DeepSeekショック再来か?V4.1-Flash-1017で株価は暴落するのか|前回逆に買われた銘柄公開

DeepSeekショックとは、中国のDeepSeek(ディープシーク)が安く作った高性能な生成AIモデルをきっかけに、2025年1月27日に半導体株が急落した出来事です。この日エヌビディアの株価は1日で16.97%下がり、日本ではアドバンテストやフジクラが2日で2割近く下げました。

そのDeepSeekが2026年10月17日(土曜日)に「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開しました。週明けの株式市場はまだ開いていません。前回のショックの値動きと、これまで13回あった発表のあとの株価を日経平均の225銘柄まで数え直し、暴落が起きる可能性を確かめました。

先に結論

①前回のショックで下げが集中したのは、日本では半導体と電線、米国では半導体と電力だった。今の日経225銘柄で数えると155銘柄はむしろ上がり、不動産・鉄道・銀行などの内需株が買われた
②DeepSeekの発表のたびに株価が下がったわけではない。主な13回の発表のあと2営業日でアドバンテストが下げたのは4回で、前回ショックの元になったR1の公開直後はエヌビディアが+6.8%だった
③今回の1017は既存のV4.1-Flashの更新版で、料金も使い方も変わっていない。前回のR1のような「新しいモデルの登場」とは中身が違う
④ただし日経平均は前回より値がさの半導体株に偏っている。前回と同じ下げ方を今の構成比に当てはめると-4.62%で、実際の前回(-2.29%)の約2倍になる
⑤2026年7月のKimi K3の公開をはさむ2営業日には、日経平均が-6.7%下げた(翌営業日に+3.3%と戻した)。中国の新モデルの公開と日本株の急落が重なった局面はすでに一度あった

DeepSeekショックとは|いつ何が起きたか

DeepSeekは推論に強いモデル「DeepSeek-R1」を2025年1月20日に公開しました。株価が大きく動いたのはその1週間後、週明けの2025年1月27日(月曜日)です。米国では半導体株と、データセンター向けの電力株がまとめて売られました。

銘柄・指数 1月27日の騰落
エヌビディア -17.0%
ブロードコム -17.4%
TSMC(ADR) -13.3%
ビストラ(電力) -28.3%
コンステレーション・エナジー(電力) -20.8%
SOX指数(半導体) -9.1%
ナスダック総合指数 -3.1%
S&P500 -1.5%

日本は時差の関係で、米国より先に1月27日の取引が始まり、米国の急落を受けた1月28日にもう一段下げました。2日間(1月24日の終値から1月28日の終値まで)で見ると、日経平均は-2.29%でした。

銘柄 1月27日まで 1月28日まで
フジクラ(5803・非鉄・金属) -10.7% -18.9%
アドバンテスト(6857・電気機器) -8.6% -18.8%
古河電気工業(5801・非鉄・金属) -11.3% -17.9%
日本製鋼所(5631・機械) -6.3% -15.5%
ソフトバンクグループ(9984・情報通信) -8.3% -13.1%
住友電気工業(5802・非鉄・金属) -5.4% -10.9%
日経平均 -0.9% -2.3%

なぜ株価が急落したのか|「少ない計算で作れる」が前提を揺らした

DeepSeekは前のモデル「DeepSeek-V3」の論文で、学習に使った計算量をH800というGPUで約278.8万時間と公表しています。1時間2ドルで借りた場合の費用を約557.6万ドルと計算していて、この数字が「米国の大手よりけた違いに安く作れた」と受け止められました。

ただし論文自身が、この金額は正式な学習の分だけで、それまでの研究や試行の費用は含まないと書いています。それでも市場は「高性能なモデルを作るのに、これまで考えられていたほど大量のGPUは要らないのではないか」と受け取りました。GPUを売るエヌビディアや半導体の製造装置の会社、データセンターに電気を送る電力会社にまで同じ不安が一度に向かいました。

売られた理由 売られた銘柄の例
GPUの需要が減るのでは エヌビディア・ブロードコム・TSMC
半導体を作る装置・検査の需要が減るのでは アドバンテスト・東京エレクトロン・SCREEN
データセンターの電気・電線が要らなくなるのでは ビストラ・フジクラ・古河電気工業・住友電気工業
巨額の投資の回収が遅れるのでは ソフトバンクグループ・オラクル

前回のDeepSeekショックで逆に買われた銘柄とセクター

日経平均が-2.29%下げた2日間でも、今の構成225銘柄(2026年9月30日時点)で数えると155銘柄は上がっていました。指数を押し下げたのは一部の値がさ株で、それ以外の多くはむしろ買われていたことになります。

前回のDeepSeekショックの2日間の業種別の平均騰落(日経225銘柄)
日経平均の構成225銘柄(2026年9月30日時点)の1月24日終値から1月28日終値までの騰落を業種ごとに平均。3銘柄以上ある業種だけ

日本株で上がった銘柄 上位10

銘柄 1月28日まで 1月31日まで
オリエンタルランド(4661・サービス) +7.9% +2.8%
メルカリ(4385・サービス) +7.2% +5.4%
三井不動産(8801・不動産) +7.1% +6.3%
住友不動産(8830・不動産) +6.6% +6.6%
KDDI(9433・情報通信) +6.4% +6.5%
京王電鉄(9008・鉄道・バス) +6.3% +6.2%
東京建物(8804・不動産) +5.4% +3.1%
三越伊勢丹ホールディングス(3099・小売業) +5.2% +9.2%
楽天グループ(4755・サービス) +5.2% +5.6%
三菱地所(8802・不動産) +5.2% +4.2%

上位には、オリエンタルランド・三井不動産・京王電鉄・三越伊勢丹ホールディングスなど、国内の消費や不動産で稼ぐ会社が並びました。KDDI・楽天グループ・メルカリのように、新しいモデルを「使う側」に回る通信・ネットの会社も入っています。モデルを作るのが安くなれば使う側の費用は下がる、と受け取られたとも考えられます。なお日銀は2025年1月24日に利上げを決めていて、銀行株の上昇にはその影響も重なっていたはずです。

業種で見ると

業種(銘柄数) 平均の騰落 上がった銘柄
不動産(5) +5.6% 5/5
鉄道・バス(8) +4.2% 8/8
銀行(10) +2.8% 10/10
サービス(19) +2.7% 16/19
小売業(11) +2.4% 9/11
食品(10) +1.9% 9/10
非鉄・金属(8) -6.7% 3/8
電気機器(32) -2.5% 12/32
情報通信(4) -0.7% 3/4
電力(3) -0.5% 2/3

不動産は5銘柄すべて、鉄道・バスは8銘柄すべて、銀行は10銘柄すべてが上がりました。下げが集中したのは非鉄・金属(電線3社を含む)と電気機器で、同じ「日本株」の中でもはっきり分かれています。

米国株で上がった銘柄とセクター

銘柄・セクター 1月27日の騰落
セールスフォース +4.0%
アップル +3.2%
生活必需品(業種ETF) +2.7%
ヘルスケア(業種ETF) +2.2%
メタ +1.9%
サービスナウ +1.4%
金融(業種ETF) +1.1%
不動産(業種ETF) +1.0%

米国でも、GPUを使う側の会社のうちセールスフォース・アップル・メタは上がりました。ただしマイクロソフト(-2.1%)やオラクル(-13.8%)のように、使う側でも下げた会社はあります。業種では生活必需品やヘルスケアなど、景気や半導体の需要に左右されにくい分野に資金が移っています。前回のショックは、半導体から別の業種へ資金が移った日と言ったほうが実態に近い動きでした。

DeepSeekショックのその後|元の株価に戻るまでの日数

1月24日の終値を、その後いつ取り戻したかを数えました。2025年4月には米国の相互関税による急落があり、下の表の銘柄の最安値はすべてその時期に付いています。DeepSeekだけの影響ではない点に注意が必要です。

銘柄・指数 2025年1月24日の終値を回復した日 2025年1〜6月の最安値(1月24日比)
ナスダック総合 2025年2月14日(15営業日) -23.5%(4月8日)
エヌビディア 2025年6月9日(93営業日) -33.9%(4月4日)
日経平均 2025年6月27日(104営業日) -22.0%(4月7日)
アドバンテスト 2025年6月25日(102営業日) -49.9%(4月7日)
東京エレクトロン 2025年6月27日(104営業日) -37.1%(4月7日)
ソフトバンクグループ 2025年7月1日(106営業日) -44.7%(4月7日)
フジクラ 2025年2月12日(12営業日) -50.8%(4月7日)

ナスダック総合指数とフジクラは3週間ほどで元に戻りましたが、エヌビディアや日経平均は相互関税の急落も重なって4〜5か月かかりました。関税の急落については相互関税が株価暴落を招く理由|21営業日で戻った実測で値動きを追っています。その後は大きく上がり、2026年10月16日の時点でアドバンテストは1月24日の約3.4倍の株価にあります。

DeepSeek-V4.1-Flash-1017とは|10月17日に何が公開されたか

DeepSeekの公式の更新履歴によると、10月17日の発表は「V4.1-Flashを1017版に更新した」というものです。9月10日に出したV4.1-Flashの改良版で、アプリとウェブ版も新しい版に切り替わりました。API(ほかのサービスから呼び出す窓口)の使い方と料金は変わっていません。

項目 内容
公開日 2026年10月17日(土曜日)
中身 既存のV4.1-Flash(9月10日公開)の更新版
モデルの大きさ 9月の版と同じ構成で552B(5,520億)パラメータ。1トークンあたりに動かすのは、入力の読み込みで80億、出力の生成で160億
料金 据え置き(出力100万トークンあたり1.2ドル、割引時間帯は0.6ドル)
公開のしかた モデル本体を公開し、MITライセンスで誰でも使える
同じ日の発表 自社の検索エンジンをAPIで外部に開放

公式の発表では、9月10日の版と比べて性能の指標が上がり、作業にかかる時間と出力の長さは短くなったとしています。

指標(プログラミング・作業の自動化) 9月10日の版 1017版
Terminal-Bench 4.0 31.2 42.3
DeepSWE v1.1 74.2 77.0
NL2Repo-Bench 65.4 68.2
ProgramBench 20.3 29.1

仕組みの上では、全体の大きさに比べて実際に動かす部分が小さい点が特徴です(9月の版から同じ)。少ない計算で高い点数が出るなら、前回と同じ「GPUはそれほど要らないのでは」という連想が働く余地はあります。ただ9月10日にこの構成が初めて出たときも、2営業日の下げはアドバンテストで-3.4%でした。

DeepSeekの発表のたびに株価は下がったか|13回の実測

公式の更新履歴に載っている主なモデルの発表13回について、発表の前の終値から、発表日を含めて2営業日目の終値までの騰落を数えました。

DeepSeekの発表ごとの2営業日の騰落(アドバンテストとエヌビディア)
DeepSeek公式の更新履歴の日付と、Yahoo Financeの日足終値から作成。右端は2026年7月のKimi K3
発表日・モデル エヌビディア アドバンテスト ソフトバンクG
2024年12月26日
V3
-2.3% +5.1% +3.7%
2025年1月20日
R1
+6.8% +3.1% +1.9%
2025年3月24日
V3-0324
+2.5% -4.5% +3.4%
2025年5月28日
R1-0528
+2.7% +7.0% +1.5%
2025年8月21日
V3.1
+1.5% 0.0% -0.1%
2025年9月22日
V3.1-Terminus
+1.0% +2.6% +3.4%
2025年9月29日
V3.2-Exp
+4.7% +1.2% -0.8%
2025年12月1日
V3.2
+2.5% -3.7% -6.9%
2026年4月24日
V4
+8.5% +12.9% +0.1%
2026年7月31日
V4-Flash(正式版)
+5.9% +12.5% +16.7%
2026年8月13日
V4-Pro(正式版)
+0.5% +6.7% +4.0%
2026年8月21日
V4-Flash-Vision-Exp
-3.9% -2.4% -7.6%
2026年9月10日
V4.1-Flash
-2.4% -3.4% -4.0%

13回のうち、2営業日でエヌビディアが下げたのは3回、アドバンテストが下げたのは4回でした。前回ショックの元になったR1の公開直後も、エヌビディアは+6.8%と上がっています。R1の公開から1月24日までの1週間で見ても、エヌビディアは+3.6%、アドバンテストは+9.7%でした。

つまり前回のショックは、発表の当日ではなく、1週間たってから起きています。今回も、発表の直後の値動きだけで「影響はなかった」とは言い切れません。一方で、2026年4月のV4や7月末のV4-Flashのように、大きな発表のあとでも半導体株が上がった回もあります。

2026年7月のKimi K3|「再来」はすでに一度起きていた

DeepSeekの発表より大きく株価が動いたのは、中国のMoonshot AI(月之暗面)が2026年7月16〜17日に公開した「Kimi K3」のときでした。一部の項目で米国の最先端のモデルを上回ると主張していて、「DeepSeekショックの再来」と報じられています。

銘柄・指数 Kimi K3の公開をはさむ2営業日
日経平均 -6.7%
アドバンテスト -12.7%
東京エレクトロン -12.3%
ソフトバンクグループ -14.7%
フジクラ -13.1%
エヌビディア -4.6%
SOX指数 -5.8%

この2日間の日経平均の下げ(-6.7%)は、前回のDeepSeekショックの2日間(-2.29%)より大きく、エヌビディア(-4.6%)よりも日本株のほうが大きく下げました。この期間には他の材料もあったはずで、下げのすべてがKimi K3によるものとは言えません。その一方で、翌営業日の7月21日には日経平均が+3.3%、アドバンテストが+7.7%と戻しています。中国の新モデルの公開と日本の半導体株の急落が重なり、すぐに一部を戻す形はすでに一度起きているということです。

前回と今回の違い|暴落の可能性を5つの点で比べる

比べる点 前回(2025年1月)と今回(2026年10月)
発表の中身 前回:新しい推論モデル(R1)の初公開
今回:既存モデル(V4.1-Flash)の更新版
費用の話題 前回:論文が学習費用を約557.6万ドルと公表
今回:9月の値下げのあと据え置き
市場の慣れ 前回:DeepSeekで株価が大きく動いた最初の例(公開の1週間後)
今回:これまでに13回の発表があり、アドバンテストが2営業日で下げたのは4回
直前の株価 前回:R1の公開から1週間でアドバンテスト+9.7%
今回:SOX指数は今年の高値から-23.9%、アドバンテストは10月6日の高値から-17.5%
日経平均の偏り 前回:アドバンテストの株価は10,050円(今の約3.4分の1)
今回:アドバンテスト・東京エレクトロン・ソフトバンクG・フジクラで構成比の30.6%

上の4つは、今回の発表が前回ほどの驚きにはなりにくいことを示しています。発表は既存モデルの更新で、半導体株はすでに高値から下げていて、期待が膨らみきった状態でもありません。逆に一番下の日経平均の偏りは、同じことが起きたときの日本株の下げを大きくする方向に働きます。

前回と同じ下げ方が今の日経平均に起きたら|試算-4.6%

日経平均の構成225銘柄の今の構成比(2026年9月30日時点)に、前回のショックの2日間の各銘柄の騰落をそのまま当てはめてみました。

項目 値
前回の実際の日経平均(2日間) -2.3%
同じ下げ方を今の構成比に当てはめた試算 -4.6%
65,324円(10月16日の終値)に当てはめると 約3,020円安
銘柄 今の構成比 前回の2日間 試算への寄与
アドバンテスト 12.39% -18.8% -2.3%
東京エレクトロン 8.90% -10.4% -0.9%
ソフトバンクグループ 7.75% -13.1% -1.0%
フジクラ 1.57% -18.9% -0.3%

4銘柄だけで-4.56%分の押し下げになり、試算の大部分を占めます。前回より値がさの半導体株の比重が上がったため、同じ下げ方でも日経平均への影響は約2倍になる計算です。構成比は株価の動きで日々変わるので、目安として見てください。また、前回のように内需株が上がることも試算に含めています。

週明け10月19日に見るポイント

土曜日の発表なので、最初に反応するのは2026年10月19日(月曜日)の東京市場です。米国の反応はその日の夜になります。前回の値動きから、次の点を見ると状況がつかみやすくなります。

見るところ 前回のショックの形に近いサイン
アドバンテスト・東京エレクトロン 寄り付きから大きく下げる(前回は2日で-10〜-19%)
フジクラ・古河電気工業など電線株 半導体株と同じくらい大きく下げる(前回はフジクラ・古河電気工業が2日で-18〜-19%)
不動産・鉄道・銀行 日経平均が下げているのに上がる(資金の移動)
その日の夜のエヌビディアと電力株 ビストラやコンステレーションなど電力株も一緒に売られる

半導体株が小さく動くだけで内需株への資金の移動も見られなければ、これまでの多くの更新と同じく株価への影響は限られていると読めます。ただ前回のように発表から日をおいて動くこともあるので、1週間ほどは値動きを追っておきたいところです。

半導体株を持っている場合、窓を開けて下げると逆指値でも思った値段で売れないことがあります。その仕組みは株のGDとは?逆指値でも狙った値段で売れない理由にまとめています。

まとめ

ポイント 内容
DeepSeekショックとは 2025年1月27日、DeepSeek-R1をきっかけに半導体株が急落。エヌビディアは1日で-16.97%
逆に買われたもの 今の日経225銘柄のうち155銘柄が上昇。不動産・鉄道・銀行など、米国では生活必需品・ヘルスケア・アップル
今回の1017 既存モデルの更新版。料金と使い方は据え置き
発表後の値動き 13回のうちアドバンテストが2営業日で下げたのは4回
暴落の可能性 前回ほどの驚きは小さいが、日経平均の偏りで同じ下げ方なら-4.62%の計算

前回のDeepSeekショックで起きたのは、半導体から内需への大きな資金の移動でした。今回の発表がそれを繰り返すかどうかは、月曜日の寄り付きで半導体株と内需株が逆に動くかを見ると判断しやすくなります。AI関連株そのものの過熱を心配するなら、AIバブル崩壊の可能性もあわせて読んでおくと材料がそろいます。

次に読むなら

AI関連株の高値が続くのか、崩れるのかを別の角度から考えたいなら
→ AIバブル崩壊の可能性

急落した日に逆指値が効かない仕組みを知っておきたいなら
→ 株のGDとは?逆指値でも狙った値段で売れない理由|ギャップダウン実測

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