お化粧買いとは、決算期末に機関投資家などが保有銘柄を買い増し、株価を高くして運用成績を良く見せようとする行為のことです。

ドレッシング買い、期末のドレッシングとも呼ばれます。

ただし、この記事で最も伝えたいのは別の点です。お化粧買いは、やりすぎると相場操縦として違法になります。実際に大手証券会社が摘発された例があります。

この記事でわかること

・お化粧買いの意味と、誰がなぜ行うのか
・どの時期に起きるとされるか
・相場操縦との境界線はどこにあるか
・実際に摘発された事例
・現在は本当に行われているのか
・期末に株価が動く「お化粧買い以外」の理由
・3月末・9月末に実際に起きていること
・個人投資家がどう向き合うべきか

お化粧買いとは

お化粧買い(読み方:おけしょうがい)は、運用成績の見栄えを良くするための買いを指す俗語です。

項目 内容
別名 ドレッシング買い/期末のドレッシング
行う主体 機関投資家(投資信託・年金・生保など)とされる
目的 決算期末の評価額を高くして、運用成績を良く見せる
時期 3月末・9月末(日本の決算期末)が中心
対象 すでに保有している銘柄。買い増して株価を上げる
法的な位置づけ 程度によっては相場操縦にあたる

なぜ「お化粧」なのか。実態は変わっていないのに、見え方だけを良くするからです。

なぜ期末に株価を上げたいのか

機関投資家の立場に立つと、動機がはっきりします。

評価額が決まる仕組み

・運用成績は「期末時点の評価額」で計算される
・評価額は 保有株数 × 期末の株価 で決まる
・株数は変えられないが、株価は買い注文で押し上げられる

→ 期末の1日だけ株価が高ければ、その期の成績表が良くなる
→ 運用報酬や次の資金流入にも影響しうる

ただし、これは翌営業日には元に戻ります。買い支えをやめれば株価は下がるため、実質的には何も生んでいません。

だからこそ「お化粧」であり、だからこそ問題視されます。

相場操縦との境界線

この記事で最も重要な章です。

金融商品取引法159条は、取引によって人為的に株価を動かす行為を禁じています。これが相場操縦です。

行為 評価
投資判断として、期末に買い増した 通常の取引
期末の大引け前に、成績のために買いを入れた グレー。意図が問われる
株価を一定水準に維持する目的で買い支えた 相場操縦に該当しうる
売買が繁盛と誤解させる注文を出した 明確に違法

分かれ目は「なぜ買ったか」という目的です。同じ買い注文でも、投資判断なのか価格操作なのかで扱いが変わります。

そして目的は、社内のやりとりや発注のパターンから証明されうるものです。

実際に摘発された事例

「理屈のうえでは違法」という話ではありません。大手証券会社が実際に処分を受けています。

時期 出来事
2022年3月・4月 東京地検が金融商品取引法違反(相場操縦)で起訴
2022年10月7日 金融庁が一部業務停止命令(〜2023年1月6日の3か月)
相場操縦を理由とする業務停止命令は大手証券で初
2023年2月13日 法人として罰金7億円+追徴金約44億円の判決
2025年7月22日 元副社長ら5人に有罪判決(いずれも執行猶予付き)

この事件の構図

・舞台はブロックオファー(大株主の保有株を市場外で売りさばく取引)
・売出価格は直前の市場価格を基準に決まる
その価格が下がらないよう、市場で買い支えたとされた

→ 期末のお化粧買いとは場面が違うが、「特定の価格を維持するために買う」という構造は同じ
→ 詳しくは SMBC日興証券の評判|相場操縦事件のその後

東京地裁は「社内風土や組織自体が違法な相場操縦を許容していた」と指摘しました。個人の暴走ではなく、組織の問題と認定されています。

現在も本当に行われているのか

結論から言えば、露骨なお化粧買いは、現在ほとんど行われていないと考えるべきです。

理由 内容
売買審査が強化された 取引所と証券会社の双方で、不自然な注文を検知する仕組みがある
摘発のリスクが大きすぎる 業務停止命令は事業そのものを止める
市場規模が大きい 主力銘柄の株価を1社で動かすのは資金量的に難しい
運用の評価軸が変わった 1日の株価より、長期の運用成績で評価される傾向が強まっている

したがって「期末だから上がるはず」と考えて売買するのは危険です。その前提自体が、現在の市場では成り立ちにくくなっています。

それでも期末に株価が動くのは事実です。ただし理由は別のところにあります。

期末に株価が動く本当の理由

お化粧買い以外に、期末には実際の需給要因が複数重なります。

要因 内容 方向
配当・優待の権利取り 権利付最終売買日まで買われる 上げ
権利落ち 翌営業日に、配当分だけ理論的に下がる 下げ
指数の定期入替 インデックスファンドが機械的に売買する 銘柄による
リバランス 年度をまたぐ前に資産配分を戻す 両方向
益出し・損出し 税金や決算対策で、利益や損失を確定させる 両方向

これらはすべて、隠す必要のない正当な取引です。そしてお化粧買いよりはるかに大きな金額が動きます。

「期末に株価が動いた」ときは、まずこの5つを疑ってください。

権利付最終売買日の仕組み

期末の値動きで最も分かりやすいのが、配当の権利取りです。

いつまでに買えば配当をもらえるか

権利付最終売買日 = 権利確定日の2営業日前
・この日の大引けまでに保有していれば、配当や優待の権利を得られる
翌営業日が「権利落ち日」。理論上、配当分だけ株価が下がる

・⚠️ 2019年7月16日の決済期間短縮(T+2化)により、
 それ以前の「3営業日前」から変更されている。古い解説に注意

権利落ちによる下落は、お化粧買いの反動ではありません。配当を受け取る権利がなくなった分、株価が調整されているだけです。

配当の水準は配当性向とは、銘柄の選び方は高配当株の選び方で扱っています。

個人投資家がやるべきこと

やること 理由
「期末だから上がる」で買わない お化粧買いを前提にした売買は、現在の市場では根拠が薄い
権利付最終売買日を確認する 制度として確実に起きる需給。カレンダーで分かる
権利落ちの下落に驚かない 配当分の調整であり、業績とは無関係
指数の入替情報を見る 対象銘柄には大きな売買が発生する
長期の積立は何もしない 数日の値動きは、長期の成果にほとんど影響しない

2行目と4行目は、確実に起きる需給なので予定として使えます。お化粧買いのような不確かなものより、制度が根拠のイベントに注目するほうが実用的です。

季節性の扱い方はアノマリーとはで詳しく扱っています。

逆の現象「お化粧売り」はあるか

現象 内容
損出し 含み損の銘柄を売って損失を確定させ、利益と相殺して税負担を減らす
ウィンドウ・ドレッシング(売り側) 成績の悪い銘柄を期末前に売却し、保有一覧から消す

2行目は、株価を動かす目的ではなく「保有銘柄リストを見栄えよくする」行為です。

運用報告書には期末時点の保有銘柄が並びます。不振の銘柄を持っていると説明を求められるため、期末前に処分するという行動が生まれます。

ただしこれも、露骨に行えば受益者の利益を損なう行為であり、投資信託を選ぶ側としては注意して見るべき点です。

お化粧買いに関するよくある質問

お化粧買いとは何ですか?
決算期末に機関投資家などが保有銘柄を買い増し、期末時点の株価を高くして運用成績を良く見せようとする行為です。ドレッシング買いとも呼ばれます。運用成績は「保有株数×期末の株価」で計算されるため、期末の1日だけ株価が高ければその期の成績表が良くなります。ただし買い支えをやめれば株価は戻るため、実質的には何も生んでいません。
お化粧買いは違法ですか?
程度によります。投資判断として期末に買い増すこと自体は通常の取引ですが、株価を一定水準に維持する目的で買い支えたり、売買が繁盛していると誤解させる注文を出したりすれば、金融商品取引法159条の相場操縦に該当しえます。分かれ目は「なぜ買ったか」という目的であり、社内のやりとりや発注のパターンから証明されうるものです。
実際に摘発された例はありますか?
あります。SMBC日興証券は2022年に相場操縦で起訴され、同年10月7日から2023年1月6日まで3か月間の一部業務停止命令を受けました。相場操縦を理由とする業務停止命令は大手証券会社で初めてです。2023年2月には法人として罰金7億円と追徴金約44億円の判決、2025年7月には元副社長ら5人に執行猶予付きの有罪判決が出ています。
いまもお化粧買いは行われているのですか?
露骨なものはほとんど行われていないと考えるべきです。取引所と証券会社の双方で不自然な注文を検知する売買審査が強化されており、業務停止命令は事業そのものを止めるためリスクが大きすぎます。また主力銘柄の株価を1社で動かすのは資金量的に難しく、運用の評価軸も1日の株価より長期の成績を重視する方向に変わっています。
では期末に株価が動くのはなぜですか?
お化粧買い以外の実際の需給要因が重なるためです。配当や優待の権利取りによる買い、権利落ちによる下落、指数の定期入替に伴うインデックスファンドの機械的な売買、年度をまたぐ前のリバランス、税金や決算対策の益出し・損出しです。いずれも隠す必要のない正当な取引で、お化粧買いよりはるかに大きな金額が動きます。
権利付最終売買日はいつですか?
権利確定日の2営業日前です。この日の大引けまで保有していれば配当や優待の権利を得られ、翌営業日が権利落ち日となって理論上は配当分だけ株価が下がります。なお2019年7月16日の決済期間短縮(T+2化)により、それ以前の「3営業日前」から変更されています。古い解説には旧ルールのまま書かれているものがあるため注意してください。
期末を狙って売買してもよいですか?
お化粧買いを前提にした売買はおすすめできません。現在の市場ではその前提自体が成り立ちにくくなっています。一方、権利付最終売買日や指数の定期入替は制度として確実に起きる需給であり、カレンダーで事前に分かります。不確かなものより、制度が根拠のイベントに注目するほうが実用的です。長期の積立をしている場合は、数日の値動きに反応する必要はありません。
逆に「お化粧売り」もあるのですか?
似た行動として2つあります。ひとつは損出しで、含み損の銘柄を売って損失を確定させ、利益と相殺して税負担を減らすものです。もうひとつは、成績の悪い銘柄を期末前に売却して保有一覧から消す行為です。運用報告書には期末時点の保有銘柄が並ぶため、不振銘柄を持っていると説明を求められることが背景にあります。露骨に行えば受益者の利益を損なうため、投資信託を選ぶ際に注意して見るべき点です。

まとめ

お化粧買いは「実態を変えずに見え方だけを変える行為」であり、だからこそ規制の対象になります。

この記事のまとめ

・決算期末に保有銘柄を買い増し、評価額を高く見せようとする行為
・運用成績は「保有株数 × 期末の株価」で決まるため動機が生まれる
・買い支えをやめれば戻るので、実質的には何も生んでいない
・🔴 やりすぎると金融商品取引法159条の相場操縦にあたる
・🔴 SMBC日興証券は2022年10月に3か月の一部業務停止命令(大手証券で初)
・法人として罰金7億円+追徴金約44億円。2025年に元役員5人へ有罪判決
・🔵 現在は監視が厳しく、露骨なお化粧買いは起きにくい
・期末の値動きは、権利取り・権利落ち・指数入替・リバランス・損出しが主因
・権利付最終売買日は権利確定日の2営業日前(2019年7月にT+2化)
・「期末だから上がる」で売買しない。制度が根拠の需給に注目する

※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や投資判断を推奨するものではありません。法令の適用は個別の事案によって判断されます。

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