「頭と尻尾はくれてやれ」とは、天井で売ることと底で買うことをあきらめ、真ん中の値幅だけを狙えという相場格言です。
読み方は「あたまとしっぽはくれてやれ」。魚の頭と尻尾は他人に譲り、身の部分だけをいただくというたとえです。
ただし「欲張るな」という精神論で終わらせると、まったく実行できません。この記事では、値幅の何割を狙い、どこに指値を置くのかまで具体化します。
この記事でわかること
・🔴 なぜ天井と底では約定しないのか(板の仕組み)
・全部取ろうとすると実際に何が起きるか
・尻尾を譲る買い方、頭を譲る売り方(図解)
・狙うべきは値幅の何割か
・分割して売るという考え方
・逆指値とトレーリングストップの使い方
・この格言が通用しない3つの場面
目次
頭と尻尾はくれてやれとは
相場格言のなかでも、とくに古くから使われてきた言葉です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み方 | あたまとしっぽはくれてやれ |
| 頭 | 上昇の最終局面(天井) |
| 尻尾 | 下落の最終局面(底) |
| 身 | その間の、いちばん確実に取れる値幅 |
| 教え | 全部を取ろうとすると、身まで失う |
この格言が言っているのは「欲張るな」ではありません。
本当の主張は「天井と底は原理的に取れないのだから、最初から計算に入れるな」ということです。取れないものを狙い続けると、取れるはずだった部分まで失います。
なぜ天井と底では約定しないのか
精神論ではなく、市場の仕組みとして無理があります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| ① 後からしか分からない | 天井も底も、反転して初めて「あれが天井だった」と分かる |
| ② 底では売り注文が枯れる | 買いたくても、売ってくれる相手がいないと約定しない |
| ③ 天井では買い注文が枯れる | 売りたくても、買ってくれる相手がいない |
| ④ 一瞬しか存在しない | 最安値・最高値は、その日のうち数秒しかつかないこともある |
| ⑤ 心理が逆に働く | 底では「まだ下がる」、天井では「まだ上がる」と感じる |
②と③が本質的な壁です。
株の売買は必ず相手が必要です。最安値で買うということは、その値段で売ってくれる人がいるということを意味します。ところが底値圏では売りが出尽くしているので、そもそも板に売り注文が並んでいません。
この状態を売り枯れといいます。売り注文が枯れているので、買おうとすれば一段上の値段を買いにいくしかありません。板の仕組みは気配とはと板とはで確認できます。
全部取ろうとすると何が起きるか
実際の失敗の形を並べます。
| やろうとしたこと | 実際に起きること |
|---|---|
| 底ぴったりで買おうと待つ | 約定せずに上がっていき、買えないまま終わる |
| 買えないので慌てて追いかける | ジャンピングキャッチで高値をつかむ |
| 天井ぴったりで売ろうと粘る | 反落して、含み益が消える |
| 下がったので「戻ったら売る」 | 戻らずに塩漬けになる |
| 結局、損切りできない | 利益が出ていた取引が、最終的に損失に変わる |
最も多いのは3行目から5行目の流れです。売れば利益だった場面で粘り、反落して買値まで戻り、そこから損失圏へ落ちていきます。
「利益が出ていたのに損して終わった」という取引は、ほぼすべて頭を取ろうとしたことが原因です。
尻尾をくれてやる買い方
図で見るほうが早いので、ボックス相場を例にします。1,400円と1,600円のあいだを行き来している銘柄です。

これが「全部取ろうとする」形です。青の破線(1,400円)で買い、赤の破線(1,600円)で売れば、200円まるごと取れます。
ところが実際には、1,400円ちょうどで買える保証はありません。1,405円で反転すれば買えませんし、1,380円まで割れることもあります。
そこで買いの指値を、下限より少し上に置きます。

赤の破線が買いの指値です。下限より少し上に置くことで、約定する確率が大きく上がります。取り逃がした40円が「尻尾」です。
頭をくれてやる売り方
売りも同じ考え方です。上限ちょうどで売ろうとせず、少し手前に置きます。

青の破線が売りの指値です。1,600円まで届かずに1,590円で反落しても、この指値なら約定しています。
| やり方 | 買い | 売り | 取れる値幅 |
|---|---|---|---|
| 全部取りにいく | 1,400円 | 1,600円 | 200円(ただし約定しないことが多い) |
| 頭と尻尾を譲る | 1,440円 | 1,555円 | 115円(約定しやすい) |
| 譲りすぎ | 1,500円 | 1,520円 | 20円(手数料で消える) |
3行目にも注意してください。譲りすぎると値幅がなくなります。「くれてやる」のは頭と尻尾であって、身まで譲ってはいけません。
狙うべきは値幅の何割か
格言を実行可能にするには、割合の目安が必要です。
| 狙う割合 | 評価 |
|---|---|
| 10割(天井と底) | 狙うべきではない。約定しない |
| 9割 | まだ厳しい。取り逃がしが増える |
| 6〜8割 | 現実的な範囲。約定率と値幅のバランスが取れる |
| 3〜5割 | 確実だが、手数料と機会損失を考えると効率が悪い |
| 1〜2割 | 値幅が手数料に消える |
6〜8割というのは、あくまで考え方の目安です。相場に確定した基準はありません。ただし「何割を狙うか」を数字で決めておくと、判断が感情から切り離されます。
これが格言を実行に移すうえで最も重要な部分です。「欲張らない」では毎回ブレますが、「想定値幅の7割で売る」なら毎回同じ行動が取れます。
そもそも値幅をどう見積もるか
割合を決めるには、先に「どこまで動きそうか」を決める必要があります。
| 見積もりの手がかり | 使い方 |
|---|---|
| 直近の高値・安値 | 最も基本。前回止まった水準は再び意識される |
| 価格帯別出来高 | 売買が多かった価格帯は抵抗になる |
| 移動平均線 | 上値・下値の目安として機能することがある |
| キリのよい株価 | 1,000円、1,500円などに注文が集まりやすい |
| ボラティリティ | 普段の値動きの幅から、現実的な範囲を出す |
とくに価格帯別出来高が実用的です。過去に大量の売買があった価格帯には、しこり玉が残っています。そこまで戻ると売りが出るので、上値の目安になります。
分割して売るという考え方
指値を1か所に決められないなら、分けて売るという方法があります。
| 起きたこと | 一括売りの場合 | 3分割の場合 |
|---|---|---|
| 売った直後に急騰 | 全部取り逃がして後悔する | 1/3は残っているので取れる |
| 売らずにいたら急落 | 利益が全部消える | 2/3ぶんの利益は確定済み |
| 想定どおりに推移 | 最大の利益 | やや少ない(手数料も増える) |
分割売却の本当の価値は、利益額ではなく「後悔を減らすこと」にあります。
売った直後に急騰しても「まだ1/3ある」と思えれば、慌てて買い直す行動を防げます。次の取引の判断を狂わせないという効果が、金額以上に大きいのです。
買いを分けるやり方は打診買い・打診売りとはで扱っています。
逆指値とトレーリングストップ
「頭を譲る」を自動化する方法があります。
| 注文 | 動き |
|---|---|
| 逆指値 | 指定した株価まで下がったら売る。損切りにも利確にも使える |
| トレーリングストップ | 株価の上昇に合わせて、売りのラインが自動で切り上がる |
| 逆指値付通常注文(W指値) | 利確の指値と損切りの逆指値を同時に置ける |
トレーリングストップは、この格言をそのまま形にした注文です。
たとえば「高値から5%下がったら売る」と設定すれば、上がっているあいだは持ち続け、反転したら自動で売れます。天井では売れませんが、天井から5%下では必ず売れます。まさに頭をくれてやる形です。
取り扱いは証券会社によって異なるので、口座の注文画面で確認してください。
この格言が通用しない場面
すべての場面で使える言葉ではありません。
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 長期の資産形成 | そもそも値幅を狙っていない。売らないことが前提 |
| 悪材料が出て急落中 | 「少し戻ってから」と待つべきではない。すぐ逃げる場面 |
| ストップ安に張り付いた | 指値を工夫しても約定しない。翌日以降の勝負になる |
| 明確なトレンドが出ている | 上限を決めると大きな上昇を取り逃がす |
| 損失が出ている局面 | これは利益の話。損切りは別のルールで動く |
最後の項目が重要です。この格言は「利益が出ているときにどこで売るか」の話であって、損切りの話ではありません。
含み損の場面で「頭と尻尾はくれてやれだから、少し戻ってから売ろう」と考えるのは誤用です。損切りは損切りとは、格言なら見切り千両のほうが対応します。
また4行目のように強いトレンドが出ている場合は、トレンドに逆らうなのほうが優先されます。格言どうしは矛盾するので、場面で使い分けてください。
似た相場格言との違い
| 格言 | 扱う場面 |
|---|---|
| 頭と尻尾はくれてやれ | 利益が出ているときの、売る位置 |
| 見切り千両 | 損失が出ているときの、撤退の判断 |
| 休むも相場 | そもそも入るべきでない場面の見極め |
| トレンドに逆らうな | 方向性が出ているときの、順張りの姿勢 |
| 人の行く裏に道あり花の山 | 逆張りの発想。この格言とは方向が逆 |
| 噂で買って事実で売る | 材料が出るタイミングでの売買 |
格言は互いに矛盾しています。すべてを同時に守ることはできません。
大事なのは「いま自分がどの場面にいるか」を先に決めることです。場面が決まれば、使うべき格言はひとつに絞られます。
実践のチェックリスト
買う前に決めておくこと
・想定する下値はいくらか
・その値幅の何割を狙うか(6〜8割が目安)
・買いの指値を、下値より何円上に置くか
・売りの指値を、上値より何円下に置くか
・一括で売るか、分割するか
・どこまで下がったら損切りするか
・想定と違う動きになったら、いつまでに判断するか
すべて「買う前」に決めることが条件です。
持ってから考えると、必ず含み損益に引っ張られます。含み益が出ているときは強気になり、含み損のときは弱気になる。これは誰にでも起きる反応です。
だからこそ、感情が動く前に紙に書いておく必要があります。
頭と尻尾はくれてやれに関するよくある質問
まとめ
この格言の本質は「取れないものを最初から計算に入れない」という設計思想です。
この記事のまとめ
・🔴 底では売り注文が枯れているので、そもそも約定しない
・天井も底も、反転して初めて「あれが天井だった」と分かる
・全部取ろうとすると利益が出ていた取引が損失に変わる
・買いは下限より少し上、売りは上限より少し下に指値を置く
・🔴 狙うのは値幅の6〜8割。数字で決めると毎回同じ行動が取れる
・譲りすぎると値幅が手数料に消える。身まで譲らない
・値幅の見積もりは直近高安と価格帯別出来高が実用的
・🔵 3分割売却は、金額より「後悔を減らす」ことに価値がある
・トレーリングストップは、この格言を自動化した注文
・🔴 含み損の場面では使わない。それは損切りの話
・強いトレンド時は「トレンドに逆らうな」が優先される
※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や投資判断を推奨するものではありません。記載した株価は仕組みを説明するための仮定値です。
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