
金利が上がると株価が下がるのは、株を持つ理由が相対的に弱くなるからです。理由は大きく3つに分けられます。
①将来の利益の価値が目減りする、②企業の利益そのものが減る、③資金が株から債券へ移る。この3つが同時に効きます。
とくに①は数字で示せます。長期金利が1%上がるだけで、理論株価は20%下がる計算になります。成長期待の高い銘柄なら30%を超えます。この記事では、その計算を実際に追いかけます。
この記事でわかること
・金利が1%上がると理論株価が何%下がるかの計算
・グロース株ほど大きく下がる理由
・金利上昇でむしろ買われるセクター
・株が割高かどうかを金利と比べて測る方法
・利上げ局面のどこにいるかで株価の反応が変わる理由
目次
金利が上がるとなぜ株価が下がるのか
利上げ(読み方:りあげ)
利上げとは、中央銀行が政策金利を引き上げることです。景気の過熱や物価上昇を抑えるために行われます。
日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%から引き上げ、政策金利は1.0%程度となっています(出典:日本銀行 金融政策決定会合)。金利のある世界に戻ったことで、株価の評価の仕方も変わりました。
金利上昇が株価に効く経路は3つあります。
3つは別々の仕組み。順番に見ていけば混乱しない
経路①:割引率が上がって理論株価が下がる
これが最も本質的で、しかも利上げの発表直後に株価がすぐ動く理由でもあります。
株価は本来、その会社が将来生み出すお金を「今の価値」に直したものです。将来のお金を今の価値に直すことを割引といい、そのときに使う利率を割引率といいます。
理論株価の基本式
期待利回り = 長期金利 + リスクプレミアム
※ リスクプレミアム=株式は債券より値動きが大きいので上乗せされる分
ここで重要なのは、式の中に長期金利が入っていることです。金利が上がれば期待利回りが上がり、割る数が大きくなるので理論株価は下がります。
実際に計算します。1株あたり配当100円、リスクプレミアム4%、成長率1%の会社で見てみます。
| 長期金利 | 期待利回り | 計算 | 理論株価 |
|---|---|---|---|
| 1% | 5% | 100 ÷(5%−1%) | 2,500円 |
| 2% | 6% | 100 ÷(6%−1%) | 2,000円(−20%) |
| 3% | 7% | 100 ÷(7%−1%) | 1,667円(−33%) |
金利が1%上がっただけで、理論株価は20%下がりました。配当も業績も1円も変わっていないのに、です。
これが「業績は好調なのに金利上昇で株が売られる」現象の正体です。会社の中身ではなく、評価に使う物差しのほうが変わっています。
経路②:企業の利益そのものが減る
2つ目は、もっと分かりやすい経路です。金利が上がると企業の負担が実際に増えます。
経路①が即座に効くのに対し、経路②は数か月から1年以上かけてじわじわ効きます。利上げから景気減速まで時間差があるのはこのためです。
借入の多さは財務レバレッジで確認できます。自己資本に対して負債が大きい企業ほど、金利上昇の打撃を受けやすくなります。
経路③:資金が株から債券へ移る
3つ目は需給の話です。金利が上がると、株を買わなくても十分なリターンが得られるようになります。
| 選択肢 | 金利が低いとき | 金利が高いとき |
|---|---|---|
| 預金・債券 | ほとんど増えない | 安全に一定の利回り |
| 株式 | ほかに選択肢がない | リスクを取る理由が弱まる |
金利がほぼゼロの時代には「預金しても増えないから株を買う」という資金がありました。この動きが逆回転します。
ただし注意点があります。金利が上がる局面では、すでに持っている債券の価格は下がります。新しく買う債券は有利ですが、保有中の債券は含み損になります。仕組みは債券で解説しています。
グロース株ほど大きく下がる理由
金利上昇のとき、すべての株が同じだけ下がるわけではありません。成長期待が高い銘柄ほど大きく下がります。
理由は経路①の計算式にあります。成長率が高いほど、分母(期待利回り − 成長率)が小さくなり、金利上昇の影響が増幅されるのです。
| タイプ | 成長率 | 金利1%のとき | 金利2%のとき | 下落率 |
|---|---|---|---|---|
| 成熟企業 | 1% | 2,500円 | 2,000円 | −20% |
| 中成長企業 | 2% | 3,333円 | 2,500円 | −25% |
| 高成長企業 | 3% | 5,000円 | 3,333円 | −33% |
※ 1株あたり配当100円、リスクプレミアム4%として計算。実際の株価はこれ以外の要因でも動きます。
同じ1%の金利上昇でも、成長期待が高い銘柄では下落率が20%から33%へ拡大しました。利益の大半が遠い将来にある会社ほど、割引の影響を強く受けるためです。
高PER銘柄が金利上昇に弱いといわれるのは、この構造によります。PERの水準そのものの見方はPERで扱っています。
金利上昇でむしろ買われる株もある
ここまで下がる話ばかりでしたが、金利上昇が追い風になる業種もあります。「利上げ=全面安」ではありません。
| 業種 | 方向 | 理由 |
|---|---|---|
| 銀行 | 追い風 | 貸出金利と預金金利の差(利ざや)が広がる |
| 保険 | 追い風 | 預かった資金の運用利回りが改善する |
| 不動産・REIT | 向かい風 | 借入で物件を持つため利払いが増える |
| 高PERの成長株 | 向かい風 | 将来利益の割引が強く効く |
| 高配当・ディフェンシブ | 向かい風 | 債券の代わりに買われていた分が逆流する |
最後の行は見落とされがちです。金利がゼロの時代、高配当株は「利回りのある債券の代わり」として買われていました。債券に利回りが戻ると、その役割を終えて資金が抜けます。
配当利回りで銘柄を選んでいる場合は、この点を意識しておく必要があります。配当利回りランキングで水準を確認するときも、金利と比べる視点を持っておくと判断を誤りにくくなります。
株が割高かどうかを金利と比べて測る
「金利が上がったから株は割高」と感覚で言うのではなく、数字で比べる方法があります。株式益回りと長期金利の差(イールドスプレッド)です。
株式益回りとイールドスプレッド
株式益回りは「その株を買ったら、株価に対して何%の利益が返ってくるか」を表します。PERの逆数で、分子になるのはEPS(1株あたり利益)です。
| PER | 株式益回り | 長期金利1%との差 | 長期金利3%との差 |
|---|---|---|---|
| 12倍 | 8.3% | 7.3pt | 5.3pt |
| 15倍 | 6.7% | 5.7pt | 3.7pt |
| 25倍 | 4.0% | 3.0pt | 1.0pt |
| 30倍 | 3.3% | 2.3pt | 0.3pt |
表の右下を見てください。長期金利が3%のとき、PER30倍の株を買っても、国債とほとんど変わらない利回りしか期待できません。それでいて株価変動のリスクは負います。
これが「金利が上がると高PER株が売られる」ことを数字で表したものです。金利水準が変われば、許容されるPERの上限も変わります。
利上げ局面のどこにいるかで反応が変わる
ここまでの説明と矛盾するようですが、利上げが始まっても、しばらくは株価が上がることがあります。
利上げは景気が良いから行われるものだからです。局面を分けて整理します。
| 局面 | 市場が重視するもの | 株価の傾向 |
|---|---|---|
| 利上げの初期 | 足元の景気回復と業績の伸び | 上昇しやすい |
| 利上げの中期 | 業績と金利負担がせめぎ合う | 方向感が出にくい |
| 利上げの終盤 | 景気後退への懸念 | 下落しやすい |
| 想定を超える利上げ | 織り込んでいなかった分 | 急落しやすい |
最後の行が重要です。市場は「利上げそのもの」ではなく「想定との差」に反応します。0.25%の利上げが予想されていて、そのとおりなら株価はほとんど動きません。0.5%だった場合に急落します。
想定外の材料が出たときの値動きはギャップダウンとして翌朝の寄付に表れます。
為替を通じた影響
金利は為替も動かし、そこからさらに株価に跳ね返ります。
同じ「利上げ」でも、どこの国かで日本株への効き方が逆になる
日本の利上げは円高要因となり、海外売上比率の高い企業の業績にはマイナスに働きます。一方で輸入コストは下がるため、内需企業には追い風になります。
ただし為替は金利だけで決まるものではありません。貿易収支、地政学リスク、投機的な資金の動きなど、複数の要因が絡みます。「利上げしたから必ず円高」とはなりません。
個人投資家がやるべきこと・避けるべきこと
金利上昇局面での確認事項
・保有銘柄の有利子負債を確認する(利払い負担が増える)
・海外売上比率を確認する(為替の影響を受ける)
・高配当株を「債券の代わり」として買っていないか見直す
・信用取引の金利も上がることを織り込む
避けるべきなのは、「利上げ=株安」と決めつけて一斉に売ることです。局面によっては上昇し、業種によっては買われます。
また、金利の方向を当てにいく取引も現実的ではありません。プロでも予測は外れます。できるのは「金利が上がったときに自分の保有銘柄がどう反応しやすいか」を事前に把握しておくことです。
下落局面での損失を限定する考え方は損切りで扱っています。長期で保有するなら、値動きに一喜一憂せずNISAの非課税枠を使って配当を受け取り続けるという選択もあります。
なお、金利が上がる局面では企業側の行動も変わります。借入で資金を調達しにくくなるため、手元資金を使った自社株買いに慎重になる企業も出てきます。株主還元の姿勢が変わっていないか、決算説明資料で確認しておくとよいでしょう。
※ 本記事は金利と株価の関係を解説したもので、特定の銘柄の売買や投資判断を推奨するものではありません。記載した計算例は仕組みを説明するための単純化したモデルであり、実際の株価はこれ以外の多くの要因で変動します。金利や政策の内容は変更されることがあるため、最新の情報は日本銀行および各金融機関の公表資料をご確認ください。投資はご自身の判断と責任において行ってください。
金利と株価に関してよくある質問
まとめ
この記事のまとめ
・長期金利が1%上がると、理論株価は20%下がる計算になる(業績は不変でも)
・成長期待が高い銘柄ほど下落率が大きい(同じ条件で33%)
・銀行・保険は追い風、不動産・REIT・高PER・高配当株は向かい風
・株式益回り − 長期金利(イールドスプレッド)で割高・割安を測れる
・市場は利上げそのものではなく「想定との差」に反応する
金利のニュースを見たときは、「上がったか下がったか」ではなく「事前の想定と比べてどうだったか」を確認してください。そのうえで、自分の保有銘柄がPERと負債の面でどちらに寄っているかを見れば、反応の方向が読めます。










