ナスダックとは?3%下落の翌日に日経が上がるのは19.4%

ナスダック(NASDAQ)とは、1971年に開設された世界初の電子株式市場で、ニューヨーク証券取引所と並ぶアメリカの二大市場のひとつです。

取引所に立会場を持たず、すべての売買がコンピューターネットワーク上で行われる点が特徴です。アップルやマイクロソフトをはじめとする巨大IT企業が多く上場しており、成長企業が集まる市場として知られています。

日本の投資家にとって重要なのは、前日のナスダックの動きが、翌日の日経平均株価とどれだけ連動するかという点です。1985年以降の全営業日で調べたところ、方向の一致率は61.5%、2016年以降に限ると65.1%でした。ナスダックが3%以上下落した翌日に日経平均が上昇したのは、わずか19.4%です。

この記事でわかること

・ナスダックとニューヨーク証券取引所の違い
・ナスダック総合指数とナスダック100の使い分け
実測:前日のナスダックから翌日の日経平均をどこまで読めるか
実測:下落幅ごとの翌日の日経平均の上昇確率
・なぜ日本株がナスダックに連動するのか
・日本から投資する方法と注意点

ナスダックとは

項目 内容
正式名称 National Association of Securities Dealers Automated Quotations
開設 1971年(世界初の電子株式市場)
立会場 なし。すべて電子ネットワーク上で取引
主な上場企業 アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾンなど
取引時間 日本時間 22時30分〜翌5時(夏時間)/23時30分〜翌6時(冬時間)
性格 新興・成長企業が多い。ハイテク企業の比率が高い

ナスダックの歴史的な意義は、人が集まって売買していた市場を、初めてコンピューターに置き換えた点にあります。1971年の開設当時は気配値を表示するだけのシステムでしたが、その後の電子取引の普及はここから始まりました。

ニューヨーク証券取引所との違い

項目 ナスダック ニューヨーク証券取引所
開設 1971年 1792年に起源
立会場 なし あり(電子化と併用)
上場基準 相対的に緩やか 相対的に厳格
企業の性格 新興・成長企業が中心 大型の成熟企業が中心
売買の仕組み マーケットメイク方式 オークション方式が基本
金利の影響 受けやすい 相対的に受けにくい

最終行の違いは、投資判断で重要になります。ナスダックには「将来の利益」で評価される成長企業が多いため、金利が上がると株価が下がりやすくなります。

将来の利益を現在の価値に換算する際、金利が高いほど割引率が大きくなり、遠い将来の利益ほど価値が目減りします。利益が遠い先にある企業ほど影響が大きく、FOMCの決定に敏感に反応するのはこのためです。

ナスダックの2つの指数

「ナスダックが下がった」というときの指数には、主に2種類あります。

ナスダック総合指数
ナスダックに上場するほぼ全銘柄で構成。市場全体の動きを表す。ニュースで単に「ナスダック」と言えばこちらを指すことが多い。
ナスダック100
金融業を除く時価総額上位100社で構成。投資信託やETFの対象として使われることが多い。

ナスダック100は構成銘柄が100社に絞られているため、上位数社の値動きに指数全体が左右されやすいという性質があります。時価総額の大きい企業ほど指数への影響が大きくなるためです。

「ナスダックに分散投資している」と考えていても、実際には少数の巨大IT企業への集中投資に近い状態になっていることがあります。構成比率の上位を確認しておくことが、リスクの把握につながります。

【実測】前日のナスダックで翌日の日経平均はどこまで読めるか

日本の投資家がナスダックを見る最大の理由は、翌日の日本株を予想するためです。実際にどこまで参考になるのかを検証しました。

検証の条件

・日経平均の各営業日について、その前に終わった直近のナスダック総合指数の騰落率を対応させる
・対象:1985年1月〜2026年8月(日経平均10,230営業日)
・「方向一致」は、ナスダックと日経平均の騰落の符号が同じだった割合
・いずれも終値ベースで比較している
日本が休場の日は、次の営業日に持ち越して対応させている
期間 方向の一致率 対象日数
1985年以降(全期間) 61.5% 10,230日
2016年以降 65.1% 2,604日

※ Pacific Stockがナスダック総合指数と日経平均株価の日足終値から独自に集計(2026年8月時点)

方向の一致率は6割を超えており、しかも近年ほど高くなっています。ただし裏を返せば、2016年以降でも約35%の日は逆方向に動いています。3日に1日はナスダックと日経平均が違う方向を向いている計算です。

【実測】下落幅が大きいほど連動は強くなる

一致率を騰落の大きさ別に分けると、より実用的な傾向が見えてきます。

前日のナスダック 日経平均が上昇した割合 日経平均の平均騰落率 回数
−3%以下 19.4% −1.69% 242
−3〜−2% 23.5% −1.07% 391
−2〜−1% 32.0% −0.60% 927
−1〜0% 45.1% −0.14% 2,953
0〜+1% 57.4% +0.18% 4,023
+1〜+2% 69.6% +0.61% 1,150
+2〜+3% 79.8% +1.05% 336
+3%以上 80.3% +1.50% 208

※ 1985年1月〜2026年8月。Pacific Stockが独自に集計

この表からわかること

ナスダックが3%以上下げた翌日、日経平均が上昇したのは19.4%だけ(242回中)
・逆に3%以上上げた翌日は、80.3%で日経平均が上昇
値幅が小さい日(−1〜+1%)の予測力は弱い(45.1%と57.4%で五分に近い)
・つまり大きく動いた日だけが役に立つ情報になる
・2016年以降に限ると、−3%以下の翌日の上昇率は14.5%とさらに低い

実務的に意味があるのは、「毎朝ナスダックを見る」ことではなく「大きく動いた日だけ反応する」という使い分けです。ナスダックが1%未満しか動いていない日は、翌日の日経平均をほとんど説明しません。

一方で3%を超える変動があった日は、翌日の日経平均が同じ方向に動く確率が8割に達します。米国市場が大きく動いた翌朝は、日本株も窓を開けて始まる可能性が高いと考えておく必要があります。

なぜ日本株がナスダックに連動するのか

連動が生じる理由は主に3つあります。

① 同じ投資家が両方を売買している
海外の機関投資家は世界中の市場に資金を配分しています。米国株で損失が出れば、リスクを減らすために日本株も売る、という行動が同時に起こります。
② 日本企業の多くが米国と取引している
半導体や電子部品の企業は、米国のIT企業を主要な顧客としています。ナスダック企業の業績見通しが変われば、日本の関連企業の業績も変わります。
③ 時間帯の順序
米国市場が終わるのは日本時間の早朝で、日本市場が開くのはその数時間後です。日本市場は毎朝、米国市場の結果を受け取ってから始まるという順序が固定されています。

③は構造的なもので変わりません。電気が消えるとお化けが出るで扱っているとおり、日経平均の値動きの47.7%(2016年以降)は取引時間外に生じています。その時間帯に動いている市場のひとつがナスダックです。

日本から投資する方法

方法 特徴 注意点
米国株を直接買う 個別企業を選べる 為替手数料と時差。銘柄の分析が必要
米国上場のETF 指数にまとめて投資できる 取引は米国時間。分配金に米国での課税がある
東証上場のETF 日本時間に円で売買できる 銘柄によって出来高に差がある
投資信託 少額から積立ができる。NISAの対象商品も多い 1日1回の基準価額での取引になる

いずれの方法でも共通するのが為替の影響です。ナスダックがドル建てで上昇しても、同じ期間に円高が進めば円換算の利益は目減りします。逆に円安が進めば、指数が横ばいでも円建ての評価額は増えます。

米国株の値動きと為替の値動きという2つの要因が同時にかかる点は、日本株にはない特徴になります。

ナスダックに関するよくある質問

ナスダックとダウ平均はどちらを見ればよいですか
目的によります。ダウ平均は30社で構成される成熟企業中心の指数、ナスダック総合は成長企業を含む幅広い指数です。日本のハイテク株や半導体関連の動きを予想したいならナスダックのほうが対応しやすくなります。両方を見て、方向が一致しているかを確認する使い方もあります。
ナスダックが下がったら日本株も必ず下がりますか
必ずではありません。実測では方向の一致率は2016年以降で65.1%で、3日に1日は逆方向に動いています。ただしナスダックが3%以上下げた翌日に日経平均が上昇したのは19.4%にとどまりました。下落幅が大きいほど連動は強くなります。
毎朝ナスダックを確認する意味はありますか
変動が小さい日の予測力は弱くなっています。実測では前日のナスダックが−1〜0%のとき日経平均が上昇した割合は45.1%、0〜+1%のときは57.4%で、いずれも五分に近い数字でした。2%を超えて動いた日にだけ注意するという使い分けのほうが実務的です。
ナスダック総合とナスダック100はどちらを見るべきですか
市場全体の空気を見るなら総合指数、投資商品として検討するならナスダック100が対象になることが多くなっています。ナスダック100は上位数社の比重が大きく、その数社の決算で指数全体が動く点は理解しておく必要があります。
なぜナスダックは金利の影響を受けやすいのですか
利益がまだ小さく、将来の成長に期待して評価されている企業が多いためです。将来の利益を現在の価値に換算する際、金利が高いほど割引率が大きくなり、遠い将来の利益ほど価値が目減りします。そのためFOMCの決定や米国の金利指標に敏感に反応します。
ナスダックの取引時間は何時ですか
日本時間で22時30分から翌朝5時までが基本です(米国の夏時間)。冬時間は23時30分から翌朝6時になります。米国の夏時間は3月の第2日曜から11月の第1日曜までです。この時間帯は日本の株式市場が閉まっているため、翌朝の寄り付きで結果を受け取ることになります。
日本の投資家が為替で気をつけることは何ですか
指数の値動きと為替の値動きが同時にかかる点です。ナスダックがドル建てで10%上昇しても、同じ期間に円が10%高くなれば円換算の利益はほぼ相殺されます。米国株投資は「株価」と「為替」の2つに賭けている状態だと理解しておく必要があります。
ナスダックにも日本のような値幅制限はありますか
個別銘柄ごとの日々の値幅制限は日本のような形では設けられていませんが、急激な変動時に取引を一時停止する仕組みは存在します。市場全体についても、一定以上の下落で取引を停止するサーキットブレーカーが設けられています。

まとめ

この記事のポイント

・ナスダックは1971年開設の世界初の電子株式市場。成長企業が中心
・ニューヨーク証券取引所より金利の影響を受けやすい
実測:前日のナスダックとの方向一致率は61.5%(2016年以降65.1%)
実測:3%以上下げた翌日に日経平均が上昇したのは19.4%だけ
変動が1%未満の日の予測力は弱い。大きく動いた日だけが情報になる
・日本から投資する場合は為替の影響が重なる

ナスダックを見る意味は、日本市場が開く前にすでに終わっている市場の結果を、判断材料として受け取れる点にあります。日本の投資家にとって、朝9時までに得られる最大の情報のひとつです。

ただし実測が示したのは、その情報が常に有効なわけではないという事実でした。小さな変動の日は五分五分に近く、大きく動いた日だけが翌日を強く規定します。毎朝の数字を漫然と眺めるより、閾値を決めて反応するほうが判断の質は上がります。

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この記事を書いた人
Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年
専業投資家歴20年。Pacific Stockのすべての記事とツールを執筆・監修。株式用語の解説、株主優待・高配当ランキング、相場格言の実測検証、米国株の決算カレンダーなど、数字で確かめられる形で書くことを方針にしています(筆名・イラスト)。 プロフィールと編集ポリシー →
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