証券口座を申し込むと、必ず「口座の種類」を選ぶ画面が出てきます。迷ったら「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでください。証券会社が税金を計算して天引きしてくれるため、原則として確定申告が不要になります。
ただし、この選択には知っておくべき裏側があります。源泉徴収ありを選ぶと、利益が少額でも税金が引かれます。本来なら払わなくてよかったはずの税金を払っている、という状態が起こりえます。
この記事では、4つの口座区分の違いと、よく言われる「20万円以下なら申告不要」の正確な意味を整理します。
この記事でわかること
・特定口座「源泉徴収あり/なし」の選び分け
・一般口座を選ぶ場面はあるのか
・「20万円以下は申告不要」の正確な意味
・源泉徴収ありでも確定申告したほうがいい3つのケース
・NISA口座と信用取引口座
・口座区分はあとから変更できるか
※ 本記事は2026年8月時点の制度内容にもとづきます。税務の取扱いは個別事情により異なるため、実際の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
目次
結論:迷ったら特定口座(源泉徴収あり)
証券口座には大きく「課税口座」と「NISA口座」があり、課税口座はさらに3つに分かれます。
課税口座(利益に20.315%の税金がかかる)
├ 特定口座(源泉徴収あり) ← 迷ったらこれ
├ 特定口座(源泉徴収なし)
└ 一般口座
NISA口座(利益が非課税)
└ 課税口座と同時に持てる。1人1口座
信用取引口座(別途審査が必要)
口座を1つだけ選ぶのではなく、「特定口座(源泉徴収あり)」と「NISA口座」を同時に開くのが一般的な形です。申込画面でNISA口座も一緒に申し込めます。
4つの口座区分の違い
| 項目 | 特定口座 (源泉徴収あり) |
特定口座 (源泉徴収なし) |
一般口座 | NISA口座 |
|---|---|---|---|---|
| 損益の計算 | 証券会社 | 証券会社 | 自分 | 不要 |
| 税金の納付 | 天引き | 自分で申告 | 自分で申告 | 非課税 |
| 確定申告 | 原則不要 | 必要 | 必要 | 不要 |
| 年間取引報告書 | 届く | 届く | 届かない | — |
| 損益通算 | できる | できる | できる | できない |
| 手間 | 最も少ない | 中 | 最も多い | なし |
「特定」と「一般」の違いは、証券会社が損益を計算してくれるかどうかです。一般口座では、買った価格・売った価格・手数料をすべて自分で記録して計算する必要があります。
特定口座(源泉徴収あり)
証券会社が損益を計算し、利益が出るたびに20.315%を天引きして納税まで代行します。
・損益計算をしなくていい
・扶養や社会保険の判定で所得に含まれない(申告しない場合)
・年内の損益は自動で通算される
・他社の損失と通算するには結局申告が必要
・損失の繰越には申告が必要
・資金が一時的に拘束される
同じ口座内であれば、あとから損失が出たときに払いすぎた税金が自動的に還付されます。
例:3月に10万円の利益 → 20,315円が天引き
9月に10万円の損失 → 年間の損益は0円になり、天引きされた20,315円が口座に戻ります
この調整は年内・同一口座内で自動的に行われます。
会社員で、投資が副業扱いになるのを避けたい場合にも有効です。確定申告をしなければ、給与以外の所得として住民税額に反映されないためです。
特定口座(源泉徴収なし)
証券会社が損益計算はするものの、天引きはせず、納税は自分で行う方式です。
| 向いている人 | 理由 |
|---|---|
| 年間の利益が少額に収まりそうな人 | 天引きされないため、資金を拘束されない |
| もともと確定申告をしている人 | 個人事業主など。申告の手間が増えない |
| 資金効率を重視する人 | 納税は翌年3月まで先送りされる |
天引きされないということは、納税義務が自分に残っているということです。
申告を忘れると延滞税や加算税の対象になります。
年間取引報告書は届くので計算は不要ですが、申告そのものは必要です。
一般口座を選ぶ場面はあるのか
ほとんどの人には不要です。損益をすべて自分で計算する必要があり、年間取引報告書も届きません。
・特定口座で扱えない商品を保有する場合(未公開株など)
・相続や贈与で受け取った株式で、取得価額の引継ぎが必要な場合
・タンス株(電子化前の株券)を保管振替機構の特別口座から移す場合
これから投資を始める人が能動的に選ぶ理由はありません。
なお、取得価額が分からない株式は、売却価額の5%を取得費とみなして計算することが認められています(概算取得費)。この場合、実際の取得価額より不利になることがあります(→ キャピタルゲイン・インカムゲイン)。
「20万円以下は申告不要」の正確な意味
非常によく言われる話ですが、正確には「所得税の確定申告が不要」という意味であり、住民税は別です。
| 税目 | 20万円以下の場合 |
|---|---|
| 所得税 | 給与所得者で一定の条件を満たせば確定申告が不要 |
| 住民税 | この特例はありません。原則として市区町村へ申告が必要 |
この特例が使えるのは、次をすべて満たす場合です。
・給与を1か所から受けている給与所得者
・年末調整が済んでいる
・給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下
・給与収入が2,000万円以下
「株の利益だけで20万円」ではなく、副業や雑所得も合算した金額です。
そして、特定口座(源泉徴収あり)を選んでいる場合、この論点自体が発生しません。すでに源泉徴収で納税が完結しているため、所得税も住民税も追加の手続きは不要です。
手間を減らしたいなら「源泉徴収あり」、少額のうちは税金を払いたくないなら「源泉徴収なし+住民税の申告」という整理になります。後者は住民税の申告を自分で行う必要があるため、実際の手間はそれほど変わりません。
※ 住民税の申告方法・要否は自治体によって案内が異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。
源泉徴収ありでも確定申告したほうがいい3つのケース
「原則不要」であって「してはいけない」わけではありません。申告することで税金が戻るケースがあります。
A社で50万円の利益、B社で30万円の損失。この通算は自動では行われません。申告すれば差額20万円に対する税額になり、払いすぎた分が戻ります。
今年100万円の損失が出た場合、申告しておけば翌年以降3年間の利益と相殺できます。申告しないとこの権利は使えません。損失が出た年に申告しておく必要があります。
確定申告をすると、その所得は合計所得金額に含まれます。
・扶養に入っている場合、扶養から外れる可能性があります
・国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料が上がることがあります
・配偶者控除・各種の所得制限に影響することがあります
還付される税額と、これらの負担増を比べて判断してください。
※ J-REITの分配金には配当控除が使えません(→ REITの記事)
特定口座の年間取引報告書の見方
毎年1月ごろ、証券会社から「特定口座年間取引報告書」が届きます。確定申告をする場合はこれ1枚で足りるため、どこを見るかを押さえておくと迷いません。
| 記載項目 | 意味 |
|---|---|
| 譲渡の対価の額 | その年に売却した合計金額(利益ではありません) |
| 取得費及び譲渡に要した費用の額 | 買った金額+手数料 |
| 差引金額(譲渡所得等の金額) | これがその年の損益。マイナスなら損失 |
| 源泉徴収税額(所得税) | 天引きされた所得税・復興特別所得税 |
| 株式等譲渡所得割額(住民税) | 天引きされた住民税 |
| 配当等の額 | その口座で受け取った配当・分配金(受取方法の設定による) |
「譲渡の対価の額」は利益ではありません。売却した金額の合計です。
100万円で買った株を105万円で売れば、対価の額は105万円、利益は5万円です。
確定申告で見るべきは「差引金額」のほうです。
一般口座ではこの報告書が届きません。取引ごとの約定履歴から自分で集計する必要があります。ここが特定口座との実務的な差になります。
NISA口座と信用取引口座
| 項目 | NISA口座 | 信用取引口座 |
|---|---|---|
| 開設 | 課税口座と同時に申込可。1人1口座 | 別途審査あり。最低委託保証金30万円 |
| 税金 | 非課税 | 課税(特定口座に対応) |
| 投資枠 | 年360万円・生涯1,800万円 | 保証金の約3.3倍まで取引できる |
| リスク | 損失は損益通算できない | 元本を超える損失が生じることがある |
| NISAとの併用 | — | NISA口座では信用取引はできない |
信用取引口座は、必要になってから開けば十分です。開設しても使わなければ費用は発生しませんが、レバレッジがかかる取引であることを理解したうえで申し込んでください(→ 買い方・売り方)。
※ 信用取引には元本を超える損失が生じる可能性があります。本記事は制度の説明であり、特定の取引を勧めるものではありません。
口座区分はあとから変更できるか
| 変更したいこと | できるか |
|---|---|
| 源泉徴収あり ⇄ なし | 年単位で変更可能。ただしその年に1度でも売却があると翌年から |
| 一般口座 → 特定口座 | 口座の追加開設は可能。保有株の移管は原則できない |
| 課税口座 → NISA口座 | できない。売却して買い直すことになる |
| NISAの金融機関変更 | 年単位で可能。その年に買付があると翌年から |
| 信用取引口座を追加 | いつでも申込可能(審査あり) |
最初の選択で取り返しがつかなくなるものはありません。ただし変更には年単位の制約があるため、最初に「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでおくのが無難です。
口座開設の手順と必要書類は口座開設の必要書類、マイナンバーの扱いは証券口座とマイナンバーで解説しています。
証券口座の種類に関するよくある質問
まとめ
証券口座の種類は、税金の手続きを誰がやるかで分かれています。証券会社に任せるのが特定口座(源泉徴収あり)、自分でやるのが一般口座という理解で十分です。
この記事のまとめ
・特定と一般の違いは、証券会社が損益計算をするかどうか
・源泉徴収ありは利益が少額でも天引きされる
・同一口座内なら年内の損益は自動で通算され、払いすぎは還付される
・「20万円以下は申告不要」は所得税の話。住民税の申告は別に必要
・複数社の損益通算・繰越控除・配当控除には確定申告が必要
・申告すると扶養や保険料に影響することがある
・源泉徴収あり/なしは年単位で変更できる
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