円高・円安は株価にどう影響する?2026年は逆に動いています

円安なら株高、円高なら株安。この関係は平均的には成り立ちますが、2026年は逆に動いています。

ドル円と日経平均の日々の変化率から、年ごとの相関係数を計算しました。数字が大きいほど「円安=株高」が強く、マイナスなら逆の動きです。

相関係数 連動の強さ
2019年 +0.537 最も強く連動した年
2024年 +0.345 そこそこ連動
2022年 −0.021 連動が消えた
2026年 −0.192 逆に動いている

2026年は「円安だから株が上がる」が通用していません。

そして実際、2026年の日経平均は+27.6%と大きく上昇していますが、ドル円はほぼ横ばい(+1.4%)です。為替で説明できない上昇が起きています。この記事では、関係が成り立つ場面と崩れる場面を分けて整理します。

この記事でわかること

年別の相関係数(独自集計)。2026年はマイナス
円安の日と円高の日で日経平均がどう違ったか(独自集計)
・為替が株価に伝わる3つの経路
想定為替レートという、決算で必ず見る数字
・為替の影響を受けやすい業種・受けにくい業種
・連動が崩れるのはどういうときか
・ドル円の水準の歴史(2020年以降の最円安・最円高)

※ この記事はデータと仕組みの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。

円高・円安とは

用語 意味 数字の動き
円安 円の価値が下がること 150円 → 160円(数字は上がる
円高 円の価値が上がること 150円 → 140円(数字は下がる

数字が上がると円安、下がると円高。ここが直感と逆なので最初につまずきやすい部分です。

1ドルを買うのに必要な円が増える=円の価値が下がっている、と考えると整理できます。用語そのものは円高円安の記事で詳しく扱っています。

為替が株価に伝わる3つの経路

経路 仕組み 円安のとき
① 円換算の利益 海外で稼いだドルを円に直すと金額が増える プラス(輸出企業)
② 輸入コスト 原材料・エネルギーの仕入れが高くなる マイナス(内需・小売)
③ 海外投資家の目線 ドルで見た日本株が安くなる/持っている株の価値が目減りする 両方向

①だけを見れば「円安=株高」ですが、②は逆に働きます。どちらが勝つかは、そのときの相場のテーマ次第です。

③が厄介で、海外投資家にとっては円安が「日本株が割安になった」と「保有株の価値が減った」の両方を意味します。2022年以降に連動が崩れやすくなったのは、この経路が強く効いたためと考えられます。

【独自集計】円安の日と円高の日で日経平均はどう違ったか

2000年以降の6,527営業日を、その日のドル円の動きで分けました。

その日の為替 日数 日経平均の平均 上がった割合
円安(ドル円+0.3%超) 1,840日 +0.29% 60.1%
円高(ドル円−0.3%超) 1,730日 −0.28% 42.3%

出典:ドル円と日経平均の日足終値(2000年1月〜2026年8月27日)をもとに独自集計。

日単位で見れば、関係はきれいに出ています。円安の日は6割が上昇、円高の日は4割強しか上昇していません。

ただし全期間の相関係数は+0.159で、決して強い数字ではありません。「傾向はあるが、それだけで方向は決まらない」という水準です。

【独自集計】年ごとに関係は大きく変わる

相関係数 ドル円 日経平均
2015年 +0.418 +0.1% +9.3%
2016年 +0.368 −3.4% +3.6%
2017年 +0.492 −4.1% +16.2%
2018年 +0.369 −1.6% −14.9%
2019年 +0.537 +1.5% +20.9%
2020年 +0.162 −4.1% +18.3%
2021年 +0.227 +11.3% +5.6%
2022年 −0.021 +15.3% −10.9%
2023年 +0.193 +7.8% +30.1%
2024年 +0.345 +10.4% +19.8%
2025年 +0.363 −0.9% +28.1%
2026年 −0.192 +1.4% +27.6%

※ 2026年は8月27日まで。

とくに注目したい2つの年

🔴 2022年:ドル円は+15.3%の大幅な円安。それなのに日経平均は−10.9%
 → 世界的な利上げで株式全体が売られ、円安の追い風が完全に打ち消されました

🔴 2026年:ドル円はほぼ横ばい(+1.4%)。日経平均は+27.6%
 → 相関はマイナス。為替では説明できない上昇です

🔵 逆に2019年(+0.537)は最も連動した年でした。相場に大きなテーマが無い年ほど、為替が主役になりやすい傾向があります。

連動が崩れるのはどういうときか

年ごとの数字を並べると、崩れる条件が見えてきます。

状況 何が起きるか
① 為替より大きなテーマがある 金利、景気後退、地政学リスクなど。2022年がこの形
② 円安の理由が悪い 日本の魅力が下がって売られている円安は、株にとって追い風にならない
③ 内需株が主役の相場 円安は輸入コストの増加としてマイナスに働く
④ 企業が為替に強くなった 海外生産が進み、円換算の影響が昔より小さくなっている

④は構造的な変化です。主要な輸出企業は現地生産を進めており、「円安になれば自動的に儲かる」という単純な図式は弱まっています。

決算で必ず見る「想定為替レート」

為替の影響を個別企業で確認するなら、この数字が最も実用的です。

項目 内容
想定為替レート 企業が業績予想を作るときに前提にしている為替。決算短信や説明資料に載っている
実際の為替 > 想定 想定より円安。上方修正の可能性が高まる
実際の為替 < 想定 想定より円高。下方修正のリスク
為替感応度 「1円の円安で営業利益が◯億円増える」という開示。影響額が具体的にわかる

企業は保守的な想定を置くことが多く、実際の為替がそれより円安だと利益が上振れします。

「円安だから輸出株」ではなく「想定為替レートより円安だから、あの企業は上振れする」という見方をすると、対象が具体的に絞れます。確認場所は決算短信です。

為替の影響を受けやすい業種

タイプ 業種 円安のとき
輸出型 自動車、機械、電子部品、精密 プラス(円換算の利益が増える)
輸入型 電力・ガス、食品・小売、紙・パルプ マイナス(仕入れが高くなる)
内需型 通信、鉄道、不動産、サービス 影響は小さい
インバウンド型 百貨店、ホテル、空港関連 プラス(訪日客が増えやすい)

ただし業種でひとくくりにはできません。同じ自動車でも、現地生産の比率が高い企業ほど円安の恩恵は小さくなります。

個別に確認するなら、決算資料の地域別セグメント情報で海外売上比率を見るのが確実です。見方は企業の成長性を測る指標の記事にまとめています。

ドル円の水準を歴史で見る

時期 ドル円 局面
2011年10月 75.74円 歴史的な円高
2015年6月 124.38円 金融緩和による円安
2021年1月 102.68円 2020年以降で最も円高
2022年10月 150.18円 日米の金利差拡大
2024年7月 161.50円 介入が実施された局面
2026年7月29日 163.86円 2020年以降で最も円安
2026年8月28日 159.32円 直近

出典:ドル円の日足終値(Yahoo!ファイナンス)。日中の高値・安値とは異なります。

2011年の75.74円から2026年の163.86円まで、15年で2倍以上動いています。

この幅を見ると、為替は「どちらに動くか」を当てにいくものではないとわかります。むしろ企業の想定為替レートとの差を確認する材料として使うほうが実用的です。

個人投資家としての使い方

やること 理由
① 想定為替レートとの差を見る 上方修正・下方修正の予兆になる
② 海外売上比率を確認する 同じ業種でも企業ごとに影響がまったく違う
③ 輸出と内需の両方を持つ 為替がどちらに動いても、片方が受け止める
④ 為替で方向を決めない 2022年と2026年のように、関係が消える年がある

金利差が為替を動かす仕組みについては金利が上がると株価はどうなるかの記事で扱っています。

よくある質問

円安になれば株価は上がりますか?
傾向としてはありますが、確実ではありません。2000年以降の集計では円安の日の日経平均は平均+0.29%・上昇率60.1%、円高の日は−0.28%・42.3%でした。ただし年別に見ると差が大きく、2022年はドル円が+15.3%の円安なのに日経平均は−10.9%でした。世界的な利上げという、為替より大きなテーマがあったためです。
2026年は為替と株価が連動していないのですか?
連動していません。2026年の相関係数は−0.192で、むしろ逆方向に動いています。ドル円はほぼ横ばい(+1.4%)である一方、日経平均は+27.6%と大きく上昇しました。為替では説明できない上昇が起きているということです。年ごとの相関を見ると、最も高かった2019年の+0.537から2026年の−0.192まで幅があり、固定的な関係ではないことがわかります。
円高と円安、数字はどちらに動きますか?
円安になると数字は上がり、円高になると下がります。150円から160円になれば円安、140円になれば円高です。1ドルを買うのに必要な円が増えるほど円の価値が下がっている、と考えると整理しやすくなります。直感と逆になるため、最初につまずきやすい部分です。
想定為替レートとは何ですか?
企業が業績予想を作るときに前提としている為替の水準で、決算短信や決算説明資料に記載されています。実際の為替がこれより円安になっていれば利益が上振れしやすく、円高なら下振れします。多くの企業は保守的な想定を置くため、円安局面では上方修正につながることがあります。「1円の円安で営業利益が◯億円増える」という為替感応度を開示している企業もあり、影響額を具体的に把握できます。
円安なのに株価が下がるのはなぜですか?
主に4つの理由があります。①金利や景気後退など為替より大きなテーマがある ②円安の理由が「日本が売られている」ことによる場合 ③内需株が主役の相場では円安が輸入コスト増としてマイナスに働く ④企業の海外生産が進み、円換算の恩恵が昔より小さくなっている——です。とくに④は構造的な変化で、「円安なら自動的に儲かる」という図式は弱まっています。
どの業種が為替の影響を受けやすいですか?
円安でプラスになりやすいのは自動車・機械・電子部品などの輸出型と、訪日客が増えるインバウンド関連です。マイナスになりやすいのは電力・ガス、食品・小売など原材料を輸入している業種です。ただし業種でひとくくりにはできません。同じ自動車でも現地生産の比率が高い企業ほど恩恵は小さくなります。決算資料の地域別セグメント情報で海外売上比率を確認するのが確実です。
為替を見て売買の判断をしてもいいですか?
方向を決める材料としては弱すぎます。2000年以降の全期間の相関係数は+0.159で、傾向はあるものの、それだけで株価の方向は決まりません。しかも2022年や2026年のように関係が消える年もあります。実用的なのは、方向を当てにいくのではなく「保有銘柄の想定為替レートに対して、いまの為替がどちら側にあるか」を確認する使い方です。
為替の影響を避ける方法はありますか?
輸出型と内需型の両方を持つと、為替がどちらに動いても片方が受け止める形になります。また通信や鉄道など海外売上比率の低い業種は、そもそも影響が小さくなります。完全に避けることはできませんが、偏りをなくすことはできます。保有している銘柄が輸出型に偏っていないかを一度確認しておくと、円高局面での下げ方が変わります。

まとめ|関係は固定されていない

この記事の要点
円安の日の日経平均は+0.29%・上昇率60.1%、円高の日は−0.28%・42.3%
ただし全期間の相関係数は+0.159で、方向を決めるには弱い
2022年は円安+15.3%なのに株価−10.9%、2026年は相関が−0.192
崩れる条件は①より大きなテーマ ②悪い円安 ③内需相場 ④海外生産の進展
実用的なのは想定為替レートとの差を見ること
ドル円は2011年75.74円 → 2026年163.86円。15年で2倍以上

「円安なら輸出株」という覚え方は、間違いではありませんが使いどころが限られます。2022年と2026年のように、その関係がまったく効かない年が実際にあるからです。

代わりに使えるのが、企業が自分で公表している想定為替レートです。いまの為替がその前提より円安なのか円高なのかを見れば、どの企業の業績が上振れしそうかが具体的に絞れます。為替の方向を当てる必要がなくなる、というのがこの見方の利点です。

※ 本記事の集計はドル円および日経平均株価の日足終値(2000年1月〜2026年8月27日)に基づく独自集計です。相関係数は日次変化率から算出しています。過去の傾向であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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