権利行使価格とは、あらかじめ決められた「その値段で買える(売れる)」という価格のことです。

株価がいくらになっても、権利を行使するときはこの価格で売買できます。権利行使価格と現在の株価の差が、その権利の価値そのものになります。

この記事でわかること

・権利行使価格が出てくる5つの場面
・新株予約権とオプションでの意味の違い
・ITM・ATM・OTMの読み方
・MSワラントで株価が下がり続ける仕組み
・似た用語の使い分け

権利行使価格とは

権利行使価格(読み方:けんりこうしかかく)は、権利を使うときに適用される、あらかじめ決められた価格です。

具体例
権利行使価格 1,000円で買える権利を持っている

株価が1,500円 → 1,000円で買えるので500円の得
株価が 800円 → わざわざ1,000円で買う理由がない → 権利を使わない

ここで重要なのは、権利は「使わなくてもよい」ということです。義務ではなく権利なので、不利なときは放棄できます。

英語ではストライクプライス(Strike Price)またはエクササイズプライス(Exercise Price)と呼ばれます。

権利行使価格が出てくる5つの場面

場面 誰が持つ権利か 呼び方
新株予約権 割当てを受けた人 行使価額
ストックオプション 役員・従業員 権利行使価額
MSワラント 引受先の証券会社など 行使価額(修正される)
転換社債(CB) 社債の保有者 転換価額
オプション取引 オプションの買い手 権利行使価格

同じ考え方なのに、場面によって呼び名が変わります。この記事ではまとめて「権利行使価格」と呼びます。

新株予約権における権利行使価格

新株予約権とは、あらかじめ決めた価格で、その会社の新しい株式を取得できる権利です。

権利行使価格は発行の時点で決まります。株価がそれを上回れば、権利を使って安く株式を手に入れられます。

権利行使価格 1,000円の新株予約権を100株分持っている
株価が1,400円になった → 10万円を払って14万円分の株を取得できる

ただし新株予約権が行使されると新しい株式が発行されます。発行済株式数が増えるため、既存の株主の1株あたりの価値は薄まります。これを希薄化といいます。

ストックオプションにおける権利行使価格

ストックオプションは、役員や従業員に対して報酬として付与される新株予約権です。

権利行使価格は「付与された時点の株価」に近い水準で設定されるのが一般的です。株価が上がれば上がるほど、受け取る側の利益が大きくなります。

項目 税制適格の要件(主なもの)
権利行使価額 契約時の株式の時価以上であること
権利行使できる期間 付与決議から2年経過後〜10年以内(一定の場合15年以内)
年間の権利行使限度額 1,200万円 / 2,400万円 / 3,600万円(会社の状況で変わる)

年間の限度額は令和6年度税制改正で引き上げられました。設立からの年数や上場の有無によって適用される金額が変わります。

権利行使価額が時価より低いと税制適格にならず、行使したときに給与所得として課税されます。この要件があるため、実務では時価以上に設定されます。

MSワラントの権利行使価格

ここが個人投資家にとって最も注意すべき場面です。

MSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)は、権利行使価格が株価に応じて修正されるという特殊な仕組みを持っています。

なぜ株価が下がり続けるのか
株価が下がる → 行使価額も下方修正される
 ↓
同じ調達額でも発行する株数が増える
 ↓
希薄化が進む → さらに株価が下がる
 ↓
また行使価額が下がる …(繰り返し)

通常の新株予約権は行使価額が固定なので、株価が下がれば権利は無価値になります。しかしMSワラントは下がっても行使価額が追いかけてくるため、引受先は損をしにくい設計です。

その分、負担するのは既存の株主です。MSワラントの発行が公表されると株価が下落することが多いのは、この構造が知られているためです。

転換社債の転換価額

転換社債(CB)では、権利行使価格にあたるものを転換価額と呼びます。

状態 保有者の行動
株価 > 転換価額 株式に転換して売却したほうが得
株価 < 転換価額 社債のまま持って利息と償還を受ける

転換価額は、株価にとって「上値の重さ」になります。その水準を超えると転換して売る人が出てくるため、抵抗帯として意識されます。

オプション取引における権利行使価格

オプション取引では、権利行使価格は取引所があらかじめ複数用意しています。投資家はその中から選んで売買します。

種類 権利の内容 得をする場面
コール 権利行使価格で買う権利 株価・指数が上がったとき
プット 権利行使価格で売る権利 株価・指数が下がったとき

日経225オプションの場合、権利行使価格は一定の刻みで設定されます。刻み幅は価格帯や限月によって異なります。

また日経225オプションはヨーロピアンタイプで、権利行使できるのは満期日だけです。決済は現物の受け渡しではなく、SQ値との差額で行われます。

ITM・ATM・OTM

オプションでは、権利行使価格と現在の価格の関係を3つに分類します。

呼び方 意味 コールの場合
ITM(イン・ザ・マネー) いま行使すれば利益が出る 株価 > 権利行使価格
ATM(アット・ザ・マネー) ちょうど同じ水準 株価 = 権利行使価格
OTM(アウト・オブ・ザ・マネー) いま行使しても損 株価 < 権利行使価格

OTMのオプションにも値段が付きます。満期までに動いて利益が出るかもしれないという期待の分です。これを時間的価値といいます。

OTMのまま満期を迎えると、そのオプションの価値はゼロになります。買い手が支払ったプレミアムは全額失われます。

権利行使価格と株価の関係

株価と権利行使価格 権利を持つ側 既存株主への影響
株価が大きく上回る 行使して利益を得る 希薄化と売り圧力
株価がわずかに上回る 様子を見ることが多い その水準が抵抗帯になる
株価が下回る 行使しない 当面は影響が小さい

個人投資家として押さえるべきは、「まだ行使されていない権利がどれだけ残っているか」です。有価証券報告書や適時開示で確認できます。

似た用語の使い分け

用語 主に使われる場面
権利行使価格 オプション取引。最も広く使われる
行使価額 新株予約権・ストックオプション。法令や開示で使われる
転換価額 転換社債。株式に転換するときの1株あたりの価格
ストライクプライス 英語表記。海外のツールやニュースで使われる

いずれも「あらかじめ決められた売買できる値段」という点で同じです。開示資料を読むときは、その場面での呼び方に合わせて探してください。

※ 本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務判断については専門家にご確認ください。投資判断はご自身の責任でお願いします。

権利行使価格に関するよくある質問

権利行使価格は途中で変わりますか?
通常の新株予約権では固定ですが、株式分割や併合が行われた場合は調整されます。またMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)では、株価に応じて定期的に行使価額が修正される仕組みが組み込まれています。
権利行使価格より株価が低いとどうなりますか?
権利を使う意味がないため、行使されないまま期限を迎えます。オプションであればプレミアムは戻らず、支払った金額が損失になります。新株予約権であれば行使されないだけなので、既存株主にとっては希薄化が起きないという意味になります。
ストックオプションの権利行使価格はどう決まりますか?
税制適格の要件を満たすため、付与契約を結んだ時点の株式の時価以上に設定されるのが一般的です。時価より低く設定すると税制適格とならず、権利行使時に給与所得として課税されるため、受け取る側にとって不利になります。
MSワラントはなぜ嫌われるのですか?
株価が下がるほど行使価額も下方修正され、同じ調達額に対して発行される株数が増えるためです。希薄化が進んでさらに株価が下がり、それがまた行使価額を下げるという循環になりやすい構造です。負担するのは既存の株主なので、発行の公表で株価が下落することが多くなります。
オプションの権利行使価格は自分で決められますか?
決められません。取引所があらかじめ複数の権利行使価格を設定しており、投資家はその中から選んで売買します。日経225オプションの場合、刻み幅は価格帯や限月によって異なります。
ITMのオプションを満期まで持つとどうなりますか?
日経225オプションはヨーロピアンタイプなので満期日にのみ権利行使が可能で、決済はSQ値との差額で自動的に行われます。ITMであれば差額が受け取れますが、OTMのまま満期を迎えると価値はゼロになります。
転換価額と権利行使価格は同じものですか?
考え方は同じですが、呼び分けられています。転換社債を株式に転換するときの1株あたりの価格を転換価額と呼び、新株予約権では行使価額、オプション取引では権利行使価格と呼びます。いずれも「あらかじめ決められた売買できる値段」という点は共通です。
残っている新株予約権はどこで確認できますか?
有価証券報告書の「新株予約権等の状況」や、四半期ごとの開示資料で確認できます。発行時の適時開示にも行使価額と発行数が記載されています。株価が権利行使価格を超えている場合、行使による希薄化と売り圧力が生じる可能性があるため、事前に把握しておくと判断材料になります。

まとめ

権利行使価格は「その値段で売買できると約束された価格」です。場面によって呼び名が変わるだけで、考え方はすべて同じです。

この記事のまとめ

・あらかじめ決められた売買できる価格
・権利なので不利なときは行使しなくてよい
・新株予約権では行使価額と呼ぶ
・ストックオプションは時価以上が税制適格の要件
・MSワラントは株価に応じて下方修正される
・転換社債では転換価額と呼ぶ
・オプションではITM・ATM・OTMで区別する
・未行使の権利は将来の希薄化要因になる

あわせて読みたい:オプション取引とは新株予約権とはストックオプションとはMSワラントとは転換社債(CB)とはSQとは

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