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譲渡制限付株式報酬とは
譲渡制限付株式報酬(読み方:じょうとせいげんつきかぶしきほうしゅう)
譲渡制限付株式報酬(譲渡制限付株式報酬制度)とは、わかりやすくいうと企業の経営陣対象とした株式による役員インセンティブ報酬のことです。
企業が報酬として役員に株式を渡す株式報酬制度の一つであり、譲渡制限付株式報酬は一定期間の譲渡制限が付された株式の報酬で、議決権や配当金・開示等において、ストックオプションよりも優位性があると言われています。
譲渡制限付株式報酬はリストリクテッド・ストック(英語:Restricted Stock)とも称され、略して『RS』と表記されることもあります。
かねてより欧米では株式報酬の1つとして普及しており、日本では平成28年度の税制改正を受けて初めて登場した新しい制度です。(譲渡制限付株式報酬制度は2019年5月末時点でおよそ600社が導入)
譲渡制限付株式報酬とストックオプションの違い
譲渡制限付株式報酬はリストリクテッド・ストックとも呼ばれているため、ストックオプションと少し似た言葉になります。
ストックオプションとは、取締役や従業員が予め決められた価格で自社株を購入できる権利のことですが、利用することで通常の株式取引よりもキャピタルゲインを得やすいという特徴がある制度です。
譲渡制限付株式報酬は役員の現物出資と交換で株式を付与する方式です。
株式の付与後は一定期間譲渡できない制限が設けられており、期間中は一定の勤務条件を満たさなければ没収されてしまうという点がストックオプションとの違いになります。
また、ストックオプションは購入価格よりも市場価格が下回ると損失リスクがありますが、譲渡制限付株式報酬は株価上昇によるインセンティブが継続できます。(期間経過後に譲渡制限を解除することによって、中長期の株価向上インセンティブが継続する効果が期待される)
ちなみにストックオプションは「役員報酬としては最適ではない」といった声も上がっています。
その理由としては、自社株の市場価値が上がった時点で保有株式を売却して退職してしまうリスクがあると言われているためです。
譲渡制限付株式報酬メモ
・譲渡制限付株式報酬はリストリクテッド・ストック(RS)とも呼ばれる
・ストックオプションとの主な違いは、譲渡制限付株式報酬は株式の付与後は一定期間譲渡できない制限が設けられており、期間中は一定の勤務条件を満たさなければ没収されてしまう点やインセンティブが継続できる点
譲渡制限付株式報酬と開示規制の見直し
2019年7月1日から施行されている株式報酬に係る開示規制の見直しの改正によって、譲渡制限付株式における有価証券届出書の提出が不要となりました。(金融商品取引法施行令の改正)
改正以前は、株式の発行価額が1億円以上である場合には有価証券届出書の提出が義務付けられていましたが、現行制度においては有価証券届出書の提出は不要で、臨時報告書の提出のみでよいとされています。
現行制度(金融商品取引法施行令の改正)における改正の趣旨は以下の通りです。
・企業の経営陣等に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与するため、株式による業績連動報酬の利用を促進することが目的
要件においては次の通りです。
・取締役等が株券等の交付を受けることとなる日の属する事業年度経過後3月(外国会社にあっては6月)を超える期間、譲渡が禁止されたものに限定している
「事業年度経過後3月」とは、例えば3月期決算の会社の場合なら7月1日以降に譲渡制限が解除される必要があるということになります。
これは投資家保護の観点から最低限必要と考えられる期間を譲渡制限期間として規定したものだとされています。
上記の要件を満たしていれば、臨時報告書のみ提出、満たさない場合は従来通り有価証券届出書の提出が必要となります。
譲渡制限付株式報酬メモ
┗要件を満たさない場合は従来通り有価証券届出書の提出が必要
譲渡制限付株式報酬による株価の動向
譲渡制限付株式報酬を導入することによるその企業の株価への影響は様々だと言えます。
例えば、ストックオプションとして新株予約権を発行する場合ポジティブに捉えられることもあります。ストックオプションを発行するというのは業績的に比較的安定し、今後の株価上昇を見込んでいるからです。
ストックオプションと同様に、譲渡制限付株式報酬を導入するということは今後の株価上昇・企業価値の向上に繋がる期待値があります。基本的には株価上昇や配当利回りを上げるため、中長期的な経営能力を促す効果があるとされるものです。
一方で、株価が下落するケースもあります。譲渡制限付株式報酬を取締役等へ付与・支給することによって株式の希薄化が生じる可能性があり、株価の下落にも繋がることになります。
譲渡制限付株式報酬においては企業の適時開示でよく『譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分』という内容で公表されていますが、自己株式の処分=1株あたり利益が希薄化し、原則的には株価が下落することになるためです。