四本値(よんほんね)とは、ある期間の始値・高値・安値・終値という4つの価格のことです。ローソク足1本は、この4つの数字から作られています。
用語としては単純ですが、4つの値は同じ重みを持っていません。そして「始値から終値までの動き」と「前日の終値から当日の始値までの動き」では、株価の上昇への貢献度がまったく違います。
実際に日経平均株価で計算したところ、2019年からの上昇の大半は、市場が開いている時間ではなく「取引していない時間」に起きていました。この記事では、四本値の定義から始めて、その実測データまで解説します。
この記事でわかること
・四本値とローソク足の対応(図で解説)
・実測:上昇の大半は取引時間外に起きていた
・陽線と陰線はほぼ五分(50.3%対49.7%)という事実
・4つの値の重要度は同じではないこと
・前日の高値・安値を基準線として使う方法
四本値とは?4つの価格
まず定義を整理します。「ある期間」というのは、日足なら1日、週足なら1週間を指します。
| 名称 | 読み方 | 意味 | 英語 |
|---|---|---|---|
| 始値 | はじめね | その期間で最初に成立した価格 | Open |
| 高値 | たかね | その期間で最も高い価格 | High |
| 安値 | やすね | その期間で最も安い価格 | Low |
| 終値 | おわりね | その期間で最後に成立した価格 | Close |
4つの頭文字を取ってOHLCとも表記されます。株価データを扱うときは、この並び順が標準になっています。
始値と終値:取引の入口と出口
始値は、その日に最初に売買が成立した価格です。

日本株の場合、始値は寄り付きの「板寄せ」という方式で決まります。前日の大引けから当日の寄り付きまでに集まった注文をすべて突き合わせ、最も多く約定する1つの価格を選びます。
終値は、その日に最後に成立した価格です。

| 項目 | 始値 | 終値 |
|---|---|---|
| 決まり方 | 板寄せ(寄り付き) | 板寄せ(大引け) |
| 反映しているもの | 前日の大引け後に出た材料 | その日の最終的な結論 |
| 指標での使われ方 | 限定的 | 移動平均線などの計算に使う |
| 投資信託の基準価額 | 使わない | 使う |
4つのうち最も重視されるのは終値です。多くのテクニカル指標が終値をもとに計算されるのは、その日の売買の結論を1つの数字で表しているからです。
高値と安値:値幅を作る2つの数字
高値は、その期間で最も高く成立した価格です。

安値は、その期間で最も安く成立した価格です。

この2つの差が「値幅(レンジ)」で、その日の値動きの激しさを表します。
| 計算 | 分かること |
|---|---|
| 高値 − 安値 | その期間の値幅。ボラティリティの目安になる |
| (高値 − 安値)÷ 始値 | 値幅の率。銘柄をまたいで比べられる |
| 終値が高値に近い | 最後まで買いが強かった |
| 終値が安値に近い | 最後まで売りが強かった |
高値と安値は、後から価格の節目として意識されます。前日の高値を超えられるか、前日の安値を割るか、という見方は実務でよく使われます。
四本値とローソク足の対応
4つの数字を1本の図形にしたものがローソク足です。対応は次のようになります。

上の図は陽線です。始値より終値が高い状態で、実体の下端が始値、上端が終値になります。

こちらは陰線です。始値より終値が低い状態で、実体の上端が始値、下端が終値になります。
| 部位 | 陽線での対応 | 陰線での対応 |
|---|---|---|
| 上ヒゲの先端 | 高値 | 高値 |
| 実体の上端 | 終値 | 始値 |
| 実体の下端 | 始値 | 終値 |
| 下ヒゲの先端 | 安値 | 安値 |
ローソク足の形の読み方はローソク足の記事で12種類を解説しています。
【実測】上昇の大半は「取引していない時間」に起きていた
ここからがこの記事の中心です。四本値を使うと、株価の上昇を2つに分解できます。
株価の動きを2つに分ける
・イントラデイ=当日の始値 → 当日の終値(市場が開いている時間)
この2つを足すと、前日終値から当日終値までの動きになる
日経平均株価の2019年1月から2026年8月まで(1,866営業日)で、それぞれだけを持ち続けた場合の累積を計算しました。
| 持ち方 | 対象の時間帯 | 累積 |
|---|---|---|
| オーバーナイトだけ | 大引け後〜翌日の寄り付き | 2.658倍(+165.8%) |
| イントラデイだけ | 寄り付き〜大引け | 1.280倍(+28.0%) |
| ずっと持つ | 両方 | 3.403倍(+240.3%) |
上昇の大部分は、市場が閉まっている時間に起きていました。日中の取引時間だけを取り出すと、7年半で+28.0%にとどまります。
理由は、四本値の定義そのものにあります。始値は「前日の大引け後に出たすべての材料を織り込んだ価格」です。米国市場の値動き、為替の変動、深夜に出た決算やニュース。これらはすべて、翌日の寄り付きの一点にまとめて反映されます。
デイトレードは上昇の28%の側で戦っている
下落局面では逆に、寄り付きで大きく下げる
右側は重要な留保です。オーバーナイトは「持ち越している時間」なので、材料が悪ければそのまま下窓になります。ギャップダウンで逆指値が効かないのは、まさにこの時間帯の性質です。
陽線と陰線はほぼ五分だった
同じ期間で、陽線と陰線の日数を数えました。
| 種類 | 条件 | 日数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 陽線 | 終値 > 始値 | 939日 | 50.3% |
| 陰線 | 終値 < 始値 | 927日 | 49.7% |
この7年半で日経平均は3.4倍になっていますが、陽線と陰線の日数はほぼ同じでした。
「上がる相場では陽線が多いはずだ」という直感は、実測では成り立ちません。前の章と合わせると、上昇は日中の値動きではなく、寄り付きの水準の切り上がりによって作られていたことが分かります。
4つの値の重要度は同じではない
ここまでを踏まえて、実務での扱いを整理します。
| 値 | 主な使い道 | 重要度 |
|---|---|---|
| 終値 | テクニカル指標の計算、サインの判定 | 最も高い |
| 高値・安値 | 価格の節目、値幅の測定、撤退価格の設定 | 高い |
| 始値 | 前日からの評価の変化を見る、窓の判定 | 場面による |
テクニカル分析でサインを判定するとき、「終値で」という条件が付くのはこのためです。ザラ場中に一時的に線を抜けただけの動きを除外できます。
前日の高値・安値を基準線にする
四本値の実務的な使い方として、最も単純で効果があるのがこれです。
| 基準にする値 | 読み方 |
|---|---|
| 前日の高値を超えた | 前日の売り方を上回る買いが入った |
| 前日の安値を割った | 前日の買い方を上回る売りが出た |
| 前日の値幅の中で終わった | 方向が決まっていない(もみ合い) |
| 前日の高値より安値が高い | 上に窓が開いている |
撤退価格を決めるときにも使えます。「前日の安値を終値で割ったら手仕舞う」というルールは、四本値だけで機械的に判定できます。指標を何も使わずに実行できる点が利点です。
時間軸によって四本値は変わる
最後に押さえておきたい点です。四本値は「期間」を決めて初めて確定します。
| 時間足 | 始値 | 終値 |
|---|---|---|
| 日足 | その日の最初の約定 | その日の最後の約定 |
| 週足 | 月曜(初日)の始値 | 金曜(最終日)の終値 |
| 月足 | その月の初日の始値 | その月の最終日の終値 |
週足の高値・安値は、その週のどこかで付いた最高値・最安値です。日足で大きく下ヒゲを付けた日があっても、週足では1本のヒゲに吸収されます。
同じ銘柄でも、見る時間足を変えると四本値が変わり、テクニカル指標の値も変わります。「どの時間足で見ているか」を意識しないまま指標を比べても、噛み合いません。
四本値に関するよくある質問
まとめ
四本値の3行まとめ
・実測では上昇の大半が取引時間外(オーバーナイト)で起きていた
・上昇相場でも陽線と陰線はほぼ五分(50.3%対49.7%)
四本値は、ローソク足を作るための材料としてだけ覚えられがちです。しかし4つの数字を分解すると、株価がどこで作られているのかが見えてきます。
7年半で3.4倍になった日経平均のうち、日中の取引時間で作られた部分は+28.0%にとどまっていました。持ち越すことのリスクと、持ち越さないことの機会損失が、この数字の両面です。
次にチャートを見るときは、ローソク足の色ではなく前日の終値と当日の始値がどれだけ離れているかを見てみてください。そこにその日の材料が集約されています。
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※ 本記事の集計は日経平均株価の日足四本値をもとに2026年8月28日時点で行ったものです。累積の数値は手数料や税金を考慮していない理論値で、将来の値動きを示すものではありません。特定の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。











