ストキャスティクスとは、直近の値動きの幅の中で、今の終値がどのあたりに位置しているかを0〜100で示す指標です。

オシレーター系の中で最も反応が速いのが特徴です。ただしそれは、そのままダマシの多さにもつながっています。

この記事では、実務でほぼ必ず「スロー」が使われる理由まで解説します。

この記事でわかること

・ストキャスティクスが計算しているもの
・%K・%D・%SDの関係
・ファストとスローの違い
・ダマシが多い理由
・RSIとの使い分け

ストキャスティクスとは

ストキャスティクス(Stochastics)は、1950年代にジョージ・レーンが考案したとされる指標です。

考え方
過去n日間のいちばん高かった値段いちばん安かった値段の幅の中で、
今日の終値がどこにいるかを%で表す
・高値のすぐそばで引けた → 100に近づく
・安値のすぐそばで引けた → 0に近づく

背景にあるのは「上昇局面では高値圏で引け、下降局面では安値圏で引けやすい」という経験則です。

何を計算しているのか

数値例で見ると理解しやすくなります。

項目 値段
過去9日間の最高値 1,200円
過去9日間の最安値 1,000円
今日の終値 1,150円
%K 75
(1,150 − 1,000)÷(1,200 − 1,000)× 100 = 75
値幅200円のうち、下から150円の位置にいるということ

ここがRSIとの決定的な違いです。RSIは値動きの「割合」を見ますが、ストキャスティクスは値幅の中の「位置」を見ます。

%K・%D・%SDの3本

名称 中身 動き
%K 値幅の中の終値の位置 最も激しい
%D %Kをならしたもの やや滑らか
%SD(Slow%D) %Dをさらにならしたもの 最も滑らか

3本は「ならす回数が1回ずつ増えていく」関係にあります。回数が増えるほど動きは鈍くなり、そのぶんダマシが減ります。

ファストとスローの違い

ストキャスティクスには2つの表示方法があります。実務ではほぼスローが使われます。

  ファスト スロー
表示する線 %K と %D %D と %SD
反応 非常に速い やや遅い
クロスの回数 多すぎる 現実的な回数
実務での使用 ほとんど使われない こちらが主流

ファストは1日ごとに大きく跳ねるため、サインが出すぎて使い物になりません。1段階ならした線に入れ替えたものがスローです。

証券会社のツールで単に「ストキャスティクス」と表示されている場合、多くはスローストキャスティクスです。設定画面で確認できます。

設定値

項目 一般的な値 意味
%Kの期間 5・9・14 何日間の値幅で見るか
%Dの期間 3 %Kをならす日数
%SDの期間 3 %Dをさらにならす日数

期間を短くするほど反応は速くなりますが、その分ノイズを拾います。まずは初期設定のまま使ってください。

基本の見方

ストキャスティクスが80以上の買われすぎ圏と20以下の売られすぎ圏を示したチャート
上の赤枠が80以上、下の青枠が20以下の領域
数値 状態 意味
80以上 買われすぎ 値幅の上のほうで引け続けている
50前後 中立 値幅の真ん中
20以下 売られすぎ 値幅の下のほうで引け続けている

RSIの70・30に対し、ストキャスティクスは80・20を使うのが一般的です。動きが激しいため、より外側に基準を置いています。

クロスで見る

クロス 意味 信頼度が上がる条件
速い線が遅い線を上抜く 買いサイン 20以下の領域で起きた場合
速い線が遅い線を下抜く 売りサイン 80以上の領域で起きた場合

重要なのはクロスした「位置」です。50付近でのクロスはノイズであることが多く、判断材料になりません。

反応が速いことの代償

ストキャスティクス最大の弱点です。速さとダマシは同じ原因から生まれます。

なぜダマシが多いのか
① 見ているのは直近数日の値幅だけ
② 1日大きく動くと、最高値・最安値が入れ替わる
分母そのものが変わるため、数値が跳ねる
④ 実態は変わっていないのにサインが出る

MACDや移動平均線が「積み上げた平均」を見るのに対し、ストキャスティクスはたった数日の高値・安値に依存します。

トレンド相場では張り付く

RSIと同じく、強いトレンドでは高値圏(安値圏)に張り付いたまま動かなくなります。

相場 挙動 使えるか
レンジ相場 20〜80を規則的に往復する 得意
強いトレンド 80以上に張り付いたまま 使えない

連日高値引けが続けば、計算上100付近から動きません。「買われすぎ」で売り続けると損失が積み上がります。

トレンドが出ているかどうかはDMIのADXで先に判定するのが確実です。

ダイバージェンス

株価が高値圏にある一方でストキャスティクスが切り下がるダイバージェンス
株価は高値圏(赤)だが、指標は切り下がっている(青)

株価と指標の動きが逆行する現象です。張り付き問題を補う手がかりになります。

ただしストキャスティクスは動きが激しいため、ダイバージェンスに見える形が頻繁に現れます。RSIやMACDのダイバージェンスより信頼度は落ちると考えてください。

相性のよい銘柄・悪い銘柄

この指標は銘柄によって使い物になるかどうかが大きく変わります。直近数日の高値・安値に依存する構造だからです。

銘柄の性質 相性 理由
売買代金が大きい大型株 良い 値動きが連続的で、高値安値が飛びにくい
一定の範囲を往復している 良い 20と80を規則的に行き来する
材料で急騰する小型株 悪い 1日で分母が変わり、数値が意味を失う
出来高が細い銘柄 悪い わずかな売買で高値安値が更新される
を頻繁に開ける銘柄 悪い 値幅が不連続になり、位置の意味が薄れる

「サインどおりにやったのに当たらない」という場合、指標の使い方ではなく銘柄選びが原因のことがあります。

使うときの手順

① スローを選ぶ ファストはサインが出すぎる
② トレンドの有無を確認 トレンド相場では使わない
③ クロスの位置を見る 20以下・80以上でのクロスだけ拾う
④ 単独で判断しない 他の根拠と重なったときだけ動く
⑤ 損切り幅を狭くする 外れる前提で使う指標

③を守るだけで、無駄な売買がかなり減ります。中央付近のクロスはほぼ意味がありません。

※ 本記事は指標の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ストキャスティクスに関するよくある質問

ファストとスローはどちらを使えばいいですか?
スローをおすすめします。ファストは1日ごとの動きが大きく、クロスが頻発して判断できません。証券会社のツールで単に「ストキャスティクス」と表示されている場合、多くはスローが採用されています。
RSIとどう使い分けますか?
どちらもレンジ相場向けのオシレーターですが、計算しているものが違います。RSIは値動きに占める上昇分の割合、ストキャスティクスは直近の値幅の中での終値の位置です。ストキャスティクスのほうが反応が速く、ダマシも多くなります。
80を超えたら売りですか?
機械的に売るのは危険です。強い上昇トレンドでは80以上に張り付いたまま株価が上がり続けます。80超えは注意信号として扱い、指標が80を割り込んでからの判断が現実的です。
なぜ数値が急に跳ねるのですか?
計算に使う最高値・最安値が入れ替わるためです。1日大きく動くと分母となる値幅そのものが変わるため、株価の実態が大きく変わっていなくても数値が急変します。
%Kと%Dのどちらを見ればいいですか?
スローストキャスティクスでは%Dと%SDの2本を見ます。速い線(%D)が遅い線(%SD)を抜けた方向がサインです。%Kは単独では動きが激しすぎるため、判断材料にしにくくなります。
期間設定は変えるべきですか?
初期設定のままで構いません。期間を短くすると反応は速くなりますが、もともと反応が速い指標なのでノイズがさらに増えます。落ち着いた動きにしたい場合は期間を長くする方向で調整してください。
中央の50付近のクロスは使えますか?
ほとんど使えません。50付近は値幅の真ん中であり、方向性がない状態です。この領域でのクロスはノイズであることが多く、20以下や80以上で発生したクロスだけを拾うほうが精度が上がります。
ストキャスティクスだけで売買できますか?
難しいです。レンジ相場でしか機能せず、しかもオシレーターの中で最もダマシが多い指標です。トレンドの有無を別の指標で確認し、他の根拠と重なったときだけ使うのが現実的です。

まとめ

ストキャスティクスは「直近の値幅の中で、今どこにいるかを測る指標」です。速さと引き換えにダマシを受け入れる必要があります。

この記事のまとめ

・直近n日間の値幅の中での終値の位置を示す
・%K → %D → %SD の順にならされていく
・実務で使うのはスロー(%Dと%SD)
・80以上で買われすぎ、20以下で売られすぎ
・クロスは20以下・80以上で起きたものだけ拾う
・数日の高値安値に依存するため数値が跳ねやすい
・強いトレンドでは張り付いて機能しない
・オシレーターの中で最もダマシが多い

あわせて読みたい:RSIとはRCIとはMACDとはDMIとはサイコロジカルラインとはテクニカル分析とは

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