IPOとは、未上場だった企業が新たに株式を証券取引所に上場することです。上場前に投資家へ売り出される株を、一般にIPO株と呼びます。
IPO株が注目されるのは、上場初日につく初値が、購入価格(公募価格)を上回ることが多いためです。ただし全部が上がるわけではなく、2025年は約15%が公募価格を下回りました。
この記事では、なぜ初値が上がりやすいのかという仕組みから、申込の手順、当選確率を上げる方法、そして負けるパターンまで順番に解説します。
この記事でわかること
・2025年のIPO実績(社数・公募割れ率)
・申込から上場までの5ステップ
・当選確率を上げるために実際にできること
・公募割れしやすいIPOの見分け方
・初値売りとセカンダリ投資の違い
目次
IPOとは?まず結論から
IPO(読み方:あいぴーおー)
IPOは Initial Public Offering の略で、日本語では新規公開株、または新規株式公開といいます。それまで創業者や一部の投資家しか持てなかった株式が、取引所に上場して誰でも売買できるようになります。
上場にあたって、企業は新たに株式を発行したり(公募)、既存株主が持ち株を売り出したり(売出し)します。この株を上場前に買う権利が、抽選で個人投資家に配られます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 仮条件 | 公募価格を決めるための価格帯(例:1,800〜2,000円) |
| ブックビルディング | 需要申告。いくらで何株欲しいかを申し込む手続き |
| 公募価格 | 実際に購入する価格。当選者はこの値段で買う |
| 初値 | 上場日に最初についた株価 |
| 公募割れ | 初値が公募価格を下回ること |
個人投資家にとってのIPO投資とは、実質的に「公募価格で当選し、初値で売る」という短期の勝負です。当たれば利益、外れれば何も起きないという構造になっています。
なぜ初値は公募価格を上回りやすいのか
偶然ではなく、制度上そうなりやすい理由があります。
上場を確実に成功させるため、公募価格はやや低めに設定される傾向があります。売れ残るほうが企業にとっても引受証券会社にとっても打撃が大きいためです。
とくに小型のIPOでは、供給される株数が限られます。上場日には抽選に外れた人の買い注文が集中するため、需給が極端に偏ります。
既存株主の多くにはロックアップ(一定期間の売却制限)がかかっています。売り手が制限されている状態で買いが集まるため、初値は高くつきやすくなります。
この3つが重なるため、初値が公募価格を上回る確率は構造的に高くなります。ただし「高くなりやすい」であって「必ず高くなる」ではありません。相場全体が悪いときや、規模の大きいIPOでは公募割れが起きます。
【2025年実績】IPOは66社、公募割れは約15%
直近の実績を数字で確認しておきます。
| 市場 | 2025年の新規上場社数 |
|---|---|
| プライム市場 | 7社 |
| スタンダード市場 | 12社 |
| グロース市場 | 41社 |
| その他 | 6社 |
| 合計 | 66社 |
※ 出典:東京証券取引所調べ(2025年1〜12月)。2年連続の減少で、2013年以来の低水準です。
件数が減った背景には、グロース市場の株価が伸び悩んだことや、相場の先行き不透明感から上場を見送る企業が増えたことがあります。IPOの数は相場環境に連動します。
初値の結果はこうなりました。
| 初値の水準 | 割合 |
|---|---|
| 公募価格割れ | 約15% |
| 公募価格の1〜1.5倍 | 約62% |
| 1.5〜2倍 | 約12% |
| 2倍以上 | 約11% |
※ 2025年に上場した銘柄の集計(民間調査による。四捨五入のため合計は100%になりません)。
読み取れるのは、8割以上は公募価格以上で初値がつくが、大半は1.5倍未満に収まるということです。数倍になる銘柄は毎年ごく一部で、それを前提に資金計画を立てると外します。
申込から上場までの5ステップ
IPOを扱えるのは、その案件の引受証券会社だけです。承認が出てから口座開設を始めると間に合いません。
想定価格をもとに、実際の価格帯(仮条件)が決まります。想定価格より上振れた仮条件は、需要が強いサインと受け取られます。
需要申告の期間です。ここに参加しないと抽選対象になりません。価格は仮条件の上限で申し込むのが一般的です。
当選しても自動では買えません。期限内に購入の意思表示が必要です。ここを忘れて当選を無駄にする人が毎年います。
買い注文が多いと初日に値がつかず、翌日以降に持ち越されることがあります。売るなら成行で寄り付きに出すのが基本です。
上場承認から上場日までのスケジュール
IPOは日程がタイトです。全体像を把握しておかないと、口座開設が間に合いません。
| タイミング | 起きること | 投資家がすること |
|---|---|---|
| 上場の約1か月前 | 上場承認・想定価格の公表 | 引受証券会社を確認する |
| 上場の約2週間前 | 仮条件の決定 | 想定価格からの上振れ・下振れを見る |
| 仮条件決定の直後 | ブックビルディング期間 | 需要申告する(必須) |
| 上場の約1週間前 | 公募価格の決定・抽選 | 結果を確認する |
| 抽選の直後 | 購入申込期間 | 購入の申込をする(必須) |
| 上場日 | 初値がつく | 売るか持つかを判断する |
※ 日程は案件によって前後します。正確な日付は目論見書と各証券会社の案内で確認してください。
必須の手続きは2回あります。ブックビルディングへの参加と、当選後の購入申込です。どちらか片方でも抜けると買えません。
目論見書で必ず見る4項目
目論見書は分量が多いので、初値の判断に効く項目だけ拾えば十分です。
公募は会社に入る資金、売出しは既存株主に入る資金です。売出しの比率が高い案件は、既存株主の換金色が強いと受け取られることがあります。
調達した資金を何に使うかが書かれています。成長投資に充てるのか、借入金の返済に充てるのかで評価は変わります。
何日間か、そして株価が公募価格の何倍で解除されるかを確認します。解除条件の倍率は、上値の目安として意識されます。
VCが大量に保有している場合、ロックアップ解除後の売却圧力が読めます。保有比率と解除条件をセットで見てください。
証券会社の抽選方式は3タイプある
同じIPOでも、どの証券会社から応募するかで当たりやすさが変わります。配分ルールが違うためです。
| 方式 | 配分の決まり方 | 有利な人 |
|---|---|---|
| 完全平等抽選 | 1口座につき1票。資金量は関係ない | 資金が少ない人 |
| 申込株数比例 | 申し込んだ株数が多いほど当選確率が上がる | 資金が多い人 |
| 店頭配分・裁量配分 | 証券会社の判断で配分される | 取引実績が多い人 |
資金が限られているなら、完全平等抽選の比率が高い証券会社を優先するのが合理的です。申込株数比例の会社では、最低単元の応募だと当選確率がほとんど積み上がりません。
また、多くの証券会社は配分の一部を抽選、一部を裁量に分けています。抽選に回す比率は会社ごとに公表されているので、口座を作る前に確認しておく価値があります。
当選確率を上げるためにできること
抽選である以上、確実な方法はありません。それでも確率を動かせる要素はあります。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 口座を複数持つ | 同じ案件でも引受証券会社ごとに抽選がある。単純に応募口数が増える |
| 完全平等抽選の会社を優先する | 1口座1票の抽選なら、資金量に関係なく確率が同じ |
| 前受金が不要な会社も押さえる | 資金を拘束されずに応募できるため、同時期の案件に幅広く出せる |
| 主幹事の証券会社は必ず押さえる | 配分株数が最も多く、当選本数そのものが多い |
| 人気の低い案件にも応募する | 応募者が少ない分、当たりやすい。ただし公募割れリスクは上がる |
最も効くのは主幹事証券の口座を持っておくことです。主幹事は配分される株数が突出して多いため、当選本数の絶対数が違います。上場承認時のプレスリリースで主幹事は確認できます。
IPOのデメリットとリスク
2025年は約15%が公募価格を下回りました。当選=利益確定ではありません。とくに規模の大きいIPOや、相場全体が弱い時期の上場は注意が必要です。
過去の株価が存在しないため、適正価格の目安がありません。初値をつけたあと数日で半値になることもあります。
既存株主の売却制限は、期間の経過や株価が公募価格の一定倍数に達した時点で解除されます。解除条件は目論見書に書かれています。解除後にまとまった売りが出ることがあります。
証券会社によっては、当選後に購入しないと一定期間IPOの抽選対象外になるなどの取扱いがあります。応募前に条件を確認してください。
前受金が必要な証券会社では、応募時点で購入代金相当の資金が拘束されます。複数社に応募すると、その分の現金を用意しておく必要があります。
公募割れしやすいIPOの見分け方
完全には読めませんが、傾向として警戒すべき条件があります。
| 確認項目 | 初値が上がりやすい | 公募割れしやすい |
|---|---|---|
| 吸収金額 | 小さい | 大きい |
| 市場区分 | グロース市場 | プライム市場の大型案件 |
| 仮条件の決まり方 | 想定価格より上振れ | 想定価格より下振れ |
| 同日上場の件数 | その日は1社だけ | 同日に複数社が集中 |
| 事業内容 | 成長テーマに合致 | 成熟産業・親会社からの分離上場 |
最も重要なのは吸収金額です。吸収金額とは、そのIPOで市場から吸い上げる資金の総額のことです。数十億円を超える案件では、初値が跳ねにくくなります。12月など上場が集中する時期も、資金が分散するため注意が必要です。
初値売りとセカンダリ投資の違い
IPO関連の投資は、大きく2つに分かれます。
当選できなかったIPOを初値で買うのは、まったく別の投資です
初値売りは、公募価格という有利な価格で買えることが利益の源泉です。一方セカンダリは、すでに需給で吊り上がった価格から入ります。同じ銘柄でも、勝ちやすさはまったく違います。
セカンダリで入るなら、損切りの水準を先に決めておくことが前提になります。上場直後は値幅制限の特例もあり、想定以上に大きく動きます。
IPOに関するよくある質問
まとめ
IPOは、公募価格という有利な価格で買える点に価値があります。当選することが利益の源泉であり、当選後の判断はその次の話です。
この記事のまとめ
・2025年のIPOは66社、公募割れは約15%
・8割以上は公募価格以上だが、大半は1.5倍未満
・主幹事証券の口座を持つことが最も効く
・吸収金額が大きい案件は初値が跳ねにくい
・当選後の購入申込を忘れると権利が消える
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