委託保証金率とは、信用取引の建玉に対して、どれだけの担保を差し入れているかを示す割合のことです。

信用取引の話には「30万円」「30%」「20%」という数字が次々と出てきます。この3つはまったく別のものですが、混同している人が非常に多くいます。

この記事では、まずその区別から始めます。ここが分かれば、追証の話も一気に理解できるようになります。

この記事でわかること

・「30万円」「30%」「20%」の3つの違い
・委託保証金率の計算方法
・レバレッジが約3.3倍になる理由
・いくら建てるにはいくら必要かの逆算
・増担保規制で率が引き上げられる仕組み

委託保証金率とは

信用取引では、証券会社に担保(委託保証金)を預けて、その何倍かの取引を行います。

計算式
委託保証金率(%) = 委託保証金 ÷ 建玉の金額 × 100

100万円の担保で300万円の建玉を持てば、委託保証金率は約33%です。この率が高いほど安全、低いほど危険という、シンプルな関係になっています。

3つの数字を区別する

ここがこの記事の核心です。信用取引で出てくる数字を、性質ごとに整理します。

名称 水準 いつ効くか
最低委託保証金 30万円 金額の下限。これがないと信用取引を始められない
委託保証金率 30%以上 新規に建てるときに必要な率
委託保証金維持率 20%程度 建てた後に維持すべき率。下回ると追証

※ 法令および各証券会社の規定に基づく一般的な水準です。維持率は証券会社によって20%より高く設定されている場合があります。

30%
入るときの条件
新しく建玉を作るには
この率が必要
20%
出されるときの線
これを割ると
追証が発生する

30%で入り、20%を割ると追い出される

30%と20%の間には10ポイントしか余裕がありません。ぎりぎりで建てると、少しの下落で追証の水準に到達します。

レバレッジは約3.3倍

委託保証金率30%から、使えるレバレッジが逆算できます。

1 ÷ 0.30 = 約3.33
→ 担保の約3.3倍まで建玉を持てる
委託保証金率 レバレッジ 状態
30% 約3.3倍 制度上の上限いっぱい。余裕がない
40% 2.5倍 やや余裕がある
50% 2倍 現実的な運用水準
100% 1倍 現物と同じ。レバレッジなし

「制度上3.3倍まで使える」ことと「3.3倍まで使うべき」ことは別です。上限で建てると、10%程度の下落で追証の水準に届きます。

いくら建てるにはいくら必要か

逆算の表を用意しました。建てたい金額から、必要な保証金がわかります。

建てたい金額 最低限必要
率30%
推奨
率50%
100万円 30万円 50万円
300万円 90万円 150万円
500万円 150万円 250万円
1,000万円 300万円 500万円

※ 手数料・金利等を考慮しない簡易な計算です。最低委託保証金30万円の条件も別途満たす必要があります。

建てた後は「維持率」で見る

建玉を持った後は、計算する数字が変わります。

維持率の計算
(委託保証金 - 評価損)÷ 建玉の金額 × 100

※ 評価損だけでなく、諸経費が差し引かれる場合もあります

ポイントは分子から評価損が引かれることです。株価が下がった瞬間から、担保は目減りしていきます。

状況 保証金 建玉 維持率
建てた直後 100万円 300万円 33.3%
10%下落(-30万円) 70万円 300万円 23.3%
14%下落(-42万円) 58万円 300万円 19.3% → 追証

レバレッジ3倍で建てると、14%の下落で追証に届きます。個別銘柄の値幅制限を考えれば、1〜2日で到達しうる水準です。追証が発生した後の対応は追証とはで解説しています。

現金と代用有価証券で意味が変わる

担保の種類 評価 下落時
現金 額面どおり100% 担保自体は減らない
代用有価証券 時価×掛目(株式は80%) 担保も一緒に減る

同じ「委託保証金率50%」でも、中身が現金か株式かで安全度はまったく違います。株式で担保を構成している場合は、より高い率で運用する必要があります。

増担保規制で率が引き上げられる

委託保証金率は固定ではありません。取引所や証券会社の判断で引き上げられることがあります。

増担保規制の第一次措置
委託保証金率 50%以上(うち現金 20%以上
→ 通常の30%から大幅に引き上げられる

すでに建てている人も、追加の担保が必要になる場合があります。

※ 出典:東京証券取引所「委託保証金率引上げ措置ガイドライン」。段階的に強化され、第四次では新規建てが禁止されます。

株価が急騰して信用買いが膨らんだ銘柄に適用されます。「現金で20%以上」という条件が付くため、代用有価証券だけで運用していると対応できません。詳しくは増担保規制で解説しています。

維持率が下がる4つの原因

株価の下落だけが原因ではありません。知らないうちに率が下がっていることがあります。

① 建玉に評価損が出る

最も分かりやすい原因です。買い建てなら株価が下がったとき、売り建てなら株価が上がったときに評価損が発生し、分子が減ります。

② 担保にしている株が下がる

代用有価証券を使っている場合です。建玉が無事でも、担保株が下がるだけで維持率は低下します。相場全体が下げる局面では①と同時に起こります。

③ 掛目が引き下げられる

担保株の掛目が80%から60%に下がれば、株価が動いていなくても担保価値が減ります。証券会社からの通知を見落としがちな部分です。

④ 諸経費が積み上がる

金利、貸株料、逆日歩などが保証金から差し引かれます。建玉を長く持つほど、じわじわと維持率を押し下げます。

①だけを見て「今日は下がっていないから大丈夫」と考えるのは危険です。維持率は証券会社の画面に常時表示されているので、数字そのものを確認する習慣を持ってください。

制度信用と一般信用で違いはあるか

信用取引には2つの種類がありますが、委託保証金率の考え方そのものは同じです。

項目 制度信用取引 一般信用取引
委託保証金率 30%以上 30%以上(同じ)
返済期限 原則6か月 証券会社が定める(無期限もある)
逆日歩 発生しうる 発生しない
増担保規制 取引所の措置の対象 証券会社の判断による

ただし一般信用は金利が高めに設定されていることが多く、諸経費による維持率の低下は速くなります。長期で持つほど、この差が効いてきます。2つの違いは信用取引とはで整理しています。

証券会社ごとに条件が違う

項目 確認すべきこと
維持率の基準 20%より高く設定している会社がある(25%・30%など)
判定のタイミング 終値ベースが一般的だが、日中に判定する会社もある
追証の期限 翌営業日か翌々営業日か、時刻は何時か
代用掛目 銘柄ごとに個別設定されている場合がある
諸経費の扱い 金利・貸株料・逆日歩が保証金から差し引かれるか

「一般的にはこう」という知識だけで運用しないでください。自分が使っている証券会社の規定を、口座開設時に一度は通して読んでおく価値があります。

率に余裕を持つための考え方

① 建てる前に「何%下がったら追証か」を計算する

維持率20%に到達する下落率を、注文前に把握しておきます。その水準が値幅制限の範囲内なら、1日で到達しうるということです。

② 現金を一定割合入れておく

代用有価証券だけだと、下落時に担保も減ります。増担保規制で「現金20%以上」を求められる場面にも備えられます。

③ 大引け前に維持率を確認する習慣を持つ

判定は終値ベースが一般的です。引け前に見ておけば、その日のうちに建玉を減らす判断ができます。

※ 本記事は制度の一般的な解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。具体的な条件は各証券会社にご確認ください。

委託保証金率に関するよくある質問

30%と20%は何が違うのですか?
30%は新規に建玉を作るときに必要な委託保証金率、20%は建てた後に維持すべき委託保証金維持率です。30%で入って20%を割ると追証になります。入口と退場ラインだと考えてください。
最低委託保証金30万円とは何ですか?
信用取引を行うために必要な保証金の金額の下限です。率とは別の条件で、たとえ率が30%を満たしていても、金額が30万円に満たなければ新規建てはできません。
レバレッジは何倍まで使えますか?
委託保証金率30%から逆算して約3.3倍です。ただし上限まで使うと、10%程度の下落で追証の水準に届きます。実務的には2倍程度に抑えるほうが安全です。
維持率はどうやって計算しますか?
(委託保証金-評価損)÷建玉の金額×100で計算します。評価損が分子から差し引かれるため、株価が下がると急速に低下します。証券会社の取引画面でも常時表示されています。
委託保証金率が引き上げられることはありますか?
あります。信用買いが過熱した銘柄には増担保規制がかかり、第一次措置では委託保証金率が50%以上(うち現金20%以上)に引き上げられます。すでに建てている分にも影響することがあります。
代用有価証券だけで保証金を用意してもいいですか?
制度上は可能ですが、おすすめしません。下落時に担保価値も減るため維持率の低下が速くなり、増担保規制で現金が必要になった場合にも対応できません。一定割合は現金で持ってください。
維持率の基準はどの証券会社も20%ですか?
違います。20%より高い基準を設けている会社もあります。判定のタイミングや追証の期限も各社で異なるため、必ず自分が使っている証券会社の規定を確認してください。
安全な委託保証金率はどのくらいですか?
明確な正解はありませんが、50%前後(レバレッジ2倍)なら30%の下落まで追証になりません。値動きの荒い銘柄を扱うなら、さらに高い率で運用することをおすすめします。

まとめ

委託保証金率は、信用取引の安全度をひとつの数字で表したものです。「30%で入って20%で出される」という構造を押さえれば、追証も増担保規制も同じ物差しで理解できます。

この記事のまとめ

・委託保証金率=委託保証金÷建玉×100
・最低委託保証金30万円(金額)と率30%は別の条件
・建てた後は維持率20%を割ると追証
・率30%=レバレッジ約3.3倍。上限で建てると10%の下落で危険
・維持率は(保証金-評価損)÷建玉で計算する
・増担保規制で率が50%(現金20%)に引き上げられることがある
・維持率の基準や期限は証券会社ごとに違う

あわせて読みたい:信用取引とは追証とは代用有価証券とは増担保規制とは

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