貸株金利とは、証券会社に保有株式を貸し出すことで受け取れる金利のことです。持っているだけの株から収入が生まれます。
ただし注意点があります。この金利は株式の売買益とはまったく別の「雑所得」として扱われ、総合課税の対象になります。
この記事では、金利の決まり方から見落とされがちな税金と信用リスクまで解説します。
この記事でわかること
・金利が高い銘柄に共通する特徴
・受け取る金額の計算方法
・株の売買益とは別扱いになる税金の仕組み
・金利だけを見てはいけない理由
目次
貸株金利とは
貸株金利(読み方:かしかぶきんり)とは、投資家が保有株を証券会社へ貸し出す見返りに受け取る金利です。
投資家 ←(貸株金利)← 証券会社 ←(借りる手数料)← 空売りしたい人
→ 空売りの需要が、貸株金利の源泉になっています
つまり「その株を借りて売りたい人がどれだけいるか」で金利が決まるということです。
サービス全体の仕組みは貸株とはで解説しています。
金利はどうやって決まるのか
| 要因 | 金利への影響 |
|---|---|
| 空売りの需要 | 借りたい人が多いほど金利は上がる |
| 市場に出回る株数 | 流通する株が少ないほど借りにくく、金利は上がる |
| 証券会社の在庫 | 在庫が足りなければ金利を上げて集める |
| 制度信用の状況 | 逆日歩が発生するような銘柄は貸株金利も高くなりやすい |
金利は証券会社が定期的に見直します。固定ではなく、需給に応じて上がったり下がったりします。
貸株金利が高い銘柄の特徴
年率0.1%程度が標準的な水準ですが、なかには数%から十数%という銘柄も現れます。そこには理由があります。
株価の下落を予想する人が多いということです。金利の高さは「多くの参加者が下がると考えている」というシグナルでもあります。
浮動株が少ない銘柄では、わずかな需要でも金利が跳ね上がります。
「上がりすぎ」と見た参加者が空売りを仕掛けるため、一時的に金利が急上昇します。
つなぎ売りの需要が集中する時期に、金利が上がることがあります。
金利が高い銘柄を金利目当てで買う、という発想は危険です。年10%の金利を得ても、株価が20%下がれば意味がありません。
貸株金利の計算方法
貸株金利 = 株価 × 株数 × 年利率 ÷ 365 × 貸出日数
株価1,000円 × 1,000株 = 評価額100万円
年利率0.1%で1年間貸した場合
→ 1,000,000 × 0.001 = 年間1,000円(税引前)
※ 年利率5%の銘柄なら年間50,000円になります
実際の計算は日々の株価をもとに日割りで行われるのが一般的です。株価が上がれば受け取る金額も増えます。
※ 計算方法や利率の適用ルールは証券会社によって異なります。詳細はご利用の証券会社の説明をご確認ください。
いつ受け取れるのか
| 項目 | 一般的な取扱い |
|---|---|
| 計算 | 毎日の残高にもとづき日割りで計算 |
| 入金 | 月に1回まとめて証券口座へ入金されることが多い |
| 源泉徴収 | されない場合が多い(自分で申告が必要) |
3行目が重要です。株の売却益と違って、特定口座に入れておけば自動で完了、とはなりません。
貸株金利の税金は「雑所得」
ここがこの記事でもっとも重要な部分です。貸株金利は、株式の売買益とはまったく別の扱いになります。
| 収入 | 所得区分 | 課税方式 |
|---|---|---|
| 株式の売却益 | 譲渡所得 | 申告分離課税 20.315% |
| 配当金 | 配当所得 | 申告分離・総合・申告不要から選択 |
| 貸株金利 | 雑所得 | 総合課税(他の所得と合算) |
・給与などの所得と合算されて累進税率が適用される
・所得が高い人ほど税率が上がる
・株式の売却損と損益通算できない
・特定口座の年間取引報告書には含まれない
つまり株で100万円の損を出していても、貸株金利には課税されます。ここが見落とされやすい点です。
※ 税制は改正されます。実際の申告にあたっては税理士等の専門家と国税庁の最新情報をご確認ください。
配当金相当額という別の問題
貸株中に権利確定日を迎えると、配当金ではなく「配当金相当額」を受け取ります。
配当所得
・源泉徴収で完結できる
・配当控除が使える
・株式の売却損と損益通算できる
雑所得
・自分で申告が必要
・配当控除は使えない
・売却損と損益通算できない
金額が同じでも税務上の扱いがまったく違います。とくに配当控除や損益通算を使っていた人にとっては、実質的な手取りが減ることになります。
多くの証券会社には「株主優待・配当金自動取得サービス」があり、権利確定日の前後だけ自動的に貸株を解除して現物に戻す設定ができます。配当を重視するなら、この設定は必須です。
20万円ルールの誤解
給与所得者で、給与以外の所得が年間20万円以下であれば所得税の確定申告は不要とされています。
しかし住民税にはこの規定がありません。
→ 金額にかかわらず、住民税の申告は必要になります。
「少額だから何もしなくていい」という理解は正確ではありません。お住まいの自治体への申告が必要かどうか、必ず確認してください。
金利以外に見るべきリスク
貸株サービスには、金利の高さでは補えないリスクがあります。
| リスク | 中身 |
|---|---|
| 証券会社の信用リスク | 貸株中の株式は分別管理の対象外。投資者保護基金の補償を受けられない |
| 株主の権利を失う | 議決権がなくなる。長期保有優待の継続期間が途切れることもある |
| 金利が変わる | 高金利は一時的なことが多く、需給が落ち着けば下がる |
| 税務の手間 | 自分で計算して申告する必要がある |
1行目がもっとも重要です。通常、証券会社が破綻しても顧客の資産は分別管理されているため保護されます。しかし貸し出している間の株式は、その保護の枠外に置かれます。
NISA口座では使えない
どちらを取るべきかは、配当利回りと貸株金利のどちらが大きいかで判断するのが現実的です。配当が非課税になるメリットのほうが大きいケースは少なくありません。
貸株を使う前のチェックリスト
| 確認すること | 判断の目安 |
|---|---|
| 配当利回りと貸株金利のどちらが高いか | 配当のほうが大きいなら、NISAでの保有や自動取得設定を優先する |
| 優待の長期保有条件があるか | あるなら貸株で継続期間が途切れるリスクを確認する |
| 自動取得サービスを設定したか | 設定しないと権利確定日に配当も優待も失う |
| 年間の受取額を把握しているか | 申告に必要。証券会社の年間報告書で確認する |
| 議決権を行使したいか | 貸株中は行使できない |
手間に対して得られる金額が小さいケースも多くあります。100万円分の株を1年貸して1,000円、そこから税金を引いた金額が、申告の手間に見合うかどうかを先に考えてください。
※ 本記事はサービスの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
貸株金利に関するよくある質問
まとめ
貸株金利は「空売りしたい人が払うコストの一部が回ってきたもの」です。金利の高さは、その銘柄への警戒感の裏返しでもあります。
この記事のまとめ
・金利は空売り需要と流通株数で決まる
・高金利は「下がると見ている人が多い」というシグナル
・税務上は雑所得。総合課税で累進税率が適用される
・株式の売却損と損益通算できない
・配当金相当額も雑所得。配当控除が使えない
・貸株中の株式は分別管理の対象外で、破綻時に保護されない
・NISA口座では利用できない











