POとは、すでに上場している企業の株式を投資家に広く売り出すことです。Public Offering の略で、日本語では公募・売出しといいます。

ここで多くの人がつまずきます。POには「公募」と「売出し」の2種類があり、株主にとっての意味がまったく違います。公募は新株を発行するので1株の価値が薄まりますが、売出しは既存の株が売られるだけで薄まりません。

この記事は、POの発表を見たときにどちらなのかを判別し、申し込むかどうかを決めるという順番で構成しています。市場価格より安く買えるという説明だけで判断すると損をします。

この記事でわかること

・POの「公募」と「売出し」の違いと見分け方
・IPOとの違い(当たりやすさも儲かりやすさも別物)
・発表から受渡までの日程と申込手順
・ディスカウント率の相場と、損益分岐点の計算
・株価が下がりやすい局面と、反発しやすい局面
・申し込む前に確認すべき5項目

POとは?まず結論から

PO(読み方:ぴーおー)

POは Public Offering の略です。すでに上場している企業が、不特定多数の投資家に対して株式を売り出すことを指します。証券会社を通じて、個人投資家も申し込めます。

重要なのは、POが2つの異なる行為をまとめて指す言葉だという点です。

種類 売られる株 お金の行き先 希薄化
公募(公募増資) 新しく発行する株 会社に入る する
売出し すでに発行済みの株 売り出した株主に入る しない

※ 実際の開示では両方が同時に行われることが多く、「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」というタイトルになります。

よくある勘違い
「PO=公募増資のこと」
「PO=売出しのこと」
→ どちらも片側だけの理解です

POは公募と売出しの総称です。どちらか一方に決めつけて覚えると、開示を読んだときに希薄化の有無を読み違えます。開示のタイトルを見て、新株発行が含まれているかを毎回確認してください。

POとIPOの違い

名前が似ているため混同されますが、まったく別のものです。

比較項目 PO IPO
上場しているか すでに上場している これから上場する
買う前に株価が分かるか 分かる(市場価格がある) 分からない
価格の決まり方 市場価格から数%割引 需要申告をもとに決定
当たりやすさ 比較的当たりやすい 当たりにくい
値上がり期待 割引分に限られる 初値で数割の上昇も

ここが決定的な違いです。IPOは当たりにくいが当たれば大きく、POは当たりやすいが利幅が小さい。POの利益はディスカウント分に限られるため、IPOと同じ期待値で考えると外します。

一方でPOにはすでに株価が存在するという利点があります。過去のチャート、業績、指標がすべて見られる状態で判断できるので、企業の中身を確かめてから申し込めます。

なぜ企業はPOを行うのか

目的が分かると、株価の反応も読めるようになります。公募と売出しで理由が違います。

公募の理由① 大型の成長投資

工場の建設、大規模な設備投資、企業買収など、借入だけでは財務が耐えられない規模の資金を集めます。使途が明確で成長性があれば、希薄化を受け入れても評価されます。

公募の理由② 財務体質の改善

自己資本を厚くして自己資本比率を上げます。金利が上がる局面では借入の負担が重くなるため、株式で調達する選択が増えます。

売出しの理由 大株主の持分解消

親会社の持分売却、創業家の相続対策、政策保有株の解消などです。会社に資金は入りません。市場に出回る株が増えるため、需給だけが悪化します。

売出しには前向きな側面もあります。流動性が上がり、株主の数が増えるためです。出来高が少なく機関投資家が買えなかった銘柄では、売出しによって買い手の層が広がることがあります。

規模の測り方は吸収金額です。公募株数と売出株数の合計に株価を掛けた金額で、時価総額に対する比率で見ます。

時価総額に対する吸収金額 規模感 需給への圧力
〜5% 小規模 限定的
5〜10% 通常 数日から数週間
10%超 大型 長引きやすい

※ 目安です。相場環境や銘柄の出来高によって実際の影響は変わります。

発表から受渡までの日程

POは日程が長く、その間に株価が動きます。

1

発表(適時開示)
株価が最も大きく動く日

翌営業日に急落することが多い局面です。この時点では買値が決まっていません。

2

需要申告(ブックビルディング)
発表から2週間程度

ブックビルディングの期間です。個人はここで申し込みます。参加しないと配分されません。

3

発行価格・売出価格の決定
決定日の終値等が基準

その日の終値などから数%割り引いた価格が決まります。ここで初めて買値が確定します。

4

購入の申込
数営業日の受付

価格を見てから最終判断ができます。納得できなければ辞退できます。

5

払込・受渡
ここまで売却できない

株式が口座に入るのは受渡日です。価格決定から受渡までの間、株価が下がっても何もできません。

最大の落とし穴がステップ5です。価格が決まってから売れるようになるまで、通常1週間前後あります。この期間のリスクが、割引分を簡単に上回ります。

ディスカウント率と損益分岐点

POの利益はディスカウントです。おおむね2〜5%程度に設定されます。実額で見てみます。株価3,000円の銘柄をディスカウント率3%で100株申し込んだ場合です。

受渡日の株価 購入額(2,910円×100株) 評価額 損益
3,000円(変わらず) 291,000円 300,000円 +9,000円
2,910円(−3%) 291,000円 291,000円 ±0円(損益分岐)
2,800円(−6.7%) 291,000円 280,000円 −11,000円

損益分岐点は発行価格そのものです。受渡日までに株価が発行価格を下回れば、割引を受けていても含み損になります。1週間で3%動くことは日常的です。

したがってPOは、その銘柄をもともと買いたかったかどうかで判断するのが現実的です。割引があるから買うのではなく、買いたい銘柄を少し安く買える機会として使う、という順序になります。

売出しは希薄化しないのに、なぜ株価が下がるのか

ここは疑問を持つ人が多いところです。売出しは既発行の株が売られるだけで、株数は増えません。それでも株価は下がります。理由は3つあります。

① 市場で売買される株が増える

それまで大株主が固定的に保有していた株が、市場に流れ込みます。株数は変わらなくても、売買される株数(浮動株)は増えます。需給は確実に緩みます。

② 大株主が売るという事実がシグナルになる

その会社を最もよく知る立場の株主が持分を減らします。株価が高いと判断したのではないかと受け取られることがあります。

③ 発行価格を意識した売りが出る

売出価格は決定日の株価を基準に決まります。安く買いたい参加者がいるため、決定日まで上値が重くなります。この構造は公募と同じです。

ただし②は割当先や理由によります。政策保有株の解消は、いまや東証が求めているコーポレートガバナンス上の課題への対応です。この場合の売出しは、経営判断としてむしろ前向きに受け取られることもあります。

①は避けられません。希薄化がないから安心、とは言えないのがPOの読み方です。浮動株が増えることの影響は、出来高が少ない銘柄ほど大きく出ます。

株価が下がりやすい局面と反発しやすい局面

POの株価は、局面ごとに需給の性格が変わります。

局面 需給の状態 株価
発表直後 失望売りが集中する 下がる
価格決定まで 安く決まってほしい参加者がいる 上値が重い
価格決定後 価格を抑える動機が消える 反発しやすい
受渡以降 新たに配分された株が売却可能になる 再び緩むことがある

発行価格の決定日が、需給の性格が変わる節目です。それまで上値を抑えていた動機がなくなるためです。ただし受渡後は新株が売れるようになるため、再び売り物が出ることもあります。

なお、多くのPOではオーバーアロットメントが併用されます。主幹事証券が借りた株を追加で売り出し、その後に市場で買い戻す(シンジケートカバー取引)ため、一定期間は買い需要が生まれます。これが下支えになることがあります。

PO・立会外分売・第三者割当の使い分け

株式を市場に出す方法は複数あります。企業がどれを選んだかで、状況が推測できます。

方法 相手 規模 個人の参加
PO 不特定多数の投資家 大きい できる
立会外分売 不特定多数の投資家 小さい できる
第三者割当増資 特定の相手(提携先など) 中〜大 できない
MSワラント 証券会社・ファンド できない

読み取れることがあります。POを選べる企業は、市場から広く資金を集められる信用がある企業です。公募増資には引受証券会社の審査が入るため、業績や財務に不安があると成立しません。

逆に、第三者割当やMSワラントで調達している企業は、公募が難しい状況にある可能性があります。調達手段そのものが、その企業の状態を示す情報になります。

申し込む前に確認する5項目

確認すること なぜ見るのか
公募か売出しか、両方か 希薄化が起きるかどうかが変わる
発行済株式総数に対する割合 10%超なら大型。需給への圧力が大きい
資金の使途 成長投資か借入返済かで戻りやすさが変わる
売出人は誰か 親会社・創業家・政策保有の解消など、意味が異なる
受渡日までの日数 売却できない期間の長さ=リスクの大きさ

4項目目を補足します。売出しは希薄化しませんが、誰が売るのかによって受け止め方が変わります。政策保有株の解消なら市場に出る株が増えるだけですが、創業家や親会社が持分を大きく下げる場合は、支配構造の変化として読まれます。

POのデメリットと注意点

① 割引率よりリスクのほうが大きい

ディスカウントは2〜5%程度ですが、受渡までの1週間で株価がそれ以上動くことがあります。確実に儲かる仕組みではありません。

② 受渡まで売却できない

価格が決まってから株式が口座に入るまで、身動きが取れません。相場全体が崩れても対応できないという点が最大のリスクです。

③ 既存株主は発表で損をする

すでにその銘柄を持っている場合、POの発表は下落要因です。申し込む側と持っている側で立場が正反対になります。

④ 資金が拘束される

申込時に購入代金相当の資金が必要になります。他の投資機会に使えない期間が発生します。

⑤ 取扱いのある証券会社が限られる

POを扱うのは引受証券会社だけです。立会外分売と同様、口座がなければ申し込めません。主幹事証券は配分が多くなります。

POに関するよくある質問

POとは公募のことですか、売出しのことですか?
両方を指す総称です。公募は新株を発行するため希薄化が起きますが、売出しは既存の株式が売られるだけで希薄化しません。開示のタイトルに「新株式発行」が含まれているかで判別できます。
POはIPOのように儲かりますか?
利幅はかなり小さくなります。POの利益は市場価格からのディスカウント(おおむね2〜5%)に限られ、IPOのように初値で数割上がることはありません。その代わり当選しやすく、事前に株価や業績を確認できます。
POの発表で株価が下がるのはなぜですか?
公募が含まれる場合は希薄化が意識され、加えて新たな株が市場に出るため需給が悪化します。また発行価格は決定日の株価を基準に決まるため、安く決まってほしい参加者が存在し、決定日まで上値が重くなりやすい構造があります。
申し込んだ株はいつから売れますか?
受渡日以降です。発行価格の決定から受渡日までは通常1週間前後あり、その間は売却できません。この期間の値下がりリスクが、ディスカウント率を上回ることもあります。
POは必ず買えますか?
需要が多い場合は配分が絞られることがあります。ただしIPOと比べれば当たりやすい傾向があります。発行価格が決まったあとに購入を辞退することも可能です。
立会外分売とはどう違いますか?
立会外分売は既発行の株式を売る取引で、規模が小さく期間も1〜2日と短くなります。POは規模が大きく、需要申告から受渡まで数週間かかります。立会外分売は当日に売却できるため、拘束期間の点で大きく異なります。
オーバーアロットメントとは何ですか?
需要が多い場合に、主幹事証券が大株主から株式を借りて追加で売り出す仕組みです。借りた株式は後日、市場での買い戻しか、企業から新株を取得することで返還されます。買い戻しが行われる期間は株価の下支えになることがあります。
すでにその株を持っている場合はどうすればいいですか?
まず公募が含まれるかと希薄化率を確認してください。希薄化率が小さく資金使途に成長性があれば影響は限定的です。大型の公募で使途が借入返済などの場合は、需給の悪化が長引くことがあります。

まとめ

POは、上場企業の株式を広く売り出すことの総称です。まず公募か売出しかを見分け、次に希薄化率と資金使途を確認してください。

この記事のまとめ

・POは公募(新株発行)と売出し(既発行株の売却)の総称
・公募は希薄化するが、売出しは希薄化しない
・IPOより当たりやすいが、利幅はディスカウント分に限られる
・損益分岐点は発行価格そのもの
・価格決定から受渡までは売却できない
・発行価格の決定日を境に需給の性格が変わる

あわせて読みたい:公募増資とは売出しとはブックビルディングとはIPOとはオーバーアロットメントとは立会外分売とは希薄化とは

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