DMIとは、トレンドの「方向」と「強さ」を別々の線で示す指標です。J・W・ワイルダーが考案しました。

多くのテクニカル指標が上がるか下がるかを当てようとするのに対し、DMIは「そもそも、いまトレンドがあるのか」を判定できる数少ない指標です。

この性質があるため、他の指標を使う前の下調べとして機能します。

この記事でわかること

・+DI・-DI・ADXの役割
・ADXが方向を示さない理由
・レンジ相場の見分け方
・±DIのクロスの使い方
・他の指標との組み合わせ

DMIとは

DMI(読み方:ディーエムアイ)とはDirectional Movement Indexの略で、日本語では方向性指数と呼ばれます。

+DI・-DI・ADXの3本を表示したDMIのサブチャート
下段がDMI。+DI・-DI・ADXの3本が表示される
+DI・−DI → トレンドの方向を示す
ADX → トレンドの強さを示す

役割が完全に分かれているのがDMIの特徴です。方向と強さを1本の線に混ぜていません。

4つの線

示すもの 上がるとき
+DI 上昇の勢い 高値の切り上げが続くとき
−DI 下落の勢い 安値の切り下げが続くとき
ADX トレンドの強さ 上下どちらでも一方向に動くとき
ADXR ADXをならしたもの ADXより遅れて動く

ADXRは当日のADXと一定期間前のADXの平均です。ADXの動きを滑らかにしたもので、表示されないツールもあります。

ADXは方向を示さない

ここがDMIで最も誤解されやすい点です。ADXが上昇していても、株価が上がっているとは限りません。

ADXが示すのは「勢いの強さ」だけ
株価が一方向に力強く上昇 → ADXは上がる
株価が一方向に力強く下落 → ADXは同じく上がる
株価が上下にもみ合う → ADXは下がる

つまりADXが高い=「はっきりした方向が出ている」という意味であって、その方向が上か下かは教えてくれません。

方向は+DIと−DIのどちらが上にあるかで判断します。この2つを分けて考えることがDMIを使う第一歩です。

ADXの水準の読み方

ADX 相場の状態 とるべき戦略
20以下 レンジ相場 オシレーターで逆張り
20〜25 トレンドの発生期 方向を確認して待つ
25〜40 明確なトレンド トレンド系の指標で順張り
40以上 非常に強いトレンド 逆張りは避ける

数値の目安は絶対ではありませんが、20〜25を境にレンジとトレンドを切り分けるという使い方が一般的です。

水準より「向き」を見る
ADXが低くても上を向き始めたならトレンドが生まれつつあります。
逆にADXが高くても下を向いたなら、トレンドは終わりに向かっています。

レンジ相場を見分ける

DMIの最も実用的な使い方がこれです。他の指標を使う前の判定に使います。

ADXの状態 機能する指標 機能しない指標
低い(レンジ) RSIストキャスティクスRCI MACD・移動平均線のクロス
高い(トレンド) MACD・多重移動平均線EMA オシレーター全般(張り付く)

RSIやストキャスティクスが「70を超えたのに下がらない」「30を割ったのに戻らない」のは、たいていADXが高い局面です。

指標が悪いのではなく、使う場面を間違えているだけです。DMIはその判定を担当します。

±DIのクロス

+DIが-DIを上抜けたあと、両者の差が拡大して株価が上昇した場面
±DIがクロス(赤丸)した後、差が広がっていく(赤矢印)
状態 意味
+DIが−DIを上抜く 上昇の勢いが優勢に転じた(買いサイン)
−DIが+DIを上抜く 下落の勢いが優勢に転じた(売りサイン)
2本の差が広がる トレンドが強まっている
2本の差が縮む トレンドが弱まっている

ただしクロスだけでは不十分です。ADXが低い状態でのクロスは、すぐに元に戻ってしまいます。

信頼できる組み合わせ
+DIが−DIを上抜ける かつ ADXが上向き
→ 方向が変わり、しかも勢いが伴っている

ADXとADXRの組み合わせ

ADXRを表示している場合、2本の位置関係でトレンドの段階がわかります。

状態 意味
ADXがADXRを上抜く トレンドが加速し始めた
ADXがADXRより上 トレンドが継続している
ADXがADXRを下抜く トレンドが弱まり始めた
2本が絡み合う 方向感がない。判断を保留する

ADXRはADXをならしたものなので、移動平均線とその平均線の関係と同じように読めます。

順張りで持っている建玉を手仕舞う目安として、ADXがADXRを下抜けたタイミングを使う方法があります。利確の基準を機械的に決めたい場合に有効です。

計算のしくみ

細かい式を覚える必要はありませんが、何を材料にしているかを知ると読みやすくなります。

材料 内容
+DM 前日より高値がどれだけ切り上がったか
−DM 前日より安値がどれだけ切り下がったか
TR(真の値幅) その日の実質的な変動幅。を開けた分も含める

ここで重要なのがTR(True Range)という考え方です。単純な「高値−安値」ではなく、前日終値から飛んだ分も値幅に含めます。

窓を開けて始まった日は、高値と安値の差が小さくても実際には大きく動いています。TRはそれを取りこぼしません。ボラティリティを測るATRという指標も、同じTRを使います。

設定値

期間 性質
14日 考案者が推奨した標準。最も使われている
短くする 反応は速いが、ADXが乱高下する
長くする 滑らかになるが、判定が遅れる

RSIと同じ14日が標準です。どちらもワイルダーが考案した指標であるためです。

弱点と注意点

弱点 内容
① 遅れる ADXが上がる頃にはトレンドが始まっている
② 天井・底を示さない 「強い」ことしかわからず、いつ終わるかは不明
③ 線が多い 3〜4本あり、慣れるまで読み取りに時間がかかる
④ 単独では売買できない あくまで相場の状態を判定する道具

①は構造上避けられません。DMIは「トレンドを予測する」指標ではなく「トレンドが出ていることを確認する」指標です。

使うときの手順

① まずADXの水準と向きを見る レンジかトレンドかを判定
② 使う指標を決める レンジならオシレーター、トレンドなら順張り系
③ ±DIで方向を確認 どちらが上にあるか
④ クロスとADXの向きを重ねる 両方揃ったときだけ信頼する
⑤ ADXが下向きになったら手仕舞いを検討 勢いの終わり

この順番が重要です。DMIは最初に見る指標であって、最後に見る指標ではありません。

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

DMIに関するよくある質問

ADXが上がっていれば株価は上がりますか?
上がるとは限りません。ADXはトレンドの強さだけを示す指標で、方向は示しません。下落トレンドが強まっているときもADXは上昇します。方向は+DIと−DIのどちらが上にあるかで判断してください。
ADXは何を基準に高い・低いと判断しますか?
20〜25を境にする見方が一般的です。20以下ならレンジ、25以上なら明確なトレンドが出ていると判断します。ただし水準そのものより、ADXが上を向いているか下を向いているかのほうが重要です。
±DIのクロスだけで売買できますか?
おすすめしません。ADXが低い状態でのクロスはすぐ元に戻ることが多くなります。クロスとADXの上昇が同時に起きているときだけ、信頼度が上がります。
ADXRは必要ですか?
必須ではありません。ADXをならしたものなので、動きが滑らかになる代わりに反応は遅くなります。表示されないツールもあり、まずは+DI・−DI・ADXの3本で判断して構いません。
RSIが効かないときにDMIを見る意味はありますか?
あります。RSIが70以上に張り付いて機能しないのは、多くの場合ADXが高いトレンド相場だからです。DMIで先にトレンドの有無を確認しておけば、そもそもRSIを使うべき場面かどうかを判断できます。
TRとは何ですか?
真の値幅と訳され、その日の実質的な変動幅を表します。単純な高値と安値の差だけでなく、前日終値からどれだけ飛んだかも含めて計算するため、窓を開けた日の動きも取りこぼしません。
期間は14日のままでいいですか?
14日で構いません。考案者が推奨した設定で、最も広く使われています。短くするとADXが乱高下して判定しにくくなり、長くすると反応が遅れます。
DMIだけで売買判断してもいいですか?
向いていません。DMIは相場の状態を判定する道具であり、売買のタイミングを細かく示すものではありません。ADXでトレンドの有無を確認したうえで、状態に合った別の指標を使ってください。

まとめ

DMIは「いま順張りすべきか、逆張りすべきかを教えてくれる指標」です。売買サインではなく、地図として使います。

この記事のまとめ

・+DIと−DIが方向、ADXが強さを示す
・ADXは上昇でも下落でも、勢いが強ければ上がる
・ADX 20以下はレンジ、25以上は明確なトレンド
・水準より「向き」を重視する
・レンジならオシレーター、トレンドなら順張り系を使う
・±DIのクロスはADXの上昇を伴うときに信頼できる
・TRは窓を開けた分も含めた実質的な値幅
・売買サインではなく、相場の状態を判定する道具

あわせて読みたい:MACDとはRSIとはストキャスティクスとはボラティリティとは多重移動平均線とはテクニカル分析とは

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