相互関税が株価暴落を招く理由|21営業日で戻った実測

相互関税とは、貿易相手国が課す関税に対して、同じ水準の関税を課し返す仕組みのことです。報復関税と呼ばれることもあります。

株価との関係でいえば、関税ショックの特徴は「下げが速いこと」ではなく「戻りも速いこと」にあります。

2025年4月の局面を日経平均で追うと、次のようになっていました。

日付 日経平均 前日比
2025年4月3日 34,736 −2.77%
4月4日 33,781 −2.75%
4月7日 31,137 −7.83%
4月8日 33,013 +6.03%
4月9日 31,714 −3.93%
4月10日 34,609 +9.13%

4営業日のうちに、−7.83%と+9.13%が両方起きています。

そして4月7日の安値から、わずか21営業日で元の水準に戻りました。この記事では、なぜこういう動き方になるのかを、過去の関税局面と比べながら整理します。

この記事でわかること

・相互関税の仕組みと、なぜ課し合うのか
・関税が株価を下げる3つの経路
2025年4月に何が起きたか(日次の独自集計)
過去の関税局面との比較(独自集計)
元の水準に戻るまでにかかった日数
・影響を受けやすい業種・受けにくい業種
・なぜ乱高下するのか(交渉という性質)
・個人投資家が気をつけること

※ この記事は仕組みとデータの解説であり、特定の売買を推奨するものではありません。

相互関税とは

用語 内容
関税 輸入品にかける税金。輸入する国の企業が支払う
相互関税 相手国が課す関税と同じ水準を課し返す考え方
報復関税 相手の措置への対抗として課す関税
誤解されやすい点 関税は輸出した国の企業ではなく、輸入する国の企業が政府に納めます

ここを取り違えると、株価の反応が理解できなくなります。

たとえば米国が日本製品に関税をかけた場合、税金を納めるのは輸入する米国側の企業です。ただし価格が上がって売れなくなれば、輸出している日本企業の売上も減ります。だから両国の企業が影響を受けます。

関税が株価を下げる3つの経路

経路 仕組み 効き方
① 販売量の減少 価格が上がって売れなくなる 数か月〜数年かけて効く
② コストの増加 部品や原材料を輸入している企業の仕入れが高くなる 比較的すぐ効く
③ 先行きの不透明さ どこまで広がるかわからず、企業が投資を止める 即日で株価に出る。急落の主因

発表直後の急落を作っているのは、ほぼ③です。

①と②は決算に出るまで数か月かかりますが、③は「業績がいくら減るか計算できない」という状態そのものが売り材料になります。計算できないものは織り込めないため、いったん売って様子を見る動きが集中します。

【独自集計】2025年4月の関税ショック

実際の値動きを日次で追います。

日付 終値 前日比 局面
4/1 35,624 発表前
4/3 34,736 −2.77% 下落開始
4/4 33,781 −2.75% 継続
4/7 31,137 −7.83% この局面の底
4/8 33,013 +6.03% 反発
4/9 31,714 −3.93% 再び下落
4/10 34,609 +9.13% 急反発
4/18 34,730 +1.03% 落ち着く
4/30 36,045 +0.57% 発表前の水準を回復
5/2 36,831 +1.04% 上抜け

出典:日経平均株価の日足終値(Yahoo!ファイナンス)をもとに独自集計。

読み取れること

4月7日の−7.83%は、1985年以降で9番目に大きい下落率
・その3営業日後に+9.13%の急反発
・4月7日の安値から、わずか21営業日で元の水準を回復
・ただし途中の4月9日には−3.93%と、一直線には戻っていない

🔵 下も速いが、上も速い。これが関税ショックの特徴です。

【独自集計】過去の関税局面と比べる

局面 期間の騰落率 期間中の最大下落
2018年 米中貿易摩擦
3月〜12月
−7.9% −11.8%
2019年 追加関税の応酬
5月〜8月
−5.6% −7.6%
2025年 関税をめぐる局面
1月〜6月
+3.0% −20.8%

2025年は期間を通すとプラスで終わっているのに、途中では−20.8%まで下げています。

この差が、関税ショックの1番厄介なところです。結果だけを見れば「大したことはなかった」と読めますが、その途中で20%の下落に耐える必要がありました。

一方2018年は、下落率こそ−11.8%と小さいものの、3月から12月まで9か月にわたって下げ続けています。短期間で決着する形とは限りません。

戻るまでにどれくらいかかったか

他の暴落と比べると、関税ショックの回復の速さがわかります。

起点 下落率 回復までの営業日
2025年4月7日の安値から 21日
2020年1月20日
(コロナ前の高値)
−31.3% 194日
2024年7月11日
(この局面の高値)
−26.3% 264日
2007年7月9日
(リーマン前の高値)
−61.4% 1,862日
1989年12月29日
(バブル天井)
−81.9% 8,381日(約34年)

関税ショックの回復が速いのには理由があります。

関税は「政策」
人が決めたことなので
人が変えられる

交渉・猶予・撤回がありうる
戻りが速い

金融危機は「損失」
すでに失われた資産は
決定で戻せない

時間をかけて処理するしかない
回復が遅い

関税は交渉の材料として使われるため、方針が変わるだけで前提が消えます。これが金融危機との決定的な違いです。

なぜ乱高下するのか

2025年4月に、−7.83%の翌々営業日に+9.13%が起きた理由もここにあります。

段階 株価の動き
① 発表 最も大きく下げる。影響が計算できないため
② 交渉・猶予の報道 大きく戻す。ただし確定ではないため、また下げる
③ 内容の具体化 影響が計算できるようになり、値動きが落ち着く
④ 決算に反映 実際の数字が出る。ここで初めて業績としての評価になる

②の段階が1番値動きが荒くなります。報道のたびに前提が変わるため、その日ごとに方向が反転します。

この段階で短期売買をすると、翌日には逆の材料が出ている可能性があります。値動きが大きいので取りしろがあるように見えますが、方向を当て続けるのは困難です。

影響を受けやすい業種

業種 理由
自動車 輸出額が大きく、単価も高い。裾野の部品メーカーにも波及する
機械・工作機械 設備投資の先送りが直撃する
半導体・電子部品 国際的な分業が進んでおり、供給網が国境をまたぐ回数が多い
鉄鋼・化学 関税の対象になりやすく、価格競争に直結する
海運 貿易量そのものが減ると輸送需要が落ちる

確認するのは、その企業の売上に占める海外比率です。セグメント情報の地域別内訳を見ると、どの国への依存度が高いかがわかります。見方は企業の成長性を測る指標の記事で扱っています。

影響を受けにくい業種

業種 理由
内需サービス 国内で完結する。貿易の影響を直接受けない
食品・小売 需要が景気に左右されにくい。ただし原材料の輸入分は影響を受ける
通信・鉄道 国内の生活基盤。海外売上比率が低い
医薬品 需要が安定しており、関税の対象になりにくい

ただし「影響を受けにくい」は「下がらない」という意味ではありません。相場全体が売られる局面では、内需株も一緒に下げます。下げ幅が相対的に小さくなるという意味です。

個人投資家が気をつける3点

気をつけること 理由
① 信用取引の余力を残す 1日で−7.83%動く局面がある。追証が出ると強制決済され、反発を取れない
② 報道ごとに売買しない 交渉段階では前提が日々変わる。方向を当て続けるのは難しい
③ 一度に買い向かわない 2018年は9か月続いた。1回の下げで終わるとは限らない

①が最も重要です。2025年4月7日のように1日で−7.83%動くと、信用取引の保証金は一気に不足します。

追証で強制決済されると、その3営業日後の+9.13%を取ることができません。下げに耐えられるかどうかが、戻りを取れるかどうかを決めます。追証の仕組みは追証の記事で解説しています。

時間軸で変わる見方

時間軸 何が効くか
発表当日〜数日 先行きの不透明さ。業績とは無関係に売られる
数週間〜数か月 交渉の進み具合。報道で上下する
半年〜1年 決算に実際の影響が出る。ここで初めて業績として評価される
数年 生産拠点の移転など、企業側の対応が進む

企業は関税に対して手を打ちます。生産拠点を関税のかからない国に移す、価格を上げる、調達先を変えるといった対応です。

そのため発表時点で想定された悪影響が、そのまま実現するとは限りません。これも回復が速い理由のひとつになっています。

よくある質問

相互関税とは何ですか?
貿易相手国が課す関税に対して、同じ水準の関税を課し返す考え方です。報復関税と呼ばれることもあります。注意したいのは関税を納めるのは輸出した国の企業ではなく、輸入する国の企業だという点です。ただし価格が上がって売れなくなれば、輸出している側の売上も減るため、結果として両国の企業が影響を受けます。
なぜ関税の発表で株価が急落するのですか?
最大の理由は影響額が計算できないことです。販売量の減少やコストの増加は決算に出るまで数か月かかりますが、「どこまで広がるかわからない」という状態そのものは即日で売り材料になります。計算できないものは織り込めないため、いったん売って様子を見る動きが集中し、それが急落を作ります。
関税ショックからの回復は速いのですか?
他の暴落と比べると速い傾向があります。2025年4月7日の安値から、日経平均は21営業日で元の水準を回復しました。コロナ・ショックは194営業日、リーマン・ショックは1,862営業日かかっています。理由は、関税が人の決定によるもので、交渉や猶予、撤回によって前提が変わりうるからです。金融危機のようにすでに失われた資産を処理する必要はありません。
2025年の関税局面はどれくらい下げましたか?
2025年1月から6月までの期間で見ると、日経平均は+3.0%とプラスで終わっています。ただし期間中の最大下落は−20.8%でした。4月7日には1日で−7.83%下げ、これは1985年以降で9番目に大きい下落率です。結果だけを見れば影響は限定的でしたが、その途中で20%の下落に耐える必要がありました。
下がったところで買えばいいですか?
戻りが速い傾向はありますが、一度に買い向かうのは危険です。2018年の米中貿易摩擦では、3月から12月まで9か月にわたって下げ続けました。1回の下げで終わるとは限りません。また2025年4月も、−7.83%の翌日に+6.03%、その翌日に−3.93%と、一直線には戻っていません。資金を分けて入れる前提で考えるのが現実的です。
どの業種が影響を受けやすいですか?
輸出比率の高い業種です。自動車は輸出額が大きく単価も高いため影響が大きく、裾野の部品メーカーにも波及します。機械、半導体・電子部品、鉄鋼・化学、海運も受けやすい業種です。逆に内需サービスや通信、鉄道などは海外売上比率が低いため相対的に影響が小さくなります。個別に確認するなら、決算資料の地域別セグメント情報で海外比率を見るのが確実です。
関税のニュースが出るたびに売買すべきですか?
おすすめできません。交渉が進んでいる段階では報道のたびに前提が変わり、その日ごとに方向が反転します。2025年4月は、−7.83%の3営業日後に+9.13%という動きがありました。値動きが大きいので取りしろがあるように見えますが、方向を当て続けるのは困難です。むしろ大きく動く局面では、信用取引の余力を確保しておくことのほうが結果に効きます。
企業は関税に対して何もできないのですか?
対応します。生産拠点を関税のかからない国へ移す、価格に転嫁する、調達先を変えるといった手を打ちます。そのため発表時点で想定された悪影響が、そのまま実現するとは限りません。これも株価の回復が比較的速い理由のひとつです。ただし拠点の移転には年単位の時間と投資が必要なため、短期的にはコスト増として業績を圧迫します。

まとめ|下も速いが、上も速い

この記事の要点
関税を納めるのは輸入する国の企業。ただし輸出側の売上も減る
急落を作るのは影響額が計算できないという状態そのもの
2025年4月7日は−7.83%(歴代9位)。3営業日後に+9.13%
その安値から21営業日で回復。コロナは194日、リーマンは1,862日
2025年1〜6月は期間では+3.0%、途中では−20.8%
2018年は9か月続いた。短期で終わるとは限らない
最優先は信用取引の余力。追証で切られると戻りを取れない

関税は政策なので、決めた側が変えることができます。だから下げも速く、戻りも速くなります。

この性質から言えるのは、急落した瞬間に何かを決める必要はないということです。むしろ決めておくべきなのは、そういう日が来る前に信用取引の余力をどれだけ残しておくかという一点になります。下げに耐えられた人だけが、その後の戻りを取れる形になっています。

※ 本記事の集計は日経平均株価の日足終値(1985年1月2日〜2026年8月27日)に基づく独自集計です。過去の傾向であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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