有価証券報告書とは

有価証券報告書(読み方:ゆうかしょうけんほうこくしょ)

有価証券報告書とは、わかりやすくいうと有価証券を発行している企業が自社情報を開示するために作成する報告書(資料)のことです。

略して有報(ゆうほう)とも呼ばれる有価証券報告書は、企業の現況・将来性を表す重要な資料であり、市場の公正化と投資家の保護が目的となっています。

有価証券報告書 英語では「securities report」

有価証券報告書の提出義務

金融商品取引法により、有価証券報告書の作成と提出は義務づけられています。
提出先は内閣総理大臣(財務局、金融庁を経て内閣総理大臣へ)と証券取引所です。

金融商品取引法におけるディスクロージャー制度に基づく有価証券報告書の提出義務者(事業年度ごとに有価証券報告書を提出しなければならない有価証券の発行者)について要約すると、次の通りです。

金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者(店頭登録されている有価証券発行者含む)や、募集・売り出しにあたり有価証券届出書発行登録追補書類を提出した有価証券の発行者には、有価証券報告書の提出義務があります。

ディスクロージャー制度とは
上場企業などの有価証券の発行者は、株価に影響を及ぼす恐れのある重要な未公表情報を公表前に第三者への提供を禁止しているルール(制度)で、「フェア・ディスクロージャー・ルール」「ディスクロージャー規制」とも呼ばれる

有価証券届出書とは
株式など有価証券を発行する企業が有価証券の募集や売出しを行う際、金融商品取引法にもとづいて内閣総理大臣への提出が義務づけられている書類

発行登録追補書類とは
有価証券の発行条件などの情報を記載した書類

また、上場会社に限らず非上場企業でも株主数が1,000人以上・資本金5億円以上などに該当する場合は有価証券報告書の提出義務が課されます。

提出義務の免除

有価証券報告書は上場廃止した場合など、一定の条件を満たせば提出義務が免除されます。

ただし、上場廃止した場合でも金融商品取引所に上場されている有価証券や店頭売買有価証券に該当する場合は原則、提出しなければなりません。

有価証券報告書の提出期限

有価証券報告書は事業年度終了後3ヶ月以内に内閣総理大臣へ提出しなければなりません。

例)3月決算の企業の場合 ⇒ 6月末が提出期限(6月末までに有価証券報告書を提出しなければならない)

新型コロナウイルス感染拡大に伴う有価証券報告書提出期限の延長

2020年4月7日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令されました。

企業や監査穂人が決算義務・監査業務に十分な時間を確保できるように、有価証券報告書の提出期限が一律9月末まで延長となりました。(有価証券報告書の他、四半期報告書・半期報告書など含む)

有価証券報告書メモ

・有価証券報告書とは、有価証券を発行している上場企業などが自社情報を開示するために作成する資料
・有価証券報告書の提出義務は金融商品取引法により義務づけられている
・有価証券報告書の提出期限は、事業年度終了後3ヶ月以内(3月決算なら6月末)

有価証券報告書の記載要領

有価証券報告書の記載要領(記述事項)について、平成31年1月施行「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」による改正に基づく具体的な改正の内容より大枠的な項目を箇条書きで抜粋すると、以下の通りです。

提出日
会社名
英訳名
代表者の役職氏名
本店の所在の場所
電話番号
事務連絡者氏名
最寄りの連絡場所
事務連絡者氏名
届出の対象とした募集(売出)有価証券の種類
届出の対象とした募集(売出)金額
安定操作に関する事項
縦覧に供する場所
コーポレート・ガバナンスの状況等
経理の状況
財務諸表等
主な資産及び負債の内容
提出会社の株式事務の概要
提出会社の保証会社等の情報
保証会社以外の会社の情報
指数等の情報
最近の財務諸表
保証会社及び連動子会社の最近の財務諸表又は財務書類

わかりやすくいうと、事業内容や経営指標など企業の概況、経営方針や財務状況などの事業状況、設備の状況、コーポレート・ガバナンスの状況等を項目として記載することになります。

有価証券報告書における虚偽記載

有価証券報告書の記載内容に虚偽があることを有価証券報告書の虚偽記載または有価証券報告書虚偽記載といいます。

虚偽記載は以下の2つに分類されます。

・記載事項に重要な虚偽記載がある場合
・本来記載が必要な事項の記載が欠けている場合

虚偽記載の場合、罰則が科せられることになりますが、簡単にいうと『虚偽記載が重要な事項に該当するか』判断されるものとされています。

罰則の内容について
取締役や監査役などの個人に10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、法人には7億円以下の罰金と刑事罰(刑事罰以外にも金融商品取引法に基づき、株主による損害賠償請求権が認められる等)

例えば、日産のカルロス・ゴーン社長が金融商品取引法違反の疑いで逮捕の件はニュース等でも多く取り上げられたので、記憶に新しいかと思います。

「金融商品取引法違反の疑い」というのは、具体的には有価証券報告書の虚偽記載(役員の報酬金額の虚偽記載)のことを指しています。

有価証券報告書メモ

・有価証券報告書の記載要領(記載事項)の各項目は定められており、事業内容や経営指標など企業の概況、経営方針や財務状況などの事業状況、設備の状況、コーポレート・ガバナンスの状況等が記載されている
・有価証券報告書の虚偽行為は『虚偽記載が重要な事項に該当するか』で判断され、重要事項に該当する場合は罰則が科せられる

有価証券報告書の閲覧

有価証券報告書は、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム・EDINET(エディネット)にて、無料で閲覧することができます。

また、英訳した有価証券報告書については以下をご参考ください。

金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、平成30年6月28日に「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」をとりまとめ、公表しています。

本報告において、「企業における有価証券報告書の英訳を慫慂するために、金融庁のウェブサイトで有価証券報告書の英訳を実施している企業の一覧を公表すること」と提言されたことを踏まえ、このたび、金融庁では、英訳した有価証券報告書を自社ウェブサイト上に掲載している企業の名称および当該ウェブサイトへのリンクの一覧表を、EDINETに掲載いたしました。
詳しくは以下のリンク先をご覧ください。

EDINET(英語サイト)新しいウィンドウで開きます(外部サイトへ接続されます)

金融庁

有価証券報告書の見方

有価証券報告書にはどのようなことが書かれているのか、記載事項に関して前述しましたが、基本的な見方を簡潔に紹介します。

以下はトヨタ(7203)の2019年3月期の有価証券報告書です。

≪トヨタ公式サイト【2019年3月期 有価証券報告書】より≫

ご覧のように、企業の概況や事業の状況といった順に項目ごとに分かれています。

有価証券報告書は100ページを超えるものも多く、全てに目を通すのは大変です。(上のトヨタの有報もPDFで185ページとなっています)

有価証券報告書を見る上で、必ず見ておきたい重要なポイントをまとめると以下の通りです。

業績
┗売上高
┗純利益

投資指標
PER(株価収益率)

財政状態
┗キャッシュ・フローの状況

上記は最低限見ておくべきポイントですが、基本的にはどの項目においても推移をチェックしたいところです。

例えば、売上高・純利益は伸びているのか・PERはレンジの推移を・キャッシュフローは現金に関する項目の推移がどうなっているのかを見ます。

他には【事業等のリスク】も見ておきたい項目だといえます。(企業の潜在的リスクを把握するため)

有価証券報告書はページこそ多くなっていますが、記載事項は定められているため、どの項目に何が書かれているのか等は慣れによってすぐにチェックできるようになると思います。

企業の公式サイトやEDINETで一般公開されているので、気になる方はチェックしてみると良いでしょう。

有価証券報告書で年収チェック

上場企業の有価証券報告書には、平均年収が記載されています。

例えばEDINETで有価証券報告書を閲覧する際、書類検索ページ⇒書類提出者欄に見たい企業名を入力すると、該当の有価証券報告書が結果表示されます。

見たい有価証券報告書の『従業員の状況』『平均年間給与』が記載されています。

就活生等、志望企業の年収をチェックする場合に便利です。

有価証券報告書メモ

・有価証券報告書の基本的な見方は、業績や投資指標、財政状態それぞれの推移と事業等のリスク
・有価証券報告書は企業の公式サイトやEDINETにて無料で閲覧可能(従業員の平均年収もチェック可)

有価証券報告書に関してよくある質問

有価証券報告書(有報)と「決算短信」の最大の違いは何ですか?
「速報性」か「情報の深さ」かの違いです。
決算短信: 決算後30〜45日で出る「スピード重視」のニュース。
有報: 決算後3ヶ月以内に出る、監査法人のチェックを受けた「法的信頼性の高い」公式記録。 有報には、短信には載っていない詳細な事業リスクや役員報酬、従業員の給与、子会社の状況まで記載されています。
数百ページもある有報の中で、投資家が真っ先に読むべき場所は?
「【事業等のリスク】」と「【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」の2ヶ所です。 ここには、経営陣が自社の弱みをどう認識し、将来をどう展望しているかが「生身の言葉」で書かれています。数字の裏にあるストーリーを読み解く鍵となります。
有報に載っている「従業員の平均年間給与」はどう活用すべきですか?
企業の「勢い」と「効率性」を測る指標になります。 同業他社と比較して給与が高ければ、優秀な人材が集まりやすい「強い会社」である可能性が高いです。また、数年間の推移を見て給与が上がっていれば、利益が従業員に還元される健全な成長を遂げていると判断できます。
「大株主の状況」の欄で、注意して見るべきポイントは?
「創業者が株を売っていないか」と「機関投資家の顔ぶれ」です。 創業者が筆頭株主から外れたり、持ち株を減らしていたりする場合、経営への意欲低下や将来への不安を隠しているケースがあります。逆に、海外の有名な投資ファンドが上位に入ってくれば、プロが将来性を認めた証拠となります。
提出期限(決算から3ヶ月以内)を過ぎても提出されない場合は?
「投資家にとって最大の赤信号」です。 期限に間に合わないのは、粉飾決算の疑いや内部統制の重大な欠陥がある場合がほとんどです。監理銘柄に指定され、最悪の場合は「上場廃止」となるため、速やかに撤退を検討すべき事態と言えます。
有報で「事業のセグメント情報」を見るメリットは何ですか?
「どの事業が本当に稼いでいるのか」を判別するためです。 会社全体の利益が良くても、実は特定の不採算部門が足を引っ張っていたり、主力だと思っていた事業が赤字だったりすることがあります。セグメント別の利益率を比較することで、企業の真の「稼ぎ頭」を特定できます。
有報はどこで、誰でも無料で閲覧できますか?
金融庁が運営する「EDINET(エディネット)」で全上場企業の報告書を無料で閲覧・ダウンロードできます。 また、多くの企業は自社の公式サイトの「IR情報(株主・投資家向け情報)」ページにもPDF形式で掲載しています。
連結決算と単独決算、どちらの数字を見るのが正解ですか?
現代の投資判断では「連結決算」が基本です。 グループ企業や子会社を含めた全体像を見ないと、実態を見誤るからです。ただし、親会社が子会社から「吸い上げている」ような歪な構造がないかを確認するために、比較として単独決算をチェックするのは有効です。
「事業等のリスク」に怖いことがたくさん書いてありますが、投資を控えるべき?
いいえ、むしろ「リスクを正直に公開していること」を評価すべきです。 有報のリスク欄は法的責任を避けるための網羅的なリストでもあります。重要なのは、そのリスクに対して会社がどのような対策を講じているか、あるいはリスクが顕在化した際の影響度がどの程度かを冷静に分析することです。
有報を読みこなせるようになると、どんな「勝てる投資家」になれますか?
「噂やムードに惑わされない投資家」になれます。 Twitter(現X)や掲示板の情報ではなく、一次ソースである公式書類を自分で読み解くことで、自信を持って長期保有したり、危険な兆候を誰よりも早く察知して逃げたりすることができるようになります。

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