償還とは、債券や投資信託の運用が満了し、投資したお金が返還されることをいいます。
注意したいのは、戻ってくる金額は「自分が払った金額」ではなく「額面」だという点です。買った値段によっては、償還時に損が出ることもあります。
この記事では、いくら戻るのかという計算から、予定より早く終わる繰上償還までを解説します。
この記事でわかること
・繰上償還が投資家にとって不利になりやすい理由
・投資信託が途中で償還される条件
・償還差益・償還差損の税金
・買う前に確認しておくべき5項目
目次
償還とは
償還(読み方:しょうかん)とは、あらかじめ定められた期限が来て、投資した資金が返されることです。
この違いは重要です。償還のある商品は「いつか必ず終わる」ことが最初から決まっています。その日をどう迎えるかまで含めて計画する必要があります。
償還日と償還期間
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 償還日 | 資金が返される日。満期日ともいう |
| 償還期間 | 発行日から償還日までの期間 |
| 残存期間 | 今から償還日までの残りの期間。価格に直結する |
| 償還金 | 償還日に受け取る金額 |
債券は償還期間の長さで呼び分けられます。短期債(1年以内)、中期債(2〜5年程度)、長期債(10年程度)、超長期債(20年・30年・40年)という区分が一般的です。
償還金はいくら戻るのか
ここが最も誤解されやすいところです。戻るのは「額面金額」であって、自分が買った値段ではありません。
額面100万円の債券を償還まで持った場合、戻るのは100万円
・98万円で買った人 → 償還差益 +2万円
・102万円で買った人 → 償還差損 −2万円
→ 利息とは別に、この差額が損益になります
債券価格は市場金利によって日々動きます。額面より高い価格で買えば、償還時に必ず損が出るということです。
それでも買われるのは、受け取る利息がその損を上回るケースがあるからです。だから債券は価格ではなく「利回り」で判断します。
金利と価格の関係は債券とはで図解しています。
繰上償還(期限前償還)とは
予定より早く償還されることを繰上償還といいます。期限前償還、早期償還とも呼ばれます。
| 対象 | 起きる理由 |
|---|---|
| 社債 | 発行時の条項にもとづき、発行会社の判断で早期に返済する |
| 投資信託 | 規模が小さくなり、運用の継続が難しくなった |
| 仕組債 | 株価や指数が一定の条件を満たした(ノックアウト条項など) |
言葉の響きから「早くお金が戻るなら得では」と思われがちですが、実際には投資家にとって不利になることが多いのが実情です。
なぜ繰上償還は不利になりやすいのか
発行会社が繰上償還するのは、市場金利が下がって、より低い金利で借り換えられるときです。つまり投資家は「今より条件の良い運用先」を失うことになります。
戻ってきた資金を、金利が下がった市場で運用し直すことになります。同じ利回りは得られません。
償還までの利息収入を前提に計画していた場合、その分が失われます。
ここに非対称性があります。会社にとって都合が良いとき(金利低下時)にだけ実行されるため、投資家に有利なタイミングで繰上償還されることはまずありません。
投資信託の償還
投資信託には、あらかじめ償還日が決まっている単位型と、期限のない追加型(無期限)があります。
信託約款には、多くの場合繰上償還の条件が定められています。
・受益権の口数が一定水準を下回ったとき
・純資産総額が一定額を下回ったとき
・運用の継続が困難と判断されたとき
→ 資金が集まらないファンドは、途中で終了することがあります
つまり「無期限だから一生持てる」とは限りません。純資産総額が小さいファンドを長期保有するときは、この点に注意が必要です。
繰上償還されたらどうなるか
| 起きること | 投資家への影響 |
|---|---|
| 強制的に現金化される | タイミングを自分で選べない |
| その時点の基準価額で計算される | 相場が下がっている局面でも確定してしまう |
| 損益が確定する | 利益が出ていれば課税対象になる |
| NISA枠の扱い | 売却と同様に扱われ、簿価分の枠は翌年に復活する |
最も痛いのは2番目です。「あと数年待てば戻ったはず」という局面でも、強制的に確定させられます。
NISAでの扱いについてはNISAとはで解説しています。
償還にかかる税金
| 対象 | 扱い | 税率 |
|---|---|---|
| 償還差益 | 譲渡所得等として申告分離課税 | 20.315% |
| 利子 | 利子所得として申告分離課税 | 20.315% |
| 償還差損 | 上場株式等の損益と通算できる | — |
※ 2016年1月から公社債は上場株式等と同じ課税グループとして扱われています。税制は改正されるため、実際の申告にあたっては税理士等の専門家と国税庁の最新情報をご確認ください。
ポイントは3行目です。債券で出た損失を、株式の利益と相殺できます。特定口座(源泉徴収あり)に入れておけば、証券会社が自動で計算します。
残存期間が長いほど価格は動く
債券価格の動きやすさは、償還までの残りの期間で決まります。
金利が1%上がったとき
残存1年の債券 あと1年で額面に戻るので、下落幅は小さい
残存30年の債券 30年分の不利な金利を抱え込むので、下落幅が大きくなる
→ 同じ金利変動でも、残存期間によって影響がまったく違います
| 残存期間 | 金利変動への感応度 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 短い(1〜2年) | 小さい | 金利が上がりそうな局面。近く資金を使う予定がある |
| 中程度(5年前後) | 中 | 利回りと値動きのバランスを取りたい |
| 長い(20年以上) | 大きい | 金利が下がりそうな局面。満期まで持ちきる前提 |
この感応度を表す指標がデュレーションです。金利が上がりそうな局面では、残存期間の短い債券のほうが値下がりしにくいということになります。
社債の償還と発行企業の資金繰り
投資家側だけでなく、発行する企業側にとっても償還日は重大なイベントです。
・手元資金で返済できる
・借り換えの社債を発行できる
・営業キャッシュフローが十分にある
・格付けが下がって借り換えできない
・大型の償還が集中している
・営業キャッシュフローがマイナス
株式投資の観点では、財務が苦しい会社の社債償還が近づいている場合、資金繰りの懸念が株価に出ることがあります。有価証券報告書で償還スケジュールを確認できます。
買う前に確認する5項目
※ 本記事は金融商品の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
償還に関するよくある質問
まとめ
償還は「最初から決まっていた終わりの日」です。戻るのは額面であり、買った値段ではないという点を押さえておいてください。
この記事のまとめ
・戻るのは額面金額。購入価格との差が償還差益・差損になる
・株式には償還がない
・繰上償還は金利が下がったときに実行されるため投資家に不利
・無期限の投資信託でも純資産総額が減れば繰上償還される
・償還差損は上場株式等の利益と損益通算できる
・残存期間が長いほど金利変動による価格の振れが大きい
・買う前に期限前償還条項の有無を必ず確認する











