月末の名簿に7回以上連続して記録されることと定義されています。
【2位】エム・エイチ・グループ(9439)15.22%
スタンダード/サービス業 権利確定:6月 「MHG-WEBSTORE」オンラインストアで利用可能な優待券
エム・エイチ・グループは美容室を運営する企業で、優待はオンラインストア「MHG-WEBSTORE」で使える優待券です。3年未満で3,500円相当、3年以上で4,500円相当になります。
投資額が23,000円と小さいため、初年度から15%を超える実質利回りになります。今回の10社のなかでは、投資額の小ささと額面の大きさのバランスが最もよい部類です。
継続保有の定義は「継続して権利確定月末日の株主名簿に記載又は記録されている期間」とだけ書かれています。他社に比べて条件の書き方が簡素なので、判定の詳細はIRに確認したほうが確実です。
【3位】メディア工房(3815)9.32%
グロース/情報・通信業 権利確定:2月、8月 デジタルギフト
メディア工房は年2回の権利確定です。2月末と8月末にそれぞれ受け取れるため、1年未満でも年間4,000円相当、1年以上で年間5,000円相当になります。
注意したいのは判定の基準日です。継続保有の判定に使われるのは8月31日の名簿だけで、2月末は基準日ではないと明記されています。年2回もらえるのに、期間の判定は年1回しか行われないという設計です。
デジタルギフトはWeb上で品目を選んで受け取る方式です。選択期間を過ぎると受取手続きができなくなります。届いた案内を放置すると額面がそのまま消えるため、権利を取ったあとの管理も必要になります。
【4位】総医研ホールディングス(2385)9.05%
グロース/サービス業 権利確定:6月 日本予防医薬 公式通販サイト・ポイント
総医研ホールディングスは、内容欄が「【初年度】2,000ポイント」「【2年以上継続保有】2,500ポイント」と書かれています。この記事で説明している「初年度」という言葉が、そのまま使われている例です。
ポイントは日本予防医薬のオンラインショップで使える「イミダポイント」で、公式サイト上で1ポイント=1円として利用できると明記されています。ポイント型の優待では換算レートが書かれていないことも多いので、この点ははっきりしています。
長期保有特典の判定は、6月30日の名簿に同一株主番号で連続2回以上記載されることと定義されています。2025年6月30日を初年度としているため、2年以上の特典が実際に動き出すのは2026年6月30日時点の株主からです。
【5位】エディア(3935)7.06%
スタンダード/情報・通信業 権利確定:2月 「まるくじ」「くじコレ」で利用可能なクーポン
エディアの優待は、自社が運営するオンラインくじサービス「まるくじ」「くじコレ」で使えるクーポンです。1年未満で5,000円相当、1年以上で10,000円相当(5,000円相当×2枚)になります。
ただし「1回の会計につき、利用クーポンは1枚のみ」という制限があります。2枚もらっても一度に1万円ぶんを使うことはできません。クーポンには有効期限もあるため、額面をすべて使い切れるかは利用頻度によります。
使い道が自社サービスに限定されるタイプの優待です。そのサービスを使う予定がない場合、額面の数字は実際の価値と一致しません。継続保有の判定は2月末と8月31日の名簿に3回以上連続で記載されることとされています。
【6位】ヤーマン(6630)6.28%
プライム/電気機器 権利確定:12月 自社直販Webサイト・優待割引券
ヤーマンは美容機器メーカーで、優待は自社直販サイトと直営店で使える優待割引券です。1年未満5,000円、1年以上7,000円、2年以上10,000円、5年以上13,000円と4段階で上がります。
5年で13,000円相当まで届くため、最長時の実質利回りは16%を超えます。ただしそこに達するには、名簿への連続記載が11回以上必要です。
注意点が1つあります。同社は2025年12月末から事業年度の末日を変更し、優待の基準日を4月末から12月末に移しました。制度変更の途中にある銘柄なので、購入前に最新の開示を確認してください。
【7位】TOKYO BASE(3415)5.68%
プライム/小売業 権利確定:1月 買物優待券
TOKYO BASEは区分が2つだけの分かりやすい設計です。2年未満で2,000円相当、2年以上で4,000円相当の買物優待券になります。
優待券は自社運営のオンラインストアと国内の実店舗の両方で使えます。オンラインでも使えるため、店舗の場所に左右されにくい点は他社より有利です。
2年以上の条件は、1月末と7月末の名簿に同一株主番号で連続5回以上記録されることと定義されています。有効期限は翌年3月末日までなので、4月に届いてから約1年の猶予があります。
【8位】ソースネクスト(4344)4.50%
プライム/情報・通信業 権利確定:12月 ソースネクスト e ポイント贈呈
ソースネクストは1年未満500ポイント、1年以上550ポイント、3年以上600ポイントという設計です。金額そのものは小さいのですが、投資額が11,100円と今回でもっとも少なくて済みます。
ポイントは同社サイトでの購入時に1ポイント=1円として使えます。「1回の支払いで利用できるポイント数に制限なし」と明記されている点は、前に挙げたエディアとの違いです。使い方の制限がないぶん、額面と実際の価値が近くなります。
有効期限は手元に到着してから翌年2月末日までです。継続保有は12月31日と6月30日を基準日として、1年以上は連続3回以上、3年以上は連続7回以上と定義されています。
【9位】デュアルタップ(3469)4.47%
スタンダード/不動産業 権利確定:6月 QUOカードPay
デュアルタップは不動産会社で、優待はQUOカードPayです。1年未満で4,000円相当、1年以上で5,000円相当になります。
今回の10社のなかで、使い道がもっとも広いのがこの銘柄です。QUOカードPayはコンビニやドラッグストアなど幅広い店舗で使えるため、自社サイト限定の優待と違って額面がそのまま価値になります。
1年以上の条件は、6月末と12月末の名簿に連続3回以上の記載と定義されています。ただし受け取りにはスマートフォンが必要です。カード型のQUOカードとは別物なので、この点は購入前に確認してください。
【10位】ジャパンインベストメントアドバイザー(7172)4.30%
プライム/証券、商品先物取引業 権利確定:12月 新聞購読券
ジャパンインベストメントアドバイザーの優待は日本証券新聞デジタル版の購読券です。2年未満で3か月分(9,000円相当)、2年以上で6か月分、3年以上で12か月分(36,000円相当)になります。
額面としては36,000円と大きいのですが、中身は特定の新聞の購読権であり、他の用途には使えません。金券やギフト券と同じ額面として扱うと、実際の価値を過大に見積もることになります。
この銘柄は「額面が明記されているが、換金性はない」という類型の代表例です。その新聞を読む人にとっては額面どおりの価値がありますが、読まない人にとってはほぼゼロになります。額面の数字だけで並べたときに順位が上がりやすい型として覚えておくと役に立ちます。
長期保有優遇には2つの型がある
ここまでの10社は、すべて「買った年から受け取れる」銘柄です。しかし継続保有の条件がある522社を全部見ると、こちらは少数派でした。
| 型 | 社数 | 内容 | 投資家から見た意味 |
|---|---|---|---|
| 増える型 | 182社 | 買った年から受け取れて、持ち続けると金額が上がる | 初年度から回収が始まる |
| もらえない型 | 340社 | 条件の年数に達するまで1円も届かない | 最初の数年は投資額だけが拘束される |
522社のうち340社、約65%がもらえない型です。「長期保有優遇あり」という表示だけを見て買うと、多数派であるこちらを引く可能性のほうが高い、ということになります。
この違いは利回りの計算にも直結します。もらえない型の銘柄で「利回り2.0%」と表示されていても、それは条件を満たした先の年の利回りであって、買った年の利回りは0%です。利回りの落とし穴については優待利回りとは?で整理しています。
「未満」か「初年度」があるかで見分ける
見分け方は単純です。優待の内容欄に「◯年未満」または「初年度」という区分があるかどうか、それだけです。
| 書かれ方 | 判定 | 意味 |
|---|---|---|
| 【1年未満保有】1,000円 /【1年以上保有】3,000円 | 増える型 | 買った年から1,000円分もらえる |
| 【1年以上保有】3,000円相当 | もらえない型 | 買った年は対象外 |
| 【初年度】3,000円 /【2年目以降】3,500円 | 増える型 | 買った年から3,000円分もらえる |
| 【3年未満保有】なし /【3年以上保有】5,000円 | もらえない型 | 区分はあるが金額はゼロ |
| 備考に「◯年以上継続保有した株主に限る」 | もらえない型 | 内容欄ではなく備考にしか書かれていないことがある |
4行目に注意してください。ミサワ(3169)は「【3年未満保有】なし」「【3年以上保有】5,000円相当」と書かれています。「3年未満」という区分は用意されているのに、そこに書かれているのは「なし」です。区分の有無だけで機械的に判定すると、これを増える型と数えてしまいます。
5行目も見落としやすい形です。優待の内容欄には金額しか書かれておらず、継続保有の条件が備考欄にしか書かれていない企業があります。内容欄だけを読んで判断せず、備考まで開いて確認してください。
【独自集計】持ち続けると優待額は何倍になるか
ここまでは初年度の利回りで並べてきましたが、「持ち続けたときに何倍になるか」で並べると顔ぶれが変わります。増える型のうち、初年度と最長時の金額が両方とも「◯◯円」と明記されている銘柄を倍率順に並べました。
| 銘柄(コード) | 倍率 | 初年度 → 最長 | 投資額 | 権利確定 |
|---|---|---|---|---|
| ① フェリシモ(3396) | 8.0倍 | 1,000円 → 8,000円 | 86,700円 | 8月 |
| ② プロネクサス(7893) | 6.0倍 | 500円 → 3,000円 | 111,800円 | 3月 |
| ③ トヨタ自動車(7203) | 6.0倍 | 500円 → 3,000円 | 313,300円 | 3月 |
| ④ ナガワ(9663) | 6.0倍 | 5,000円 → 30,000円 | 509,000円 | 3月 |
| ⑤ アスマーク(4197) | 5.0倍 | 1,000円 → 5,000円 | 238,000円 | 11月 |
| ⑥ DCMホールディングス(3050) | 4.0倍 | 500円 → 2,000円 | 158,300円 | 2月 |
| ⑦ ジャパンインベストメントアドバイザー(7172) | 4.0倍 | 9,000円 → 36,000円 | 209,500円 | 12月 |
| ⑧ ステップ(9795) | 4.0倍 | 500円 → 2,000円 | 231,100円 | 9月 |
| ⑨ 川西倉庫(9322) | 4.0倍 | 500円 → 2,000円 | 255,000円 | 3月、9月 |
| ⑩ サカタインクス(4633) | 4.0倍 | 500円 → 2,000円 | 262,200円 | 12月 |
倍率と利回りは別の指標です。フェリシモ(3396)は8.0倍で最大ですが、そこに到達するには10年以上の保有が必要です。同社は保有期間を年数ではなく株主名簿への記載回数で数えており、10年以上を「21回以上」と定義しています。
いっぽうステップ(9795)は6か月・1年・2年と刻まれていて、2年で4倍に到達します。倍率だけを並べると、この「到達までの時間」の差が見えなくなります。
トヨタ自動車(7203)が入っている点も見ておきたいところです。国内最大の企業でも、優待は1年未満500円・3年以上3,000円という設計になっています。受け取りにはTOYOTA Walletアプリの登録が必要で、額面が発生してもアプリを入れなければ受け取れません。
「もらえない型」に有名企業が集まっている
もらえない型340社のなかに、投資額2万円台で買える大型株が含まれています。知名度が高く株数も買いやすいため、優待目的で選ばれやすい銘柄です。
| 銘柄(コード) | 投資額 | もらえるもの | 条件 |
|---|---|---|---|
| NTT(9432) | 17,520円 | dポイント付与 | 保有期間が2年に達した株主 |
| ソフトバンク(9434) | 24,130円 | PayPayマネーライト | 1年以上保有 |
NTTは保有期間が2年に達した株主に1,500ポイント、5年に達した株主に3,000ポイントを付与する設計です。ここで重要なのは、これが毎年届くものではないという点です。同社は開示のなかで「株主さまへ毎年進呈するものではございません」と明記しています。
つまり2年目に1,500ポイント、5年目に3,000ポイントを受け取り、それ以外の年は何も届きません。10年持ち続けても受け取る合計は4,500ポイントです。投資額17,520円に対して、年平均に直すと450円ほどになります。
ソフトバンクは1年以上保有でPayPayマネーライト1,000円相当です。こちらは条件を満たせば毎年の付与になりますが、初回の判定は3月末と9月末の名簿に3回以上連続して記載されることと定義されています。買ってすぐの年は対象外です。
最初にもらえるまで何年待つのか
522社の記載から、条件として設定されている期間を数えました。1社が複数の区分を持つため、合計は522社を超えます。
| 条件として設定されている期間 | 社数 | 分布 |
|---|---|---|
| 半年(6か月) | 251社 | ■■■■■■■■■■■■■■ |
| 1年 | 259社 | ■■■■■■■■■■■■■■ |
| 2年 | 52社 | ■■■ |
| 3年 | 243社 | ■■■■■■■■■■■■■ |
| 5年以上 | 126社 | ■■■■■■■ |
最も多いのは1年と半年で、次いで3年です。半年や1年であれば、権利確定日を2回から3回またぐだけで条件を満たせます。一方で3年以上を条件にしている企業も相当数あり、この場合は名簿への連続記録が7回以上必要になります。
ここで効いてくるのが権利確定の回数です。年2回名簿を確定する企業では「1年=3回」「3年=7回」と数えるため、実際には条件の年数よりも長く保有していないと届かないことがあります。いつ買えばよいかは権利確定日とは?で整理しています。
株主番号が変わると振り出しに戻る
継続保有の判定は「保有していた年数」ではなく「同じ株主番号で名簿に載り続けた回数」で行われます。この違いが落とし穴になります。
NTTは開示のなかで、株主番号が変わる可能性のある行動を具体的に挙げています。相続・譲渡、貸株の利用、預け入れ証券会社の変更、その他の理由による株主名簿からの除籍です。そして株主番号が変わった場合は、新たに登録された株主名簿確定日が起算日になると明記されています。
| 行動 | 保有期間の扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 全部売って買い直す | ほぼ確実にリセット | 株主番号が新しく振り直される |
| 貸株サービスに出す | リセットの可能性がある | 名義が変わるため名簿から外れることがある |
| 証券会社を移管する | リセットの可能性がある | 企業によって扱いが異なる |
| 買い増しをする | 通常は継続 | 企業によっては最初の取得時点から数える |
| 権利確定日をまたいで保有し続ける | 継続 | 名簿に連続で記録される |
特に見落としやすいのが貸株です。貸株金利を得るために株を貸し出すと、その期間は名義が証券会社側に移ります。金利を取りにいった結果、数年ぶんの継続保有の記録を失う可能性があります。仕組みの詳細は長期保有優遇とは?株主番号で決まる仕組みと貸株とは?で解説しています。
条件はあとから追加される
いま継続保有の条件がない銘柄でも、あとから追加されることがあります。今回集めた開示情報のなかだけでも、継続保有の要件を追加・新設した企業が10社ありました。
| 開示日 | 銘柄(コード) | 開示のタイトル |
|---|---|---|
| 2026年08月05日 | サンマルクホールディングス(3395) | 株主優待制度の拡充ならびに株主優待における対象条件変更(継続保有要件の追加) |
| 2026年07月30日 | 丸三証券(8613) | 株主優待制度の一部変更(拡充及び継続保有要件追加) |
| 2026年07月15日 | FPパートナー(7388) | 株主優待における対象条件変更(継続保有要件の追加) |
| 2026年05月07日 | クスリのアオキホールディングス(3549) | 株主優待制度の拡充(長期保有特典の新設) |
| 2026年01月22日 | ツナググループ・ホールディングス(6551) | 株主優待制度における保有期間要件の明確化 |
| 2025年09月19日 | レントラックス(6045) | 株主優待制度における対象条件の変更(継続保有要件の追加) |
| 2025年08月29日 | QLSホールディングス(7075) | 株主優待制度変更(中間優待新設、継続保有期間要件の変更) |
| 2025年08月15日 | サカイ引越センター(9039) | (訂正)「株主優待制度の変更(拡充)および長期保有株主優待制度の導入に関するお知らせ」の一部訂正について |
| 2025年01月14日 | ジェーソン(3080) | 株主優待制度の変更(拡充)および長期保有株主優待制度の導入 |
| 2024年09月12日 | アイ・ケイ・ケイホールディングス(2198) | 株主優待品の贈呈時期変更並びに株主優待制度の変更(拡充及び継続保有要件追加) |
丸三証券(8613)の例が分かりやすい形です。2026年7月30日に「株主優待制度の一部変更(拡充及び継続保有要件追加)」を開示しました。タイトルには「拡充」と「継続保有要件追加」が並んでいます。金額は増えるが、条件も付く、という変更です。
同社は経過措置を設けており、2027年3月31日の基準日については、保有期間1年未満の株主にも贈呈すると明記しています。ただしその先は1年以上が条件になります。
イエローハット(9882)も同じ形です。備考に「2026年3月末以降の継続保有期間は1年以上の株主が贈呈の対象となります」と書かれています。それまで買った年からもらえていた優待が、ある年を境にもらえなくなるということです。
この変更は「改悪」と受け取られがちですが、企業側の意図は明確です。権利確定日の前だけ買って直後に売る株主を減らし、株主数を安定させることが目的です。優待の総額を抑えながら長期保有者への配分を厚くする、という設計になっています。
業種によって偏りがある
522社を業種で分けると、どの業種が継続保有を条件にしやすいかがはっきり出ます。
| 業種 | 合計 | 増える型 | もらえない型 | もらえない型の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 小売業 | 86社 | 35社 | 51社 | 59% |
| サービス業 | 67社 | 23社 | 44社 | 66% |
| 情報・通信業 | 62社 | 20社 | 42社 | 68% |
| 卸売業 | 50社 | 25社 | 25社 | 50% |
| 食料品 | 41社 | 6社 | 35社 | 85% |
| 化学 | 34社 | 9社 | 25社 | 74% |
| その他製品 | 20社 | 11社 | 9社 | 45% |
| 機械 | 16社 | 4社 | 12社 | 75% |
| 輸送用機器 | 15社 | 7社 | 8社 | 53% |
| 繊維製品 | 13社 | 3社 | 10社 | 77% |
小売業が最多で86社です。店舗を持つ企業は買物優待券という形で優待を出しやすく、その分だけ条件も付けやすいという構造があります。
注目したいのは食料品です。41社のうち35社(85%)がもらえない型で、今回の上位業種のなかで最も偏っています。自社製品を箱で送る優待は1人あたりの原価と送料が重いため、条件を厳しくして対象者を絞る傾向があります。
この傾向は飲料・お酒の株主優待やお米の株主優待を調べたときにも同じ形で出ています。金券より重いものを配る企業ほど、継続保有を条件にします。
権利確定月は3月に集中している
522社の権利確定月を数えると、3月に大きく偏っています。
| 権利確定月 | 社数 | 分布 |
|---|---|---|
| 3月 | 251社 | ■■■■■■■■■■■■■■ |
| 9月 | 126社 | ■■■■■■■ |
| 12月 | 72社 | ■■■■ |
| 2月 | 40社 | ■■ |
| 6月 | 38社 | ■■ |
| 8月 | 36社 | ■■ |
| 5月 | 16社 | ■ |
| 10月 | 15社 | ■ |
| 11月 | 14社 | ■ |
| 4月 | 12社 | ■ |
| 1月 | 10社 | ■ |
| 7月 | 8社 | ■ |
3月と9月だけで、のべ377社に達します。継続保有の判定に使われる名簿の確定日も、多くはこの3月末と9月末です。つまり3月末を1回逃すと、次の判定機会は半年先になります。
買うタイミングを決めるときは、権利付最終売買日を確認してください。権利確定日の2営業日前までに買っておかないと、その回の名簿に載りません。詳細は権利確定日とは?にまとめています。
ほかの条件で株主優待を探す
今回の記事で扱ったのは、継続保有の条件がある522社と、そのうち買った年から受け取れる10社です。条件のない銘柄も含めて探したい場合は、検索ページで絞り込めます。
条件で絞り込む
優待の種類から探したい場合はクオカード優待株10選や割引券の株主優待10選、投資額を10万円以下に限定したい場合は投資金額10万円以下の株主優待、100株に届かない資金で始めたい場合は単元未満株でもらえる株主優待もあります。
受取総額を計算してみる
増える型ともらえない型では、同じ年数を持っても受け取る合計が変わります。検討している銘柄の数字を入れて、その差を確かめられるようにしました。
初期値には、TOKYO BASE(3415)の初年度2,000円・2年以上で4,000円という設定を入れてあります。この条件だと10年保有したときの差は、最初の1年ぶんにあたる2,000円です。
差そのものは小さく見えますが、これは「条件を満たすまで持ち続けられた場合」の話です。条件に届く前に売ってしまえば、もらえない型の受取額はゼロのままです。3年持つつもりで買って2年で売った場合、増える型なら2年ぶんを受け取れていますが、もらえない型では何も残りません。この差が本質です。
長期保有優遇の銘柄で失敗する4つの理由
ここまで実質利回りと倍率で並べてきましたが、この数字だけで銘柄を選ぶと外します。理由は4つあります。
理由① 優待そのものが途中で廃止される
株主優待は法律で義務づけられた制度ではありません。企業が「やめます」と発表すればその時点で終わります。3年待つ前提で買った銘柄が、2年目に優待を廃止することもあります。
今回集めた開示情報のなかだけでも、株主優待の廃止や見送りを開示した企業が9社ありました。2026年8月24日にコンヴァノ(6574)、2026年5月8日にAIAIグループ(6557)、2026年2月13日にザ・パック(3950)が廃止を開示しています。
さらに極端な例もあります。REVOLUTION(8894)は2024年10月に「2,000株以上の保有でQUOカードPay 6万円分(年間12万円分)」という優待の新設を発表しましたが、2025年3月11日に廃止を開示しました。一度も実施されないまま終わっています。
「優待が新設されたから買う」「利回りが高いから買う」という判断は、それだけでは危険です。利回りの高さは、その企業の業績が良いことを意味しません。長期保有を前提にするほど、この廃止リスクを長く抱えることになります。10年で8倍という設計は魅力的ですが、10年のあいだ制度が続く保証はどこにもありません。
理由② 実質利回りは株価が下がると自動的に上がる
実質利回りは「年間の額面 ÷ 投資額」で計算します。優待の金額は固定なので、株価が下がるほど利回りは自動的に上がります。
| 株価 | 投資額(100株) | 年2,000円の優待の利回り |
|---|---|---|
| 400円 | 40,000円 | 5.00% |
| 200円 | 20,000円 | 10.00% |
| 100円 | 10,000円 | 20.00% |
| 41円 | 4,100円 | 48.78% |
今回1位の銘柄の利回り48.78%は、まさにこの表の一番下の状態です。優待が手厚くなったのではなく、株価が41円まで下がった結果としてこの数字になっています。
優待をもらうために、株価の下落でそれ以上を失っては意味がありません。利回りが極端に高い銘柄を見つけたときは、まず「なぜ株価がここまで下がっているのか」を業績で確認してください。
理由③ 株主番号が変わったことに気づけない
継続保有の記録がリセットされても、企業から通知は来ません。優待が届かなくなって初めて気づくことになります。
特に貸株サービスは危険です。貸株金利は年0.1%程度のことが多く、優待の額面に比べれば小さい金額です。その金利を取りにいった結果、数年ぶんの継続保有の記録を失えば、明らかに割に合いません。長期保有優遇のある銘柄は、貸株の対象から外しておくのが安全です。
理由④ 優待は原則として課税の対象になる
株主優待は税務上、原則として雑所得として扱われます。「優待は非課税」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。
給与所得者の場合、給与以外の所得の合計が年20万円以下であれば確定申告が不要という基準があります。優待だけで年20万円を超えることはまれなので、結果として申告不要になっている人が多い、というのが実態に近いです。
ただし他に副収入がある場合は合算で判定されます。また住民税には20万円の基準がないため、自治体によって扱いが異なります。優待の金額換算については優待利回りとは?でも触れています。
長期保有優遇の株主優待に関するよくある質問
まとめ
「長期保有優遇あり」という表示は、買った年からもらえることを意味しません。522社を分類した結果、約65%にあたる340社は、条件の年数に達するまで1円も届かない設計でした。
この記事のポイント
・ただし1位の利回りが高いのは株価が41円まで下がっているため
・継続保有の条件がある522社のうち、増える型は182社、もらえない型は340社
・見分け方は「◯年未満」「初年度」の区分があるかどうかだけ
・ただし「【◯年未満】なし」と書かれていれば、それはもらえない型
・倍率の最大はフェリシモの8.0倍。ただし到達まで10年かかる
・NTTは毎年もらえるものではないと企業が明記している
・判定は年数ではなく株主番号での連続記録の回数。貸株・移管でリセットされる
・条件はあとから追加される(今回の開示で10社)
長期保有優遇を狙うなら、まず内容欄で型を確かめてください。そのうえで、条件を満たすまで持ち続けられる金額に抑えることが前提になります。3年待つ前提の銘柄に、3年以内に使う予定のあるお金を入れるべきではありません。
他の種類の優待と比べたい場合はクオカード優待株10選や割引券の株主優待10選、条件で絞り込みたい場合は100株で買える株主優待の検索ページをご覧ください。
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