追証(おいしょう)とは、信用取引で委託保証金が不足したときに、追加で差し入れを求められるお金のことです。正式には追加保証金といいます。
多くの人が誤解しているのが、ここです。一度発生した追証は、株価が戻って維持率が回復しても、自動的には消えません。
「明日戻るはずだから様子を見よう」——この判断が、強制決済につながります。この記事では、発生から解消までの実務を順に解説します。
この記事でわかること
・株価が戻っても追証が消えない理由
・入金期限はいつまでか
・払えないと投資額を超える損失が残ること
・代用有価証券だと下落が二重に効く仕組み
追証とは
信用取引では、証券会社にお金や株式を担保として預けて、その何倍かの取引を行います。この担保が委託保証金です。
↓
含み損が膨らみ、担保の価値が目減りする
↓
委託保証金維持率が一定の水準を下回る
→ 追加で担保を差し入れてください=追証
維持率の計算方法そのものは委託保証金率で解説しています。この記事では「発生した後にどうするか」に絞ります。
いつ発生するのか
一般的な水準は委託保証金維持率20%です。これを下回ると追証が発生します。
| 維持率 | 状態 | 追証 |
|---|---|---|
| 30%以上 | 新規建てができる水準 | なし |
| 20〜30% | 新規建ては制限されるが、追証は発生しない | なし |
| 20%未満 | 担保が不足している | 発生 |
※ 水準は証券会社によって異なります(20%より高い基準を設けている会社もあります)。必ず自分の証券会社のルールをご確認ください。
取引時間中に一時的に20%を割っても、終値ベースで回復していれば追証にならない場合があります。逆に、日中は大丈夫でも引けにかけて下げれば追証になります。大引け前の値動きに注意が必要です。
株価が戻っても追証は消えない
この記事で最も伝えたい点です。
火曜:株価が戻って維持率が25%に回復
→ 「もう大丈夫だろう」
大丈夫ではありません。一度発生した追証は、相場の回復では解消しません。入金するか、建玉を返済して初めて解消します。
理由は、追証が「その時点の担保不足を確定させた金額」だからです。いくら翌日に株価が戻っても、判定された事実は消えません。
「戻るのを待とう」と何もしないまま期限を迎えると、強制決済されます。回復を待つのではなく、期限内に行動する必要があります。
入金の期限
| 発生時の維持率 | 期限の目安 |
|---|---|
| 10%以上20%未満 | 発生日の翌々営業日の午前中まで |
| 10%未満 | 発生日の翌営業日の午前中まで |
※ 期限と時刻は証券会社によって異なります(11時30分としている会社が多く見られます)。必ず利用する証券会社の規定をご確認ください。
維持率が10%を割るほど追い込まれた状態では、猶予がさらに短くなります。急落局面ほど、判断できる時間が少ないという設計です。連休を挟むとさらに複雑になるため、事前に確認しておいてください。
実際に計算してみる
数字で追うと、どれだけ急速に追い込まれるかが分かります。
| 項目 | 建てたとき | 20%下落後 |
|---|---|---|
| 委託保証金(現金) | 100万円 | 100万円 |
| 建玉 | 300万円 | 300万円 |
| 評価損 | 0円 | -60万円 |
| 実質的な保証金 | 100万円 | 40万円 |
| 維持率 | 33.3% | 13.3% |
| 必要な保証金(20%) | — | 60万円 |
| 追証の金額 | — | 20万円 |
※ 金利・手数料等を考慮しない簡易な例です。実際の計算方法は証券会社により異なります。
株価が20%下がっただけで、維持率は33.3%から13.3%まで落ちます。レバレッジ3倍なら、下落率の3倍が保証金に効いてくるためです。
レバレッジ別・何%の下落で追証になるか
もっとも実感しやすいのがこの表です。レバレッジを何倍にしているかで、耐えられる下落率が決まります。
| レバレッジ | 建てた直後の維持率 | 追証までの下落率 |
|---|---|---|
| 約3.3倍 上限いっぱい |
約30% | 約10% |
| 3倍 | 約33% | 約13% |
| 2.5倍 | 40% | 20% |
| 2倍 | 50% | 30% |
| 1.5倍 | 約67% | 約47% |
※ 維持率20%を追証の基準として計算した理論値です。金利・手数料・代用有価証券の値動きは考慮していません。
→ ストップ安1回で到達する水準
値幅制限は株価水準によって10%台〜30%台です。つまりレバレッジをフルに使っていると、たった1日の急落で追証に届きます。
逆にレバレッジを2倍に抑えれば、30%下落しても追証にはなりません。倍率を1段下げるだけで、耐えられる下落率が大きく変わります。
追証を解消する3つの方法
| 方法 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ① 現金を入金する | 不足額を振り込む | 保有を続けたい。かつ余裕資金がある |
| ② 建玉を返済する | 反対売買で建玉を減らす | 損失を確定させてでも止めたい |
| ③ 有価証券を差し入れる | 保有株などを担保として追加する | 現金はないが株はある |
入金して持ち続けるのは、「さらに下がったらもっと入金する」という道に踏み込むことでもあります。追証が出た時点で、その判断が間違っていた可能性を疑うほうが健全です。損失を確定させるのは苦しいですが、それ以上の損失を止める行為でもあります。
払えないとどうなるか
証券会社の判断で、建玉が強制的に決済されます。価格を選ぶことはできません。
不足を埋めるため、担保として差し入れていた株式も処分の対象になります。
損失が担保を上回れば、その差額は債務として請求されます。投資した金額を超えて損失が出るのは、信用取引の最大のリスクです。
現物取引なら、最悪でも投資した金額を失うだけです。信用取引にはこの上限がありません。
代用有価証券だと下落が二重に効く
意外と知られていない落とし穴です。
① 信用建玉に評価損が出る
② 担保にしている株の価値も下がる
→ 分子が減り、担保も減る。維持率が二重に悪化する
現金を担保にしている人より、はるかに速く追証に到達します。
担保として差し入れた株式は時価の80%程度で評価されるのが一般的です。仕組みは代用有価証券で解説しています。
追証が発生しやすい場面
| 場面 | なぜ危ないか |
|---|---|
| 市場全体の急落 | 建玉と代用有価証券が同時に下がる。逃げ場が少ない |
| ストップ安に張り付く | 売りたくても売れないまま損失が拡大する |
| 増担保規制がかかる | 必要な委託保証金率そのものが引き上げられる |
| 空売りで踏み上げられる | 株価の上昇に上限がないため、損失も理論上は無限 |
| 連休をまたぐ | 海外市場の変動を受けたまま、対応できない日が続く |
追証を避ける5つのルール
最低ラインの20%ではなく、40〜50%以上を保つ運用にします。急落しても1日で追証にならない余白を持つということです。
制度上は約3.3倍まで可能ですが、フルに使えば下落率の3倍以上が保証金に効きます。1.5〜2倍程度に抑えるだけでリスクは大きく変わります。
代用有価証券に依存すると、下落時に二重に効きます。一定割合は現金で持っておいてください。
損切りラインを事前に決め、逆指値で置いておきます。追証が出る前に自分の意思で降りるのが理想です。
判定は終値で行われるのが一般的です。大引け前に確認する習慣があれば、その日のうちに手を打てます。
※ 本記事は制度の一般的な解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。具体的なルールは各証券会社にご確認ください。
追証に関するよくある質問
まとめ
追証は「担保が足りない」という事実の通知です。相場が戻るのを待っても消えないという一点だけは、必ず覚えておいてください。
この記事のまとめ
・一度発生したら、株価が戻っても自動では解消しない
・期限は維持率10%以上なら翌々営業日、10%未満なら翌営業日が目安
・解消は入金・建玉の返済・有価証券の差し入れの3つ
・払えなければ強制決済。不足金が残ることもある
・代用有価証券だと下落が二重に効く
・維持率40〜50%以上を保つ運用が現実的な予防策
