
4% ルールとは、退職時の資産額の 4% を初年度に取り崩し、以後は毎年インフレ率分だけ増額して取り崩しても、30 年間資産が尽きる可能性が低いという米国の経験則です。1994 年のウィリアム・ベンゲンの研究と、1998 年のトリニティ大学の研究(トリニティ・スタディ)が根拠で、米国株と米国債券を半々で持った過去のデータでは、4% の取り崩しで 30 年間資産が残った割合が 95% 以上でした。逆算すると「年間支出の 25 倍の資産があれば働かなくてよい」となり、FIRE(早期退職)の目標額の計算式として広まりました。この記事では、ルールの根拠と計算、日本で使うときの修正点、取り崩し開始直後の下落(順序リスク)への対処、米国株での実践をまとめます。
- 必要資産=年間支出 × 25。年 300 万円使うなら 7,500 万円。取り崩しは初年度 4%、翌年からインフレ調整
- 根拠は米国株 50〜75%+米国債券の 1926 年以降のデータ。日本株や現金中心では成り立たない
- 日本で使うなら税金(20.315%)・為替・期待リターンの低さを織り込み、3〜3.5% に下げるか、支出を調整する柔軟な取り崩しにする
4% ルールの根拠:トリニティ・スタディ
ベンゲンは 1926 年以降の米国株(S&P500)と米国中期国債のデータを使い、「どの 30 年間を切り取っても資産が尽きなかった最大の取り崩し率」を調べ、約 4% という答えを得ました。トリニティ・スタディはこれを株式・債券の比率別、期間別に整理しました。
| 資産配分 | 取り崩し率 3% | 4% | 5% | 6% |
|---|---|---|---|---|
| 株 100% | 100% | 98% | 85% | 75% 前後 |
| 株 75%・債券 25% | 100% | 100% | 87% | 68% 前後 |
| 株 50%・債券 50% | 100% | 96% | 76% | 50% 前後 |
| 債券 100% | 80% 前後 | 35% 前後 | 20% 前後 | 低い |
表の数字は「30 年後に資産が残っていた割合(成功率)」の目安です。株式の比率が高いほど、4% の取り崩しに耐えられることが分かります。債券だけでは 4% は無理で、株式の長期リターン(米国株は年平均 7% 前後の実質リターン)があってはじめて成り立つルールです。
「4%」は最悪の 30 年(1966 年に退職し、1970 年代のインフレと株安を経験した場合)でも尽きなかった率であり、多くの期間では資産はむしろ増えました。平均的な期間で見れば控えめな数字です。
必要資産の計算と、取り崩しの実際
4% ルールを逆算すると、必要な資産は「年間支出 ÷ 4% = 年間支出 × 25」です。
| 年間支出 | 必要資産(× 25) | 3.5% ルールなら(× 28.6) | 3% ルールなら(× 33.3) |
|---|---|---|---|
| 240 万円(月 20 万円) | 6,000 万円 | 約 6,860 万円 | 8,000 万円 |
| 360 万円(月 30 万円) | 9,000 万円 | 約 1 億 290 万円 | 1 億 2,000 万円 |
| 480 万円(月 40 万円) | 1 億 2,000 万円 | 約 1 億 3,710 万円 | 1 億 6,000 万円 |
取り崩しの手順は、初年度に資産の 4% を引き出し、2 年目以降は「前年の引き出し額 × (1 + インフレ率)」で増やします。資産が増えても減っても、引き出し額は初年度の額をインフレ調整するだけで、資産額の 4% を毎年計算し直すわけではありません。この点がよく誤解されます。
年金がある人は、年間支出から年金額を引いた「不足分」に 25 を掛けます。月 30 万円の支出で年金が月 15 万円なら、不足は年 180 万円で、必要資産は 4,500 万円です。
日本で使うときの 3 つの修正点
| 修正点 | 内容 | 対処 |
|---|---|---|
| 1. 税金 | 米国の研究は税引き前。日本では売却益と配当に 20.315% かかる | NISA を最大限使う。取り崩し率を 3.5% 程度に下げる |
| 2. 為替 | 米国株で運用し円で使うなら、円高局面で円換算の資産が目減りする | 数年分の生活費を円の現金・債券で持ち、円高時は取り崩しを減らす |
| 3. 期待リターン | 研究は米国株中心。日本株や全世界株は過去のリターンが低い | 米国株か全世界株を主体にする。日本株だけでは 4% は難しい |
もう 1 つ重要なのが順序リスク(シークエンス・リスク)です。取り崩しを始めた直後に大きな下落(2000 年・2008 年のような 40〜50% 安)が来ると、安値で売って生活費に充てることになり、その後の回復の恩恵を受けにくくなります。同じ平均リターンでも、下落が最初に来るか最後に来るかで 30 年後の資産は大きく違います。
対処は「柔軟な取り崩し」で、資産が 20% 以上減った年は引き出し額を 10% 減らす、逆に増えた年は増やす、というルールにすれば成功率は大きく上がります。米国の研究でも、固定の 4% より柔軟なルールのほうが成功率が高いと報告されています。
FIRE との関係と、米国株での実践
FIRE(Financial Independence, Retire Early)は「年間支出 × 25 の資産を作って早期退職する」考え方で、4% ルールがそのまま目標額の計算式になっています。ただし 30 代・40 代で退職する場合、取り崩し期間は 30 年ではなく 50〜60 年になるため、4% では成功率が下がり、3〜3.5% が安全圏とされます。
| 取り崩し期間 | 目安の取り崩し率 | 必要資産(年間支出に対して) |
|---|---|---|
| 30 年(65 歳退職) | 4% | 25 倍 |
| 40 年(55 歳退職) | 3.5% | 約 29 倍 |
| 50 年以上(45 歳以下で退職) | 3〜3.25% | 31〜33 倍 |
米国株で実践するなら、運用資産は VOO・VTI のような低コストの指数 ETF か国内の S&P500・全世界株の投資信託が基本で、取り崩し用に 2〜3 年分の生活費を円の現金か短期債で分けて持ちます。配当(年 1.2〜1.5%)を取り崩しの一部に充て、残りは売却で補います。高配当株だけで 4% を配当でまかなおうとすると銘柄が偏るので、指数 ETF + 売却の組み合わせが無難です。
指数 ETF の選び方は 米国 ETF の解説、配当の税金と手取りは 米国株の税金の全体像、円とドルの使い分けは 円貨決済と外貨決済の解説 をご覧ください。積み立ての基本は ドルコスト平均法の解説 にまとめています。
4% ルールに関するよくある質問
4% ルールは今でも通用しますか?
配当だけで 4% をまかなえば元本は減りませんか?
NISA で取り崩すときの注意点はありますか?
インフレ調整とは具体的にどうするのですか?
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執筆:佐々木優也(Pacific Stock 編集長・専業投資家歴20年)
根拠は William Bengen(1994 年、Journal of Financial Planning)と Cooley・Hubbard・Walz のトリニティ・スタディ(1998 年、2011 年更新)、成功率の表は同研究の 1926 年以降のデータにもとづく概算です。日本での修正点は日本の税制(2026 年 9 月時点)にもとづく当サイトの整理で、個別の資産設計は専門家に相談してください。 本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・証券会社の売買や口座開設を推奨するものではありません。当サイトは証券会社の口座開設等によりアフィリエイト報酬を得る場合がありますが、比較の順位や数値には影響しません。最終更新 2026-09-18。
